第6章 結論
第2節 今後の課題
今 後,限 られ た 予 算 の 中 で 効 率 的 に 漏 水 管 理 を 実 施 す る た め の 情 報 に 対 す る必 要 性 が ま す ま す 高 ま る と考 え られ る.各 水 道 事 業 体 で は 監 視 制 御 シ ス テ ム を活 用 した 異 常 時 の 迅 速 な 対 応 や,マ ッ ピ ン グ シ ス テ ム との 連 携 に よ る効 率 的 な 管 路 更 新 な ど様 々 な 取 り組 み が 行 わ れ て い る 中,水 圧 調 整 に よ る適 正 給 水(漏 水 削 減)や 水 圧 監 視 に よ る漏 水 事 故 位 置 推 定, 高 度 な 水 圧 制 御 の 導 入 な どに つ い て,研 究 を進 め て き た.
第1章 で 述 べ た 水 圧 調 整,水 圧 監 視,水 圧 制 御 そ れ ぞ れ の課 題 に 対 し,本 研 究 で は,表6‑2 に 示 す よ うに,限 られ た 点 で の 水 圧 測 定 デ ー タ を も と に 夜 間 の 余 剰 水 圧 を 抑 制 す る こ と に よ る漏 水 削 減 効 果 の 定 量 化 や,複 数 箇 所 に お け る高 周 波 数 で の 水 圧 監 視 に よ る 管 路 破 断 事 故 位 置 の推 定 方 法 を 明 ら か にす る と と も に,隣 接 す る 配 水 ブ ロ ッ ク の 水 圧 測 定 デ ー タ を 相 互 利 用 して 消 防 用 水 量 な ど の 突 発 的 な 水 需 要 量 の 増 加 に 対 して ロ バ ス トな 水 圧 制 御 に よ る 省 エ ネ ル ギー 化 手 法 を提 案 した.そ の 他,ブ ロ ッ ク 化 に よ る対 策 や 水 道 ス マ ー トメ ー タ デ ー タ の 利 活 用 とい っ た 配 水 管 網 に お け る漏 水 管 理 上
,有 用 と思 わ れ る 施 策 は い くっ か あ る が,こ れ らの 施 策 に つ い て も今 後 の 発 展 が 期 待 され る.
ICT活 用 の 重 要 性 が 高 ま る 中,一 般 に 配 水 プ ロセ ス で は,多 くの デ ー タ を取 得 す る の に は コ ス トが か か る.特 に,公 民 連 携 で 水 事 業 を 行 う場 合 に は,第 一 段 階 と して 現 状 得 られ る デ ー タ の み か ら簡 易 的 な 推 定 を 行 っ て 施 策 の 効 果 を確 認 し,そ の 後 現 場 測 定 に よ っ て 推 定 結 果 の 裏 付 け を 取 りな が ら,実 施 策 に 展 開 す る こ とが そ の 事 業 の 特 性 上 か ら も効 果 的 と考 え る.そ して,運 転 員 に よ る オ ペ レー シ ョン の 負 荷 が 高 い 施 策 を 実 施 す る場 合 に は 自動 制 御 な ど の シ ス テ ム 導 入 を 検 討 し,予 算 に 見 合 っ た 具 体 的 な施 策 を シ ス テ ム 化 して さ ら な る 改 善 効 果 を 得 る と い う段 階 的 な ス キー ム が 重 要 と考 え る.
埋 設 年 数40年 を超 え る老 朽 管 の 布 設 割 合 が 増 加 す る 一 方,管 路 更 新 予 算 が ひ っ 迫 して い る 現 状 が あ る.こ う した 中,設 備 投 資 に よ る 対 策 だ け で な く,配 水 圧 力 コ ン トロー ル とい っ た 運 用 面 か らの 対 策 へ の 期 待 が 高 ま っ て お り,持 続 可 能 な配 水 管 網 シ ス テ ム構 築 に 向 け て,水 圧 調 整,水 圧 監 視,水 圧 制 御 に よ る 積 極 的 な 貢 献 が 重 要 に な る と考 え られ る.
表6・2水 圧 管 理 にお け る現 状 の課 題 とあ るべ き 姿
現状 課題 有 るべき姿
水圧調整
ブロック化 による対 策 多額の予算が必要 事業 統 合 なaこよる広域 化
減 圧 弁 による対 策 時 々刻 々と変 化 する水 圧 変化 に対応 できない 余剰水圧推定による減圧
水圧監視
末端での水圧測定 水 圧 計 設 置数 が少 ない
水 圧 データを2次 活 用できていない
水圧 データの有 効 利用 (管路 破 断 事故 位 置 の推 定)
管 網 解析 による水 圧 推 定 時 々刻 々と変 化 する水 需 要 の変化 は 模 擬 できない
水道 スマートメータなどによる 水 需要 量 のリアルタイムデータ取 得
水圧制御 PI制 御 自ブロックしか見 ていない 隣接 ブロックとの協 調 制 御 方式 による
新 たな付加 価 値 の創 出
:本 研 究 の 対 象 外 口:本 研 究 の 対 象
謝辞
本 研 究 は 多 くの 関 係 者 の 皆 様 か らの ご支 援,ご 鞭 捲 を賜 り,ま と め る こ と が で き ま した.
こ こ に 心 か ら御 礼 を 申 し上 げ ます.
首 都 大 学 東 京 参 与 で あ り,同 大 学 都 市 環 境 学 部 特 任 教 授 で あ られ る小 泉 明 先 生,並 び に, 同 大 学 院 教 授 の 稲 員 と よ の 先 生 に は,研 究 全 般 に わ た っ て の 懇 切 丁 寧 な ご指 導 と貴 重 な ご 意 見 を 賜 っ た の み な らず,研 究 者 と して の 姿 勢 や 考 え方 を 折 に 触 れ て ご教 示 頂 き ま し た.
研 究 の 方 向 性 や 意 義 付 け に 関 して,真 摯 に ご助 言 を 下 さ っ た こ とで,本 論 文 の 道 筋 を立 て る こ と が で き,心 よ り感 謝 申 し上 げ ま す.ま た,学 位 論 文 の 審 査 に お き ま して は,同 大 学 院 准 教 授 の 荒 井 康 弘 先 生,お よび 横 山 勝 英 先 生 か ら有 益 な ご指 導 と ご助 言 を数 多 く頂 き, 深 く感 謝 申 し上 げ ま す.さ らに,同 大 学 院 助 教 の 山 崎 公 子 先 生,お よ び 特 任 准 教 授 の 國 實 誉 治 先 生 に は,不 慣 れ な 社 会 人 と して の 大 学 院 生 活 や 研 究 活 動 の 遂 行 に お い て,親 身 に ご 支 援 と ご助 言 を 頂 き ま し た.首 都 大 学 東 京 大 学 院 で の 研 究 遂 行 は,筆 者 に と っ て 大 変 貴 重 な 経 験 に な りま した.こ の 経 験 と諸 先 生 方 の ご 指 導 を今 後 の 研 究 活 動 に活 か す べ く,こ れ か ら も研 鎭 を重 ね て 参 る 所 存 で す.
筆 者 は,株 式 会 社 東 芝 に 入 社 後,現 電 力 ・社 会 シ ス テ ム 技 術 開 発 セ ン タ ー に配 属 され, 制 御 ・シ ミュ レー シ ョ ン技 術 を 通 じて,水 道 シ ス テ ム,特 に配 水 コ ン トロー ル の 研 究 開 発 に 従 事 して き ま した.そ の 当 時,本 研 究 に 寄 与 す る 業 務 に 専 念 で き る環 境 を 与 えて 頂 い た 黒 川 太 氏(現 主 幹),坂 本 義 行 氏(現 研 究 部 長)に 深 く御 礼 申 し上 げ ま す.ま た,当 時 の 業 務 の 中 で,本 蔵 義 弘 氏(現(株)司 エ ン ジ ニ ア リン グ部 長),湯 川 敦 司 氏 に は,配 水 プ ロセ ス の 知 識 や 管 網 解 析 とい っ た 一 連 の 知 識 を ご指 導 頂 き,深 く御 礼 申 し上 げ ま す.さ らに, 有 吉 寛 記 氏(現 フ ジ テ コ ム テ クニ カ ル フ ェ ロー)を 始 め,加 藤 高 敏 氏,杉 野 寿 治 氏(現 参 事),中 村 博 之 氏(現 グル ー プ 長)か ら は,社 会 人 と して 首 都 大 学 東 京 大 学 院 へ 入 学 す る に あ た っ て の 動 機 付 け を頂 き,背 中 を押 して 頂 け た こ と は 大 変 有 り難 く,深 く感 謝 申 し上 げ ま す.
そ して 筆 者 が,同 大 学 院 へ 入 学 して 研 究 を 遂 行 す る に あ た っ て は,同 セ ン タ ー の 澤 田彰 氏(現 室 長),シ ス テ ム制 御 ・ネ ッ トワー ク 開発 部 の 馬 場 賢 二 氏(現 部 長)に は,多 大 な 便 宜 を 図 っ て 頂 く と 同 時 に,業 務 との 両 立 に っ い て 寛 大 な ご 理 解 を 頂 き ま した.心 よ り感 謝 申 し上 げ ま す.ま た,同 部 の シ ス テ ム 制 御 ・最 適 化 技 術 開発 担 当 の 皆 様 に は,本 研 究 を遂
行 す る に あ た っ て,数 々 の ご助 力 と ご協 力 を頂 き ま した.特 に,難 波 諒 氏(現 主 務),勝 山 裕 輝 氏(現 主 事)に は,共 同研 究 者 と して 本 研 究 遂 行 の た め に 絶 大 な る ご尽 力 を頂 き ま し た.お 二 人 の 成 果 無 く し て,本 研 究 の 成 果 は な か っ た と確 信 して お りま す.お 二 人 の 積 み 重 ね て 下 さっ た 成 果 に,心 か ら敬 意 を 表 す と と も に,深 く御 礼 申 し上 げ ま す.
最 後 に,こ の 活 動 を理 解 し,常 に支 え て くれ た 家 族 に 感 謝 の意 を表 しま す.
付録A管 網解析の高速化
本 論 文 で の シ ミュ レー シ ョ ンで 用 い た 管 網 解 析 で は,グ ラ フ理 論 を 用 い た 非 圧 縮 性 流 体 の 「運 動 方 程 式 」,「質 量 保 存 式 」 に 加 え,「 閉 回 路(ル ー プ)の 圧 力 損 失 式 」 の 考 え 方 を導 入 す る こ と に よ り,演 算 時 間 の 短 縮,す な わ ち 高 速 化 を 図 っ て い る.本 節 で は,各 式 そ れ ぞ れ に つ い て 説 明 す る.ま た,各 式 か ら得 られ る 「連 立 常 微 分 方 程 式 の解 法 」 につ い て 説 明 す る.
説 明 の た め,管 路 網 モ デ ル の 例 を 図7‑1に 示 す.水 道 管 路 網 は グ ラ フ理 論 で 扱 うグ ラ フ と 定 義 され,い くっ か の 節 点(ノ ー ド)と そ れ らの ノ ー ド対 を 両 端 とす る枝(エ ッ ジ)か ら 成 る.ノ ー ドは 管 路 継 手 や 枝 分 か れ の あ る圧 力 測 定 点 や 水 需 要 家 の 集 合 を,エ ッ ジ は 管 路 を 表 して い る.
図7‑1に 示 す ノー ド数5の 管 路 網 で は,管 路 の 接 続 状 態 や 管 路 情 報 な ど を表7‑1,表7‑2 の よ うに定 義 す る こ と が で き る.
節点番号
管路番号
図7‑1ノ ー ド数5の 管 路 網 の 例
表7‑1ノ ー ド(節 点)情 報 の 例
節点番号
水 需 要 量[m3/s] 標 高[m]①
q1 H1②
q2 H2③
q3 H3④
qイ恥
⑤
q5 H5表7‑2エ ッ ジ(管 路)情 報 の 例
管路番号 始点 終点
口 径[m] 長 さ[m] 摩 擦 損 失 係 数[一]1 1 2 D12 L12 212
2 2 3 D23 L23 223
3 2 4 D2イ L2イ 224
4 3 4 D3イ L3イ 234
5 3 5 D35 L35 235
6 4 5 D45 L45 245
(1)運 動 方 程 式
水 道 管 路 網 の 各 管 路 を 流 れ る流 体 の 運 動 方 程 式 は(7‑1)式 で 表 され る.
響)一 評)一 恥嚇@一 砂 轟 蝋 ω1(7‑・)
こ こ で,
pl(の:時 刻tに お け る 節 点 諺の 圧 力[Pa]
%(t):時 刻tに お け る 節 点iか ら節 点 ブを 流 れ る 管 路 の 流 速[m/s]
Hi:節 点iの 標 高[m]
ρ:流 体 の 密 度[kg/m3]
g:重 力 加 速 度[m/s2]
Lij:節 点1か ら節 点 ノを 結 ぶ 管 路 の 長 さ[m]
Dij:節 点1か ら節 点 ノを 結 ぶ 管 路 の 口径[m]
・Lij:節 点iか ら節 点 ノを 結 ぶ 管 路 の 摩 擦 損 失 係 数[一]
で あ る.
右 辺 の 第1項 は,有 効 水 圧 差 に よ る 圧 力 損 失,第2項 は,標 高 差 に よ る 圧 力 損 失,第3 項 は,流 体 と 管 路 壁 面 で の 摩 擦 に よ る 圧 力 損 失 を 表 す.
(7‑1)式 の 行 列 表 現 は(7‑2)式 とな り,行 列 の 列 数 は 存 在 す る管 路 数 と等 しい.
dP‑L砦+RV・lvl‑F(7‑2)
こ こ で,式 中 の 「.」は ベ ク トル の 要 素 ご と の 積 を 表 す.Vは 区 間 流 速 ベ ク トル で(7‑1) 式 のCViノ(t)を縦 ベ ク トル 表 現 し た も の で あ る.
ま た 各 行 列 や ベ ク トル の 成 分 は,
L=ρ
R=2 2
E=i(rg
00..2 D3/0ら00EOOO
メ(∠1均000L
Hl‑H2 H2‑H3
H4‑H5
Vl2
V23d P=V=
V45
0 0
L45 O L23!23/D23
0 0
Pl‑P2 P2‑P3
iで あ る.
P4‑P5
00
0 0
L45Z45/D45
な お,変 数 の 添 え 字 は 図7‑1に 示 す ノ ー ド数5の 検 証 用 モ デ ル に 沿 っ た 表 記 で あ る.
(2)質 量 保 存 式
各 ノー ドご との 質 量 保 存 式 は,次 式 で 表 され る.
A(SV)=q
(7‑3)
こ こ で, A:接 続 行 列
S:区 間 断 面 積[m2](対 角 が0の 正 方 行 列 で 表 現 した も の) q:節 点1の 水 需 要 量[m3/s]
で あ り,
Sij‑{ilDij2(7‑4)
で あ る.
接 続 行 列Aと は,有 向 グ ラ フ に お い て,各 行pが グ ラ フ の 各 節 点 に,各 列kが グ ラ フ の 各 枝 に 対 応 し,各 要 素 へkが そ れ ぞ れ 次 式 で 与 え られ るp×k行 列 で あ り,(7‑5)式 の 定 義 に 従 う.
耀i獄 簾 熱 懇(7‑5)
ま た,既 約 接 続 行 列 とは,有 向 グ ラ フ が 連 結 で あ る 時,任 意 の1点 に 対 応 す る 行 を 取 り 除 い て 得 られ る 行 列 で あ る.以 降 で 説 明 す る既 約 接 続 行 列 は 接 続 行 列 の1行 目を 取 り除 く こ と とす る(こ の 操 作 は,あ る1節 点 の 圧 力 を0で 規 定 して い る こ と と同 義 で あ る).
図7‑1に 示 す ノ ー ド数5の 管 路 網 の 場 合 に は,接 続 行 列Aは 以 下 とな る.
節点番号
A=③
④
⑤
0 0 0
一10110 0‑1‑101 000‑1‑1
(7‑6)
検 証 用 モ デ ル の 例 で(7‑3)を 表 現 す る と,以 下 と な る.
S120000 1000000S
23000
‑lllOOO
OOS2400 0‑10110
000S340 00‑1‑1010000S
350000
‑1‑1
00000
OVI2 0v23 0v24 0v34 0v35 S450r45
ql q2
=q3 q4 q5
Ll l2 +13
14 15
(7‑7)
ま た,有 効 水 圧 差 で あ るdPと 各 ノ ー ドの 圧 力 値Piは,Plを0と す る と 次 式 の 関 係 に あ る.
込亀塊ら一一一ろ亀亀
=
狸
ニATpニ
000一
00一1
0一10
一100
込 亀 塊
(7‑8)
(3)閉 回 路(ル ー プ)に お け る圧 力 損 失 式
グ ラ フ構 造 が 閉 回 路(ル ー プ)を 形 成 して い る場 合,ル ー プ を 一 巡 す る と圧 力 損 失 が0 とな る法 則 を 得 る こ とが で き る.す な わ ち,あ る始 点 と な る節 点 か らル ー プ を辿 っ て 始 点 に 戻 る と,dP=0で あ る.こ れ を式 で 表 現 す る と,
BdP=0(7‑9) こ こ で,
B:基 本 閉 路 行 列
で あ り,各 行1が グ ラ フ の 各 基 本 閉 路Fiに,各 列kが グ ラ フ の 各 枝 に対 応 し,各 要 素Bikが そ れ ぞ れ 次 式 で 与 え られ る 以 たの 行 列 で あ る.
‑1:閉 路Fiが 枝kを 負 の 向 き に 含 ん で い る 時
10
〜 τ
=抜B
閉 路Fiが 枝kが 正 の 向 き に 含 ん で い る 時 そ れ 以 外 の 時
す な わ ち,図7‑1に 示 す 検 証 用 モ デ ル の 例 で は, 管 路 番 号123456
B一 院 に1岡
(7‑10)
と な る.