第2章 企業の持続可能性と企業上
図表2.1現在と将来のステークホールダー
経営資源 ステークホールダー 現在 将来
ヒト 労働提供者 従業員 就職活動者
モノ
商品やサービスの納入先
や購買先 顧客や取引業者 将来に取引をするかもしれない顧客や取引業 者
カネ 株式資本の提供者 株主 将来に株式の購入をするかもしれない投資家 カネ 有利子負債を提供者 銀行 将来に融資をするかもしれない金融機関
地域 地域住民 地域住民・行政 地域住民・行政
この中で、顧客や取引業者、株主、金融機関あるいは地域住民には、比較的に様々な情 報源が提供されている。例えば財務諸表の請求入手、開示情報の入手、信用調査機関によ る調査報告、長期間にわたる取引から感知できる変化、噂などがある。しかし、求職活動 中の者には、開示情報しか入手できないし、その開示情報は上場企業である場合に限られ る。まして、就職活動中の学生にとっては、仮に財務情報が入手できても分析能力が十分 でない場合も多く、まして数多くの求人希望会社を分析する時間的余裕も通常ない。っま
り、企業と学生との間には企業情報の非対称性27〉が強度に存在する。
しかし、学生には就職先での転職を好まない気風が生れ、企業の持続可能性を重視して いる。これは失業や転職が社会的に定着した現在において、企業の持続可能性が就職活動 中の学生が重視しているのは興味深い。
そこで、学生にとって手軽な企業の持続可能性の判断指標に、企業上場の有無が挙げら れる。企業上場は持続可能性の代替指標になると学生は考えているのではないかと思われ る。現に企業上場は人材確保の効果があると考えている28)。
本研究は、将来のステークホールダーの一つである求職活動中の学生のアンケート調査 により、企業の持続可能性と上場との相関関係を明らかにする。
第2節リサーチデザインの概要 0
(1)研究方法
本研究における調査は、次の2方法である。本研究の結果は、上場企業と非上場企業と の倒産あるいは廃業の差異の分析を行った研究結果を傍証するものであると期待できる。
27)情報の非対称性は経済政策、経済学や証券市場においてその存在が知られている。例えば経済産業省r企 業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」2007.9.4.,P.4 28)総務省情報通信政策課r I CTベンチャーの人材確保のあり方に関する研究会」第3回研究会討議用資
料、2006.10.16.P.3. 『岩手目報』r帝国データバンク盛岡支店の荒木地収支店長はr資金調達はもちろ ん、優秀な人材を確保するためにも、株式公開には大きなメリットがある。県内でも上場基準を満たして いる企業はまだある」。新規上場の勧めでもある。」『いわて万華鏡』2005.9.30.『福井新聞』r前田工繊、
東証2部上場〜人材の確保、開発力強化へ」〜2007年7月5目。
① アンケート調査
② 目経4紙におけるキーワードの記事出現数調査
(2)アンケート調査
第1に2007年12月11目と12目の両目、愛知工業大学経営情報科学部3学科の学生を
対象にアンケート調査を行った。学生のアンケートの目的は、就職に際してどの程度に企 業の持続可能性を求めているのか、次いで、上場企業であるかどうかをどの程度に重視す るか、上場企業を重視する理由(複数回答)、上場企業を重視しない理由(複数回答)とを質問し、 これらの相関関係を分析した。
アンケートの実施時期を2007年12月中旬に設定した。アンケート時期は、いわゆる就 職戦線が始まる2月以前を選択した。その理由は就職活動の現実の中での妥協など、回答 者の感情によるバイアスを排除するためである。愛知工業大学は好況といわれる愛知県に 位置し、学生は就職先を上場企業と非上場企業とで選択できる環境にあるので、あえて他 大学での結果を調査に加味する意味が薄いと判断した。また、経営情報科学部の経営情報 学科、 コンピュータ情報学科およびマーケティング情報学科の3学科の学生は、ほぼ学生 の希望通りに製造職、営業職および事務職のいずれでも選べる環境にあるから、あえてア ンケート回答者を他学部に拡大しなくとも差し支えないと判断した。結論とレて、今回の アンケート回答者は比較的にバイアスのない自由な求職者の立場であり、企業の持続可能 性と株式上場との意識調査もある程度の普遍性を持つであろうと推測した。
本アンケートは記名式で行い無意味な回答を排除し、アンケートの実施には著者が授業 中に全出席者に対して実施して無効の回答を最小化し、就職は学生にとっては自己の進路 に直接に係わる事項であるため、今回のアンケートの回答は信頼性が高いものであると思
われる。
(3)日経4紙におけるキーワードの記事出現数調査
第2の調査は、1975年1月から2007年12月までにおける目経4紙における記事キーワ ード検索によるキーワードの出現記事数の調査である。ここで、目経4紙とは、『日本経済
新聞』(朝刊と夕刊)、『目経産業新聞』、『目経金融新聞』および『目経M:」』(日経流通新聞)
であり、その記事検索エンジンは目経テレコンを使用した。記事検索したキーワードは、「転 職、再就職、人材紹介、終身雇用、失業、持続可能性&企業&リスク」である。ここで目 本人にある意識の中で、それまでは当り前とさせていた終身雇用が再検討され、転職、再 就職、人材紹介、終身雇用、失業と言った言葉が目常的に使われていく頻度がどのような 傾向にあるのかを調査した。
(4)期待される調査結果
本研究の結果、期待される結論は以下の通りである。また、このリサーチデザインによ るでは、直ちにr上場企業は即ち高い持続可能性がある企業である」という結論を調査目 的としていない。
仮説1.
仮説2.
仮説3.
橋本政権以来、その結果生じた企業勤務者の転職や再就職は必ずしも容易ではなく、むしろ持 続可能な企業への就職が見直されてきた。
そのような環境の中で、就職活動中の学生は持続可能性が高い企業への就職希望が高い。
情報の非対称性の中で情報格差のある学生にとっては、持続可能性の代理指標には上場企業か 否かが、学生には重要である。
第3節仮説に対する考察,
(1)仮説1の検証
仮説1を更に3段階に分解すれば、①転職や再就職は社会現象となり、②これらは必ず しも容易ではないことを知り、③リストラなどがない持続可能な企業への就職が見直されて きた、と分析できる。
まず①転職や再就職は社会現象化については、下記の図表2.2における目本経済新聞社の 発行する4紙に出現する各キーワードの出現記事数からも、1998年あるいは1999年を境 に急激に増加している。比較のために最右列にはかつて目本的経営と賞賛されたr終身雇 用」が1994年を境に減少の一途である。なお、白抜き数字は最頻値を示している。
図表2.2キーワード出現頻度
キーワード 転職 再就職 人材紹介 失業 終身雇用
1975年
2 7 0
102
1976年
4
150
513
1977年
7
130
1514
1978年 20 19 の 1 92
3
1979年 18 14
1
754
1980年
6 7 0
821
1981年 30 25
0
231 141982年 68 96
5
1,068 501983年 75 86
O
926 291984年 95 80
3
570 481985年 94 97
6
496 471986年 137 187
6
724 801987年 142 123
3
726 801988年 101 49
4
816 481989年 135 80
6
583 501990年 154 84
0
654 421991年 147 75
9
714 461992年 147 69
8
782 711993年 193 122
4
962 124l l
153 1994年 194 127
6
7871995年 204 99
8
7901996年 238 115 14 853 131 1997年 220 149 14 877
1
1,290
126 1998年 241
206
244 28 135
1999年
137
蟹● 55 151
2000年 48 838 83
2001年 223 234 69 1,268 102 2002年 204 238 67 970 103 2003年 133 166 83 768 53 2004年 196 126 55 549 50 2005年 165 148 69
143 ● 487
86
480 81
2006年 200 58
2007年 256 199 425、 67
図表2.3のグラフは図表2.2を可視化したものである。なお、ここではキーワード「失業」
の出現頻度が大きいために、これのみ10分の1の目盛りとして表示している。グラフから も容易に分かるとおり、「失業」と「終身雇用」というキーワードが減少傾向にあり、他の キーワードは増加傾向あるいは高い頻度を保っている。
これらの記事出現頻度からも、転職や再就職は社会現象となったことは明らかである。
図表2.3キーワード出現頻度グラフ「再就職、転職、失業、人材紹介、終身雇用」
350
300
250
200
150
100
50
0
諮轡誘鰺諮諮轡譜趣諮諮轡諮趣諮諮懲 〆厨〆趣爵趣逮趣逮魂縛魂縛ド鉾ドド
灘灘
簸麟魏ギ 』ぢ,
欝灘欝麓轡撫瞬響欝
縦灘鐙 鞭縦・ 鞭 一
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