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プログラムの実行マネジメント

ドキュメント内 Microsoft Word - 環境報告書 doc (ページ 110-116)

第2章 環境ビジネスと P2M

3. 環境ビジネスへの P2M プログラムマネジメント適用

3.6. プログラムの実行マネジメント

3.6.1. プログラム実施計画

プログラムの実行フェーズは計画されたプログラム・システムの構築と、そのシステム を利用・運用するサービスを対象としたフェーズである。

プログラム実行段階の統合マネジメントは、プログラムのミッションを実現するために 必須の価値の確実な実現を目指すマネジメント活動であり、優れた価値の創造には、高い 価値を目指したプロファイリングによる構想計画と確実な実行の統合マネジメントの両者 がかみ合って初めて可能となる。

プログラムは、現状からの変化を意図して計画され、多くは機能の異なる要素プロジェ クトが複合されて組成される。このことから、プログラムは価値創造を目指すと同時に本 質的に大きなリスクを内包する。また、プログラムでは多大の資源(ヒト、モノ、カネ)

を投入するが、通常、投入資源の大部分は実行フェーズに費やされる。すなわち、プログ ラムにより創造すべき価値を現実化するのも、またリスクが顕在化するのも、このフェー ズである。

しばしば、この実行フェーズでプログラムマネジャーが交替したり、時にはこの段階で 初めてプログラムマネジャーが選任される。その理由は、この実行段階ではマネジメント の対象が「価値創造の可能性の拡大」から「価値実現の確実性の追求」へと大きく変化す るため、プログラムマネジャーには、それまでとは異なる資質も要求されること、そして、

別のマネジメント視点を与えることにより実行の確実性の向上が期待できることである。

また、プログラムマネジャーには、実行計画を貫徹する強固な意志と実行力とともに、必 要な場合はその構造的変更を含む計画への柔軟な対応能力という両面が要求される。

この実行フェーズは、①プログラムを構成するプロジェクト群をそれぞれの担当組織が 自律的に実行できる組織体制を作り上げる立上げ段階、②プログラムの立場でこれらのプ ロジェクト群を実行させ、自律分散的に実行されるそれらの状況を監視し、プログラムと して統合を意図してコントロールする段階、③プログラム・システム構築終結の段階、そ して④ 構築システムの運用の段階、に分けられる。

3.6.2. 確実な実行の仕組み作り

プログラム実行の立上げにあたっては、プログラムの確実な実行の仕組み作りの視点が 重要である。その基本は、第一に適切なプログラムの実行組織の構成であり、次に確実性 を考えたプログラムおよび各プロジェクトに関する細部の見直しである。

実行組織については、まず、プログラムマネジャーの下でプログラムの統合マネジメン トを担当するコアメンバーの組織化が必要である。具体的には、組織内にプログラム実施

本部などの臨時の組織を作る方法、組織外に特別目的会社(通常 SPC- Specific Project

Company と呼称される)のような独立の組織を設立する方法などを含めて、多様な方法

があり、プログラムのミッションや規模あるいは実施組織の態様により適切な組織形態を とる必要がある。

次に、プログラムアーキテクチャで定めた各プロジェクトをそれぞれ遂行させるのに適 切な実行担当組織を選定し、各組織に実行の権限を与える。この選定にも多様な方法があ るが、基本的には、次の3種の方法の組み合わせである。

• 自社内(単独受注の場合)あるいはコンソーシアムの主体企業を中心とした選定

• コンソーシアムメンバー企業間の事前の分担合意による選定

• 適切な第三者組織の選定

外部の第三者組織の選定は、技術的能力、スケジュール達成能力およびコスト的能力な どを、入札のプロセスなどにより確かめたうえで選定し、契約の条項規定によりプロジェ クトの実行を担保する。

プログラム組織は、プログラムマネジメント組織と構成プロジェクトレベルの組織の2 層から成るが、プログラムマネジメント組織の側ではすべてのプロジェクトについて、各々 に期待される成功必要条件要素(KSF:キー・サクセス・ファクター)を深く認識し、その ために必要な能力そしてプログラムにとってのリスクについても十分な認識を持つ必要が ある。

各プロジェクトの担当組織の概要が定まると、それぞれの組織の能力や考え方が明らか になるが、これらとプロファイリングに基づく基本構想計画との差異を調整して、より確 実に実行が可能で詳細な実行計画に展開する。この段階の検討に含まれるものとしては、

• プログラムを構成するプロジェクトスコープの見直し

• プロジェクトインターフェースの見直し

• 各プロジェクトスケジュールの組合せ

• 適切なマイルストーン審査ゲートの設定

• スケジュール・コストの予備

• 技術的リスク対応のための予備・冗長 などがある。

マイルストーン審査とは、プロジェクトの各フェーズ間での各種のマイルストーン審査 などと考え方は同じであるが、プログラムの場合には異なる進行状況にある多数のプロジ ェクトを統合する観点からの適切なマイルストーンを設定し、達成すべき成果を明確にす ることが必要である。

技術的リスク対応については、プログラムの内容によりきわめて幅が広い。個別プロジ ェクトの技術的リスクがプログラム全体に波及することを回避する対応が必要である。例 えば、ある特定の技術開発プロジェクトの結果によりプログラムの全体の実現が左右され る場合には、その技術開発について実現の目途がつくまでは何らかの代替技術開発を並行 して進めるなどの対策をとる必要がある。事業実行の中核となるシステムを更新するプロ グラムの場合は、仮に更新の実行日程が遅れた場合に備えて、現用システムを一定期間継 続運用できる体制を考慮しておくなどの対応が必要である。

3.6.3. 全体最適化の仕組み

統合マネジメントはプログラムの全体最適化を目指すものであるが、たとえプロファイ リングが最適なものであり、それに合わせて各プロジェクトの実行体制を定めても、それ だけで各プロジェクトが計画通りに実行される保証はない。その意味から、プログラムの 実行においては各実行組織が運命共同体として担当プロジェクトの推進を図るような仕組 みを取り入れることも必要である。

その一例として、性能、コスト、納期などの達成目標を設定してインセンティブとペナ ルティの条項を契約の中に含める手法がある。これは、性能向上により運用段階での利益 向上が見込める、あるいは納期の早期達成などにより運用が早まり投資回収や収益面で利 益向上が見込める場合、オーナー側の得る利益の一部をプロジェクト側にも還元すること、

逆にマイナスが出る場合にはそれをプロジェクト側にも負担させるということで、ステー クホルダー間に運命共同体の関係を構築するものである。

3.6.4. 変化の特質監視とコントロール

不確実性は、価値創造の企てであるプログラムの不可避な本質であるが、これはプログ ラムの時間的進行に伴い計画のうえでは減少する。監視とコントロールは、価値実現の確 実性の向上を時間軸上で繰り返し確認し、現実の計画との差異を修正する行動を行い、さ らに必要であればプログラム構造の変更を含めた計画自体の変更を行うプロセスである。

この監視とコントロールのプロセスで重要な要素は、プログラム情報の収集、情報評価と 方針決定、プログラムオプションとプログラムチェンジの4つである。

(1) プログラム情報の収集

収集を要するプログラム情報は、プログラムの環境変化の情報と個別プロジェクトの情 報である。プログラムの環境変化は、その実行の活動そのものだけでなく、目指す実現価 値に直接・間接に影響を与える。プログラムにはさまざまな環境が関係するが、特に重要 なものとしては、政権交代など関係国の政治情勢、市場環境、経済環境、社会情勢、国際 情勢、新技術動向、法制度変化、大規模災害、ステークホルダー組織の経営、プログラム

の中核メンバーの異動などがある。

一方、個々のプロジェクトは自律的に運営されるが、プログラムとしてそれらの進行状 況を適切に把握している必要がある。ひとつのプロジェクトの遅れは他のプロジェクトに 波及し、時にはプロジェクト全体に致命的な影響を与える。あるプロジェクトの抱える技 術や品質の問題が原因で関連するプロジェクトでの作業が無駄となるかもしれない。完了 期限を契約で厳しく定めていても、遅延の可能性は常に存在し、期限直前に遅延が判明し ても対処は困難である。多くの場合、プロジェクトの担当組織は他からの干渉を望まない ために、問題があってもその情報を積極的に外部には開示しない傾向がある。

プログラムの統合のためには、こうした情報の早期把握が必要で、そのためには情報収 集の仕組みづくりが重要である。中でもプロジェクトの進捗状況や品質問題など主要事項 の定期的報告、定期的・非定期的な会合、情報ネットワークによる報告システムの整備な どは契約で定める等の手立てが必要である。

次に、リスクマネジメント、ファイナンスマネジメント等の視点から特にクリティカル なプロジェクトを識別し、計画の段階から特別な監視項目を設定するなどにより効果的な 情報収集行う。

(2) 情報評価と方針決定

定期的あるいは随時に、プログラム情報を分析し、プログラムミッションおよび基本計 画に照らして評価する。定期的とはプログラム全体の日程により異なるが、週、月、四半 期などの単位、あるいは適切なマイルストーンなどである。個々のプロジェクト自身には 軽微でも、プログラム全体には影響が大きい問題も存在する。ほとんどの情報は過去の情 報であり、影響は未来に拡大する。早期の判断が必要であるが過剰な反応は逆効果であり、

プログラムマネジメントの洞察力と判断力が試される。各プロジェクトのミッションと当 初の計画が評価の基準であるが、他のプロジェクトの情報やプログラムの開始以降の外部 環境の変化も情報の評価には影響する。

評価の基準としては、プログラム環境の変化が構造的変化なのか状況的変化なのかとい う変化の特質(Change Attributes)、価値維持の許容水準(Threshold)とプログラムに 不可欠な実現要素(Critical Value Factor)の3つを識別しておかねばならない。

プログラムマネジメントの役割は、当初設定されたプログラムミッションの達成であり、

基本計画の断固とした維持・推進が基本であるが、状況の変化に応じて柔軟な対処の責任 もある。判断の指針となるのは、プログラムミッションの本質の理解である。

情報とその評価に基づくプログラム統合活動および個々のプロジェクトについて決定 される方針の内容には、継続、促進、変更がある。継続は現状計画の維持であり、促進は

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