第 6 章 金融・財政政策の国際的波及 効果効果
6.2 各国の金融・財政政策変数の推移
本節では、この期間の日米英の
3
カ国の経済成長と財政政策、貨幣政 策、金利政策に関連する政策変数の推移を見てみよう。サブプライム危機 前後の期間を比較するために、2000
年第1
四半期以降のマクロ経済変数 の推移を図に示す。図6.1
は、日米英の3
カ国についての実質GDP
の推 移である。日本の実質GDP
成長率は、2000
年から2008
年第1
四半期ま での期間、年率約1.7%
程度で上昇していたが、2008
年第2
四半期以降マ イナス成長に転じ、特に2008
年第3
四半期以降のGDP
の低下は急激な ものであった。2008
年第3
四半期から2009
年第1
四半期の成長率は、年 率約-9%
である。アメリカとイギリスについても、2008
年第1
四半期ま ではそれぞれ年率約2.3%
、約2.6%
程度で成長していたが、2008
年第2
四半期から2009
年第1
四半期には大きく低下し、年率約-3.4%
、約-5.5%
となっており、その後
2009
年に入って回復に向かっている。このような急激な
GDP
の低下に対して、各国はどのような経済政策を 行ってきたのであろうか。図6.2
は、3
カ国の財政支出(実質)の推移を 示している。日本の財政支出はほぼ横ばいか、非常に緩やかに減少する傾 向があった。小泉政権下にあったこの時期、政府は財政健全化を目指し、歳出抑制路線をとっていた。しかし景気後退の深刻化を受けて、
2008
年 第3
、第4
四半期には路線を大きく転換させ、打ち出された財政支出は経 済対策としては過去最大規模の12
兆円に達した。一転して、急激に増加 し続け、2004
〜05
年の水準まで戻っている。それに対して、アメリカ及 びイギリスでは長期的に上昇しており、2007
年第2
四半期以降、アメリ カでは、年率約2.5%
程度、イギリスについては年率約3.9%
程度で増加 している。サブプライム問題の震源地であるアメリカはもちろん、イギリ スも金融機関のサブプライム関連商品の保有度合いが大きく、日本よりも 早い段階から大手金融機関への資本注入や大規模な経済対策が実施されて図
6.1:
日米英の実質GDP
の推移2000 2004 2008 2012 2016
2020 Japan
1620 1625 1630 1635
1640 U.S.
1250 1255 1260 1265 1270
00:Q1 01:Q1 02:Q1 03:Q1 04:Q1 05:Q1 06:Q1 07:Q1 08:Q1 09:Q1
U.K.
自然対数をとった実質
GDP
に100
をかけたもの。上段は日本、中段はアメリカ、下 段はイギリスである。きた4。
2005
年第2
四半期にジャンプが見られるが、これは後の分析には 影響はない。図
6.3
は、各国のマネー・ストックの推移を表している。長期的には3
カ国ともマネー・ストックが増加しているが、2008
年、2009
年では、い ずれの国もその伸びに変化が見られる。2008
年に日本は第4
四半期に減 少が見られるものの年率約1.4%
となっており、2009
年に入ってからは急 激な伸び(年率約6.1%
)があった。一方で、アメリカ、イギリスについ ては、マネーの伸びが高まった時期が日本とは異なっており、両国は2008
年に高い伸び(米7.4%
、英11.2%
)を示している。2009
年に入ると、そ の変化が緩やかな伸び(米2.9%
、英3.8%
)となっている。このように、4例えば、
2008
年10
月、米国政府が大手銀行9
行に最大2500
億ドルの公的資本注入 を発表、英政府が主要3
行に370
億ポンドの資本注入を発表した。同年11
月には、米国 政府がシティ・グループに対する3260
億ドルの支援策発表、英政府が200
億ポンドの経 済対策を発表した。さらに、2009
年2
月、米国で7870
億ドル規模の経済対策が成立し た。図
6.2:
日米英の財政支出(実質)の推移1850 1855 1860 1865
1870 Japan
765 770 775 780
785 U.S.
1090 1100 1110 1120 1130
00:Q1 01:Q1 02:Q1 03:Q1 04:Q1 05:Q1 06:Q1 07:Q1 08:Q1 09:Q1
U.K
自然対数をとった財政支出に
100
をかけたもの。上段は日本、中段はアメリカ、下段 はイギリスである。マネー・ストックについては各国とも変化のタイミングや上昇率に違いが 見られる。
図
6.4
は、中央銀行の政策金利となる短期金利である。2000
年以降、レ ベルの違いはあるが、3
カ国とも金融緩和の方向で短期金利は推移してい たが、2003
〜2004
年にかけてアメリカとイギリスでは引き締めの局面に 入った。遅れて日本でも2006
年にゼロ金利政策が解除され、徐々に金利 が引き上げられた。しかし、2007
年後半にアメリカで金利が引き下げら れたのに合わせるようにイギリスでも緩和政策が採られ、2008
年第3
四 半期には3
カ国が一気に政策金利を引き下げることとなった。ここまでの概観から推測すると、
3
つの経済政策はタイミングから見て どれもGDP
成長率に寄与していたように思われる。特に、2009
年以降各 国のGDP
が揃って回復していることから、2008
年10
月以降の政策協調 が功を奏したものと見られている。しかし、これらの政策手段のどれが効 率的で、どの程度景気回復に寄与したのかは定かではない。次の節で提案図
6.3:
日米英のマネー・ストックの推移170 180 190 200
210 Japan
400 410 420 430
440 U.S.
220 240 260 280 300
00:Q1 01:Q1 02:Q1 03:Q1 04:Q1 05:Q1 06:Q1 07:Q1 08:Q1 09:Q1
U.K.
自然対数をとったマネー・ストックに
100
をかけたもの。上段は日本、中段はアメリ カ、下段はイギリスである。する手法によって統計的により厳密な議論を可能にしたい。
ドキュメント内
発行年 2015‑03‑24
(ページ 107-110)