医療・介護・福祉の多職種から捉える「介護連携」の在り方と課題
(その 3 )
― 北九州在宅医療・介護塾研修会でのグループワークより ―
○杉本みぎわ
1)2),久保哲郎
2)3),檪直美
1)2),林田優子
2)4),和田和人
2)5),山本節子⁶
)1)福岡県立大学看護学部 2)北九州在宅医療・介護塾 3)福岡県歯科保険医協会 4)福岡県栄養士会北九州支部 5)四季の郷 6)ケアハウス恵和園
高齢者人口の急速な増加に伴い、地域で暮らす認知症高齢者の人口も増加することが予測される。地域包括ケアシステムの構築が 急がれる中、認知症であっても住み慣れた地域で安心して暮らせる街づくりが求められている。その実現には、医療や介護に携わる専 門職だけでは、介護家族や市民が認知症について正しい知識を持ち、それぞれの立場の強みを生かし協力い合う支援が必要である。
そこで第 9 回目の北九州在宅医療・介護塾では認知症に対するケアについて①大切にしたいこと、②必要と思うことの二つの観点から
「異食」の原因と対策方法
認知症になると思いも寄らない行動をとることがあります。
明らかに食べられないものを口に入れてしまう“異食”もその一つです。
異食では、何でも食べてしまう可能性があるため、たばこや電池、漂白剤など、身の回り にあるものが非常に危険な対象物となります。そのため、看護や介護する側は常に注意し ておかねばなりません。かといって24時間見張ることは勿論、閉じ込めておくことは、
看護や介護される側だけではなく、看護や介護をする者にとっても大変大きなストレスと なってしまいます。下記に「異食」の原因とその対策方法についてご紹介します。
〈異食が起こる原因〉
1.認識力の低下によるもの
食べ物であるかそうでないかの区別がつかないことが考えられます。
2.食圧感覚や味覚等、口腔内の感覚障害によるもの
口の中に入れた物が、食べ物であるかそうでないかの判断ができない、或いは何か 口の中に入れて噛むと快的感覚を感じることが考えられます。
3.不安やストレスによるもの
不安や欲求不満、ストレスによって食欲が亢進した時に、手に届くものを口の中に 入れてしまうことがあるようです。
4.お腹がすいていることによるもの
食事前のお腹が空いたときに異食がみられることが多く、また、満腹中枢が適正に 機能しなくなっている場合には、空腹に関係なく異食がみられるようです。
〈異食を見つけた時の対応方法〉
1.口の中を確認する
口の中に何を入れたかを確認します。しかし、口の中に手指を無理矢理入れると、
噛まれてしまったり、慌てて飲み込んでしまうことがあるので、お菓子などを用意 して「こっちの方が美味しいから」や、「歯を磨きましょう」などと声を掛けて口の 中を確認します。
2.怒らない
怒ったり、驚いて大きな声をあげてしまうと、口の中を確認させてくれなかった り、余計に不安やストレスを募らせる原因となります。異食を見つけると看護者や 介護者はパニック状態になることが多いので、先ずは心を落ち着けて優しく話し掛 けましょう。
3.病院に連れていく
例えば、飲み込んだものが電池、先端の尖ったもの、洗剤、タバコ等の場合は、直 ちに病院で処置を受けましょう。また、電池や洗剤等には、飲み込んだ場合の応急 処置方法が書かれていますので、予め目を通しておきます。
〈異食の予防対策法〉
1.空腹の時間を作らない。
食事前の空腹時に異食が見られる場合は、おやつの時間を作る等して空腹を自覚させ ないようにします。
2.不安やストレスを感じさせない。
誰も相手をせずに一人にさせていると不安やストレスを感じ、このことが異食に繋が るといわれていますので、できるだけ一人にさせないようにしたり、不安やストレス を自覚する原因について考えてみます。
3.歯磨きを習慣化する。
歯磨きや入れ歯の手入れが旨く出来ていない場合には、口腔内全域に常時異常な感覚 を覚えていることがありますので、歯磨きを習慣化して口腔内を清潔にすることに心 掛ける共に、歯ブラシの毛先刺激が脳を活性化させることで認知機能の改善が期待さ れれます。
〈異食の改善策〉
1.手に届く範囲に口に入るものを置かない。
2.異食の原因となっている不安や不満を取り除く。
3.”食べる”ことの他に、興味を引くようなことや、用事を頼んで一緒にすること等を考 える。
4.長年繰り返してきた毎日の習慣について家族等と共に探し出し、可能であればその習 慣を組み入れる。
5.精神科等に相談する。