第1章 環境ビジネスの現状と動向
2. 環境ビジネスを巡る最近の動向
2.1. 政府の動向
2.2.1. 商社の動向
図表 1-15 のように海外事業を多く手がけてきている商社であっても、そのパートナー は我が国以外の先進国企業であることも多く、必ずしも「オールジャパン」態勢が取れて いるとは言い難い(その理由の一つとして商社は、日本パートナーのプロジェクトマネジ メント経験が乏しいことを挙げている)。
2.2.2. その他の民間企業の動向
図表 1-16 に例として、水ビジネスに関する各社の動向を示す。上下水道施設をはじめ とする水ビジネスは、「21世紀は水の世紀」と言われるように、もっとも注目される分野 の一つで、民間会社のみならず、図表 1-17 に例示するように、官民一体(関係省庁も複 数参加)となった組織のもと、展開していこうとする動きが活発である。
図表 1-15 日本商社の主な上下水関連プロジェクト例(ODA含む。EPCのみの案件を除く)[15]
商社名 所在国 内容
丸紅 チリ フル・サービス・コンセッションでバルディビア上下水道事業(上水7.1万m3/日)参入 中国 成都上水処理場(99~。仏ヴェオリアと共同。40万m3/日)BOT
メキシコ 3都市における下水処理場(計76万m3/日)運営。BOT カタール ドーハ西下水処理場(13.5万m3/日)EPC/O&M
ルセール下水処理場・ポンプ場(下水6万m3/日,ポンプ最大送量16万m3/日)EPC/O&M UAE ウル・アル・ナール発電・淡水化事業(11万m3/日)
タウィーラB 発電造水(73万m3/日)BOO
タウィーラA 発電造水買収(23万m3/日)。アブダビナショナルエナジー社の株式を丸紅から 15%買収して日揮も参画。
フジャイラ2 発電造水(逆浸透膜法含むハイブリッド型造水設備の導入)
サウジアラビア ラービグ 発電造水(20万m3/日)BOT
メキシコ PEMEXサリナクルーズ精油所水処理(産業用水,淡水化1.3万m3/日,浄水リサイクル0.9万 m3/日)。BOT
ペルー CAA社の株式取得。で、浄水事業(リマ市へ生活用水を供給)
中国 09年11月、安徽国禎環保節能科技)の株式30%取得。下水処理場運営へ進出(約20カ 所処理場、500万人にサービス)
双日 中国唐山市 排水リサイクル事業を10年度中に開始。日東電工と旭化成の水処理膜を採用。顧客工場 内に処理プラントを建設し、工場内で水循環事業も計画。
三井物産 タイ チョーカンチャン社が保有する上水供給会社(TTW)の株式の35%を取得して、2006年2月 上水供給事業に進出
2008年4月より2件目上水供給事業を実施予定。2007年7月には別の上水供給会社(PT W)を傘下に。
メキシコ
現地水処理エンジニアリング会社アースティック・メキシカン・ホールディング社の株式買収して、
下水処理場運営への進出(日量約360万m3/日。2013年創業。首都圏1200万人分の下 水を処理)
ハリスコ州水道局からグアテハラ下水処理事業を受注。水処理エンジニアリング会社のアトラ テックと合弁会社設立。日量約40万m3/日で20年間(総事業費約800億円)管理。
シンガポール
2010年8月、ハイフラックスと、中国における水事業展開の合弁契約書に調印。事業会社
「ギャラクシーニュースプリング」を折半出資で設立。ハイフラックスとハイフラックスウォータートラス ト(HWT)が保有する22の水事業資産をギャラクシーが買収する計画。江蘇省や河北省など8 省に、上水供給プラント9カ所、下水処理プラント11カ所、リサイクル水プラント2カ所。買収時 合計水処理量は日量74.5万m3/日。82.5万m3/日に拡張予定。
伊藤忠商事 オーストラリア 豪州最大の海水淡水化事業に参画。ビクトリア州政府が進める事業で、人口380万人の同 州メルボルン市の水需要の30%をカバー。日量約40万m3/日で11年に操業を予定。
中国
2010.05.07、仏スエズと共同で中国大連市の長興島臨港工業区で汚水処理事業に参入。
スエズの子会社シノ・フレンチ・ウォーターと共同で合弁会社を設立。南北汚水処理場(処理 能力日量4万m3/日)の保守運営業務を受託。
三菱商事 フィリピン マニラの水道事業が民営化された97年、運営会社に資本参加。60%台だった無収率を設備 更新に取り組み、現在は20%までに改善。
サウジアラビア シュケイク発電・淡水化事業(21.6万m3/日,ODA2300億円)
サウジアラビア マラコフ社、アルジョメ社と共同でWater & Electricity 社に対し、売電・売水(100万m3/日,
20年間)
住友商事 メキシコ
Degrémontと共同でO&M会社を設立し、下水処理プラントの保守運転業務に進出。チワワ 州フアレス市で09年、下水処理施設の拡張工事を受注(BOT)。工期は約2年、処理能力 は約39万m3/日(20万人)。現地事業会社を通じて拡張工事完了後15年にわたり下水処 理サービスを提供。
インド 2010.12.3インドの水業界最大手エンジニアリング会社であるVA TECH WABAG, LTDと、戦 略的提携契約を締結。
中国
2010.9.17中国住友商事会社とともに、中国の水事業最大手である北京首創股份有限公 司および 北京キャピタルの100パーセント子会社である首創(香港)有限公司と水インフラ関連 事業の提携合意。北京キャピタル香港と共同で香港に設立する事業投資会社を通じて参 画。株式の40パーセントを保有、3年後に約500億円の投資規模を確保。中国山東省、浙 江省における下水処理事業(下水処理能力日量合計29万m3/日)に参画。
図表 1-16水ビジネスに関する様々な動向 [16]
事業体概要 米ジェネラル・エレクトリック(GE)90年代後半、膜関連材料を中心にM&Aを実施して“水処理の総合デパート”に。北京オリンピック関連の水処理設備を約1兆円受注し、実績作りに成功。シンガポールに水の研究所を建 設。 独シーメンス 日本と同様、水事業の民営化が遅れ、非効率な水道事業を抱える地方自治体の赤字が増大するという負の連鎖が継続。電力大手2社(RWE社、Eon社)が国際水市場に参入したが、結 局撤退。重電メーカーのシーメンスが健闘中。2008年にドイツ連邦政府は、国内水事業を一つの統一ブランドとして結集し、国際水市場に本格的に進出することを狙った「German Water Partnership(http://www.gewp.de/)」を設立。民間企業、各種団体、大学・研究機関等243のメンバーが参加(産官学連携)。 German Water Partnershipは、海外窓口業務と、海外市 場の開拓で、ドイツ企業間の協力、関係研究機関、連邦省庁との協調を促進することが役割。中東を中心とした海水淡水化、成長市場であるアジアでの排水処理を、当面の戦略市場とみ ている 仏ヴェオリア
1853年ジェネラル・デゾー社の設立に始まる水道事業における世界トップクラス企業。2005~2006年「ヴェオリア・ウォーター」に社名変更。グループ企業社員(世界66ヶ国に約96,000名)の3分 の2以上はフランス国外を拠点とし、総収益もフランスとそれ以外の地域間においてほぼ均等に確保。2009年度の総売上は約126億ユーロ。上水および下水処理サービスを世界中で事業展 開し、世界中で延べ約1億6,000万人に提供中。世界中で約4,500件の運転契約を管理。日本国内にもヴェオリア・ウォーター・ジャパン(株)の傘下に、株式会社エコ・クリエイティブ・ジャパン 株式会社管路管理 株式会社ジェネッツ 昭和環境システム株式会社 大日本インキ環境エンジニアリング株式会社 ティーエス・サデ株式会社 株式会社西原環境テクノロジー 株式会 社西原テクノサービス 株式会社ニチジョー 日本浄水管理株式会社 フジ地中情報株式会社 ヴェオリア・ウォーター・ソリューション&テクノロジー株式会社 を持つ。 仏スエズ1822年パリに本社を置き水道事業や電力事業などを行っていたスエズ (SUEZ S.A.)を母体として設立。2008年7月フランスの公営企業フランスガス公社(Gaz de France、GDF)と合併しGDF スエズとなる。水道事業はスエズ・エンバイロメントに分割。主な市場は、フランス以外では、ベルギー、イギリス、ドイツ、その他のヨーロッパ諸国。GDFスエズの英国子会社(GDF SUEZ Energy UK)は、英国の水事業大手5社と電力の供給契約を締結。これは英国の水処理業界への電力供給量の30%に相当し、総額約6億ポンド(約860億円)、5年に及ぶ契約。 メタ―ウォーター(株)日本ガイシ、富士電機の共同出資会社(2008.4.1発足)。上下水・再生水処理、海水淡水化等の水環境分野の各種装置類、施設用電気設備等の製造販売、各種プラントの設計・施 工・請負を事業とする。 水 ing(株)三菱商事、日揮、荏原製作所の共同出資会社で2010.4.1発足。この合弁による総合水事業会社は、荏原製作所の100%子会社である荏原エンジニアリングサービスが保有する水処理 のエンジニアリング力、維持管理ノウハウ及びネットワーク、三菱商事の持つ世界的なネットワーク、事業マネジメント力及び資金力、日揮が誇る屈指のグローバルなエンジニアリング力とプロジェ クトマネジメント力を結合し、国内事業基盤の強化と欧米勢が優勢な世界水市場での事業拡大を狙う。 ジャパンウォーター(株)三菱商事、日本ヘルス工業により設立。運転管理委託の民営化を狙う。日本全国の各事業所において積み重ねてきた実績をもとに、水道事業における効率的施設運営管理・更新はもと より、長期的視野で事業運営を安定に継続していく上での新しい官民連携を創り上げることを目指す。 月島機械(株)、JFEエンジニアリン グ(株)水処理で業務提携(2010.11.24)(1)海外における環境インフラ分野(上下水道設備、バイオマス関連設備、産業廃棄物処理設備等)での共同展開(2)海外拠点の相互有効活用(3)そ の他両社それぞれの競争力強化に寄与すると思われる事項を推進。 (株)日立製作所
日立グループの技術や経験、ノウハウを集めて世界規模で水事業の強化・拡大を図るため、社長直轄組織として「水環境ソリューション事業統括本部」を2010年6月1日付で新設。従来の機 器提供、設計・調達・建設に加え、管理・運営まで行う「総合水事業企業」への転換を目指す。中国、中東、東南アジア、インド、南米など新興国向けの上下水分野の設計・調達・建設や 事業運営・管理を拡大。成長が予想される再生水、海水淡水化、工業用水・排水分野も強化。地域全体の水インフラを構築するシステムとして、「インテリジェントウォーターシステム」を提 案。グループが保有する上下水処理や海水淡水化などの高度水循環システム、インバータ制御による省エネ制御のポンプ設備、高度なITを活用した監視・制御システム、シミュレーション技 術、情報管理システム(アセットマネジメント、自動検針等)、センシング技術などの幅広い技術・ノウハウを駆使したシステム。09年11月、新エネルギー、スマートグリッド、鉄道、水インフラ、リサ イクルの5分野で日中合作モデルを作る「共同環境プロジェクト」を推進することで中国政府合意。 (株)東レ、日立プラントテクノロジ ―(株)
水ビジネスの国際展開を加速させるために、「海外水循環ソリューション技術研究組合」を設立したと発表(2010年3月1日)。東レの海水淡水化などの膜分離技術と、日立プラントテクノロ ジーの上下水道・工業分野の水処理エンジニアリング力を融合させ、国内外の政府・自治体との連携を図ることで、運営・管理ノウハウを蓄積し、独自の水循環ソリューションの構築・事業化 を目指す。組合は、NEDOの「省水型・環境調和型水循環プロジェクト」の委託研究テーマとして、(1)海淡・下水等再利用統合システム事業実証研究(福岡県北九州市・山口県周南 市)、及び(2)中東等の海外新興地域における小規模分散型水循環事業実証研究(アラブ首長国連邦UAE)に取り組む。北九州市における実証研究では、市とも提携し、海水淡水化と 下水再利用の統合による省エネルギー型デモプラントと、日本企業・グループが水処理関連装置を持ち込んで試験が行えるテストヘッド等を設置する「ウォータープラザ」を開設。実規模の実 証実験が行えるデモプラントとテストベッドを備えた施設は、国内初。実証研究期間は平成21年10月29日~平成26年3月31日。 日立プラントテクノロジー(株)
2010年11月中国西部地区大手の水ビジネス企業グループ興蓉集団(成都市興蓉集団有限公司)と水環境ソリューションの事業協定に関する覚書を締結したと発表。興蓉集団は、中国 西部地区12省区における大手の国営水ビジネス企業グループ。上下水道事業の投資、融資、設計から製造、管理、運営を事業とする。上水処理施設は3箇所保有。給水能力は178万m 3/日、給水人口は450万人。下水処理施設は9箇所保有し、処理能力は150万m3/日。2011年には、中国西部地区の上下水処理施設の新設・改造に伴う建設・運営・公的機関への譲 渡などのプロジェクトに向けて、日立グループと興蓉集団により、共同で特別目的会社を設立予定。 同社は約30年前にシンガポールに進出し、その後、東南アジア、中国、中東など各国に営業拠点を設立。近年は、08年にアラブ首長国連邦のドバイに合弁会社「ハイスター・ウオーター・ソ リューション」を設立。生活排水などを日立膜分離活性汚泥処理システム(MBR)で再生水として販売する事業を展開。09年にはシンガポールの逆浸透(RO)膜システムメーカーであるアクア テックを買収。MBRと組み合わせることで、海水淡水化から排水処理、再生水供給にいたるプラントの一貫体制を実現。10年にはモルディブで上下水道運営事業会社に出資し、設計・調 達・建設(EPC)を中心とした事業から、総合水事業への脱皮を進めてきた。 日立造船(株)
2010年12月ナガオカに出資を行い、中国の水ビジネス開拓で提携。ナガオカは、薬剤を使用しない低コスト地下水処理設備、取水スクリーンに実績があり、既に中国の地方都市において多く の受注実績がある。日立造船と連結子会社のアタカ大機で株式の20%程度を取得する見込み。日立造船は「パテント・リザルト」による海水淡水化関連技術、特許総合力のランキングの企 業調査結果では、神鋼環境ソリューション、東レ、荏原に次いで4位にランキングされている海水淡水化メーカー。アタカ大機はし尿処理、上下水道設備などのプラントなどの実績のある企業。 今回の提携は、中国の水ビジネス進出には、総合力が求められるとの判断によるもので、日立造船は2014年3月期までの3ヵ年の営業計画の中で、中国水ビジネス市場の開拓を進める方 針。また、ナガオカは、売上高計画を2015年6月期には100億円とし、現在の2.5倍の成長を狙っている。 水処理膜メーカー
日東電工は逆浸透(RO)膜で、ダウ・ケミカルと世界首位を拮抗。海水淡水化では累計約470万m3/日以上、排水再利用化では100万m3/日以上の造水実績で世界首位。シンガポール が行っている下水をRO処理(シェア86%)して、飲料水に供給するプロジェクトに参画。R&D拠点設立。帝人はオゾン処理技術で覚書。PUBは現在6カ所ある排水処理場をウルパンダン地 区など3カ所に集約する予定で、新設備としてMBR装置とRO膜を導入する計画。ウルパンダン地区の処理場では、米ゼノン、三菱レイヨン、クボタのMBR装置に続き、現在は旭化成ケミカ ルズと米コークの設備試験を実施中。一方、ペドック地区の処理場では三菱レイヨンのMBR装置の試運転が始まった。旭化成ケミカルズ(株)は、MF膜で世界2位の膜メーカー。09年2月に 中国・蘇州のソニーケミカル工場内において廃水リサイクルサービス事業を開始。 水処理専業エンジニアリング企業オルガノはマレーシアのオルガノアジアをはじめ、中国、台湾、タイ、シンガポールに現地法人を持つ。2010年度中にベトナムと北米に現地法人を設立。装置、課金制水供給事業で国内トップ の実績を持つ栗田工業は、中国で排水回収・再利用設備の展開を本格化。RO膜の耐久性を向上する薬品も開発、海水淡水化市場も強化。神鋼環境ソリューションは、 ベトナムに09 年4月に駐在員事務所を開設。同9月に工業団地の排水処理設備を受注。インドでは現地財閥系のジンダルグループとの連携強化。中長期的には合弁会社の設立などを視野。 エンジニアリング専業 インフラ整備を成長分野に据え、水関連でも官民共同プロジェクトに参画するなど取り組みの姿勢を強化。 日揮は投資事業における注力分野の1つとして独立発電・造水事業(IWPP)を 重視。05、08年にアラブ首長国連邦のアブダビで、05年にサウジアラビアでIWPPプロジェクトに参画。こ09年にはハイフラックスとの間で、中国・天津市の海水淡水化事業に関する共同運営で 合意。09年5月には三菱商事、産業革新機構、三菱商事が出資するフィリピンの水処理エンジニアリング会社マニラウォーターとの4社で、英ユナイテッド・ユーティリティーズが保有する豪州の水 道事業会社ユナイテッド・ユーティリティーズ・オーストラリアを買収することで合意。 東洋エンジニアリングは、水処理分野では三井物産とともに08年に買収したメキシコの水処理エンジニアリング 会社、アトラテックのノウハウを生かし、中南米やアジア地域へ展開。NEDO事業に参画し、大阪市水道局などとベトナム・ホーチミン市における水道事業の省水・省エネルギー対策を計画。 千代田化工建設も各プラント排水に合わせた水処理・再利用システムの構築を進め、独自の技術開発も推進中。