第7章 ファイナイト保,険およびクレ
が、この入金分は金利を乗せて5、年で返済する実質的なローン契約でしかなかった。ファ イナイト保険と保険とは名ばかりの保険契約で、結果的にリスクは3社が負うことになっ
た。
(2)ファイナイト保険の保険性
ファイナイト保険では、保険料の支払いはあたかも定期型の積立預金に似て、満期に はそのほとんどが無事故返戻金(へんれいきん)として戻されてしまう。保険事故が発生 すると、確かに保険金は支払われるが、それ以降の保険料が上がり、その保険金は実質的 に高くなった保険料の形で支払われることとなる。従って、保険金は、定期積立預金を担 保にしたローンと経済的には同じことになる。保険金を受け取ると、それを保険料でr支 払い切る」までは保険契約を解約できないことはいうまでもない。
ファイナイト保険を引き受けることはその経済的な実態は資金借入に過ぎないが、AIG保 険会社は収益と強弁して利益操作を行っている。このように、ファイナイト保険への無知 に付け込んんで、あたかもリスク移転が行われたかのような仮装経理が米国では問題にな っている。
これについて目本では基準がない。IFRS第4号は、これを保険の定義を満たすものとはし ているが、返戻金部分については、それを保険と見なさず、預金として分離する場合を設 けている。多くの場合は分離処理となるとしている。
これが日本では、節税のためにタックスヘイブン国を経由させる方法で紹介されている が、本来は本末転倒である。これが東京国税庁と東京海上目動との係争事件となったが、。
008年11月27目に東京地裁では原告(東京海上)の勝訴となった。その企業向け地震保険を めぐり、東京国税局から所得隠しを指摘された東京海上目動火災保険が、追徴課税処分の 取り消しを求めた訴訟の内容は以下の通りである。東京地裁は、東京海上側の訴えを全面 的に認め、約46億円の課税処分取り消しを言い渡した。東京海上は、地震が発生した場合 に企業に支払う保険料が巨額になる危険性を分散させるため、保険の保険となる再保険契 約をアイルランドの100%子会社と締結し、当該子会社は欧州の損保との間で、地震が起き なければ保険料の大半が返還される「ファイナイト型」の再々保険契約を結んだ。東京海 上は子会社に支払った再保険料を経費として損金処理したが、東京国税局は「地震がなけ れば返還される再保険料は『預け金』に当たり損金処理できない」として、子会社を介在 させた所得隠しと判断し、2001年年3月期までの4年間にわたり追徴課税した。東京地裁 は、 r収支悪化を回避しつつ利益を最大にする枠組みとして合理性がある」と指摘して、
再保険料は経費に当たると判断した。
本来、ファイナイト再保険は優れたリスク分散の手段ではあるが、保険であると強弁して、
その支払保険料を損金にしてしまったことは残念である。
(3) ファイナイト保険の特徴
分離処理すれば節税効果はなくなるが、それでもローン特約の部分がリスク管理に十分 に機能するから優れた制度であると思われる。特に地震などは稀にしか発生せず、大数の 法則も働きにくいから、通常の保険では禁止的な保険料になる。しかし、稀な事象に備え るファイナンスの仕組みも必要であるから、その意味でファイナイト保険を正しい目的で 普及するのは意味がある。
(本章は、日本社会関連研究学会『社会関連研究』第19号、2007年1L月30採択にある同 名の論文に加筆要約したものである。)
第2節 サブプライム問題における会計上の諸問題
(1)サブプライム問題の仕組み
サブプライムはサブプライム・ローンの略で、これはアメリカの住宅ローンのうち優遇 金利ローンでない低所得者向け住宅ローンをいう。っまり、アメリカの住宅ローンは優遇 金利が適用になるプライ、ム・ローンと、適用にならないサブプライム・ローンとからなり、
プライム・ローンに関しては特段に貸倒れリスクは問題になっていない。サブプライム問 題とは後者での貸倒れ問題だというのである。
● プライム・ローン
● サブプライム・ローン
もともとサブプライム・ローンの利用者はクレジット・カードでの事故歴のあるような 低所得層が多い。まして、多くのサブプライム・ローンでは最初の2年間は低利であるが、
3年目からは急に高利になる仕組みであるから、貸出す住宅ローン会社では不良債権化す ることも事前に知っていたと思われる。
これは目本でも、かつて公庫融資でのrゆとり返済方式」および年金住宅融資でのrス テップ返済方式」と呼ばれたものと原理的には同じ仕組みである。っまり目本では最初の5 年間の返済額を75年返済で計算した毎月返済額を採用するなどして極端に少なくし、6年
目以降に返済額が増加するタイプの住宅ローンであった。しかし、これは単に住宅ローン の返済を6年以降に先送りにしているだけで、結局は、自己破産などで社会問題化して、
いわ
平成12年度に廃止された曰くっきの融資方法であった。
低所得者向けの住宅ローンは地方銀行ではなく、住宅ローン会社が取り扱うことが多い。
この意味では、サブプライム・ローンを行うアメリカの住宅ローン会社は、高い貸倒れリ スクを承知の上で積極融資を行った目本の消費者信用会社(サラ金など)とも似ている。
目本の消費者金融が消費の底上げをして日本経済に寄与したという話は寡聞にして聞か ない。しかし、アメリカでのサブプライム・ローンは確かに住宅建設によるアメリカの景 っぶ 気の底支えに寄与してきたのである。だから、連邦政府も多少の胡散臭さに目を瞑ったと
される。
(2)住宅担保証券(RMBS)
このような場合、会計上ではそこでの貸倒引当金や貸倒れ償却が十分にとられているか どうかの問題に帰結して終わるはずである。ところが、アメリカのサブプライム・ローン の問題は住宅ローン会社だけでは終わらなかった。なぜなら、比較的高利回りのサブプラ イム・ローン会社の貸出債権は証券化の技法によって、銀行へ売られたのである。住宅担 保証券(RMBS、Residential mortgage−backed security)と呼ばれるものである。要する
に、住宅ローン会社の社債を銀行が引き受けてくれたことにより、住宅ローン会社では資 金調達が可能になり、新規ローンができるようになったである。また、特定目的会社を通 して組成されるものであるから、倒産隔離の原理が利用できるから、住宅ローン会社では 貸倒れリスクを銀行に移転できる仕組みが用意できていた。あたかも、自社の高リスクの 住宅ローン債権を、ババ抜きのごとく移転した上で、早期に現金で回収することが可能に
なったのである。
(3)BIS規制と貸し剥がし
高利回りの債券であるRMBSは、少しでも高い資金運用先を求める銀行についても好都 合であった。消費者金融が社会的な問題になっていたときでも、日本の銀行の中にはこれ への積極融資をした銀行もあったのと同じ現象である。一部の金融の世界では、明目にリ スクを抱えていたとしても、今目の利鞘を結果として上に報告したいという風潮があるの も事実である。
では銀行は儲かりさえすれば、何にでも投資できるかといえば、実はそうではない。目 ビ ス
本もそうであるが、アメリカの銀行にもB I S規制が適用されて、資産運用には徹底的な 甦繍が嵌められている。B I S規制とはバーゼル合意の名でも知られているが、G10諸国の 各銀行の自己資本比率に関する国際統一基準である。これによれば、その国の国際的な銀 行では自己資本は8%を維持せよとなっている。図表1で分かりやすく言えば、「自己資本 が③1億円の銀行は運用資産を③1億円÷0.08=①12.5億円までとせよ」ということであ る。自己資本とは、現在の会計基準では純資産と呼ばれているものである。ちなみに、こ の場合の負債は、運用資産①12.5億円一純資産③1.0億円=②11.5億円と決まってしまい、
あたかも箸の上げ下げまで決められてしまう構図となった。
図表7.1 B l S規制を説明する貸借対照表
貸借対照表
(借方) 億円 (貸方) 億円
運用資産(貸出金、有価証券) ● 12.5 負債(預金) ● 11.5
純資産
(資本金、利益剰余金、
含み益)
● 1.0
ちなみに、目本の不動産業界でもBIS規制の犠牲になったことはいうまでもない。銀
や
行は貸出金の総量枠が決められた以上、貸出先の選別融資に向かうことは止むを得ない。
目本で問題になったのは、手持ちの有価証券の含み損の存在であった。含み損は自己資本 の計算上はマイナス要因である。仮に持ち株が1億円下がれば、貸出金は12.5億円だけ切 り詰めればならない。これが貸し剥がしの直接的な原因であった。そういう時代を経て、
目本の金融機関は世界の信頼を勝ち得るまでに回復したのであった。
以上の説明は、国際業務を行う銀行についてであり、国内銀行については8%に代わっ て4%が適用されたから、1÷0.04=25、つまり1億円の自己資本に対して25億円まで貸
し出しができることになっている。また、B I S規制はGlO諸国の銀行への自主規制であ るから、G10諸国には大変な規制であり、韓国や中国の銀行はこの規制外になっているこ とも付記しておく。
(4)BIS規制に対する銀行の対応
各銀行のリスク管理を目的としているB I S規制の計算は、実はかなり細かく書かれて いる。例えば、貸出しがB I S規制で難しい場合、それに代わる方法として、他の金融機 関から借りてもらうが銀行保証をしてもらうことも考えられる。しかし、B I S規制では 銀行が債務保証を与える場合には、これを融資の実行とみなすこととしている。
また、リスクウエイト(掛け目)というリスク管理手法を導入している。1,988年の導入 当初は、OECD加盟国の国債であればリスクがないからという理由で、掛け目0%として、
総量規制から外している。他方、貸出金や保有する有価証券には掛け目100%、住宅ローン には50%として一律の掛け目を用いて規制枠の対象としていた。現在では、より実情に応
じて、銀行内でのより詳しい強い信用リスク(倒産確率、回収率および危険分散度)を統 計的に設定して、低い掛け目を容認する内部格付手法も認められている。内部格付手法は 最近の内部統制理論の進展に従って、各銀行ごとの掛け目を許すものである(図表2)。