1 .研究目的・方法および調査の概要 (1)研究目的
本研究は日本の都市住宅の耐用年数を延長する可能性を寿命観の視点から考察する継続 研究である。既報において、日本と米国の都市居住者を対象に中古戸建住宅の需要の特徴 を明らかにしてきた Iトへそれによると、両国における中古住宅事情は全く異なり、それ は都市住宅の寿命観と中古戸建住宅の需要意識、保全意識との間にある高い相関によって 裏付けられた。米国は活発な中古住宅市場の下で、既存住宅の経済評価が安定しており、
中古住宅の需要と投資の聞に表裏の関係がある。それに対して、日本の中古戸建住宅の市 場は小さく、中古戸建住宅の需要には「仮の宿J意識が存在することが特徴である。それ は住宅選択行動に影響を及ぼしていたの
日本の中古住宅の需要に「仮の宿J意識が生じる主要な理由の一つに住宅市場における 既存住宅の商品情報のあり方がある。米国では不動産市場の透明性が確保され、既存住宅 の売買当事者が公平な取引条件下に置かれる仕組みがあり、需要者が中古住宅市場のリピ ータになる。日本では市場における情報の非対称性が中古住宅の安全性、設備性能の信頼 性を低めていた。また「仮の宿」意識と中古戸建住宅の不安感との聞に相関が認められた。
加えて日本では、自己所有住宅の性能への信頼が低いことも特徴である。それが、さら に住宅情報の信頼性を低める方向に作用していた。そして、日本では売り手として中古住 宅市場に参入するよりも住み続けることに価値を置くことが明らかになった。
住宅は最も高価な必須生活財であるが、既報の結果から、住宅需要意識には、住宅は経 年的に資産価値の減衰を避けられないとみる日本と、投資的に価値の増幅を期待する米国 の違いがあること、しかも、米国では古い住宅に投資価値が期待できるという仮説が浮か び上がってきた。
本研究は日米の住宅需要意識の中にある古い住宅に対する資産価値観に着目し、①住宅 の建て替えの動向、②住宅に対する期待や愛着と、既存住宅の評価や耐用年数の予測との 間にある関係を把握することによって、経年による資産価値に関する日米意識の違いを明らか にすることを目的にする。
(2)米国および地方と都市住宅の比較研究の説明
本報は既報と同様に日米の比較調査を採用している。比較に米国を選ぶ理由は、両国と も木造住宅が多く、かっ自然災害が多い共通性があるが、住宅の寿命に格差があり、中古 住宅事情が極端に違うことである。この背景を利用して日本人の既存住宅に対する住意識 の特性を浮き彫りにする効果を期待した。
‑49‑
ところで現代日本の既存住宅意識は、第2次世界大戦以後の住宅難に対応して大量に供 給された低質な住宅のイメージに負う、比較的新しい意識であることが考えられる。それ では比較的住宅事情が良かった地方の居住者の意識はどうなのか、それと都市住宅の違い があるのかどうかが問題になる。そこで、本報では、日本の都市住宅の耐周年数を延長す る可能性を探るために、日米の比較をするだけでなく、日本の大都市圏外も比較に加えて、
検証を試みた。
( 3 )
調査方法 1)1次調査の方法調査は同年に2回実施した。以下、 1次調査、 2次調査とする。調査対象は全て戸建持 家である。 1次調査は既資料5)を参考にして大阪府高槻市・茨木市で 1950年代から 1980 年代にかけて開発された住宅地と、農村・市域を含む滋賀県全域で行った。高槻市・茨木 市は市販の住宅地図を利用して対象住宅地の戸建住宅を選んだ。滋賀県は滋賀大学教育学 部の同窓会名簿から 45歳以上 80歳までの男性卒業生を 112抽出した。全て、郵送調査 である。 調査時期は2003年 1月...2月。
2)
2
次調査の方法米国は地震多発地帯のカリフォルニア州ロサンゼルス市及びその周辺都市(大都市圏) と、非地震多発地ではあるが洪水等の自然災害があるアイオワ州の州都デモイン市(地方 都市圏)を選んだ。
日本は高槻市と滋賀県大津市(大阪の通勤圏)で、 1950年代から 1980年代に開発さ れた住宅地を選んだ。住宅地の選定は高槻市は 1次調査と同じ資料を参考にした。大津市 は大都市郊外の特徴を出すために、当時の住宅公団が開発した郊外住宅地である。
配布対象住宅は日本の場合は市販の住宅地図を利用し、米国は調査会社ジェネシスから 戸建持家住宅所有者のリストを購入し、それぞれ悉皆調査とした。日本の2次調査は調査 員が現地に行き、各住戸の郵便受けに投函する方法で配票し、郵送で回収した。米国は配 票・回収とも郵送による。 調査時期は 2003年4月...6月。
3)日米の調査票の照合方法
1次調査の結果から調査票を再検討し、 2次調査の調査票を日本語で作成した。次に英 訳した調査票を米国の共同研究者に見せ、日米の国情に合わせた修正作業を繰り返して調 査票を作成した。両国の状況の違いから、質問の形式や、選択肢が不一致の部分は本文で 注記している。
4)調査票の配票・回取状況
調査票の配票・回収状況は表 1に示した。以下の本文では全て表1の略称を使用する。 表 1 調査票の配票・回収状況
滋賀県 茨木市・高槻市 大津市 ロサンゼルス周辺都市 デモイン市
配回回収票収数数率ぞ
%
‑ ・ ・ ー ー 1388 579 2435 561 721 320 750 172 450 14341.7 23.0 44.4 22.9 31.8 有効回収数 557 543 315 159 138
略│地域 民阪j 大津 L A D M
称│大分類 滋賀 日本都市 米 国
*戸建借家の扱し、:日本で「は配票時に戸建借家を
i
京外できず、配票したが、回収分から借 家を除外した。配票借家数は不明、回収率の算定母数には借家が含まれている。ハU
FD
2
.回答者及び、住宅の概要 (1)回答者の概要回答者は滋賀の 97.6%、日本都市の70.3%、米国の 79.8%が男性である。家族構成(表2)、 年 齢 ( 表 3)、年収(表 4)は表示した。回答者は高齢者が多く、従って年収について年 金受給者が多くなり、表より実質の所得階層を類推するのは難しい。
(2)住宅の概要
対象住宅の構造は日本都市の71.0%、滋賀の 87.9%、米国の 90.0%が木造である。 現住地に入居当初の中古住宅率は日本都市が 11.6%、米国が 77.7%、滋賀は 2%である。 居住者の年齢と中古住宅率の関係は日本都市だけ年齢が下がるほど中古が増える関係があ る。 対象住宅の延床面積の分布は表
5
に示した。LA
が特に広い。滋賀と、D M
が比較 的近い値である。表2 家族構成 単 位 : %
単 身 夫 婦
2
世代 多世代 その他 合 計「大阪J
5 . 1 40
.7 3 5 . 1 1 9 . 1 533 1 0 0 . 0
大 津 1.7 2 9 . 8 5 7 . 5 1
1.0 299100
.0
LA 2 . 9 5 5 . 1 3
1.9 1 0 . 2 138100.0 D M 3 9 . 8 4 8 . 0 1 2 . 2 1 2 3 100
.0
滋賀 1.4 2 4 . 2 2 5 . 5 47
.8
1.3 557100
.0
表3 回答者の年齢(歳) 単位:%
44
以下45 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 50 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 55 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 60 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 65 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 7 0 ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ 75
以上 合 計「大阪J
5 . 8 7 3 . 2 2 9 . 5 1 0 1 5 . 5 2 0 . 8 1 8 1 7 . 1 528100.0
大 津1 1 . 7 1
1.4 1 6 1 5 . 1 1 6 . 7 1 0
.41 2 71299100.0 LA 1 2 . 2 1 0 . 1 9 . 5 1 4 . 2 1 0 . 8 1 0 . 8 8
.1 24 148100.0 D M 2 9 . 7 1 6
.41 8 1 0 . 9 8 . 6 3 . 1 3 7 6 . 2 128 1 0 0 . 0
滋賀0
.41 0 . 6 1 3 1 2 . 2 1 6 2 3 . 7 22 2
.4556 1 0 0 . 0
合 計
1260 1 ∞ . 0
単 位 %
笈氾以上 │合計
1 4
.4I 2 7 3 1 0 0 . 0
表5
延 べ 床 面 積(ni) 単位:%1 0 0
以下 ~120 ~140 ~160 ~180 ~200 ~2502 5 1
以 上 合 計りに腕
2 5 . 0 1 9 . 0 1 9 . 6 122 10
.162
3.9 3.95 1 5 ∞ i } o
大 津
1 3 . 5 2 5 . 9 25
.91 5 . 0 7 . 3 8
.029 15 2 7 4 1 1 ∞ o
L A 4
.09
.91 1 . 3 86 119 119 152 272 1 5 1 1 1 ∞ o
D M 1 8 . 3 1 0 . 7 9 . 9
7.6 9 . 9 1 6
.01 3 . 7 1 3 . 7
日1 ∞ } O
滋 賀
10
.66 . 5 9 β 89 1 0 . 6 1 2 β 1 6 . 7 2 4 . 4
在活1 ∞ 1 . 0
噌i
FD
3.住宅の更新実態 (1 )建替率
図 1は住宅の種類を現住地入居時と、現在を対比して表示している。この図には①日 米では新築と中古の関係が逆転していること、②中古の割合は日米共、大都市圏の方が、
地方都市圏よりも多いこと、③米国は入居時と現在の問で変化が見られないが、日本は現 在の方に新築住宅が多い特徴がある。これを補足するために表 6 で建替の実態を表示し たが、日本都市で 21.9%、滋賀の相続で 62.5%が建て替えており、(滋賀では誰の代で建 て替えたのか判断がつきにくい例が多かったので、相続後に建て替えたことが判明できた場 合だけを採用した)日本は建替が非常に多い特徴を示した。既存住宅だけでなく、新築を さらに建て替えた事例が 17.2%あることは注目に値する。なお、滋賀の中には江戸時代の 建物も含まれている。
米国における建替は従前住宅が中古で2例、新築で1例(火災からの復興)であるが、
既存住宅付き宅地を購入後、既存住宅を撤去して新築した事例は 62例ある。日本ではそ れ以外に既存住宅を撤去して更地化された土地を購入した事例を多く含んでいるが、本 調査では確認できていない。
三 現 住 地 に 入 居 時(138)
極
25忽開 5 70。
現 在(138)障 室 霊
s30 70 ,
現 住 地 に 入 居 時(159) 87
〈
J 現 在(159)
医
13 6 骨せ 現 住 地 に 入 居 時(298) 864
刷‑く 現 在(298) 92、
屋重 現 住 地 に 入 居 時(543) 74
4
く 現 在(543) 84』 ー
l!II( 現 住 地 に 入 居 時(575)
陣
26欄 2掛 現 在 (575) 7 1 27 2
) 内 の 数 字 は 母 数 0九 20切 40% 60% 80% 100%
│図 新 築 口 相 続 ・ 中 古 │
図 1 現住地入居時と、現在の住宅の種類
表
6
住宅の建替状況 単位:上段%、下段件数滋賀 日本都市 米国
相 続 合 計 新 築 相 続 中古 合 計 新 築 中古 建 替 62.5 21.9 17.2 55.2 29.9 1.0 1.6 0.9 合 計 381 841 667 67 107 297 52 235
(2)建て替えた場合の従前住宅の耐周年数
図 2 は建て替えた場合の従前住宅の耐周年数と、現住宅の建築年数、および現地での 居住年数の平均値を表したものである。日本都市における従前住宅の平均耐周年数は23.1 年であり、これは米国の2分の1以下、滋賀の4分の1程度にすぎない。
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現住宅の建築年数は従前住宅の耐用年数に比べると、地域間の差が小さいが、やはり日 本の都市部が最短である。反対に米国は現地の居住年数が短い。L AがDM'こ比べて古い 結果になったがその理由は本調査では明らかにできていない。日本は対象地の開発時期の 影響を受けて大津の方が新しい。
従 前 住 宅 の 耐 周 年 数
現 住 宅 の 建 築 年 数
現 地 で の 居 住 年 数
52
68
8
図D M
図
LA
・ 大 津 田「大阪j 園 滋 賀