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第3節 地理と歴史の融合
本節においてば、高等学校地歴科における、地理と歴史の融合の 可能性について考えていく。
なお、先に述べておくが、本節で言う地歴科における地理と歴史 の融合は、昨今話題になっているいわゆる地理基礎、歴史基礎など といったような総合科目的な位置づけとしての融合ではなく、思考 段階において、他教科他科目とを融合させ理解を進みやすくする、
という意味において融合という言葉を使っている。学習指導要領の 中でもたびたび、関連付けるという言葉が出てくる。
日本史Aでは、「我が国の近現代の歴史の展開を諸資料に基づき 地理的条件や世界の歴史と関連付け、現代の諸課題に着目して考察 させることによって、歴史的思考力を培い、国際社会に主体的に生 きる日本国民としての自覚と資質を養う」3と目標には掲げられて いる。しかし、この目標は関連であって、融合ではない。関連させ
るということは適宜用いるということを意味している。
「今回の改訂では、地理的条件とともに「関連付ける」ことと され、より具体的に示された。①の諸資料に基づくという視点と あわせて、必要に応じて地図や世界史の資料も使って我が国の歴 史を考えるという科目の性格が明確に示された。」4
以上のように、関連付けることとし、地理的条件を必要に応じて 用いて我が国の歴史を考えるものとしている。しかし、これでは歴 史事項と地図で位置が分かるだけになってしまう。我が国の歴史を 考える上で地理的事象も含めて考えて行く必要がある。諸地域や空 間を認識する上でも、地図を用いるだけではなく、様々な地理的事 象をふんだんに盛.り込んで行く必要性が出てきている。それによっ て初めて、「関連付ける」ことが可能となるのではないだろうか。
日本史Bにおいても、同じような文言がある。「我が国の歴史の 展開を諸資料に基づき地理的条件や世界の歴史と関連付けて」5と
いうことが出てきているが、前述の日本史Aと同様で歴史事項と地 図の関連性が理解できるだけで、それ以上の思考形成は難しくなっ てしまう。歴史事象がどこで発生したのかというものを地図情報か
ら読み取ることも非常に重要なことではあるが、それでは、諸地域 の背景や様子を知ることにはならない。また、空間を認識すること
も出来なくなってしまう。日本史Bにおいても、地図だけを用いる のではなく、様々な地理的事象をふんだんに盛り込んで行く必要性 が出てきているのである。それによって初めて、「関連付ける」こと が可能となるのではないだろうか。
また、世界大戦を巡る内外情勢の変化を考察させる時に、諸国家 間の対立や協調関係、国内情勢、アジア諸国との関係性に着目させ ようとするものとしているが、この時には、必ず地理的事象や地理 的条件を含むことになってくる。近隣諸国の関係性であれば地図の みでも対応は可能となるが、しかし、諸国家業の対立や協調関係を 説明する上では、地図情報のみでは説明することは難しい。地理的 事象や世界史の事象も含んでくるものとなってくる。そのため、1 っの歴史事象であっても、偶々な見方・考え方で見ることが可能と なってくるのだ。第二次世界大戦前後を比較し、どのように勢力図 が変化したのか、なぜ、そのような変化があったのか、ということ を考える時には歴史事象だけではなく、地理的事象や地理的条件を 含んだ上で考察を行わなければならなくなってくるのである。
また、日本史Bにおける内容の取扱いにも目を向けて見る。日本 の動向と諸外国の関係を第二次世界大戦との関わりの中で考察させ るものとなって・いる。この中では、必ず当時のアジア・太平洋地域 における諸外国の勢力図や関係性を考慮しなければならない。その 際には、やはり地理的条件や地理的事象との関連性も重要なものと なってくる。
そのため、歴史事象においても地理的事象を融合させて考察して いく必要が出てくるため、融合・関連性というものが重要になって くるのである。以下で、日本史Bにおける指導計画の作成と指導上 の配慮事項を見て行く。資料の扱いを述べた記述となっているが、
この中にある「因果関係を考察させたり」6という文言がある。こ れは、資料の解説・解読、資料に対する批判的な見方・考え方の育 成だけではなく、歴史事象の因果関係をも考えているものとなって いる。歴史事象の因果関係も考察していくためには、地理的事象や 地理的条件も同時に考察していかなくてはならないのである。地理 的事象や地理的条件も同時に考察していくことにより、歴史事象だ けでは分からない地域性や背景をも把握することが可能となってく る。融合・関連させて考察させていくことは、重要な要素を持って いるのである。
次に、世界史についても論じていく。
世界の歴史の大きな枠組みと展開を諸資料に基づき地理的条件や 日本の歴史と関連付けながら理解させ、文化の多様性・複合性と現 代社会の特質を広い視野から考察させている。ここでも、地理的条 件や日本の歴史と関連付けてという文言が出てきている。
「歴史の舞台としての土地、環境、人々の活動を支える生業な どにも着目し、日本の歴史が他の地域の歴史と種々の交流をもち 展開されたこと、前近代においては東アジアの歴史を形成する一 要素であったこと、そして近現代においては世界の歴史形成にか かわったことなどに着目させながら世界の歴史を理解させること を示している。」7
歴史事象を歴史事象としてのみ見るのではなく、地理的条件、地 理的事象や日本史の歴史事象と融合・関連させることの必要性と説 いているものである。歴史事象は、様々なものを要素として成り立 っている。そのため、1つの視点から見ることは難しいものとなっ ている。歴史を見て行く上でも、地理的条件、地理的事象との融合・
関連性は必要なものとなってくることを示しているものとなってい
る。
世界史Bにおける内容:とその取扱いの空間軸からみる諸地域世界 8を見て行く。これは、世界史を空間的なつながりに着目して、考 察していくものとなっている。特に、同時代性に着目して諸地域世 界の接触や交流を考察していくことは、歴史事象がどのように発 展・展開し変化していったのかを考察することにもなる。また、そ れらを考察していく上で、地理的条件や地理的事象との関連・融合 は重要な要素になってくる。
そのため、空間的なつながりで考察をしていくことにより、より 思考が深まり.、歴史事象の関連性や背後にある地域の特色や、背景
を知ることにもつながって行くのである。これは、世界史の内容と その取扱い9であるが、日本史においても同じことが言える。目本 史の歴史事象を空間軸と時間軸と合わせて考えて行くことにより、
世界史と同じ効果を得ることが出来るのではないだろうか。
以上のように地歴科における地理と歴史の融合の必要性を見てき た。地理と歴史を融合させることにより、以下のようなことが可能
となる。
①歴史事象の中に地理的事象を組み入れることにより、それら歴史 事象の背景や移り変わりなどの変化を理解することが可能とな
る。
②同時代における地域間のつながりや差異、特徴を知ることが可能
となる。
③地域の将来や今後を考えて行くことが可能となる。