第7章 第1実験
7.2 結果
7.2.1 仮説1の検証
7.2 結果
仮説1の検証にあたり、Moore and Small (2007)やMoore and Healy (2008)など をベースとして、自己評価と実際の得点の差(discrepancy)を取って得られる値を
「DCse(添字の seはSelf-Enhancementの略)」と定義する。DCseの値が正なら ば平均高揚効果が現出し、負ならば平均卑下効果が現出していると推察できる。
(1)難易度が低い課題【総合テスト(A)】
総合テスト(A)での実際の得点と各得点でのDCseの現出結果は図表 7-2-1及び
図表7-2-2に示すとおりである。
実際の得点と自己評価の差に 有意差があるかを統計的に 検定する上で、まずそれぞれの データが正規分布に従う母集団 からの標本であるかを検定する ため、χ2検定により実際の得点 のデータの分布が正規分布とみ なされるかを検定する。
実際の得点(n=172)にお いて、帰無仮説「総合テスト
(A)の実際の得点のデータの分 布は正規分布とみなされる」と対 立仮説「総合テスト(A)の実際 の得点のデータの分布は正規分布 とみなされない」を立てる。危険 率5%での検定の結果、χ2値は 99.27で、危険率5%の上側境界値 χ2(0.95)=14.06に対して、
99.27>14.06だから、χ2値は帰無
仮説の棄却域に入り、帰無仮説は棄却される。P値についても同順位補正P値(両側確 率)=1.5249×E-18であるから、危険率1%でも帰無仮説は棄却される。よって、「総合テ スト(A)の実際の得点のデータの分布は正規分布とみなされない」という対立仮説が採
図表7-2-2 総合テスト(A)での実際の得点ごとのDCseの 現出結果
図表7-2-1 総合テスト(A)での実際の得点ごとのDCseの 現出結果
最大 最小 加重平均
10 3 1.7% 0 -2 -1.00
9 29 16.9% 1 -2 -1.17
8 40 23.3% 2 -2 -0.58
7 45 26.2% 2 -3 -0.38
6 33 19.2% 3 -3 -0.24
5 19 11.0% 2 -3 0.00
4 2 1.2% 0 -2 -1.00
3 1 0.6% 0 - 0.00
2 0 0.0% - -
-1 0 0.0% - -
-0 0 0.0% - -
-- 172 100.0% - -
-実際の得点 データ数 比率 DCse
択される。
自己評価(n=172)において、帰無仮説「総合テスト(A)の自己評価のデータの分 布は正規分布とみなされる」と対立仮説「総合テスト(A)の自己評価のデータの分布は 正規分布とみなされない」を立てる。危険率5%での検定の結果、χ2値は56.48で、危険 率5%の上側境界値χ2(0.95)=14.06に対して、56.48>14.06だから、χ2値は帰無仮説 の棄却域に入り、帰無仮説は棄却される。P値についても同順位補正P値(両側確率)=
7.57×E-10であるから、危険率1%でも帰無仮説は棄却される。よって、「総合テスト
(A)の自己評価のデータの分布は正規分布とみなされない」という対立仮説が採択され る。
この結果、独立した2群(実際の得点と自己評価)のデータはともに正規分布に従 わず、かつデータが離散的である。そこで、 ノンパラメトリック検定の1つであるマ ン・ホイットニー検定により、独立した2群(実際の得点と自己評価)から得られたデ ータに基づき、それぞれの母集団の分布の中央値に差があるかを検定する。
帰無仮説「総合テスト(A)の実際の得点と自己評価のデータの現出傾向に違いがな い」と対立仮説「総合テスト(A)の実際の得点と自己評価のデータの現出傾向に違い がある(有意差がある)」を立てる。危険率5%での検定の結果、同順位補正Z値は-3.09 で、標準正規分布の両側検定での危険率5%の上側境界値Z(0.975)=1.95に対して、
|-3.09|>1.95だから、同順位補正Z値は帰無仮説の棄却域に入り、帰無仮説は棄却 される。また、P値についても同順位補正P値(両側確率)=0.001であるから、危険率
1%でも帰無仮説は棄却される。よって、「総合テスト(A)の実際の得点と自己評価の
データの現出傾向に違いがある(有意差がある)」という対立仮説が採択される。
(2)難易度が高い課題【総合テスト(B)】
総合テスト(B)での実際の得点と各得点でのDCseの現出結果は図表 7-3-1及び
図表7-3-2に示すとおりである。
実際の得点と自己評価の差に有意差があるかを統計的に検定する上で、まずそれぞ れのデータが正規分布に従う母集団からの標本であるかを検定するため、χ2検定によ
り実際の得点のデータの分布が正規分布とみなされるかどうかを検定する。
実際の得点(n=172)において、帰無仮説「総合テスト(B)の実際の得点のデータ の分布は正規分布とみなされる」
と対立仮説「総合テスト(B)の 実際の得点のデータの分布は正規 分布とみなされない」を立てる。
危険率5%での検定の結果、χ2値 は59.79で、危険率5%の上側境界 値χ2(0.95)=14.06に対して、
59.79>14.06だから、χ2値は帰
無仮説の棄却域に入り、帰無仮説 は棄却される。P値についても同順 位補正P値(両側確率)=1.66×E
-10であるから、危険率1%でも帰無 仮説は棄却される。よって、「総合 テスト(B)の実際の得点のデー タの分布は正規分布とみなされな い」という対立仮説が採択され る。
自己評価(n=172)におい て、帰無仮説「総合テスト(B)の
自己評価のデータの分布は正規分布とみなされる」と対立仮説「総合テスト(B)の自己 評価のデータの分布は正規分布とみなされない」を立てる。危険率5%での検定の結果、
χ2値は47.37で、危険率5%の上側境界値χ2(0.95)=14.06に対して、47.37>14.06だ から、χ2値は帰無仮説の棄却域に入り、帰無仮説は棄却される。P値についても同順位 補正P値(両側確率)=4.72×E-8であるから、危険率1%でも帰無仮説は棄却される。よ って、「総合テスト(B)の実際の得点のデータの分布は正規分布とみなされない」とい う対立仮説が採択される。
この結果、独立した2群(実際の得点と自己評価)のデータはともに正規分布に従 わず、かつデータが離散的である。そこで、 ノンパラメトリック検定の1つであるマ
図表7-3-1 総合テスト(B)での実際の得点ごとのDCseの 現出結果
図表7-3-2 総合テスト(B)での実際の得点ごとのDCseの 現出結果
最大 最小 加重平均
10 0 0.0% - -
-9 0 0.0% - -
-8 1 0.6% 0 - 0.00
7 6 3.5% 0 -1 -0.50
6 17 9.9% 1 -1 -0.59
5 31 18.0% 2 -1 -0.32
4 38 22.1% 1 -1 -0.03
3 44 25.6% 1 -1 -0.11
2 14 8.1% 1 -1 -0.29
1 19 11.0% 2 -1 0.17
0 2 1.2% 1 0 0.50
- 172 100.0% - -
-比率 DCse
データ数 実際の得点
ン・ホイットニー検定により、独立した2群(実際の得点と自己評価)から得られたデ ータに基づき、それぞれの母集団の分布の中央値に差があるかを検定する。
帰無仮説「総合テスト(B)の実際の得点と自己評価のデータの現出傾向に違いがな い」と対立仮説「総合テスト(B)の実際の得点と自己評価のデータの現出傾向に違い がある(有意差がある)」を立てる。危険率5%での検定の結果、同順位補正Z値は-0.87 で、標準正規分布の両側検定での危険率5%の上側境界値Z(0.975)=1.95に対して、
|-0.87|<1.95だから、同順位補正Z値は帰無仮説の棄却域に入らず、帰無仮説は棄 却されない。また、P値についても同順位補正P値(両側確率)=0.38であるから、危 険率1%でも帰無仮説は棄却されない。よって、「総合テスト(B)の実際の得点と自己 評価のデータの現出傾向に違いがない」という帰無仮説が採択される。
(3)結果
難易度が低い課題【総合テスト(A)】では仮説が支持され、自己卑下効果が統計的 に有意に現出することが示された。これは、図表7-2-2及び図表7-4-2を概観すると 簡便的にも難易度の低い課題で自己卑下効果が現出していることが確認できる。他 方、難易度が高い課題【総合テスト(B)】ではDCse から自己卑下効果が現出する傾 向は推察されたものの、統計的な優位差は観察されなかった。但し、図表7-3-2及び
図表7-5-2からも、難易度の高い課題でも自己卑下効果が現出する傾向が確認でき
る。
図表7-4-2 総合テスト(A)でのDCseの現出結果 図表7-4-1 総合テスト(A)でのDCseの
現出結果
DCse データ数 比率
-3 2 1.2%
-2 29 16.9%
-1 59 34.3%
0 54 31.4%
1 21 12.2%
2 6 3.5%
3 1 0.6%
- 172 100.0%