物理層は、トランスポート・チャネル(TrCH)と制御情報チャネル経由で、データ・トランスポー ト・サービスを上位レイヤに提供します。表13は、36.212に定義されているダウンリンク/
アップリンクTrCHチャネルのタイプです。表14は、同じドキュメントに定義されている制御 情報です。
TrCHと制御情報は、表15に説明するように、対応する物理チャネルにマッピングされます。
表15. 物理チャネルへのマッピング
(36.212[12]Table 4.2-1および4.1-1]に準拠)
ダウンリンク
TrCH 物理チャネル
DL-SCH PDSCH
BCH PBCH
PCH PDSCH
MCH PMCH
制御情報 物理チャネル
CFI PCFICH
HI PHICH
DCI PDCCH
アップリンク
TrCH 物理チャネル
UL-SCH PUSCH
RACH PRACH
制御情報 物理チャネル
UCI PUCCH、PUSCH
3.3.1 チャネル・コード化
MAC層とやりとりするデータ・ストリームと制御ストリームは、チャネル・コード化方式を使用 してエンコード/デコードされます。チャネル・コード化は、エラー検出、セグメンテーション、
エラー補正、レート整合、連結、インタリーブを組み合わせたものです。
チャネル・コード化により、トランスポート・チャネルと制御情報にFECコード化が適用され ます。LTEではTrCH用に2つのチャネル・コード化方式を使用します。UL-SCH、DL-SCH、 PCH、MCHにはターボ・コード化を使用し、BCHにはtail-bitingコンボリューショナル・コー ド化が使用されます。どちらの方式も、コード化レートはR=1/3です(すなわち、コーダに入
るビットごとに、3ビットが出力されます)。
制御情報は、tail-bitingコンボリューショナル・コード化、ブロック・コード、繰り返しコードを含 むさまざまな方式、およびさまざまな制御レートを使用してコード化されます。
トランスポート・チャネルの物理層処理の正確な詳細は、TrCHタイプによって変化し、
36.212全体で仕様化されています。
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3.3.2 HARQとAMC
遅延とスループットは、デジタル通信システムの性能の2つの重要な指標です。LTEでは、物理 層のさまざまなメカニズム、特にHARQ(ハイブリッド自動再送要求)処理とAMC(適応変調/
コード化)を使用して、これら両方の性能を改善します。
HARQは、データをネットワーク・ノードから別のネットワーク・ノードに確実に送信し、伝送 エラーが発生した場合に識別し、発信元からの再送を容易にするための方式です。LTEでは、
HSPAやHSPA+と同様に、Type-Ⅱ HARQプロトコルを使用します。
AMCは、フェージング・チャネルのデータ・スループットを高めるために、リンク適応に使用され るメカニズムです。この方式では、各ユーザのチャネル条件に応じて、ダウンリンクの変調方 式が変更されます。リンク品質が良好な場合は、LTEシステムは、高次の変調方式(シンボル当 たりのビット数が多い)または低レベルのチャネル・コード化を使用できるので、データ・レート が向上します。信号のフェージングや干渉などの問題のためにリンク条件が悪い場合は、シス テムは、変調の次数を下げたり、チャネル・コード化を強化して、許容できる無線リンク・バジェッ トのマージンを維持することができます。
Type-Ⅱ HARQとAMCの連携により、LTEでは、非常に適応性の高いトランスポート・メカニ ズムが提供されます。適応変調/コード化では、スループットの観点からは、ほぼ理想的な フレーム・エラー・レートを実現するコード化レートを使用するように、初期HARQ伝送が調整さ れます。次に、Type-Ⅱ HARQで、インクリメンタル・リダンダンシーを使用して、連続する各再 送に対して冗長ビットが付加されるので、パケットを正しくデコードできるようになるまで、実効 コード・レートが低下します。このため、完全ではないですが、遅延を最小限に抑えながら、動的 に変化する広範囲のチャネル条件で全体のスループットを最適化することができます。