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利用上の問題点(アンケートから)

ドキュメント内 平成29年度植物防疫研究課題の概要 (ページ 80-84)

連載

2 利用上の問題点(アンケートから)

化学防除実践上の問題点について,2012年に実施し た第III期(2011年)アンケートに寄せられた都道府県 の意見を集約して紹介する。第I期アンケートの利用上 の問題は田中・古賀(1989)が,①効果不足(土質など 表−11 平成23(2011)農薬年度殺線虫剤品目別出荷金額・数量(調査第III期ころ)

薬剤名 金額(千円) 構成率(%) 数量(t・kl)

〈くん蒸剤〉

クロルピクリンくん蒸剤:フロー・テープ D―D

クロルピクリン・DDくん蒸剤 メチルイソチオシアネート・D―D油剤 臭化メチルくん蒸剤

カーバムナトリウム塩液剤 カーバム剤

DCIP粒剤

メチルイソチオシアネート油剤

DCIP・D―Dくん蒸剤

DCIP乳剤

7,695,414 4,562,341 538,702 537,822 444,680 169,860 163,859 80,417 30,690 3,884 2,798

39.7 23.5 2.8 2.8 2.2 0.9 0.8 0.4 0.2 0.0 0.0

7,832.5 8,703.3 425.3 471.4 227.6 400.3 99.1 185.7 30.0 7.1 3.1 くん蒸剤 小計 14,230,467 71.7 18,385.4

〈非くん蒸剤〉

ホスチアゼート粒剤:1%,1.5%

オキサミル粒剤 イミシアホス粒剤

カズサホスマイクロカプセル剤 ホスチアゼート液剤

パスツーリア ペネトランス水和剤 モナクロスポリウム・フィマトパガム剤 ピラクロホス粒剤

3,675,541

689,552 655,174 463,016 111,748 15,909 72

18.9

3.6 3.4 2.4 0.6 0.1 0.0

6,563.5 1,879.6 1,075.8 756.4 8.3 0.2 0.1

非くん蒸剤 小計 5,611,012 28.3 10,283.9

合  計 19,841,479 100.0

全殺虫剤(%:線虫剤/全殺虫剤)

全 農 薬(%:線虫剤/全農薬)

116,574,246 355,525,965

(17.0)

5.6

〈参考〉:線虫にも登録がある非殺虫剤と主対象が線虫でない殺虫剤 石灰窒素

ダゾメット粉粒剤 メソミル水和剤 カルタップ水溶剤 カルボスルファン粒剤 メソミル粉粒剤

5,259,281 3,901,756 1,231,938 481,984 292,482 27,552

49,945.6 3,284.5 207.9 93.4 376.5 55.4

2012年版農薬要覧〈日本植物防疫協会〉より作表.

線虫研究の過去・現在・未来 その3 線虫害防除技術の変遷(後編) 365

表−12 平成27(2015)農薬年度殺線虫剤品目別出荷金額・数量(現在)

薬剤名 金額(千円) 構成率(%) 数量(t・kl)

〈くん蒸剤〉

クロルピクリンくん蒸剤:フロー・テープ D―D

メチルイソチオシアネート・DD油剤 クロルピクリン・D―Dくん蒸剤 カーバムナトリウム塩液剤 カーバム剤

DCIP粒剤

メチルイソチオシアネート油剤 DCIP乳剤

6,989,178 4,295,418 674,582 668,516 264,548 247,955 74,747 13,626 2,530

38.1 23.4 3.7 3.6 1.4 1.4 0.4 0.1 0.0

6,953.3 8,140.7 591.2 526.2 638.6 140.5 172.6 13.3 2.8 くん蒸剤 小計 13,231,100 72.2 17,179.2

〈非くん蒸剤〉

ホスチアゼート粒剤 イミシアホス粒剤 オキサミル粒剤

カズサホスマイクロカプセル剤 ホスチアゼート液剤

イミシアホス液剤

パスツーリア ペネトランス水和剤

2,899,809 1,019,728 631,351 437,764 103,024 3,840 550

15.8 5.6 3.4 2.4 0.6 0.0 0.0

5,069.6 1,674.4 1,702.7 706.8 7.8 0.3 0.0 非くん蒸剤 小計 5,096,066 27.8 9,161.6

合  計 18,327,166

全殺虫剤(%:線虫剤/全殺虫剤)

全 農 薬(%:線虫剤/全農薬)

114,020,860 370,423,422

(16.1)

(4.9)

〈参考〉:線虫にも登録がある非殺虫剤と主対象が線虫でない殺虫剤 石灰窒素

ダゾメット粉粒剤 メソミル水和剤 カルタップ水溶剤 カルボスルファン粒剤 メソミル粉粒剤

4,422,855 3,551,574 890,870 423,012 194,841 15,092

39,435.4 2,901.9 140.2 79.1 243.5 29.5

2016年版農薬要覧〈日本植物防疫協会〉より作表.

D―D

臭化メチルくん蒸剤

クロルピクリンくん蒸剤

メチルイソチオシアネート・D―D油剤 DCIP粒剤

クロルピクリン・D―Dくん蒸剤 カーバム剤

カーバムナトリウム塩液剤 オキサミル粒剤

ホスチアゼート粒剤 イミシアホス粒剤

カズサホスマイクロカプセル剤 その他

100%

90%

80%

70%

60%

50%

40%

30%

20%

10%

0%1987 1997 2011 2015

D―D

臭化メチル くん蒸剤

クロルピクリンくん蒸剤

ホスチアゼート粒剤

図−6 調査の第IIIIII期における線虫剤の出荷金額の構成率(%)

に起因にする薬剤の土壌中での拡散不足,高温時処理,

ネグサレセンチュウの薬剤耐性)②有効薬剤の開発(生 育期間中処理剤,種苗伝搬線虫の防除剤,安全性の高い 剤の待望),③作業性能の問題(くん蒸期間がとれない,

処理量,回数の増加,被覆等労力,資材費負担増),④ 環境問題(地域住民・生態系への危害)のカテゴリーで 整理した。1999年の第II期アンケートに寄せられた問 題点は筆者が,①使用規制,②安全性,③コスト,④効 果,⑤作業性に分けて整理した(水久保,1999)。しかし,

2012年の第III期の都道府県の声はその取りまとめ(水 久保,2015)で報告する紙面がなかった。そこで,本稿 で問題点を取りまとめておきたい。

防除効果の問題:くん蒸剤のD―D剤については効果 不十分(神奈川,大分,茨城)の指摘があったが,その 理由は処理条件(土壌状態:神奈川)や作業の不備(被 覆の省略:茨城)に帰されていた。粒剤タイプ(非くん 蒸剤)については効果の不安定さ(熊本県)が指摘され

たが,くん蒸剤・非くん蒸剤の別を問わず,効果の不安 定さ(石川,岡山),薬剤の効果の低下(抵抗性の発達)

の疑い(千葉)感受性低下(広島)効果の持続期間(残 効)が短い(宮崎,神奈川,三重,奈良)を回答する意 見が目立った。

作業性:土壌消毒の労力(特に高齢者にとって)を指 摘(神奈川,山口,佐賀)。深層部防除が困難(千葉) くん蒸剤処理後のポリ被覆が広い圃場では困難(群馬) 作型の制約でくん蒸剤処理前残根除去に時間が割けない

(千葉),作業体系を見直し,防除効果の上がる体系構築 を積極的に行う必要(千葉)の指摘があった。

経済問題:薬剤代が高く農家への負担が大きい(香川,

北海道,山形,佐賀,熊本),住民への配慮から厚めや 不透過の被覆フィルムの導入でコスト高(徳島)等コス トが問題であった。

開発と処理法改善:薬用人参のキタネグサレセンチュ ウの生育中処理剤がない(島根),必要な作目に対して

表−13 線虫剤の農薬名称と商品名対照表

農薬の名称 商品名(代表) 用途 くん蒸剤? 剤型名 登録日 備考

DCIP・D―Dくん蒸剤 プラズマ油剤 殺虫剤 くん蒸剤 油剤 2000.12.26 2012.12.26失効

DCIP乳剤 ネマモール乳剤 殺虫剤 くん蒸剤 乳剤 1965.06.07 DCIP粒剤 ネマモール粒剤30 殺虫剤 くん蒸剤 粒剤 1967.03.07 D―D DC油剤,テロン,D―D 殺虫剤 くん蒸剤 油剤 2007.10.17 イミシアホス液剤 ネマキック液剤 殺虫剤 非くん蒸剤 液剤 2013.06.12 イミシアホス粒剤 ネマキック粒剤 殺虫剤 非くん蒸剤 粒剤 2010.01.18

エトプロホス モーキャップ3 MC 殺虫剤 非くん蒸剤 粒剤 1993.12.27 2002.12.27失効 オキサミル粒剤 バイデートL粒剤 殺虫剤 非くん蒸剤 粒剤 1996.12.25

カーバムナトリウム塩液剤 キルパー  殺虫剤 くん蒸剤 液剤 1993.12.01 カーバム剤 NCS 殺虫剤 くん蒸剤 粒剤 1964.05.27 カズサホスマイクロカプセル剤 ラグビーMC粒剤 殺虫剤 非くん蒸剤 粒剤 2000.12.21

カルタップ水溶剤 パダン水溶剤 殺虫剤 非くん蒸剤 水溶剤 1967.05.18 さといものネグサレセンチュウ,

水稲のイネシンガレセンチュウ カルボスルファン粒剤 アドバンテージ粒剤  殺虫剤 非くん蒸剤 粒剤 1983.03.29 きくのネグサレセンチュウのみ クロルピクリン・D―Dくん蒸剤 ダブルストッパー,ソイリーン 殺虫剤 くん蒸剤 油剤 2002.01.22

クロルピクリンくん蒸剤

カヤクロルピクリン 殺虫剤 くん蒸剤 油剤 1948.10.30 クロルピクリン錠剤 殺虫剤 くん蒸剤 錠剤 1988.04.26 クロピクテープ 殺虫剤 くん蒸剤 粉剤 1999.07.23 クロピクフロー 殺虫剤 くん蒸剤 フロー剤 2004.01.28 ダゾメット粉粒剤 ガスタード微粒剤,バスアミド微粒剤 殺菌剤 くん蒸剤 粒剤 1980.12.06 パスツーリア ペネトランス水和剤 パストリア水和剤 殺虫剤 生物農薬 水和剤 1998.12.04

ピラクロホス粒剤 ボルテージ粒剤6 殺虫剤 非くん蒸剤 粒剤 2007.01.24 2010.01.24失効 ホスチアゼート液剤 ガードホープ液剤 殺虫剤 非くん蒸剤 液剤 2008.02.06

ホスチアゼート粒剤 石原ネマトリン粒剤 殺虫剤 非くん蒸剤 粒剤 1992.04.01 ホスチアゼート粒剤 石原ネマトリンエース粒剤 殺虫剤 非くん蒸剤 粒剤 1999.11.25

メソミル水和剤 ランネート45DF 殺虫剤 非くん蒸剤 水和剤 2002.07.30 いちごのネグサレセンチュウ限定 メソミル粉粒剤 ランネート微粒剤F 殺虫剤 非くん蒸剤 粒剤 2010.02.17 にんじんのキタネコブ北海道限定 メチルイソチオシアネート・D―D油剤 ディ・トラペックス油剤 殺虫剤 くん蒸剤 油剤 1976.01.13

メチルイソチオシアネート油剤 トラッペクサイド油剤 殺虫剤 くん蒸剤 油剤 1976.01.13 たばこのネコブセンチュウ限定 モナクロスポリウム・フィマトパガム剤 ネマヒトン 殺虫剤 生物農薬 その他 1990.07.24 2013.4.09失効

線虫研究の過去・現在・未来 その3 線虫害防除技術の変遷(後編) 367 必ずしも使用可能な農薬がない(石川)等。

環境への配慮:土壌くん蒸剤は住宅地(混住地)で使 用できない事例が増加している(長崎,山形,埼玉,千 葉,愛知,神奈川)。毒性の高さを懸念(神奈川),砂質 土での土壌処理剤の地下水流出事例(秋田)。

殺線虫剤の利用上の問題点は一見すると第I期から第 III期まで大きな変化がないように見える。だが,第III 期は農薬などの資材費の負担感が強まっている(農産物 の価格低迷が根本にあるようだ)。このように推量する 根拠は,第II期アンケート(水久保,1999)では,く ん蒸剤について低コストという意見が1県から,コスト 高という意見が2県から寄せられ,非くん蒸剤(粒剤)

についてはコストの不満がなかったのに対し,第III期 ではコストを問題にした意見が6県からでているからで ある。次に,線虫剤の感受性低下(あるいは抵抗性発達)

が第III期でクローズアップされてきた。この問題は第I 期 の こ ろ か ら 知 ら れ て い た(近 岡・竹 沢,1982)が,

D―D剤やEDB油剤に関する一部地域の問題で,広域化 していなかった。第III期に現れた感受性低下の疑念は,

各地のD―D剤使用地域や第II期から普及した有機リン 系殺線虫剤にも及んでいた。第II期アンケートでは,

効果の不足(残効の短さ)を指摘した意見は,くん蒸剤 に関して1県(土性の問題),非くん蒸剤については2 県だったが,第III期では12県にも上ったことから線虫 剤への感受性低下の広がりが推察できる。作業性につい ては,注入器具を要するD―D剤など油剤の処理に負担 感が強い。臭化メチルの缶を開封して密閉したハウスに 放置する簡便さと,注入処理の労力は比較にならない。

さらに第II期から畑に散布して撹拌混和する接触型殺 線虫剤の粒剤が普及したことも,くん蒸剤の負担感を高 めているものと思われる。だが,作業者の高齢化も負担

意識を強める大きな要因であろう。

お わ り に

アンケートでは耕種的防除技術,物理的防除技術につ いても調査し,それらの普及・利用上の問題点について も都道府県の意見をいただいた。それらについて紹介す るとさらに紙面を要するので,別の機会があればそれに 譲りたいと思う。ただ,指摘しておきたいことは,化学 的防除法と同様,意見の内容はどの調査期でもほとんど 同じであるにもかかわらず,回答頻度に変化が現われて いることである。農薬にも出たコスト問題は例えば,種 子代金の値上がりで対抗植物が導入できない(広島)な どに現われており,生産物の価格低迷で収益が薄ければ 手間やコストをかけれられない実態が見えそうだ。第 III期が低成長期(経済の混迷期)に当たったことが線 虫防除技術の選択にも強く影響していたと思われる。

引 用 文 献 1)近岡一郎ら(1969): 関東病虫研報 16 : 140.

2) ・竹沢秀夫(1982): 関東病虫研報 29 : 168.

3)水久保隆之(1999): 最近の線虫研究の動向と線虫問題,シン ポジウム「線虫防除の戦略と展望」講演要旨,日本植物防疫 協会 編,p.131.

4) (2000): 植物防疫 54(1): 1122.

5) (2015): 日本線虫学会誌 45 : 6376.

6)西澤 務(1989): 殺線虫剤の現状と今後の展望 平成元年度野 菜病害虫防除研究会シンポジウム講演要旨―土壌線虫を巡る 諸問題―,野菜・茶業試験場,日本植物防疫協会 共編,p.100

113.

7)田中福三郎・古賀成司(1989): 西南部地域の線虫問題と防除 対策,平成元年度野菜病害虫防除研究会シンポジウム講演要 旨―土壌線虫を巡る諸問題―,野菜・茶業試験場,日本植物 防疫協会 共編,p.6899.

8)山本敏夫(1989): 関東東海近畿地域における線虫被害の現況と 防除対策上の問題点,平成元年度野菜病害虫防除研究会シン ポジウム講演要旨―土壌線虫を巡る諸問題―,野菜・茶業試 験場,日本植物防疫協会 共編,p.5467.

ドキュメント内 平成29年度植物防疫研究課題の概要 (ページ 80-84)