5. 諸外国の住宅政策のレビュー
5.3 公共住宅供給機関の現在
5.3.1 公共セクターの住宅供給に関する現在の役割
住宅供給に関する公共セクターの現在の役割を表
5.22
に示す。表 5.22 各国における公共セクターの住宅供給に関する現在の役割
国 公共セクターの役割
日本 供給サイド 日本住宅公団(JHC)及び住宅都市整備公団(HUD)により公共住宅が供給されて いた。
1999 年に設立された都市基盤整備公団(UDC)は、住宅分譲事業から撤退する とともに、住宅・宅地の大量供給による住宅事情改善からもシフトした。
2004年に都市基盤整備公団に替り都市再生機構(UR)が発足した。URの主な 活動は、都市再生、住環境改善、災害復旧、及び、都市郊外部の環境改善であ る。
地方自治体や住宅供給公社は依然として公共住宅の供給を行っている。
需要サイド 住宅金融公庫(GHLC)を廃止し、独立行政法人住宅金融支援機構(JHF)を設立 JHF の役割は、従来の直接融資から民間金融機関による融資の支援・補完へ と移った。
アメリカ 中央政府及びそれに付属する機関による公共住宅の供給は行われていない。
地方政府に属する公共住宅庁が公共賃貸住宅の供給を行っている。
主たる住宅政策は、連邦住宅銀行による融資や連邦住宅庁による住宅ローン保証、住宅ロー ン金利控除等、需要サイドに対する介入である。
イギリス 公共セクターは公共住宅の供給をもはや行っていない。
主たる住宅政策は、買取り権や持家、住宅ローン金利控除等、需要サイドに対する介入であ る。
オランダ 中央政府及びそれに付属する機関による社会住宅の供給は行われていない。
住宅協会と地方政府に属する住宅会社が社会賃貸住宅の建設・供給を行っている。
カナダ 地方政府は社会住宅を供給している。
カナダ住宅金融公庫(CMHC)がデベロッパーに対して融資を行っている。
マレーシア 州政府に属している州経済開発公社が低価格住宅を供給している。
中央・地方政府は公務員用住宅を建設している。
シンガポール 中央政府に属する住宅開発庁が住宅を供給している。
出所: JICA 調査団
現在では、マレーシアとシンガポールだけで中央政府が直接住宅供給を行っており、日本をはじ めアメリカ、イギリス、オランダ、カナダでは、中央政府又は中央政府に属する機関による住宅 供給は行われていない。地方政府による住宅供給は、日本やアメリカ、オランダ、カナダ、マレ ーシアで行われている。日本、アメリカ、イギリス、オランダ、カナダでは、中央政府は、政府 による住宅供給ではなく、住宅需要喚起に政策の力点を置いている。
5.3.2 日本の場合
(1)
UDC から URへ (住宅供給サイド)2001
年12
月、特殊法人等の整理合理化に関する計画が閣議決定された。これにより、都市基盤 整備公団が廃止され、旧都市基盤整備公団と地域振興整備公団の地方都市開発部門が統合されて、都市再生機構が新たに発足した。都市再生活動に民間を誘導することが、都市再生機構設立の目 的である。
都市再生機構の役割には、「民間ができることは民間に委ねる」という方針だけでなく、都市再 生分野における民間の新たな事業機会を創出し、民間の潜在力を最大限引き出すための誘導業務、
条件の整備を行うことも含まれている。
善である。
表 5.23 都市再生機構の活動
活動 内容
都市再生 “都市再生のプロデューサー”として、民間事業者による都市再生の推進を図る。
構想企画、必要な条件の整備、コーディネート等の支援を行う。
パートナーとして事業に参加する。
以下の都市再生関連4分野を取り組む。
都市再生プロジェクト等の国家プロジェクト
社会経済状況の変化に対応した都市構造の創造(転換)
地方都市等の中心市街地の活性化等の地域活性化
防災性向上や環境改善による安全で安心なまちづくり 住環境改善 UR賃貸住宅ストック約763,500戸を適時・適切に管理する。
居住者の居住の安定を図りながら、バリアフリー化、間取りの改善、社会状況に応じた設備水準 の向上を目的としたリニューアル住宅の供給、屋外環境の整備、及び、建替え事業などの多様な 手法により、賃貸住宅ストックの再生・活用を行う。
災害復興 災害の復旧・復興のために行われた過去の活動を通して得た貴重な経験を、今後の災害復興事業 や都市の防災機能改善に適用する。
都市郊外部 環境改善
ニュータウン開発の経験に基づき地域の特性を生かした魅力ある郊外や地方居住の整備を行い、
事業の早期完了を目指す。
出所: Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
(2)
住宅金融公庫 から 住宅金融支援機構へ (住宅需要サイド)公共セクターによる住宅および住宅資金の直接供給を基本とする体系から、市場を通じて住宅の 質を改善する体系へと、住宅政策全体を転換する必要性が指摘されるようになった。住宅ローン 金利および商品性の自由化等金融市場の環境の変化が、民間金融機関の個人向け住宅ローンに対 するより積極的な取り組みを始めさせた。結果として、公庫の役割についても、従来の個人に対 する直接融資から民間金融機関への融資に対する支援・補完へと、転換する必要に迫られるよう になった。
財政投融資プログラムの改革が、住宅金融システム転換圧力の一つとなった。この圧力が、財政 投融資資金を前提とした従来の仕組みから、市場メカニズムを活用した新たな住宅金融システム への転換を余儀なくした。
2001
年12
月、政府は特殊法人等の整理合理化計画を承認した。これにより、住宅金融公庫は廃 止され、証券化支援業務を行う独立行政法人が設置されることとなった。2007
年4
月1
日に、住 宅金融支援機構が設立された。住宅金融支援機構は、以下の役割を含め、住宅金融公庫が従来行ってきた住宅の質の確保・向上 に関する役割を継続していく。
信頼性のある低金利・固定金利で長期の住宅ローンが、職業や性別、地域などで差別さ れることなく安定的に供給されるよう、証券化支援業務等を通じて民間金融機関による 資金融通を支援
災害復興住宅や密集市街地建替え等、民間金融機関からの融資が困難な政策的に重要な 分野に対する直接融資
消費者、住宅関連事業者等への住宅情報の提供
住宅金融支援機構の業務の柱は証券化支援であり、住宅債権の買取りと不動産担保証券の保証の
2
つがある。買取り型の場合、民間金融機関等が融資した住宅ローン債権を住宅金融支援機構が 買取る。これを担保として資産担保証券(RMBS)
を発行し、投資家に販売して資金を調達する。保 証型は、民間金融機関等が行う住宅ローンの証券化に際し、保証・保険を行う仕組みである。新旧の住宅金融市場の枠組みを下の図に示す。
出所: Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
図 5.3 新旧の住宅金融市場の枠組み
預貯金 財投
従来の枠組み 現行の枠組み
預貯金 MBS 市場 財投
公庫 銀行等
モーゲージ バンク
消費者 消費者
銀行等
住宅金融支援機構 調達・証券化
オリジネーショ ンサービシング
変動金利 長期固定金利
(良質ストックの誘導) 変動金利
証券化による長期固定 ローンの安定供給支援
(災害対応のみ)
長期固定金利
(良質ストックの誘導)
(的確なローン関連情報の提供)
融資保険による信用リスク負担
融資保険
民間金融機 関では供給 困難な資金 の供給