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事例調査

ドキュメント内 Microsoft Word - 環境報告書 doc (ページ 121-143)

第3章 環境ビジネスの分野ごとのプログラムマネジメント・モデル

2. 分野ごとの事例

2.1.3. 事例調査

総合的な都市開発として、スマートコミュニティが実施された事例は少ないが、米国、

ヨーロッパ、中東、中国、韓国、日本、およびインドの7つの事例を紹介する。

(1) ピーカンストリート・プロジェクト(The Pecan Street Project/Mueller)

アメリカではスマートグリッドを中心とするプロジェクトが多いが、「ピーカンストリ ート・プロジェクト」では、都市分野、水処理などを含んだ総合的なプロジェクトとなっ ている。

テキサス州オースチン市のピーカンストリートを再開発しサステナブルなコミュニテ ィの開発とオースチンを環境技術のR&Dの中心として確立する事を目的に2009年11月 より5年間の計画で実施されている(図表 3-5参照)。

実施に際してはThe Pecan Street Project(PSP)社が特定目的会社として設置されてお り、予算2500万ドル。中心企業としてはAustin Energy社、米GE Energy社、米IBM 社、米Oracle社、米Microsoft社、米GridPoint社、米Catellus Development Group社 が参加している。

米国でもっともエネルギー自給自足と省エネルギー化が進んだサステナブルなコミュ ニティ「Mueller」を、スマートグリッド技術を活用して開発する。

オースチン市をクリーンエネルギー軸とする環境技術の研究開発における中心地とし て確立することを目的としている。

初期段階ではスマートメーターを設置した1000戸の住宅と75戸の商業施設からマイク ログリッドを構築する。従来型の発電所と同郷菜再生可能エネルギー発電システムを設計 し実現、管理する。

サステナブルなコミュニティとするため、グリーン・ビルディング基準に準拠した建築

を行うとともに、水の再処理と再利用及び電力、ガスと逢わせて「エネルギー・インター ネット」の一環とする・

プロジェクトの初期段階において、オースチン市、テキサス大学、オースチン商工会議 所、Environmental Defense Fund(EDF)がプロジェクト開始を報道発表し開始された。

その後、企業パートナー各社が参加を表明しているが、具体的な参加携帯や内容について は、提案依頼書によって今後、参加各社からの提案を募る。

プロジェクト遂行のため非営利団体・米PSP社が2009年12月に設立された。

オースチン市が運営する電力事業会社である米 Austin Energy 社が持っていたスマー トグリッドのプログラムを元にプロジェクトとして立ち上げ、エネルギー省(DOE)によ るスマートグリッド地域実証プロジェクト16件の内の1件として採択された。

オースチン市内にあった地方空港の跡地を活用した再開発型プロジェクトだが、実質的 にはほぼ更地に近く、サステナブルなコミュニティを開発すると言う形体である。計画区 域内の空き地に病院や住宅など一部の建築物が既に建設されており、引き続き住宅や商業 施設の建設が進められている。

蓄電池はプラグインハイブリッド車の搭載の物を利用する形態を想定している。米PSP 社によると、自動車メーカーとしてFord、トヨタ自動車、日産自動車などと協議を行って いる。

図表 3-5 「ピーカンストリート」のコミュニティ・マスタープラン

(2) オランダ・アムステルダム・スマートシティ

アムステルダムでは、EU2020で設定あれた目標を実現する事を目的に、米Accenture 社、オランダAlliander社(送配電網の運営)オランダAMI社(イノベーション・コーデ ィネーター)などを主体として、2006年の基本構想を検討し 2008 年~2016 年の計画で 実施している。

予算規模は11億ユーロで参加世帯数約37万5000世帯。(約755000人程度)

参加企業として上記の中心企業の他にオランダFar West社(住宅公社)とYmere社(住 宅公社)オランダDutch banks社、Raboobank社(銀行)、Philips社、米IBM社、米

Cisco System社などが参加している(図表 3-6参照)。

高い環境意識の元で「シビックプライド」と称される、住民の都市に対する強い愛着や 誇りの実現を目指し、これによってEU2020をいち早く実現しようとする物である。CO2

削減の制作パッケージ「EU2020」で設定された目標の実現であり、2020 年までに CO2 排出量を、1990年比40%削減を目標に設定している。

具体的手段として、送電力会社分野では、照明・冷暖房/セキュリティ機能を高めたスマ ートビルへの転換促進を行い、省電力機器システム分野では、港湾・船舶間の電力充電、

電気所同社の普及、充電ポイントの拡充路面電車の停留所、街路、ファサードに LED 照 明設置、商業船舶・河川用クルーザーに約70カ所に充電装置を設置している。

省電力監視システム分野では、スマートメーターの導入により消費電力の見える化を実 現し、1200住宅にスマートメーターとディスプレイを設置する。再生エネルギー分野では、

市内バス停・広告看板・市内建築物に太陽電池パネルを設置し、家庭用小型発電ユニット

(太陽光発電、小型風力発電、小型熱電併給システムで構成)を基本としたマイクログリ ッドの構築を行っている。

図表 3-6 アムステルダムスマートシティ計画キャンペーンロゴ

11 億ユーロの内訳は約 30%が地域電力会社によるスマートテクノロジー関連投資、約

20%が地域公社による家庭エネルギー効率向上促進投資、約30%が Philips社、Nuon 社

による省エネ技術向け投資、EUとAlliander社からの一部資金援助であり、残り20%が 各参画プレーヤーの自己負担である。

アムステルダム市は、人口75万人の約37万世帯で構成され、面積約220km2は東京都 の八王子市と同じ大きさであり、市街中心部を運河が網の目のように張り巡らされている 事で知られている。産業としては欧州有数の金融都市である。スマートシティ・プロジェ クトは 2006 年にアムステルダム市とユーティリティー企業(電力や水道会社)が検討を 開始し、その後多くの企業の参加によって策定された。

低炭素社会実現に向けた町作りとして大きく4つのコンセプトが提唱されている。

コンセプト1:Sustainable Living(持続可能生活スタイル)ではスマートメーター設 置による電力の可視化に夜省エネ行動を促進し、既に第一段階として 1200 世帯へスマー トメーターを設置済みである。

コンセプト2:Sustainable Working(持続可能菜労働スタイル)では膨大なエネルギ ー消費量データをベースに、照明/冷暖房/セキュリティ機能を向上させる。

コンセプト3:Sustainable Mobility(持続可能な輸送)では港湾に再生可能エネルギ ー宮殿設備を設置し、電池を搭載した船に電力を充電/逆給電する。

これまでは、停泊中の船がディーゼルエンジンによって電気を起こしていたが、駐車場 の給電機から電力を送った結果、CO2の削減が大幅に図れることが判っている。

コンセプト4:Sustainable Public Space(持続可能な公共スペース)では、大規模な 公共スペースに始まり、街レベルでの省エネ化、ゴミ収集電気所同社(EV)を導入する。

(3) マスダールシティ

アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国マスダール市にグリーンフィールドで新規に 開発されているスマートコミュニティである。事業主体としてAbu Dは日Future Energy Company(ADFEC)が最先端のエネルギー技術の研究開発を生かした未来都市作りを目指 して、2006年から2015年の計画で実施されている。

予算規模は約220億米ドルで、6.5km2に人口約5万人の都市を造る。

中心企業は米国GE社、ドイツSiemens社、英BP社、米Shell社、三菱商事、三井物 産などである。

このスマートシティ開発の目的は、再生可能エネルギー、省エネなどの最先端エネルギ ー技術や海水淡水化などの環境技術を研究開発しそれを導入して CO2 排出量ゼロ、廃棄 物ゼロの環境未来都市を実現する。

手段としては、ムハンマド皇太子が統括する政府系戦略投資ファンドの「ムバダラ開発」

が提供する豊富な資金を元に、世界各国の先進環境技術に投資して、マスダール・シティ を実験場として実用化検討を行う。

さらに環境技術関連の研究機関を設立して世界の研究者を呼び集め、環境関連の情報も 取得してゆく。こうして人、物、金、情報と全ての面で環境技術が集積する世界拠点とす る(図表 3-7、図表 3-8参照)。

アブダビ政府は2006年、ムハンマド皇太子の指揮の下「マスダール・イニシアティブ」

と呼ばれる構想を発表した。この構想を実現する社会として、ムバダラ開発を母体として

ADFECが設立され、その事業の柱の一つがマスダール・シティ建設計画である。

マスダール・シティー内で使うほぼ全てのエネルギーを再生可能エネルギーでまかない、

CO2 の排出量をゼロにする構想を持っている。このために、全ての建物の屋根に太陽電 池を載せ、太陽熱発電、太陽熱温水器、地熱利用施設を建設し、太陽エネルギーを最大限 に利用する計画である。

世界中から再生可能エネルギー技術を持つ企業や研究機関に声をかけている。太陽光発 電では、米Fiest Solar社と中国Suntech Power社が先行している。日本からはコスモ石 油らが「ビームダウン式」の太陽熱発電システムの試験を行うことが決まっている。

ガソリン車は市内から締め出し、CO2などの排ガスを出さない電動の交通手段を整備 する。「LRT(Light Rail Transit)」と呼ばれる次世代路面電車システムとPRT(Personal Rapid Transit)と呼ばれるコンパクトカーが用意される。

廃棄物をゼロにする目標も掲げているため、廃棄物の分別を徹底的に行い、一部は再処 理して有機肥料とし、一部は焼却によってエネルギーとしても再利用する計画。

再生可能エネルギーをエネルギー源とする海水淡水化プラントによって、造水して市内 に水を供給する。さらに廃水を再処理して、緑化や農作物の栽培に使う。

環境技術に強い企業や人材を集めるため、無税・無関税の経済特区で世界の環境関連企 業を 1500 社程度集め、「マスダール科学研究所」を設立し、技術者や研究者を世界中か ら募集する。

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