2. タイの住宅セクター
2.4 住宅セクターのステークホールダー
2.4.1 ステークホールダーの概要
住宅セクターに係わる公共及び民間のステークホールダーとして、住宅に直接関係する住宅の供 給サイドと需要サイドのステークホールダーがいる。また、住宅の構造やコミュニティ等住環境 に関係するステークホールダーがいる。タイにおける住宅セクターのステークホールダーを、公 共及び民間別に住宅供給、住宅需要、住環境、業務内容表及び対象の観点からみると、表
2.17
、 表2.18
に示す通りである。表 2.17 公共部門における住宅セクターのステークホールダー
分野 ステークホールダー 業務 対象
住宅供給 国家住宅公社 住宅建設 中~高低所得者層 コミュニティ開発協会 低低所得者層
地方政府 低所得者層
住宅需要 政府住宅銀行 金融(融資) 低~中所得者層
政府貯蓄銀行 低~高所得者層
国家住宅公社 中~高低所得者層
コミュニティ開発協会 低低所得者層
財務省 税優遇 低~中所得者層
投資委員会 投資優遇 低~中所得者層p 住環境改善 国家経済社会開発委員会 政策方針 国家開発計画
内務省 規制・誘導 都市計画、建築基準
地方政府 許認可 土地開発、建築・工作物の建築 国家住宅公社 コミュニテ
ィ開発
中~高低所得者層 コミュニティ開発協会 低低所得者層 出所:JICA調査団
表 2.18 民間部門における住宅セクターのステークホールダー
分野 ステークホールダー 業務 対象
住宅供給 商業銀行 金融(融資) 住宅デベロッパー デベロッパー 建設 低~高所得者層
住宅仲介業者 仲介 中古住宅
低~高所得者層 住宅需要 商業銀行 金融(融資) 低~高所得者層 住環境改善 不動産管理会社 不動産管理 低~高所得者層 出所:JICA調査団
また、公共、民間部門のステークホールダーの概略フレームを示すと、下図の通りである。
Source: JICA調査団
図 2.12 タイの公共部門における住宅セクターのステークホールダーの構造
対象世帯
高所得
中所得
低所得
住生活・都市環境改善 供給サイドによる介入 需要サイドによる介入
内務省 規制・誘導
•都市計画
•建築基準
国家住宅公社
地方政府 都市計画作成及 び以下の許認可
•土地開発
•建築・工作物 建設
コミュニティ 開発協会 国家経済
社会開発 委員会 国家開発計画作 成
投資委 員会
財務省
• コミュニティ開発
• 住宅建設
• 融資
• コミュニティ開発
• 住宅建設
• 融資
政府住宅 銀行 政府貯蓄
銀行
Source: JICA調査団
図 2.13 タイの民間部門における住宅セクターのステークホールダーの構造
2.4.2 住宅セクター関連公共部門
タイにおいて住宅セクターに関連する公共部門としては、国家経済社会開発委員会
(NESDB)
、内務省
(MOI)
、社会開発・人間安全保障省、財務省(MOF)
及び、地方政府がある。(1)
国家経済社会開発委員会(NESDB)国家経済社会開発委員会
(NESDB)
は、国家経済社会開発計画の起草を行う機関であり、タイにお ける住宅政策・戦略作成に係わる組織でもある。NESDB
は、当初、国家経済協議会(NEC)
として1950
年に設立された。NEC
の主目的は、国家の経済問題に関する政府の意見や提案を作成することであった。
1959
年に国家経済開発委員会(NEDB)
と名称を変更している。NSDB
は、タイの国家開発における主要なフレームワークとして、第一回経済開発計画を策定した。社会開発は、国家計画における根幹であると認められていた。
そのため、
1972
年にNESDB
と再度名称の変更が行われ、首相府の下におかれるようになった。今までに
10
の5
箇年国家開発計画が策定されている。第11
次5
箇年国家開発計画(2012
~2016)
が起草され、現在、その承認を待っているところである。1) NESDBの目的
NESDB
の目的は、バランスのとれた持続性のある開発、国民参加、および環境やタイ国民のニーズの変化に対応する柔軟性等を基にして開発戦略の計画・策定を行う主要機関となることである。
2) 主な機能
NESDB
対象世帯
高所得
中所得
低所得
住生活・都市環境改善 供給サイドによる介入 需要サイドによる介入
不動産管理会社
商業銀行
住宅仲 介業者
金融(融資)
• 住宅デベロッパー
• 住宅購入者 住宅デベ
ロッパー
5
箇年国家経済社会開発計画の策定 主な政府の政策及び開発プロジェクトの戦略策定
公営企業および関連機関から提案される予算の分析
経済情報データベース、特に
GDP
データに関するものの作成、および 開発指標の作成
3) NESDBと住宅政策
タイの住宅政策に関するヒアリングを
NESDB
に行った。その際の概要は以下の通りである。住宅政策
第
11
次5
箇年国家開発計画の6
つの戦略のうち、“住宅”は社会と環境戦略の中で扱われている。住宅政策は、都市計画と整合性を持つべきであり、また、環境や産業、交通等も考慮に入れる必 要がある。今後は、タイでも高齢化が進展する。現在、
60
歳以上人口は10%
であるが、10
年後に はこれが20%
になると予想されている。このことも住宅政策では考慮すべきである。NHA
NHA
は、必要な組織である。ただし、その役割は変える必要がある。民間企業は、補助金なしで 低所得者用住宅の建設・販売を、NHA
と同じような価格で行っている。今後は、民間と競合しな いような新たな役割・立場を模索する必要がある。(2)
内務省(MOI)MOI
内には、直接住宅政策に関連する部局はない。しかし、住宅地を含む土地利用計画や住宅を 含む建築物の基準を作成し、土地利用計画作成や建築基準審査等の業務の指導を行う部署がある。土地開発の審査を行い、開発した土地や建築物の登記を実施する部署も
MOI
内にある。その他、道路や上水道など住宅関連インフラ部署も
MOI
内にある。その為、住宅政策策定・実施において、緊密に連携する必要がある。
表 2.19 内務省内の住宅関連部局・機関
関連省 部局/傘下機関 主な関連事項
内務省 建設・都市計画局 都市計画方針・基準、建築基準 土地局 土地開発審査、土地登記 コミュニティ開発局 コミュニティ開発方針・基準 都市電力庁 電力計画・供給
地方電力庁 電力計画・供給 都市水道庁 上水道計画・供給 地方水道庁 上水道計画・供給 出所: Home Page of Thai Government
(3)
社会開発・人間安全保障省(MSDHS)MSDHS
は、NHA(
詳細は後述)
とCODI(
詳細は後述)
という低所得者用住宅供給を行っている組織 を2
つ、その傘下に収めている。しかし、MSDHS
は、NHA
とCODI
が作成する住宅整備計画に 対する予算措置は行っているが、住宅政策にはほとんど係わっていない。表 2.20 社会開発・人間安全保障省内の住宅関連部局・機関
関連省 部局/傘下機関 主な関連事項
社会開発・人間安全保障省 社会開発・福祉局 住宅開発予算
NHA 住宅開発実施
CODI スラム地域改善開発実施 出所: Home Page of Thai Government
(4)
財務省(MOF)財務省は、タイ国の財政政策、金融・税、国有財産、国有企業等を担当、管理している。また、
GHB
やGSB
等Special Financial Institute (SFI)8
社もMOF
傘下の国有企業として管理している。NHA
はMSDHS
傘下の企業なので、MOF
は直接には管理していない。MOFは、今までは住宅関連政策を行ってきたことはなかった。しかし、国民の持家取得促進のため、
MOF
として初めての住宅政策として持家購入奨励策(First-Home Policy)
を2011
年11
月から2012
年12
月末にかけて実施することにした。GHB
から延長の要請が出ているため、2013
年6
月末ま での半年間延長を行う。この制度は、税金を納めている低所得者を対象に、初めて自宅を購入する人に対する支援制度で ある。中・高所得者を対象とした政策は考えていない。
持家購入奨励策
(First-Home Policy)
の概要を下表に示す。表 2.21 持家購入奨励策(First-Home Policy)の概要
項目 内容
目的 タイ国民の生活水準向上を支援し、また、住居用宅地を所有していない人々のために土地を含め て住宅を供給する
資格 5百万バーツ以下の居住目的の住宅を初めて購入する納税者で2011年9月21日から2012年 12月31日の間に住宅の所有権登記を完了する者
恩恵 各税年度に収める所得税の免除、ただし、住宅購入金額の10%を超えないものとする。
融資 土地付き住宅又はコンドミニアムの購入、及び、建設又は住宅建設のための土地購入費用のため の融資
融資額 百万バーツ以下の土地及び住宅:それぞれに対し百万バーツ以下の融資
政府住宅銀行の通常の保証条項内において、土地及び住宅、又は、住宅、マンション一戸の推定 価格を超えない範囲で融資、及び、販売・購入価格、又は、建設費を超えない範囲で融資 返済期間 30年以下、及び、借り手の年齢が返済満期時に65歳を超えない期間。
金利 初めの3年間:0%
4年目から7年目:社会保障加入者-最優遇小口貸出金利から0.5%を引いた金利を適用 その他-最優遇小口貸出金利を適用
8年目以降:社会保障加入者-最優遇小口貸出金利から1.0%を引いた金利を適用 その他-最優遇小口貸出金利から0.5%を引いた金利を適用
出所: MOFへのヒアリング及びJICA調査団による収集情報