• 検索結果がありません。

データと推定方法

ドキュメント内 発行年 2015‑03‑24 (ページ 97-101)

第 5 章 地域金融市場の競争度の決定 要因要因

5.2 データと推定方法

地方銀行、信用金庫、信用組合は、地域を限定した営業活動をおこなっ ていることから地域別に

PE

を推定し、各地域の経済状態や特性を表す変 数に回帰する。地域を、各金融機関の本店所在地を基準として北海道地 域、東北地域、関東地域、甲信越地域、北陸地域、東海地域、近畿地域、

中国地域、四国地域、九州地域の

10

に区分する1。以下のモデルを推定 する。

P E

it

= α + θF

it

+ γZ

it

+ ε

it

(5.1)

ここで、

t

は年度、

i

は地域を示している。

P E

itは式

(4.11)

を推定するこ とで得られる二段階最小二乗

(2SLS)

推定量の競争度である。

1998

から

2008

年度の期間の

10

地域について

P E

を推定した結果を銀 行数とともに表

5.1

に示している。

F

itは、地域の特性を表す変数のベクト ルである。

Z

itは、マクロ経済環境が金融機関に与える影響をコントロー ルする変数ベクトルである。上記の期間の

10

地域のデータを用いて、固 定効果モデルによる分析をおこなう。

説明変数

F

itは、銀行システムの構造、異業種の競争圧力、政府・商道 徳・法、金融市場へのアクセスの

4

つに分類することが可能である。

銀行システムの構造に関する推定では、銀行業の集中度を表す指標とし て

HHI

と、金融機関の密度を表す変数として人口当たり地銀・信金・信組 数

(

自然対数

)

を用いる。市場構造・行動・成果

(SCP)

仮説は、市場集中 度が高いほどより競争的になると予想している。一方で、

Demsetz (1973)

が提唱する効率性仮説はその逆の関係を予想する。

HHI

は、貸出、預金、

支店数の

3

つを準備している。また、金融機関の営業ネットワークの規模

1北海道地域は北海道、東北地域は、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島 県、関東地域は、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、甲信越 地域は、新潟県、山梨県、長野県、北陸地域は、富山県、石川県、福井県、東海地域は、

岐阜県、静岡県、愛知県、近畿地域は、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良 県、和歌山県、中国地域は、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県、四国地域は、徳 島県、香川県、愛媛県、高知県、九州地域は、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、

宮崎県、鹿児島県、沖縄県に分けられる。

5.1:

地域別の競争度

北海道 東北 関東 甲信越 北陸

1996 2.4017 1.3653 5.0397 3.7483 1.9282

1997 3.2010 1.5930 4.7591 3.2734 4.8723

1998 5.7362 1.9848 5.5674 2.8375 3.5271

1999 3.2387 3.2469 4.9735 2.8175 5.4166

2000 5.7699 2.7890 3.4222 2.9054 4.9640

2001 5.3413 5.1528 5.0371 4.1848 5.9875

2002 3.9162 3.8955 3.0092 4.8559 3.6831

2003 5.4874 2.1264 1.9145 1.7308 6.9921

2004 1.4670 2.9658 2.1785 3.6273 4.0235

2005 5.8926 2.6791 2.6800 4.2279 4.8873

2006 5.0683 3.0252 2.7276 6.7393 5.5900

2007 6.3355 2.8227 3.3423 9.4564 9.8093

2008 8.1808 1.3925 4.3009 11.7128 11.8269

2009 5.6995 2.2576 2.1711 6.2466 6.7653

平均値

4.6970 2.6477 3.8903 4.6979 5.3093

東海 近畿 中国 四国 九州

1996 3.3951 2.9717 -0.1133 0.0029 0.0981

1997 2.7991 2.4282 0.3945 0.5052 0.3452

1998 3.1546 1.4256 1.7490 2.7564 0.6668

1999 2.7330 2.6958 2.0143 1.5078 0.9637

2000 2.5791 4.4706 3.5592 6.5022 3.2378

2001 1.8113 2.3105 5.3316 5.6799 2.1503

2002 2.1475 2.4821 3.3481 5.0545 3.0398

2003 2.1605 0.9847 4.1547 5.2737 3.6335

2004 2.1701 0.9224 4.0318 5.5754 3.6677

2005 2.2108 0.6330 3.9983 4.8976 4.2095

2006 2.3624 2.2421 2.7251 5.9180 3.6785

2007 2.6749 1.1006 5.1601 7.9393 5.8263

2008 3.6649 1.7110 5.2383 7.2241 4.9351

2009 2.9450 2.0277 3.5155 5.2896 2.7293

平均値

2.6431 2.1131 3.0010 4.2185 2.5548

を代理する変数として、対数をとった金融機関当たりの支店数を用いる。

これらの変数は、銀行のパフォーマンスや安定性、効率性が銀行システム の構造に与える影響について分析している先行研究で用いられているもの である。

次に、異業種の競争圧力が競争度に与える影響について検証する。金融 市場の発展の程度が競争度に与える影響を調べるために、

GDP

に対する 国内銀行貸出残高(自然対数)を採用する。金融部門の活動が活発である 地域ほど、金融機関間の競争は高まっていると考えられる。金融深化の指 標である。また、本章の分析対象とする地銀、信金、信組以外の金融業か らの競争圧力の影響も調べる。人口当たり都市銀行の支店数数(自然対 数)と、人口当たり漁業協同組合と農業協同組合の合計支店数(自然対 数)のデータを用いる。都市銀行が全国的に支店を展開していることや漁 業協同組合、農業協同組合が地域の産業と密接にかかわる貸出をおこなっ ていることから、それら金融機関が多いほどに、地銀、信金、信組へ競争 圧力が存在することが予想される。同様に、ノンバンクからの競争圧力の 代理変数として、

GDP

に対する生命保険契約高(自然対数)を利用する。

金融部門が発展したものであり、企業や家計にとって借入先の選択肢が多 様であれば、銀行業への競争圧力が存在するはずであり、いずれの指標の 係数も正となると考えられる。

地域の政府・商道徳・法などの制度的要因が地域金融市場の競争度に与 える影響を考察するために、次の

3

つの代理変数を採用する。まず、政府 が地域経済の民間部門の自由な経済活動に介入することによる競争度へ の影響について考察する。日本の地域経済では、社会資本整備や産業基盤 のインフラの構築を目的にして、大規模な公共投資がおこなわれてきた。

公共投資がおこなわれた結果、政府や地方政府の資金需要の高まりととも に地域の民間部門の経済活動を刺激し、金融機関への資金需要が増加する ならば、金融機関間の競争は緩慢なものになることが予想される。一方で 公共投資によって、政府や地方政府の資金需要の高まりが、地域の民間部 門の投資行動や資金需要を抑制するほどに金利を上昇させてしまうことも 考えられる。つまり、企業や家計の借入を減少させることから、金融機関 間の融資競争は激しくなり競争度に正の効果をもつことが予想される。政 府が地域経済に介入する程度を表す代理変数として、公的投資依存度

(%)

を用いる。

次に、地域経済の商道徳の質を表す代理変数として、振出された手形や 小切手の交換数に対する取引停止処分数(自然対数)を用いる2。本章で は、

1

回目の不渡りに続いて短期間のうちに

2

回目の不渡りとなった手形 の枚数、つまり銀行取引停止処分となった手形の枚数に注目している。手 形交換枚数は、企業間の信頼やコミットメントの程度を表す指標として考 えることができ、枚数や交換金額が高いほど、企業間の供給連鎖があると 解釈できる。一方で、手形交換枚数に対する

2

回目の不渡りを出した手形 枚数は、商道徳や企業間の相互不信の程度を表す指標として考えることが できる。この指標の値が高い市場ほど、企業間の不信が高まり、手形の発 行ができず、銀行からの借入をおこなわなければならなくなるため、競争 度が高まることが予想される。

地域の法の実効性についても検証する。日本国内では金融規制や商法が 統一的に定められているが、その実効性には差異が存在する可能性があ る。そうであるならば、地域間の市場の質に多様性をもたらしていること が予想される。そこで、法の実効性の代理変数として、人口一人当たり指 定暴力団構成員数

(%)

を用いる。この変数の値が低いほど法の実効性が 高いと考えられ、企業の活動はルールによって守られ、また規律づけられ ることになるので、市場では公正な競争が促進されるであろう。予想され る係数の符号は正となる。

金融市場へのアクセスに関係する変数として、地域の経済主体の金融市 場への参加機会や金融リテラシーの水準といった市場へのアクセス手段や 能力が与える影響についても検証する。金融市場への参加機会の代理変数 として、地域のインターネット普及率

(%)

を用いる。インターネット普 及率が高いならば、各金融機関の

HP

上から借入条件に関する情報を得た りオンラインでの融資審査を受けたりすることができるため、借り手の金 融市場への参加を容易にする。金融機関にとっては互いの貸出条件の一部 が公開されることになり、競争が促進されることが予想される。また、金 融や金融商品に対する理解度や活用能力も金融市場へのアクセスを高める 要因となる。金融リテラシーの代理変数として、高等教育機関の卒業者割

2約束手形や為替手形の振出人(発行者)が、満期(支払期日)に手形金を支払えない 場合に、手形交換所から「不渡り処分」を受け全金融機関に通知される。さらに、

6

か月 以内に

2

回手形が不渡りになった場合には、以後

2

年間、銀行取引停止処分となる。

(%)

を用いる。金融リテラシーが高いほどに、借り手と金融機関の間 の情報の非対称性が緩和されることから、金融機関間の競争が促進される ことが予想される。

Z

itには、マクロ経済環境が金融機関のパフォーマンスに与える影響を コントロールするために、地域経済の発展水準の代理変数として一人当た り

GDP

、地域経済の状態の代理変数として

GDP

成長率、金利の安定性 の代理変数としてインフレ率を採用する。

ドキュメント内 発行年 2015‑03‑24 (ページ 97-101)