2.7 臨床概要
2.7.3 臨床的有効性の概要
2.7.3.2 個々の試験結果の要約
2.7.3.2.1 PPHN
患者を対象とした海外比較対照試験(試験番号:CINRGI、5.3.5.1-1、評価資料、第Ⅲ相臨床試験)
本試験は、正期産又は正期産に近い在胎期間
34
週以上のPPHN
新生児212
例(プラセボ吸入 群:104例、NO吸入群:108例)を対象に既存療法とNO
吸入との併用の有効性及び安全性を、プラセボ(N2)と比較検討した多施設共同プラセボ対照並行群間比較試験である。NO吸入は
20 ppm
から開始し、4〜24
時間後に吸入濃度を5 ppm
に減量し、終了基準に合致するまで最大96
時 間又は生後7
日まで吸入した。NO
吸入と既存療法の併用療法は既存療法単独と比べ、PPHN
患者(基礎疾患として肺低形成を 有する患者26
例を除く186
例、プラセボ吸入群:89例、NO吸入群:97例)においてECMO
の一酸化窒素
2.7
臨床概要- 30 -
適用率を有意に低下させるとともに(P=0.001、表
2.7.3.2-1)、動脈血の酸素化を早期に改善し(図 2.7.3.2-1〜2.7.3.2-4)、退院時の慢性肺疾患の発生率も有意に低下させた(プラセボ吸入群:11/82
例(13.4%)、NO吸入群:3/92例(3.3%)、P=0.023)。なお、28日までの死亡率に差は認められ なかった(P=0.481、表2.7.3.2-2)。
一方、基礎疾患として肺低形成を有する患者(あらかじめ主要評価では除外することとしてい た)では
ECMO
の適用率において既存療法単独と差が認められなかった(表2.7.3.2-3)。
表
2.7.3.2-1 ECMO
適用率(肺低形成患者を除く)-CINRGI試験-プラセボ吸入群 NO吸入群
P
値ECMO
を適用された患者数51/89
例(57.3%)
30/97
例(30.9%)
ECMO
を適用しなかった患者数38/89
例(42.7%)
67/97
例(69.1%)
0.001
(Cochran-Mantel-Haenszel
検定)図
2.7.3.2-1 a/A
の経時的変動(平均±SE
)(肺低形成患者を除く)-CINRGI
試験-
一酸化窒素
2.7
臨床概要- 31 -
0 2 4 6 8 10 12
Time in hours
14 16 18 20 22 24
350 400 450 500 550 600 650
a- A D O 2 G ra di en t
PlaceboInhaled NO
図
2.7.3.2-2 A-aDO
2の経時的変動(平均±SE)(肺低形成患者を除く)-CINRGI試験-Time
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24
40 60 80 100 120 140 160
P aO 2 in m m H g
Placebo Inhaled NO
図
2.7.3.2-3 PaO
2の経時的変動(平均±SE
)(肺低形成患者を除く)-CINRGI
試験-一酸化窒素
2.7
臨床概要- 32 -
0 2 4 6 8 10 12
Time in hours
14 16 18 20 22 24
0 10 20 30 40 50
O xy ge na ti on I nd ex in c m H 2O / m m H g
Placebo Inhaled NO
図
2.7.3.2-4 OI
の経時的変動(平均±SE)(肺低形成患者を除く)-CINRGI試験-表
2.7.3.2-2
死亡率(肺低形成患者を除く)-CINRGI試験-プラセボ吸入群a
NO
吸入群P
値(Fisher直接確率法)
28
日以内の死亡例 5/88例(5.7%) 3/97例(3.1%)0.481 6
ヵ月以内の死亡例 5/88例(5.7%) 4/97例(4.1%)0.738
a:プラセボ吸入群の1例は本集計から除外された。表
2.7.3.2-3 ECMO
適用率、死亡率及び入院期間(肺低形成患者)-CINRGI試験-プラセボ吸入群 NO吸入群 P値
ECMO適用率 13/15例
(86.7%)
9/11例
(81.8%)
1.00
(Fisher直接確率法)
死亡率(28日以内) 6/15例
(40.0%)
4/11例
(36.4%)
1.00
(χ2検定)
入院期間(日)
(平均±SD)
70.2±41.4 N=9
53.1±36.6 N=7
0.40
(t-検定)
2.7.3.2.2 PPHN
患者を対象とした海外用量反応試験(試験番号:INO-01/02、5.3.5.1-2、評価資料、第Ⅲ相臨床試験) 本試験は、
PPHN
と診断された在胎期間37
週以上の正期産新生児を対象としたNO
吸入の多施 設共同プラセボ対照並行群間用量反応比較試験(プラセボ、5、20及び80 ppm
の並行群間比較)である。本試験の主要目的は、NO吸入による効果を
PPHN
の死亡率及び重症度の軽減によりプ ラセボ(N2)と比較検討することであった。また、副次的目的は、本剤の有効性及び安全性にお ける吸入濃度との反応を検討することであった。一酸化窒素
2.7
臨床概要- 33 -
本試験における当初の目標症例数は
320
例であり、試験開始時にはHFV
又はサーファクタント の投与が未承認治療であったため、これらの療法を受けている患者を除外基準としていた。しか し、その後、これらの療法が標準的な治療法となり、多くの施設で実施されるようになったため、症例の収集が非常に困難になった。このため、検出力は低下するが、155 例を収集した時点で試 験を終了し、解析を実施した(プラセボ吸入群:41例、5 ppm吸入群:41例、20 ppm吸入群:
36
例、80 ppm吸入群:37例)。プラセボあるいは5、20
又は80 ppm
の吸入を終了基準が満たさ れるまで最長14
日間実施した。PPHN
患者において、死亡、ECMOの適用又はPPHN
の主要後遺症が発生した症例の割合は、プラセボ吸入群の
56%(23/41
例)に比べ、NO吸入群では50%
(52/104例)であったが有意な差 ではなかった(P=0.51、表2.7.3.2-4)。
酸素化に関する各種指標の変動はいずれも、プラセボ吸入群より
NO
吸入群で改善がみられた(図
2.7.3.2-5〜2.7.3.2-8)。なお、OI
はNO
吸入開始後24
時間又は中止時点の開始前からの変動 について、プラセボ吸入群に比し、NO吸入群では有意に低下した(プラセボ吸入群:-1.60、NO 吸入群:-5.00、P=0.01、表2.7.3.2-5)。
また、
PaO
2及びA-aDO
2の改善において吸入濃度との相関が示唆された(図2.7.3.2-9、 2.7.3.2-10)。
表
2.7.3.2-4 PPHN
に関わる主要後遺症発生率-INO-01/02試験-NO吸入群 プラセボ(N2)
吸入群 5 ppm 20 ppm 80 ppm 合計
28日以内の死亡 1/41(2%) 2/40(5%)
[0.54]
4/36(11%)
[0.13]
3/37(8%)
[0.26]
9/113(8%)
[0.22]
ECMO適用 14/41(34%) 10/41(24%)
[0.33]
9/36(25%)
[0.38]
6/37(16%)
[0.07]
25/114(22%)
[0.12]
神経学的異常i) 10/39(26%) 5/34(15%) [0.25]
11/32(34%) [0.43]
7/31(23%) [0.77]
23/97(24%) [0.81]
気管支肺異形成症ii) 5/40(13%) 9/38(24%) [0.20]
3/31(10%) [0.71]
3/34(9%) [0.61]
15/103(15%) [0.75]
上記事象が1つ以上
発生 23/41(56%) 18/36(50%) [0.60]
21/35(60%) [0.73]
13/33(39%) [0.16]
52/104(50%) [0.51]
i):超音波、MRI、CTスキャンによる脳室内出血又は脳梗塞の診断、又は痙攣発作の診断。
ii):吸入開始後28日に胸部X線で異常所見があり酸素吸入療法を必要とするか、又は退院時に気管支拡張薬 を必要とする重篤な気道疾患を有する。
[ ]:P値(Cochran-Mantel-Haenszel検定によるプラセボ吸入群とNO吸入群との比較)
一酸化窒素
2.7
臨床概要- 34 - 40
60 80 120 140 160
100
PaO2 (mm Hg)
Time (hours)
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
Pooled NO Placebo
図
2.7.3.2-5 PaO
2の経時的変動(平均±SE)-INO-01/02試験-480 500 520 540 560 580 600
0 0.5 1 2 3
Time (hours) A-aDO
2mm HG
Placebo Pooled NO
図
2.7.3.2-6 A-aDO
2の経時的変動(平均±SE
)-INO-01/02
試験-
一酸化窒素
2.7
臨床概要- 35 -
図
2.7.3.2-7 a/A
の経時的変動(平均±SE)-INO-01/02試験-図
2.7.3.2-8 OI
の経時的変動(平均±SE
)-INO-01/02
試験-
一酸化窒素
2.7
臨床概要- 36 -
表
2.7.3.2-5
試験薬吸入開始前から吸入開始後24
時間のOI
の変動-INO-01/02試験-NO吸入群 プラセボ(N2)
吸入群 5 ppm 20 ppm 80 ppm 合計
症例数 41 41 36 37 114
平均(cmH2O/mmHg) -1.60 -4.67 -4.78 -5.59 -5.00
SD 7.99 7.69 10.15 7.41 8.40
範囲 -21.78, 14.68 -25.36, 13.65 -36.20, 13.67 -23.58, 8.17 -36.20, 13.67 P値(プラセボ吸入群
との比較) - 0.05 0.10 0.02 0.01
検定法:Wilcoxon順位和検定(両側、正規近似、連続補正あり)
図
2.7.3.2-9
試験薬吸入開始前からのPaO
2の変動(平均±SE
)-INO-01/02
試験-
一酸化窒素
2.7
臨床概要- 37 -
図
2.7.3.2-10
試験薬吸入開始前からのA-aDO
2の変動(平均±SE)-INO-01/02試験-2.7.3.2.3
肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全患者を対象とした国内臨床試験(試験番号:INOT12、5.3.5.2-1、評価資料、第Ⅲ相臨床試験) 正期産又は正期産に近い在胎期間
34
週以上の日本人新生児の肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不 全患者に対する本剤の有効性及び安全性について検討するため、少数の患者を対象としてオープ ン試験を実施した。11
例が登録され、10例が有効性解析対象となり11
例が安全性解析対象となった。吸入後30
分、1
時間及び24
時間のOI
の変動(平均±SD)はそれぞれ-21.3±37.0cmH
2O/mmHg、-19.7±37.9
cmH
2O/mmHg
及び-27.2±33.0 cmH2O/mmHg
であり、海外臨床試験と同様、酸素化の改善を示し た(表2.7.3.2-6)。
一酸化窒素
2.7
臨床概要- 38 -
表
2.7.3.2-6
主要臨床試験における吸入開始前からのOI(cmH
2O/mmHg)の変動
INOT12 CINRGIa INO-01/02a NINOSa 研究会 臨床試験a
症例数 10 103 41 114 42
吸入開始前† 平均
(SD)
35.5
(35.6)
35.8
(24.5)
24.4
(10.4)
45.4
(33.9)
46.8
(31.2) 吸入開始後30分 平均
(SD)
-21.3
(37.0)
-10.2
(16.6)
-4.7
(7.6)
-15.1
(21.4) NA 吸入開始後1時間 平均
(SD)
-19.7
(37.9)
-10.2
(22.3)
-4.2
(8.8) NA -20.9
(28.9)
吸入開始後24時間 平均
(SD)
-27.2
(33.0)
-18.4
(17.4)
-9.7
(11.2) NA -28.1
(35.2)
INOT12試験との比較 generalized linear model P値(F検定)
− 0.109 0.026 −b 0.081
NA:該当データなし
a:CINRGI及びNINOS試験のNO吸入群、INO-01/02試験の5 ppm NO吸入群及び研究会臨床研究の在胎期間 34週以上の被験者を対象としてINOT12試験と比較した。また、CINRGI試験においてプラセボ吸入群に割 り付けられたが、NOを投与された患者2例は、NO吸入群として扱った。
b:NINOS試験では2時点のみのデータしかないため比較検定は実施できなかった。
†:吸入開始前の値は絶対値。
副次的評価項目である
a/A
及びPaO
2/FiO
2では、海外及び研究会臨床研究の結果に比し、本試 験で良好な改善が示された(表2.7.3.2-7、表 2.7.3.2-8)。肺高血圧を伴う低酸素性呼吸不全の治療
では、肺機能の最大限の改善を目標とすることから、本試験結果がこれまでに実施された他の試 験に比べより良好なa/A
及びPaO
2/FiO
2の改善を示したことは、NO
の吸入濃度を減量できる可能 性又は減量の必要性を示唆するものではなく、単に本試験に組入れられた患者がNO
吸入によっ て高いベネフィットを得たことを示したものと考えられる。表
2.7.3.2-7
主要臨床試験における吸入開始前からのa/A
の変動INOT12 CINRGIa INO-01/02a 臨床試験研究会 a
症例数 10 107 41 44
吸入開始前† 平均
(SD)
0.088
(0.051)
0.113
(0.098)
0.106
(0.088)
0.068
(0.046) 吸入開始後30分 平均
(SD)
+0.246
(0.221)
+0.082
(0.133)
+0.050
(0.086) NA 吸入開始後1時間 平均
(SD)
+0.225
(0.213)
+0.093
(0.147)
+0.047
(0.103)
+0.097
(0.132) 吸入開始後24時間 平均
(SD)
+0.260
(0.176)
+0.150
(0.163)
+0.092
(0.110)
+0.152
(0.153) INOT12試験との比較
generalized linear model P値(F検定)
− 0.0000 0.0001 0.0000
NA:該当データなし
a:CINRGI試験のNO吸入群、INO-01/02試験の5 ppm NO吸入群及び研究会臨床研究の在胎期間 34週以上の被験者を対象としてINOT12試験と比較した。また、CINRGI試験においてプラセ ボ吸入群に割り付けられたが、NOを投与された患者2例は、NO吸入群として扱った。
†:吸入開始前の値は絶対値。
一酸化窒素
2.7
臨床概要- 39 -
表
2.7.3.2-8
主要臨床試験における吸入開始前からのPaO
2/FiO
2の変動INOT12 CINRGIa INO-01/02a 研究会 臨床試験a
症例数 10 107 41 44
吸入開始前† 平均
(SD)
58.3
(33.8)
76.0
(67.3)
71.8
(60.5)
46.5
(31.7)
吸入開始後30分 平均
(SD)
+166.5
(149.8)
+55.9
(91.4)
+34.2
(59.3) NA 吸入開始後1時間 平均
(SD)
+150.3
(142.8)
+62.7
(100.1)
+31.7
(70.0)
+65.8
(90.1) 吸入開始後24時間 平均
(SD)
+152.9
(106.0)
+96.3
(108.6)
+62.4
(74.8)
+99.4
(98.7) INOT12試験との比較
generalized linear model P値(F検定)
− 0.0000 0.0002 0.0001
NA:該当データなし
a:CINRGI試験のNO吸入群、INO-01/02試験の5 ppm NO吸入群及び研究会臨床研究の在胎期間 34週以上の被験者を対象としてINOT12試験と比較した。また、CINRGI試験においてプラセ ボ吸入群に割り付けられたが、NOを投与された患者2例は、NO吸入群として扱った。
†:吸入開始前の値は絶対値。
2.7.3.2.4 PPHN
患者を対象とした海外臨床試験(試験番号:
Ohmeda NO-03
、5.3.5.2-2
、参考資料、第Ⅱ相臨床試験)PPHN
患者(生後72
時間以内)を対象とした本剤の安全性及び有効性を評価するためオープン 試験を実施した。終了基準を満たすまで5、20
又は80 ppm
を最大14
日間吸入した。本試験は
14
例が登録されたところで症例の収集が非常に困難になったため中止された。試験の結果、PPHN 患者に対する
NO
吸入療法の有効性を証明するには症例数が少ないがINO-01/02
試験の結果と類似していた。2.7.3.2.5
その他の海外比較対照試験(NINOS試験)(試験番号:
NINOS
、5.3.5.4-1
、参考資料、第Ⅲ相臨床試験) 本試験は低酸素性呼吸不全の正期産及び正期産に近い在胎期間34
週超の新生児235
例(プラセ ボ吸入群:121例、NO吸入群:114例)を対象とした多施設共同プラセボ対照並行群間比較試験 である。本試験の有効性主要評価項目は、NO 吸入における死亡又はECMO
適用率をプラセボ(100% O2)と比較検討することであった。副次的評価項目は
NO
吸入による短期間での酸素化 に関する各種指標の推移(PaO2の増加、OIの低下及びA-aDO
2の低下)についてプラセボと比較 検討することであった。NO
の吸入は、20 ppm
から開始し、終了基準を満たすまで最長14
日間実施された。なお、20 ppm
で十分効果が得られなかった場合には80 ppm
に増量できることとされた。本試験において、20又は
80 ppm
の吸入はプラセボ吸入と比べ、低酸素性呼吸不全の正期産及 び正期産に近い新生児において死亡又はECMO
適用率を有意に低下させた(P=0.006、表2.7.3.2-9)。また、吸入開始後 30
分でのPaO
2、OI及びA-aDO
2の吸入直前からの変動について、NO
吸入群はプラセボ吸入群に比し、有意な改善(それぞれP<0.001)がみられた(図 2.7.3.2-11
〜2.7.3.2-13)。