目標:1996 年、現図書館の設計に際し、「聖路加看護大学図書館のめざすもの」が、以下のように図書委員会に よって策定された。
「聖路加看護大学図書館は、看護実践にかかわる基本的知識ならびに現在行われている最新の看護と保 健・医療・福祉について把握できるような情報を収集し、利用者に提供する。また、豊かな知性と感性を 備えた人間性を育み、広い視野にたって学問・研究の基礎を身につけ、看護の近接領域においても基本的 知識と最新情報を知り得るような方法を提供する。そして自立的に、安心して、学習したいという意欲を 持ち得るような快適な環境を確保し、提供する。
当館は、看護学としての教育、研究の最新情報の充実に努める。そして、利用者がそれらを円滑に享受 できるよう援助し、看護学の向上に寄与する。また、本学の伝統を踏まえ、看護学の歴史的資料を保存、
提供する。
当館は、提供し得る範囲内で開かれた図書館として、看護学研究の成果を広く還元し、社会に貢献する。
これらを実現するため、あらゆるメディアを含む広範囲な情報を扱い、これらを有機的に組織化し、提供 するよう努力する。」
この目標のもと、社会の変化や情報技術の進展に対応し、また本学の教育・研究方針に即して業務を遂 行する。
1 図書、図書館の整備
1)資料の体系的整備状況とその量的整備
【現状の説明】
2000年に実施した点検評価では、課題として、①適切な資料収集を行うために、評価方法を確立し 選書基準を明確にすること、②メディアの変化に対応し視聴覚資料や電子媒体資料の収集に努めるこ と、の2点があった。2003年に中間評価を行い、以下のように課題を具体化した。
● 購読雑誌について、利用者の希望や利用動向や、雑誌に対する外部の評価、対象とする研究分野 の将来性などから、適正な見直しを行う。
● 視聴覚資料の整備を行う。
● 電子ジャーナルなど、電子媒体資料を積極的に収集し、利用者の利便性を図る。
● 利用者の希望や利用動向をコレクション構築に反映する。
● 看護学の資料は、質・量ともに、これまで通りの水準を維持し、専門領域以外の資料においても 適切な収集を行う。
これらの観点から現状をまとめる。
a)購読雑誌評価の試み
当館には、通常、大学図書館がもつ「学習支援」「研究支援」とともに、看護学領域の「専門情報 の提供」という機能を併せもち、専門領域である看護学の資料は充実している。特に看護学関係の洋 雑誌は国内で有数の所蔵を誇っており、全国の図書館利用者の求めに応じ提供している。『American Journal of Nursing』は、1900年の創刊号から備えている。1988年の大学院設立時にBrandon/Hillリ
スト1等をもとに購読誌を増やした。
1999年に続き、2004年度に購読している雑誌を評価、選定した。対象は、館内利用において、5年 間、複写・貸出利用数が0件であった雑誌を抽出、「レビュー誌」「白書・統計類」「新聞」「目次サー ビス対象誌」を除外して、国内雑誌11誌、外国雑誌10誌となった。「目次サービス」とは、教員の求め に応じ、雑誌の受け入れ時に、目次の複写を届けるサービスである。
教員に対し、21誌のリストを示し、継続希望の有無を質問した。その際、リストには検討のため、
表1に示した情報を付加した。検討の結果、15誌(国内8、外国7)の中止が決定した。
表1 雑誌検討のための情報(2004年度見直し時)
■ 当館所蔵
■ 学外文献複写受付件数
■ 近隣図書館の所蔵の有無
■ 国内所蔵数
■ 価格
■ データベース・索引誌の収録の有無
■ 分類
【外国雑誌は以下の項目も付加】
■ Brandon-Hillリストへの収録
■ 雑誌Evidence-Based Nursingにおけるスクリーニング対象誌
b)視聴覚資料、電子媒体資料の整備
過去5年間、学内で購入した視聴覚資料は393巻であり、2002年度を境に受け入れが減少傾向にある。
また財源において図書館資料費の割合は1.78%であった。
電子媒体資料は、2005年度にEBSCO社の Nursing & Allied Health Collectionを導入した。これは 文献データベースCINAHLの収録誌を中心に約400誌を集めた電子ジャーナルのパッケージである。
文献データベースは、医中誌Web、MAGAZINEPLUS、NACSIS-IR、朝日新聞DNA、CINAHL、
BNI、PsycINFO、Cochrane Libraryを契約している。PubMedが公開されてから、MEDLINEを中 止、また文部科学省私立大学等経常費補助金「教育研究情報利用経費」を得て、British Nursing Index (BNI)といった特色のあるデータベースを備えている。
1 米国の医学図書館員、BrandonとHillによって作成された定評のある図書と雑誌のリスト。看護雑誌につい ては、1979 年~2002 年の間、2 年に一度、『Nursing Outlook』誌に発表された。
視聴覚資料の受入れ件数 60
83
102
65
53
30
0 20 40 60 80 100 120
2000 2001 2002 2003 2004 2005 年
c)利用者のニーズのコレクションへの反映
雑誌に関しては、「購読雑誌の評価」で述べたように、利用統計とアンケート調査によって見直しを 行った。一方、図書は、2002年度より毎年12月、教員を対象に、2000冊規模の見計らい選書会を実施 した。書店の協力を得て、看護・医学領域のほか、人文社会科学領域の図書も努めて展示した。教員 が直接、手にとって図書を吟味できるので、事後のアンケートにおいてもすべて継続を望む回答であ った。
開始した2002年度は165冊を選択、購入図書全体の2割強であったが、2005年度は249冊となり金額 も増えたため、2006年度に受け入れることとなった。全体の図書館における資料の購入状況は表2の 通りである。
表2 図書館図書・視聴覚資料受入数、雑誌購読数
年度 2000 2001 2002 2003 2004 2005 和 1,126 1,193 1,084 1,021 765 829 図書
洋 131 128 86 122 70 78
和 17 16 32 23 4 2
視聴覚資料
洋 1 1 0 0 1 0
計(冊・点数) 1,275 1,338 1,202 1,166 840 909
和 166 176 179 181 189 182
雑誌 洋 130 130 130 132 156 154
計(タイトル数) 296 306 309 313 345 336
d)コレクション維持の困難
資料費の逼迫から、これまで培ってきた看護学資料の水準の維持が困難になっている。雑誌価格の
(件)
( ) 図1 視聴覚資料の受け入れ件数
高騰に資料費の増額計画が間に合わないという影響を受け、購入が急激に減った。図書館資料費に占 める図書の割合は、過去10年間で最高額であった1998年度が41.7%であったのに対し、2005年度は 17.0%であった。また研究科増設に伴い学生数が増え、学生一人当たりの資料費を見ても減少傾向に あり、2003年度には3万円を下回ってしまった(図2)。
0 2,000,000 4,000,000 6,000,000 8,000,000 10,000,000 12,000,000 14,000,000 16,000,000
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 年度 0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000
資料費総額(寄付分含む)
学生1人当たりの資料費
【点検・評価】
● 購読雑誌の見直しを実施したが、利用統計のデータが均一ではなかったため、教員に示すリス トの条件として、「館内利用において、5年間、複写・貸出利用数が0件であった雑誌を抽出」という 設定をすることになった。結果的に中止15誌の総額は、ほとんど新規購読雑誌の1~2年分であった。
● 視聴覚資料の整備は、購入の本数だけをみると減少傾向にあった。ただし制作・出版状況から みた評価は行っていない。
● 電子ジャーナルなど、電子媒体資料は導入を開始したばかりであるが、今後、利用統計をとり 評価し、収集に反映する必要がある。
● 電子化が急激に進んでおり、収集方針にはこうした変化も盛り込む必要がある。
【将来の改善・改革に向けた方策】
雑誌は5年に一度見直しを実施することにしており、2009年度がその年にあたる。前回の検討方法 を参考にし、購読見直しを実施したい。
また、雑誌の見直しをしながら、学生の規模に応じた適切な質、量の図書および視聴覚資料の購入 が維持できるような資料費の増額を検討していきたい。
大学図書館における資料は今後ますます媒体が変化し、紙媒体の図書、雑誌に加え、電子ジャーナ ルなど電子媒体資料が、教育・研究の上で不可欠なものになると思われる。予算的措置を講じ、積極 的に収集していく努力をしたい。
2) 図書館施設の規模、機器・備品の整備状況
【現状の説明】
図2 過去 10 年間の資料費の推移
(円) (円)
機器・備品の整備状況は次の通りである。
閲覧席 68席 (他にスタディルーム内10席、AVルーム内10席)
書架収納力 開架 約4万冊、閉架約2万冊、参考図書・二次資料架約2千冊 雑誌架棚数 538棚(当年分)
AV資料架 ビデオ約1,000巻分
AV機器 カセット1台、CD1台、ビデオ9台(世界対応のもの1台含む)
コピー機 2台
プリンタ 3台 (うち1台はコピー共用機)
情報機器 利用者用PC 8台、業務用PC 5台、図書館システム用サーバ2台、電子図書館サ ーバ1台
学生に対する閲覧席の割合は17%で、ほぼ利用を満たしている。学習を進める上で、コンピュータ の使用は不可欠となっているが、エリアを分けることによって、音が気になる利用者にとって落ち着 いて勉強に専念できる場所を確保している。
2000年の点検評価では、課題として、室内の換気、プリンタ・トラブル防止があった。プリンタ・
トラブルに関しては、2003年にXEROX社の機器を導入、保守契約を結び、迅速に対応できる体制と なった。2003年に中間評価を行い、以下のような課題が新たに確認された。
● 資料の保存基準を見直し、費用対効果を検討して、適正な開架資料の量を明らかにし、それを 維持する対策を立てる。
● ノートPCの貸出等、利用者用のコンピュータ不足への対策を実行する。
この2点について報告する。
a)適切な開架規模の算出
資料の保存基準の見直しは、まず年間増加冊数の多い雑誌から行った。2004年度に購読雑誌の収集 基準の見直しを行った後、2005年度に寄贈雑誌を検討した。2006年度に中止等の手続きを行う予定で ある。2008年度以降の雑誌書架の増設(予定)に向けて準備を進める。
b)コンピュータの設置
2005年5月より貸出用ノートPCを3台備えた。これまでの貸出件数は548件であり、学部3年生の 利用が最も多く、続いて4年生であった。設置後、学生図書委員会2で、学生の要望を聞いたところ、
PC増設の要望が高いことがわかった。なかでも、一人の利用者による長時間の占有が問題点として出 された(表3)。
2 学生図書委員会は、図書館の発展向上を期して、各学年より選出された学生と司書で構成する図書館長直属の 委員会。年 5 回開催される。