第 6 章 金融・財政政策の国際的波及 効果効果
6.3 モデル
図
6.3:
日米英のマネー・ストックの推移170 180 190 200
210 Japan
400 410 420 430
440 U.S.
220 240 260 280 300
00:Q1 01:Q1 02:Q1 03:Q1 04:Q1 05:Q1 06:Q1 07:Q1 08:Q1 09:Q1
U.K.
自然対数をとったマネー・ストックに
100
をかけたもの。上段は日本、中段はアメリ カ、下段はイギリスである。する手法によって統計的により厳密な議論を可能にしたい。
図
6.4:
日米英の短期金利の推移0 .2 .4 .6
.8 Japan
0 1 2 3 4 5
6 U.S.
0 1 2 3 4 5 6
00:Q1 01:Q1 02:Q1 03:Q1 04:Q1 05:Q1 06:Q1 07:Q1 08:Q1 09:Q1
U.K.
短期金利の単位は
%
である。上段は日本、中段はアメリカ、下段はイギリスである。数
x
(k)it(k = 1, . . . , K )
からなるベクトルy
itM
|{z}
×1= h
y
(1)it, . . . , y
(Mit )i
′x
it|{z}
K×1= h
x
(1)it, . . . , x
(K)iti
′を考える
(i = 1, . . . , N
、t = 1, . . . , T )
。さらに、すべての国についてこ れらを縦に並べたベクトル、Y
t NM×1|{z}
= vec(y
1t, . . . , y
Nt) |{z} X
t NK×1= vec(x
1t, . . . , x
Nt)
を考える。このベクトル
Y
tは以下の構造VAR
に従うと仮定する。A
0Y
t= c
0+
p
X
maxp=1
A
pY
t−p+
p
X
maxp=1
B
pX
t−p+ u
t(6.1)
ただし、
u
tはNM × 1
の誤差ベクトル、c
0はNM × 1
の定数項ベクトル、
A
0、A
pはNM × NM
、B
pはNM × NK
の係数行列である。X
tに ついて外生性の仮定がなくても推定の段階では結果は同じであるが、後の 動学予測の際にこの仮定が必要となる。A
0が反転可能であると仮定し、(6.1)
の両辺に左からA
−10 を掛けると、Y
t= δ +
p
X
maxp=1
ΠY
t−p+
p
X
maxp=1
ΨX
t−p+ ε
t(6.2)
という誘導型
VAR
が得られる。ただし、δ = A
−10c
0, Π
p= A
−10A
p, Ψ
p= A
−10B
p, ε
t= A
−10u
tである。
(6.2)
は誘導型であるため、それぞれの式を推定期間1 ≤ t ≤ T
において最小二乗推定することによってパラメータの推定値δ ˆ
、ˆΠ
、Ψ b
pが 得られる。ここで、予測期間
t ≥ T + 1
においてもこのモデルが正しくY
tを描写 すると仮定すると、s ≥ 1
について予測誤差、ˆ
ε
T+s|T= Y
T+s− δ ˆ −
p
X
maxp=1
ˆΠY
T−p+s−
p
X
maxp=1
ˆΨX
T−p+s(6.3)
が得られる。この予測誤差を用いると、予測期間
t = T + 1, . . .
のY
tの予 測値Y ˆ
T+s|T= ˆ δ +
p
X
maxp=1
ˆΠˆ Y
T−p+s|T+
p
X
maxp=1
ˆΨX
T−p+s+ ˆ ε
T+s|T(6.4)
は現実の値と同じになる
(s ≥ 1)
。ただし、s ≤ p
のときY ˆ
T−p+s|T= Y
T−p+sである。X
tについては外生であるため、データの値がそのまま使 われる。次に、予測期間において
i
国の経済政策が行われなかった場合の、現実 とは異なる動学予測を推定する。i
国のk
番目の政策が行われないという ことを、本章は外生変数がゼロ(x
(k)it= 0)
であることと定義する。予測期間
t > T
においてx
itの第k
要素がx
(k)it= 0
となるベクトル、x
∗it=
x
itif t ≤ T
(x
(1)it, . . . , x
(k−1)it, 0, x
(k+1)it, . . . , x
(K)it)
′it t > T
を定義する。このx
∗itを含む外生変数ベクトルをX
t∗= vec(x
1t, . . . , x
i−1,t, x
∗it, x
i+1,t, . . . , x
Nt)
として、
s ≥ 1
について、Y ˆ
T+s|T= ˆ δ +
p
X
maxp=1
ˆΠˆ Y
T−p+s|T+
p
X
maxp=t−T
ˆΨX
T∗−p+s+ ˆ ε
T+s|T(6.5)
を推定することで、
i
国が政策を行わなかった場合のY
tの動学予測Y ˆ
T+s|T が得られる。このY ˆ
T+s|T と実際の系列Y
tとを比較することで、政策の効 果を確認することができる。この手法には、いくつかの優れた点がある。第
1
に、ある国の経済政策 が国際的に波及したかどうかを分析することができる。(6.5)
のようにあ る国の経済政策を現実とは異なる値にすることでその国自身に影響が及ぶ が、VAR
の性質から同時に他国の変数にも政策を行わない影響が及ぶこ ととなる。これはHamilton (2009)
や郡司・三浦(2010)
では想定されて いない状況である。第
2
に、政策の効果のみに焦点を当てることができる。通常の動学予 測では、現実の系列の予測そのものが目的となる。Hamilton (2009)
や郡司・三浦
(2010)
では現実の系列との比較において外生変数の効果を検証しているが、この場合、モデル外のショックの存在については無視されて いる。しかし、本章のモデルでは内生・外生変数以外のショックは予測誤 差に集約されるため、予測期間内ではモデルが正確に現実の値と同じにな る。この性質があるために、政策変数の値を変化させることが引き起こす 現実の系列との乖離をシミュレーションすることが可能となる。
第
3
に、現実とは異なる動学予測を柔軟に検証できる。本章では政策変 数の変化率がゼロとなると仮定したが、これを任意の値に置き換えるこ ともできる。例えば、実質GDP
成長率を3%
にするためにはどれだけの財政政策が必要だったか、という議論も本章の手法であれば可能である。
ただし、本章ではサブプライム危機以降の国際的な景気循環において経済 政策が果たした役割を見ることが目的であるため、このようなシミュレー ションは行わない。
第
4
に、(6.1)
の構造がどのようなものであっても、動学予測の推定には影響がない。通常、
VAR
を用いた分析ではイノベーション会計(イン パルス応答関数や予測誤差分散分解)によってショックの効果を検証する。このとき問題となるのは、モデルの構造をどのようにおくかである。例え ば、最も良く用いられる再帰的