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同位体顕微鏡施設

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 140-150)

同位体顕微鏡施設は、物質中の同位元素の3次元分布をイメージングを行う 装置であり、主として材料科学や地球化学をはじめとした分野で使用される大 型の分析装置である。調査対象施設としては、海洋研究開発機構高知コア研究所 と北海道大学創成研究機構に設置されている同位体顕微鏡において、研究者 I1 と技師 J1 からインタビュー調査を行うことができた。I1 は研究活動を行いつ つ、外部共用を行っている地球化学を専門とする研究者であり、技師J1は装置 のメンテナンス・測定を日常業務としつつ、外部共用を行っている担当者である。

海洋研究開発機構

・施設の概要

海洋研究開発機構高知コア研究所は、高知県南国市高知空港に隣接する、地 球深部探査船「ちきゅう」などの掘削船がドリルパイプを伸ばし、何百メート ルもの海底から採取した「コア」と呼ばれる試料を用いた研究を行う研究所で ある。高知コア研究所には国際的な掘削プロジェクトで採取されたものだけで も、総計で100キロメートルを超える長さのコア試料が保管・管理されている

(図 48)。このライブラリは、日本では高知のコア研のみに設置され、内外 の研究者からの要望に応じて分配され、地球科学や生命科学の様々な分野で利 用されている(海洋研究開発機構 2017)。

図 48 コアを保存するライブラリ 出典:筆者撮影(2017)

研究所では、コア試料に残された情報を同位体分析や超微細構造観察手法を 用いて読み解き、地球内部の地球環境変動を解明するための研究などを行って いる(図 49)。

図 49 コア(上)と顕微鏡で分析するコア(下)

出典:筆者撮影(2017)

高知コア研究所にはマクロからナノメートルに至るまでの空間分解能での元 素・同位体の高精度・極微量分析と組織観察において、あらゆる科学的ニーズ に応えられる強力な分析基盤が構築されている。解析には、図 50で示した同 位体顕微鏡システムをはじめとした大型の研究装置を利用し、超高感度で微小 領域(~0.1 μm)の元素濃度測定や同位体比測定を行うことの可能な同位体 顕微鏡システムを使ってコアを分析している(海洋研究開発機構 2017)。

図 50 海洋機構の同位体顕微鏡システム 出典:筆者撮影(2017)

・インタビュー調査

・研究者I1

本当は外部共用を専門に行う技術者を雇いたいけれど、予算の関係 上できない。外部共用の担当者は、基本は専門を天然物化学としたコ ア研究を主に行っている。けれど、装置自体は天然物化学以外の他の 研究分野にも利用できるので、本部は運転経費を稼ぐために多くの研 究分野の研究者に使ってほしいと考えている。しかし、この施設に は、限定された研究分野としてのコア研究者しか施設にいないので、

他の研究分野になかなか広がらないのが課題。現在は、外部共用を行 うことで国からの補助金がついているけれど、装置を外部共用に供出 するため、マシンタイムを割く必要があるので、所内のユーザーから

のその同意をもらうことがなかなか難しい。外部共用はあくまで法人 の研究開発とは別の業務との位置づけとなっている。外部共用できる マシンタイムは装置ごとに異なるが、15-20%を共用枠にしている。

この装置は所内の利用希望が大きいのでなかなか外部共用に出せな い。

外部のユーザーには、最低限、試料のサンプル準備をしてほしい。

サンプル調整まで施設にお願いされても困る。このような事態がよく 起きているので、サンプル調整については別途分析会社に請負して依 頼してやってもらうことも検討している。分析会社に施設のマシンタ イムを買ってもらって、外部ユーザーのための測定をしてもらってい る。また、分析会社では測定できないような試料をこちらに回しても らう形をとることで、分析会社に一次スクリーニングの役割をしても らっている。

本来、この基盤施設を使ってハヤブサ2が持ち帰った新奇な試料を 測定したい。とはいえ、そうしたサンプルは日常得られるものではな い。一方、外部共用により装置の利用を検討している材料メーカーが 測定したいサンプルは、メーカーが新たに開発した新規素材である が、新規材料の観点で見るならば宇宙からものであろうと人が作った ものと違いはそんなにないと考えている。新規サンプルを測定するた めには、特殊ホルダーなど測定装置回りを新たに開発する必要がある ので、外部共用を通じた新規サンプルの測定技術開発を行うことで、

いざという時に宇宙からのサンプルを測定できる環境を整備できれば と考えている。

論文のオーサーシップは、共同研究はもちろんだが、外部共用で論 文を書いても、基本当方側の研究者がかかわらないと測定できないの で、外部ユーザーとの共著になると思っている。また、特許をとるよ うな成果があった場合は、その都度協議することになっている。新規 素材を開発するテーマはまだ始まったばかりで、これから詳細を詰め ていく方向にある。取得したデータは全部測定者にすべて返してい る。アカデミアユーザーからは現在利用料として数千円程度を徴収し ているが、データをとった後の解析相談など入れてしまうと、その人 工費などを含めると金額は数十万オーダーになってしまう。こうした 手間を怠らずに、ユーザーから信頼されることが重要なので、今はこ うした相談に関してかかる経費を徴収することを我慢しているが、ど れくらいの金額を外部ユーザーから徴収すればよいのかまだ何とも見

極められない。現段階では、高すぎるのか、安すぎるのかも見極める ことは難しい。

通常、分析会社が行う分析業務は基本測定データをユーザーに返す だけで、算出されたデータに関するディスカッションや分析はしな い。こうしたデータの解釈に関する部分を重視してしまうと、それ以 外の研究分野に外部共用のすそ野が広がらないかもしれないが、開 発・研究があっての施設の外部共用があるので、このあたりを施設の 独自性として打ち出す必要があると考えている。

地方の大学なので、都市部とくらべるとなかなか集まらない。装置 をまとめて一か所に置くことも、一見効率化が図れそうだが、研究の 多様化の観点から行くと担保できない。施設についても装置を一元的 に管理しようかと同様の施設を有している大学と話していたが、うま くいかなかった経緯がある。

(研究者I1-01: 2017年3月22日実施)

北海道大学

・施設の概要

同位体顕微鏡システム(Isotope Microscope、図 51)は、SIMS(Secondary Ionization Mass Spectrometer:二次イオン質量分析計)の技術を発展させ、物 質中の同位元素の 3 次元分布をイメージング可能とした装置であり、隕石に含 まれる元素の構成を把握するために開発された装置である。これまで、主に鉱物 などを観察するのに用いられてきており、隕石中の先太陽系物質の発見、太陽系 起源の実証、地球深部の研究等の宇宙科学・地球科学分野において多くの世界最 先端の科学成果をあげてきた。最近では、鉄鋼メーカーからの依頼で隕石以外に も、鉄の分析や、マウスの骨の分析などに利用されている。

図 51 北大の同位体顕微鏡システム 出典:(北海道大学創成研究機構 2017c)

装置は外部共用されており、表 28に示す料金表が示されている。パッケージ としては、産出されたデータの公開が必要ない成果占有利用と、ジャーナルに公 開することを前提に割引料金が適用される成果非占有利用がある。

表 28 同位体顕微鏡システムの利用料金

成果公開利用 成果非公開利用 同位体顕微鏡システム 17,300円/時間 58,500円/時間 次世代同位体顕微鏡システム 17,100円/時間 58,300円/時間 高圧凍結装置 1,000円/時間 6,500円/時間 凍結置換装置 400円/時間 4,300円/時間 ウルトラミクロトーム 500円/時間 4,700円/時間 細胞インキュベータ蛍光顕微鏡 900円/時間 5,500円/時間 形状測定レーザー顕微鏡システム 700円/時間 5,500円/時間

出典:(北海道大学創成研究機構 2017a)

URL: http://iil.cris.hokudai.ac.jp/usage.cgi をもとに筆者作成 同位体顕微鏡システムを利用した外部共用は、表 29で示す通り2016年では約 30が実施されている。

表 29 北大同位体顕微鏡施設における外部共用リスト

(平成27年度) No. 利用形態 法人名 課題名

1 成果非占有利用 北海道大学大学院 工学研究院 環境創 生工学部門 環境リ スク工学研究室

粉末活性炭粒子内の化学物質お よび微生物の吸着量分布の測定

2 トライアル利用 株式会社ブリヂス トン

フィラー含有エラストマーの高 精度分散・組成評価

3 成果非占有利用 東京医科歯科大学 大学院う蝕制御学 分野

歯質の脱灰、再石灰プロセスの 解明

4 成果非占有利用 北海道大学 歯学研 究科 硬組織発生生 物学教室

同位体顕微鏡による骨小腔周囲 の44Ca・42Ca安定同位体沈着 の有無の検討

5 成果占有利用 ー 非公開課題

6 成果非占有利用 北海道大学大学院 工学研究院 材料科 学部門

高強度マグネシウム合金の機械 的性質を支配する希土類添加元 素の空間分布の決定

7 成果非占有利用 北海道大学大学院 工学研究院 材料科 学部門

超高温用耐熱ニオブ基合金の組 織形成過程を支配する微量添加 元素の相間分配比の決定 8 成果非占有利用 北海道大学 遺伝子

病制御研究所 分子 腫瘍分野

正常上皮細胞と変異細胞の境界 で変化する微量金属元素の検出

9 トライアル利用 日東電工株式会社 安定同位体標識したグルコース の小腸における動態のイメージ ング

10 成果非占有利用 北海道大学大学院 医学研究科 人類進 化学分野

同位体顕微鏡を用いた考古遺跡 出土の黒曜石水和層の計測とイ メージング

11 成果非占有利用 北海道大学大学院 医学研究科 人類進 化学分野

SIMSによる黒曜石のマグマ 情報の抽出

ドキュメント内 JAIST Repository https://dspace.jaist.ac.jp/ (ページ 140-150)