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 少  上  下  共

〈………〉 話者の説明は,〈  〉で囲む。

(………) 調査者が加えた説明は,( )で囲む。

〔………〕 調査の場にいあわせた第三者が加えた説明は,〔  〕で囲む。

     だいぶ考えてから答えたことを示す。

     語形(表現)を与えて誘導した結果得た回答であることを示す。

     その答えに疑問があることを示す。

     話者が回答した順序を示す。

     (複数回答における)比較的古い表現。

︵︵︵︵︵︵

11 11

︶︶︶︶︶

新しい表現。

多く使う表現。

少なく使う表現。

ていねいな表現。

ぞんざいな表現。

)共通語的・標準語的表現。

9.調査結果の報告

 調査票に記録された調査結果は,1地点ごとに,さら に1項目ごとに,指定したカードに転写してセンター

(国立国語研究所)に提出することとした。カードの保 存,コピー,また,調査結果の整理の際に,担当者が臨 時の書き込み(および,その消去)をする便宜等を考慮 して,転写の際の用具には鉛筆以外の黒色のものを用い るよう指示した。

 カードの見本と,調査者に示したカードへの記入例は 次のとおりである。

①②③  回答された順序を示す。

〈上〉〈新〉 話者が,比較的ていねいな表現であ       り,その土地では比較的新しい表現であ       ると答えたことを示す。

(共)

〈多〉

〔ゆ〕

〈 ?〉

項目番号

方言文法全国調査

準 地点番号

{

回答(注言己) ikltakunai ①〈上〉〈新〉(共)

ikito mai ② 〈多〉

ikito:naka ③ 〔ゆ〕〈?〉

〈③はこの土地で使う者もいるが,自分はあまり 使わない〉

 上の記入例における注記略号の意味は次のとおりであ

る。

(2)

(3)

〈この土地で…〉

調査者が,この表現は共通語的であっ て,その土地本来のものではないと判断

したことを示す。

話者が,(3種の回答の中で)これを比 較的多く使うと答えたことを示す。

.同席の第三者が,誘導した結果得られた 表現であることを示す。

話者が,疑いながら(自信なさそうに)

答えたことを示す。

      話者が加えた説明であるこ       とを示す。.

 調査結果とともに,センターに提出を求めたも の,および,提出に際しての指示は以下のとおり である。

 (1)第1調査票記録票(報告用)   1枚    第2調査票記録票(報告用)   1枚    (「記録票」とは調査年月日,調査者氏名,

  調査地点名,話者氏名,話者の生年・経歴な   どを記入するもので,調査の現場で記入する   「記入・保存用」とセンターに提出する「報   曲用」とがある。127ページ参照)

調査結果を記したカード

調査地点に×印(線の交差する点が調査地点)を

 記した5万分の1地形図。なお,2人の話者を調査  し,それぞれの地点が地図上で識別できる程度に離  れているときには,2箇所に印をつけ,その区別の  わかるような処置をすること。

(4)録音テープ(それぞれのテープに地点名・話者名  ・話者の生年《西暦・元号いずれでも》・調査者氏  名・調査年《西暦》を記入しておく。外箱には記入  不要。)

 (記入例参照。)

(5)表記についての説明(必要に応じて)

  なお,調査票の原簿はセンターに提出せず,調査  者の手もとに保管し,センターから調査内容につい  て質問があれば,調査票にあたって回答するよう要  望した。調査票を回収しなかったのは,かつて関東  大震災の折に,当時の国語調査委員会が収集した全  国調査の結果が灰儘に帰した事実にかんがみ,調査  結果を分散保存した方が安全であると考えたこと  (この処置は『日本言語地図』でもとられている),

 調査票の原簿は,いわば調査結果の下書きであっ

て,調査者にその提出を強要するのがためらわれる ことなどの理由による。

 このようにしてセンターに集められたカードの総 数は,約24万枚であった。われわれは送られてきた カードを1枚1枚点検し,特殊な音声記号や注記内 容など必要な部分をコード化した上で,その内容を

コンピュータに入力した。コンピュータ入力の目的 は,文法事象がいちじるしく体系性を有するため に,調査結果の分析に当たって複数の関連項目を相 互に参照する必要があり,そのためにはコンピュー タの利用がきわめて能率的であると考えられるこ と,報告書の刊行に際して,言語地図のほかに調査 結果のすべてを「資料一覧」(後述)という形で,コ ンピュータから出力し,公開したいと考えたこと,

入力したデータは将来,方言区画論をはじめとする 種々の計量方言学的な研究に貢献しうること,さら に,近い将来,言語地図の製作それ自体を全面的に コンピュータを利用して行うことを検討したいと考 えたこと,などによる。

録音テープ記入例(裏面にわたっても可)

     高知市福井町50(石井は同町30)

C     山田太郎(明40)・石井次郎(大3)

佐藤亮一調査(1979)

O       o

この部分は空欄に しておく。

(・当方で地点番号  を記入する。)

の 方 法

1.編集の基本方針

 調査結果を整理分類し,.言語地図集を編集するに当 たって,われわれは次のような基本方針を立てた。

 〔この言語地図集は,採集した各地の言語資料の地理  的分布を客観的に提示することを基本とする。言語地  図作製に当たっては資料性の保持に.とくに留意する。〕

 この基本方針に従って,次のような具体的な編集方針 が打ち出された。

 (1)報告された各種語形がそれぞれの言語地図に登載   するものとして適切なものであるかどうか判断する   際に,作図者,あるいは項目による不統一が生じな   いよう,一定の語形採用規則を作成する。

 (2)できるだけ詳しい語形変種を地図上に示す。具体   的には,語形の統合に当たって,微妙な音声的な差   異は捨象するが,音韻レベルの統合は極力避ける。

 (3)語形の統合に当たっては作図者ぞあるいは項目に   よる不統一が生じないように,.一定の統倉規則を作   成する。

 (4)語形を記号化するに際しては,語形間の距離(語   形の類似度)と記号間の距離(各語形に与え準記号   の類似度)が対応するように,最大限の努力を払   い,作図に当たって,作図者の解釈が加わることは   極力避ける。

 (5)報告された原資料を,「資料一覧」.(報告された語   形の全体,見出し語形の下にまとめられた音声的変   種を含む異表記のすべて,各語形に付された注記の   一覧)として,言語地図とともに公開する。まとめ   られた音声的変種は凡例の見出し語形のわきにもこ   れを提示する。

 (6)言語地図に関する解説は次の3点について行な   う。

  (a)項目の性格(調査のねらい,どの部分を地図化    したか,地図化しなかった部分の語形変種の例    示,関連する項目の指摘など)。

  (b).語形め処理(意味的,および形態的に,さらに    回答された語形が話老自身の使用語であるかどう    かについて採否が問題になった語形の処理など)。

  〔c)語形の分類と記号の与え方(語形分類の基本方    針,および,どのような語形特徴に注目し,それ    に対してどのような記号特徴を付与したかについ    ての詳細な説明)。

.上記の基本方針について詳しく説明を加える。

 一般に言語地図作製に関して,その資料性を重視する 立場と,..作図者の解釈を優先させる立場とが存在する。

たとえば,各種の語形変種が錯綜して分布し,そのまま では分布領域が判然としないが,いくつかの語形変種を 統合してそれらに一定の記号を与えると分布が見えてく ると判断される場合,.語形間の距離と記号間の足巨離の並 行性を多少こわしても,その分布が目立つような記号を 与えるというのは,後者の解釈優先の立場である。この

』立場では∫作図者が国語史的に重要であると判断した事 象に対してうとくに目立つ記号を与えることもある。し たがって,解釈優先の立場で作図した場合に1ま,同一の 項目の図であっても,作図老によって分布についての印 象がかなり異なる言語地図が作製される前能性が大いに ありうるbこれに対して,.資料性重視の立場では,作図 者の解釈が地図の読者に影響を与えることのないように 配慮し,読者が自由に解釈しうる言語地図を先ず提示

し,挙琴に応じでその地図g利用者が,.独自の解釈地図 を別に作製すれば良いとする。『日本言語地図』では,作 図者によって,あるいは項目によって態度が多少異なる が,どちらかと言えば解釈優先の立場(少なくとも解釈 図を認める立場)をとっている。これに対して『方言文 法全国地図』では,資料性重視の立場をとることにし

た。

 ただし,この両者の立場のいずれをとるかについて は,研究者の言語研究観によるところが大きいと考えら れ,この点に関して,われわれの間で互いに対立する議 論がかわされた上での結論であった。そもそも語形に記 号を与えるということは一種の抽象化であり,厳密な意 味で,語形問の距離と記号間の距離を並行させることが

果して可能かという根本的な問題も残されている。した がって,理念としては統一的な立場をとることにしたも のの,作図の実際に当たっては作図者の言語研究観の相 違が影響した場合のありうることも,一言つけ加えてお

きたい。

 本書において音韻レベルの統合を行わなかったのも,

資料性重視の立場によるものである。そのために,図に よっては見出し語形の数が非常に多くなり,凡例にかな りのスペース(『日本言語地図』の凡例スペースの数倍)

を要することとなった(ちなみに,『日本言語地図』では 凡例のスペースがかなり制約されているため,項目間の 語形変種の多少によって語形統合の基準が大きく異なる 結果になっている)。・

 もっとも,資料性重視の立場をとる以上,音声的変種 も見出しとして分出すべきだという考え方も当然ありう る。しかし,そのためにはさらに数倍の凡例スペースを 要することになり,文法事象の言語地図という本書の性 格から,そこまでは必要がないと判断した。調査企画の 段階で,調査結果の表記は「音韻論的な区別および特徴 的な方言音声が識別できる程度の,いわゆる簡略表記で 十分である」とした(23ページ参照)という事情もあっ た。なお,「資料一覧」には,地図に採用したすべての語 形の原表記を地点番号とともに明示したので,もし必要 であれば,この資料を利用して音声的特徴の分布図を作 製することも可能である。        ・・

 報告された各種語形.の採否に関する規則を作成したの も,『.日本言語地図』では,この点た関して(検討会を開 いて一々のケースについての処理を決めたものの),作 図者間,あるいは項目間の不統一が避けられなかったと の反省に基づくものであった。

 なお,本書においては,作製した言語地図の分布につ いての言語地理学的な解釈は原則として行わないことに した。これは,本書が資料の提示を旨としていること,

文法事象の言語地理学的解釈については,方法論的に未 解決の部分が大きくゴ慎重な検討が必要であることなど のためである。本格的な解釈は今後の課題としたい。

2.語形の採用規則

 基本的には,言語地図に採用した語形は,一定の条件 を備えた話者自身の回答した語形で,質問の趣旨に合っ

ているものである。ただし,一定の条件を備えていれ ば,その土地の主たる話者以外の人物(同席者ほか)の 向答した語形も採用した場合がある。「その語形には補助 記号を付けて,主たる話者の回答と区別する.ことにし

た。

 以下,具体的に説明する。

 報告された語形の採否に関しては,次の3項のいずれ かに分類して処理した。

 ㈲.無条件で(補助記号を付けずに)地図上に登載す   る語形。

 ⑧ 参考話者の回答(同』地点における他の話者の回   答)として,補助記号を付けて地図上に登載する語   形。

 ◎ 地図上に登載しない語形(この語形は注として   「資料一覧」に記載する)。

㈲⑧◎のそれぞれに含めた語形は次の条件に該当する ものである。

 ㈲ 無条件で(補助記号を付けずに)地図上に登載す   る語形……一定の条件に合う話者が自.分が使う(も   しくは昔使った)として回答した語形で,質問の主   旨に合っていると判断されるもの(ただし,質問の   主旨からかなりずれているが誤答には至らないと判   断されるものは,「その他」として採用した)。

  上記における「一定の条件に合う話者」とは次の  条件のいずれかを備えた者である。

 ω 性6出生年・居住歴が調査時に指示した条件に   合っているごと。すなわち,1925年目大正末年)

  以前に生れた男性で,15歳まではよその土地(他       あざ

   の市町村やよその字)で生活したごとがなく,そ   れ以後よその土地で生活したとしても,.その期間   が10年以内であること。

 (2)上記①の条件からはず.れていて.も,次の者は    「許容の範囲」にあると認定する。

  ⑦1934年(昭和9年)以前に生れた者(当初の    条件からの距離が9年以内の者)。

  ㊥15歳までの間によその土地に住んだとして     も,その期間が4年以内の者(ただし,同一市    町村内の移動は無視する)。

  ㊦ 16歳以後よその土地に住んだとしても,その    期間が19年以内の者(同上)。

  ㊤ 上記の条件をすべて備えた女性。

ドキュメント内 方言文法全国地図解説 1 : 付資料一覧 (ページ 31-40)