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ルーカラーの約90%、ホワイトカラーの50〜60%が団体契約に加入している。

先述のように、スウェーデン企業における法定の一般給与税の負担は32.82%となってお り、これに団体契約の負担6.92%を合計した雇用者の総合負担(ブルカラー/賃金を100と した場合の%)は39.74%にのぼる(図表2-7-2)。同じく、ホワイトカラーの場合の雇用者 の総合負担(給与を100とした場合の%)は、48.20%に上る(図表2-7-3)。

図表2-7-2 スウェーデン企業における「団体契約」の負担

(ブルーカラー、賃金を100とした場合の%)

団体生命保険(TGL) 0.43 団体健康保険(AGS) 1.23 退職金(AG職業年金B) 0.01 年金保険料 3.50 離職後保険料保険 0.72 労働市場無過失補償(TFA) 0.01 特別給与税 1.02

小計 6.92

雇用者法定負担 32.82

合計 39.74

(資料)『Labor cost in Sweden(スウェーデン企業連盟資料を基に、スウェーデン大使館投資部が作成)

より。http://www.isa.se/upload/jp/factsheets/Labor_costs_J.pdf

(図表2-7-3)ホワイトカラーに対する雇用者の総合負担(給与を100とした場合の%)注1

協約年金(ITP) 12.20 2 団体生命保険(TGL) 0.20 3 労働市場無過失補償(TFA) 0.01

雇用保障協議会(TRR) 0.30 4 特別給与税 2.67

小計 15.38 雇用者法定負担 32.82 合計 48.20

(注)1. 21歳以上が対象。

2.記載したデータは、給与変動を考慮せず、2003年のITPの平均保険料を予測したもの。従業員 の給与額、年齢などによって大きな格差が生じる可能性がある。

3. 50スウェーデンクローナ/月。これは、ホワイトカラー労働者の給与の約0.2%に相当する。

4.スウェーデン企業連盟に加盟する企業のもの。それ以外は0.7%を支払う。

(資料)スウェーデン企業連盟資料を基に、スウェーデン大使館投資部が作成した「 ファクトシート」

の『Labor cost in Sweden』より。http://www.isa.se/upload/jp/factsheets/Labor_costs_J.pdf

(2)従業員負担分

従業員は、年金制度(老齢年金、遺族年金)のため、一般年金保険料と呼ばれる保険料 率7%の保険料を支払う。この保険料は所得税の中に含まれ、雇用者が源泉徴収する。一 般年金保険料の75%は査定所得1から差し引かれる。そして、一般年金保険料の残りの25%

は支払った所得税から差し引かれる。これは、65歳に達した従業員には適用されない。ま た、基本所得額(2003年は40,900クローナ=約61万3500円)の8.07倍を超える分の所得に ついては、保険料は課されない。なお、スウェーデンは育児休業中の両親保険では「所得 の8割+社会保険料の従業員負担分」が支払われ、結果として従業員は手取りで所得の8 割を受け取れる仕組みになっている。

(3)労働費用

労働費用の内訳を見ると、スウェーデンの手取り賃金は、フランス、ドイツ、日本、

イギリス、アメリカと比較して、他の国よりも低い。このため、社会保険料負担等を合 わせた労働費用全体でみると、他国と大きな差があるわけではない(図表2-7-4)。

また、スウェーデンにおける労働費用の内訳を見ると,ブルーカラー労働者の労働費用 のうち雇用者負担分28.1%、従業員負担分25.1%、ホワイトカラー労働者の労働費用の うち雇用者負担分31.4%、従業員負担分27.0%となっている(図表2-7-5)。

(図表2-7-4)労働費用と手取り賃金

【独身者の場合】

18659 20958

25753

17989

24862 26487 16784

21585

9350

16617

11297 11119

0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 45000

フランス ドイツ 日本 スウェーデン イギリス 米国

  (52.6%) 35,443 (100%)

42,543

(100%)

34606   (100%) 35,103

  (100%)

36159

  (100%)

37606   (100%)

  (47.4%)   (48.0%)

  (52.0%)   (26.6%)

  (73.4%)   (49.3%)

  (50.7%)

  (70.4%)   (29.6%)   (31.2%)

  (68.8%)

1 査定所得(Assessable Income)とは、課税対象となる収入(給料、事業売上げ、銀行利子、株式配当

【夫婦と子ども2人、妻が専業主婦の場合】

21608

28842 26744

20356

29663 31431 13835

13701

8359

14250

6496

6175

0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000 45000

フランス ドイツ 日本 スウェーデン イギリス 米国

  (61.0%) 35,443 (100%)

42,543

(100%)

34606   (100%) 35,103

  (100%)

36159

  (100%)

37606   (100%)

  (39.0%)   (41.2%)

  (58.8%)   (23.8%)

  (76.2%)   (67.8%)

  (32.2%)

  (83.6%)   (16.4%)   (18.0%)

  (82.0%)

【夫婦と子ども2人、共働きの場合】

34623 40639 43776

32743

45474 47913 20890

30266

14729

24934

14764 14475

0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000

フランス ドイツ 日本 スウェーデン イギリス 米国

  (62.4%) 55,513 (100%)

70,905

(100%)

57,677   (100%) 58,505

  (100%)

59,949

  (100%)

62,677   (100%)

  (37.6%)   (43.2%)

  (56.8%)   (25.2%)

  (74.8%)   (57.3%)

  (42.7%)

  (76.4%)   (23.6%)  (24.1%)

  (75.9%)

(資料)OECD in Figures 2004 edition、‶STATISTICS ON THE MEMBER COUNTRIES”

http://213.253.134.29/oecd/pdfs/browseit/0104071E.PDF)

(図表2-7-5)スウェーデンにおける労働費用の内訳(1999年見通し)

労 働 費 用

30万6700クローナ(100%)

賃 金︵ グ ロ ス︶

22万500クローナ(71.9%)

使用者負担分

従業員負担分

手取り賃金

28.1%

25.1%

46.8%

労 働 費 用

46万400クローナ(100%)

賃 金︵ グ ロ ス︶

31万6,000クローナ(68.6%)

使用者負担分

従業員負担分

手取り賃金

31.4%

27.0%

41.6%

(注)ブルーカラー労働者、ホワイトカラー労働者は、いずれも独身の成人男性。SAFLOの間で労 使協約の対象となる製造業労働者。小規模企業の労働者を除く。

(資料)井上誠一(2003)『高福祉・高負担国家 スウェーデンの分析』103ページより。

2.法人税負担 

(1)法人税

スウェーデンは、欧州で最も法人税率が低い国のひとつである。法人税率は28%であり、

日本企業(39.54%)と比べてスウェーデン企業の法人税負担は低い。スウェーデンでは、

地方政府による法人課税はない。法人税の繰延制度を利用すると、実効税率はさらに低く なる(図表2-7-6)。

キャピタルゲインは、通常の法人所得として課税される。キャピタルロスは通常所得か ら控除することができ、通常は無期限に繰り延べることができる。課税所得の算出は、国 際会計監査基準に基づいて行われる。

スウェーデンの法人が発表する年次報告書や財務諸表は、情報開示が進んでいることで 知られている。これらの年次報告書や財務諸表は、取得原価主義、発生主義会計、損失リ スクの即時認識、実際に取得されるまでは所得を計上しないなど、国際的な会計原則に基 づいている。社会保障の雇用者負担分は、課税所得から控除することができる。

ブルーカラー労働者

ホワイトカラー労働者

(図表2-7-6)スウェーデン企業および日本企業の法人税負担

28.00 27.98 11.56

0 10 20 30 40

スウェーデン 日本

(%)

中央政府 地方政府

(資料)スウェーデン:OECD Tax Database(http://www.oecd.org/dataoecd/10/19/2079715.pdf)、日本;

財務省「国際比較に関する資料」より作成。

(2)一般政府の税・社会保険料収入全体に占める法人税収

このため、一般政府の税・社会保険料収入全体に占める法人税収は日本より少なく、付 加価値税(日本の消費税に相当、原則として税率25%)や個人所得税に依存する歳入構造 となっている(図表2-7-7)。

(図表2-7-7)一般政府の税・社会保険料収入全体に占める法人税収

31.9 20.1

42.3 30.2

17.7 27.1 25.9 37.1 5.7

6.5 9.5

7.6 1.7 8.6 5.6 15.1 10.0

10.8 6.8

9.0 17.5 5.5 23.6 18.8 6.0

12.5

9.6 24.9 19.5

20.1 8.3 25.1 19.0 16.1 31.3 25.2 28.8

25.6 24.7 8.1 14.4 11.8 12.6 15.5 5.4 14.2 14.0

12.7 0

20 40 60 80 100

スウェーデン 日本 アメリカ イギリス フランス ドイツ イタリア カナダ

その他

付加価値税収

社会保障負担(雇用者 負担分)

社会保障負担(労働者 負担分)

法人税 個人所得税

(%)

(資料)‘OECD in Figures 2004 edition’2001年より。

3.競争力への影響

(1)競争力

IMD(経営開発国際研究所)2の国際競争力ランキング 2005 年版によると、スウェーデ ンの国際競争力は14位、日本は21位となっている(図表2-7-8)。

図表2-7-8 国別にみた国際競争力

順位 国名 国際競争力 11 台湾 78.3

1 米国 100 12 アイルランド 77.8

2 香港 93.1 13 オランダ 77.4

3 シンガポール 90.0 14 スウェーデン 76.3 4 アイスランド 85.3 15 ノルウェー 76.2

5 カナダ 82.6 16 ニュージーランド 75.5

6 フィンランド 82.6 17 オーストリア 74.3 7 デンマーク 82.5 18 ドイツ 74.1

8 スイス 82.5 19 チリ 72.2

9 オーストラリア 82.0 20 中国 69.7 10 ルクセンブルグ 80.3 21 日本 68.7

(資料)IMDの国際競争力ランキング2005年版

(2)生産性上昇率  

 スウェーデンのTFP3の上昇率は、1990年以降高まってきており、1990-95年は年平均 0.5%の伸びであったが、1995-2001年には年平均0.8%の伸びに高まっている(図表2-7-9)。

 その背景には、スウェーデンでは、90年代後半にICT産業への投資を進めたことがある。

その結果、GDPに占めるICT産業のウェイトは1995年から1998年にかけて1.6%ポイント上 昇し、その上昇幅は他国よりも大きかった(図表2-7-10)。

  ICT産業比率の変化およびTFP上昇率の変化を比較すると、スウェーデンに代表される

「ICT産業化のスピードが速く、TFP上昇率がプラス」のグループと、日本に代表される

「ICT産業化のスピードが遅く、TFP上昇率がマイナス」のグループとに、大きく二極分化 している(図表2-7-11)。

2 スイスにあり、国際競争力の国際比較で著名な研究所である。

3 TFPとは、その変化が労働、資本などの投入量の増加(減少)によらない生産量の増加(減少)を表す ものである。一般に、労働生産性上昇率は資本装備率(労働投入1単位当たりの資本ストック)の上昇率 と全要素生産性(TFP)の上昇率の合計と考えられる。したがってTFPの上昇(低下)は、経済全体

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6

フランス ドイツ 日本 スウェーデン イギリス アメリカ

(%)

1990-95年

1995-2001年

(注)1990‑95 年のドイツのデータは存在しない。 

(資料)OECD Productivity database  (2004 年) 

図表2-7-10  ICT産業の名目GDPウェイトの上昇率

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

米国 日本 ドイ

フラ

イタ

スペ

ラン

ェー

フィラン

アイル

(95年→98年、%ポイント)

(資料) ‘OECD in Figures 2004 edition’‘credit suisse first boston securities(2000)

(図表2-7-11)ICT産業比率の変化とTFP上昇率の変化 図表2-7-9 各国のTFP(全要素生産性)上昇率

0.0 0.5 1.0 1.5 2.0

-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5

TFP上昇率の変化 (80年代平均→90年代後半平均、%)

I C T 産 業 比 率 の 変 化

(95年から98年への変化、%ポイント)

スペイン オランダ

フランス

アイルランド 日本

イタリア

ドイツ

スウェーデン

米国

フィンランド

(注)ICT産業比率は、ICT産業の付加価値の名目GDPに占める割合。

(資料) ‘OECDin Figures 2004 edition’‘credit suisse first boston securities(2000)

(3)R&Dへの投資、ICT関連投資

スウェーデンは1980年代以降、R&Dへの投資を年々高めてきた(図表2-7-12)。現在、

スウェーデンのR&Dへの投資水準(対GDP比)はOECD加盟国のなかで最も高い(図 表2-7-13)。また、就業者に占める研究者の割合もフィンランドに次いで高く、就業者全体 の12%を占めている(図表2-7-14)。

図表2-7-12 R&Dへの投資の対前年比

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

1981 86 91 96 2001 (%)

(年)

(資料)OECD Economic Surveys Sweden、2005等により作成。

図表2-7-13 R&Dへの投資水準(対GDP比)

(単位:%)

(資料)OECD Economic Surveys Sweden、2005等により作成。

図表2-7-14 就業者に占める研究者の割合

(単位:‰)

全体

(括弧内は企業における割合)

フィンランド 17(9)

スウェーデン 12(7)

日本 10(7)

米国 8(7.5)

ノルウェー 8(4.5)

(資料)OECD Economic Surveys Sweden2005等により作成。

全体

(括弧内は企業によるR&D)

スウェーデン 4.2 (3.0)

フィンランド 3.4 (2.4)

日本 3.1 (2.2)

アイルランド 3.0 (1.5)

韓国 2.9 (2.1)