第2章 環境ビジネスと P2M
3. 環境ビジネスへの P2M プログラムマネジメント適用
3.2. ミッション設定の主要要素としての洞察力
3.4.8. プログラムのシナリオ分析
は、創造力によりプロジェクト化への代替案を作成する手順である。シナリオの記述法に は、ブレーンストーミング法、デルファイ法、ケプナー・トリゴー法など多数あるが、い ずれにせよ複雑系全体の直感的な把握をストーリーとして展開するシナリオ作成はプログ ラム事業への重要な予備段階である。
シナリオ価値の源泉は、イノベーションの内容、将来価値の先取り、共生である。シナ リオ作成は、この3つの価値源泉の仕組みに状況変化を想定条件として取り入れ、より現 実化して、将来の全体像と道筋を想定することであり、合意形成へのステップである。
図表 2-25 シナリオの展開
シナリオの代替案評価のための評価軸としては、事業の分野やプログラムの目的により 多様なものであるが、以下はその主要な例である(図表 2-26)。
図表 2-26 シナリオの選定のための代案評価軸
変化
開始時 中間時 完了時
シナリオB シナリオA 許容範囲 自由シナリオ
シナリオA
シナリオC
シナリオB
(楽観)
(悲観)
(楽観)
(悲観)
(楽観)
(悲観) 許容範囲
時 間
コ ス ト 基 盤 資 源 競 争
シナリオ選定
(意思決定)
戦略要素 プログラム ミッション
(1) 時間の軸
プログラムは長期的な期間で実行される。ミッションの価値は、現在の姿からスタート して構想されるが、追求する価値はプログラムの完成時点のものである。シナリオ案は、
その間の時間的な環境変化を織込んだうえで、評価が必要である。多くの場合、評価のた めに得られる情報は過去の情報ではあるが、シナリオ案は未来志向であり、近未来のでき るだけ正確な予測が重要である。
(2) 競争(市場)の軸
現下の環境分野では、国内外同業社あるいは国内外企業コンソーシアム同士の競争のみ ではなく、国籍を越えたグローバル企業コンソーシアム間の競争、あるいは、コンソーシ アムを支援する国の間の競争にも発展することが多いので、在来の市場競争から一歩進ん だ競争分析が必要である。
(3) 資源の軸
資金、組織、人材、技術、設備など、プログラムの実行にあたってプログラム組織が保 有または動員できる資源についての理解である。ここにもコンソーシアムとしてのトータ ル資源のピクチャー分析、また、資源軸からのグローバルコンソーシアムの組成の観点も 重要である。
(4) コスト(投資)の軸
ミッションの完成により実現する価値に許容される投資額である。
(5) 社会基盤の軸
法制度や社会基盤など、プログラムが実行される国や地方などの社会基盤の状況の理解 は重要である。この問題の典型的な例は、現地の法制度・商慣習を知らずに海外進出して 失敗するケースに見られる。この他、環境のようにきわめて新しいサービスを目的とする プログラムで新たな法制度や許認可制度の整備が必要となる等、既存のものと異なる価値 を創造しようとする場合には十分な考慮が必要である。
3.4.9. プログラムのファイナンス(資金調達)構想
環境関連事業の場合、ほとんどが事業主側国の公的資金、あるいは輸出側の公的ファイ ナンスあるいは投融資と事業主側の公的資金を組み合わせてプログラム資金を調達するこ とになる。ファイナンスの具体的な計画はミッションプロファイリングでシナリオ分析の 結果、基本プログラム案が策定されてからとなるが、それまでの段階でも基本的なファイ ナンス戦略が必要である。
プロジェクトあるいはプログラムのファイナンス組成については P2M 標準ガイドブッ ク第4部第2章「ファイナンスマネジメント」に詳述されているので参照されたい。
図表 2-27はファイナンスのストラクチャリング(組成)のワークフローである。
図表 2-27 ファイナンスの最適枠組み創出のワークフロー
3.5. プログラムアーキテクチャ
3.5.1. P2M におけるアーキテクチャとアーキテクチャマネジメントの意味
アーキテクチャは、1 つのプログラムを、有機的に結合された複数のプロジェクトとし て構造化し、機能を与え、環境や状況の変化に対応できる仕組みを創り出すための設計で あり、アーキテクチャマネジメントは、プログラムとしてのプロジェクト群間の構造化、
プログラムとしての全体機能の確保、各プロジェクトの機能を活かしながらプログラム全 体の操作性を考え、環境変化に適応させ、プログラム価値を維持するためのマネジメント である。プログラム統合マネジメントにおけるアーキテクチャマネジメントは、プログラ ムデザインから構想計画の策定までを包含する。
図表 2-28 はアーキテクチャマネジメントの全体像を示しており、以下に具体的に述べ る。
(目標の数値化、基本イン プットの把握)
(制約要因の克服)
(全体の枠組みの中での 調整)
事業採算モデルの 段階的開発
プログラム基本構想の創出(デザイン)
プログラム基本構想の創出(デザイン)
ファイナンス要素の選択と特定化 ファイナンス要素の選択と特定化
実行性のある最適な枠組みの創出(ストラクチャリング)
暫定字事業採算モデルl
暫定字事業採算モデルl 実現化のための 全体枠組み 実現化のための
全体枠組み 要素の詳細枠組み設定の ための検討 要素の詳細枠組み設定の
ための検討
個別要素の最適化・実現化
(最適化・代替性の検証)
個別要素の最適化・実現化
(最適化・代替性の検証)
全体枠組みの最適化・実現化 全体枠組みの最適化・実現化 資金調達の枠組みの実現
資金調達の枠組みの実現
実行可能なプロぐグラムの枠組 み成立
実行可能なプロぐグラムの枠組 ファイナンスの実現・プログラム み成立
実効性の確保 ファイナンスの実現・プログラム
実効性の確保 事業採算モデルの確定
事業採算モデルの確定
(目標の数値化、基本イン プットの把握)
(制約要因の克服)
(全体の枠組みの中での 調整)
事業採算モデルの 段階的開発
プログラム基本構想の創出(デザイン)
プログラム基本構想の創出(デザイン)
ファイナンス要素の選択と特定化 ファイナンス要素の選択と特定化
実行性のある最適な枠組みの創出(ストラクチャリング)
暫定字事業採算モデルl
暫定字事業採算モデルl 実現化のための 全体枠組み 実現化のための
全体枠組み 要素の詳細枠組み設定の ための検討 要素の詳細枠組み設定の
ための検討
個別要素の最適化・実現化
(最適化・代替性の検証)
個別要素の最適化・実現化
(最適化・代替性の検証)
全体枠組みの最適化・実現化 全体枠組みの最適化・実現化 資金調達の枠組みの実現
資金調達の枠組みの実現
実行可能なプロぐグラムの枠組 み成立
実行可能なプロぐグラムの枠組 ファイナンスの実現・プログラム み成立
実効性の確保 ファイナンスの実現・プログラム
実効性の確保 事業採算モデルの確定
事業採算モデルの確定
図表 2-28 アーキテクチャマネジメント全体像
3.5.2. プログラムデザイン
プログラムデザインは、プログラムを取り巻く環境の変化に対応しながらプログラムミ ッションに基づき革新を具体的に創造するマネジメントであり、次の5つの任務がある。
① プログラムミッションから導いたシナリオを戦略レベルで評価すること
② プロジェクトモデルを選択すること(後述のスキームモデル、システムモデル、サー ビスモデルの3つの組み合わせ)
③ 構造を与えること
④ 構造に機能をあてはめること
⑤ プログラムに全体としての操作性を与えること
これによりライフサイクルの視点でプログラムの機能、プロジェクト間の結合や境界を 設計する。
プログラムには、ゼロベースから出発するイノベーション志向の創出型や変革型のプロ ジェクトと、既知要素にプログラム固有の新要素を結合したり、新しいシステム運用でオ ペレーションノウハウを獲得するオペレーション型のプロジェクトが複合しているケース が多い。このような異質なプロジェクトの相互関係性を包含するプログラムのデザインは、
プログラム周囲の構造変化、状況変化に対する不確実性への対応に配慮が必要である。ま た、価値の相乗効果、イノベーション効果、波及効果を引き出すデザインを追及する。
またプログラムのデザインにはプログラムライフサイクルの考慮が要る。プログラムの
プログラム プログラム アーキテクチャ アーキテクチャ
解析された プログラムミッション
プログラムが意図する 構造
機能
機能性 必要条件:
最合理的な
最適な
ステークホルダー
ファイナンス
オプション戦略 十分条件:
多様な
周到な 実行可能な
プロジェクト A プロジェクトB プロジェクト C プロジェクトD
環境変化への対応性
プログラム プログラム アーキテクチャ アーキテクチャ
解析された プログラムミッション
プログラムが意図する 構造
機能
機能性 必要条件:
最合理的な
最適な 構造
機能
機能性 必要条件:
最合理的な
最適な
ステークホルダー
ファイナンス
オプション戦略 十分条件:
多様な
周到な 実行可能な
プロジェクト A プロジェクトB プロジェクト C プロジェクトD
環境変化への対応性