第4章 結論
4.3 今後に向けた課題
本調査は東日本大震災における災害対応に関わった全部の機関ではなく建設関係機関の災害対応を対象 としたが、さらに具体的にヒアリング、アンケートを行ったのは一部の機関にすぎない。本報告書は委員 会として把握できた事実関係に基づき作成したものであるため災害対応マネジメントにおける課題、好事 例について抜けているものが多くあると思われる。しかし、すべてを網羅できなくとも実際に災害対応に 従事した関係者から得た情報に基づいており、本書でまとめた教訓、提言等は今後関係機関が災害対応を 見直す際の参考に十分なりうるものと考えている。
一方、今後わが国で想定される首都直下地震、南海トラフ巨大地震などでは東日本大震災よりさらに深 刻な人的被害や社会経済への影響も懸念されている。4.2.2でも述べたように今回は顕在化しなかった問 題も含め、今後の巨大災害に備えるために検討すべき主な課題を以下のとおり整理した。
① 関係機関ごとに策定されていた災害対応計画や訓練は一定の効果があったが、当地域では対象とす る災害として宮城県沖地震を想定していたため機能しなかった部分もあった。関係機関は発生頻度が 低く規模の大きな災害に対しても有効な事前対応計画を検討する必要がある。その際には、休日・夜 間などの条件下での対応や、絶対的な不足が想定される資源の確保方策を検討し予め準備しておく必 要がある。また、復興計画策定が遅れると復旧・復興が円滑に進められないことになるため巨大災害 を前提とした事前復興計画の策定も有効である。
② 関係機関の間で限られた資源の奪い合いを避け、連携して災害対応できるように地域の関係機関が 共同で災害対応計画を策定することも検討すべきである。また、国の社会経済基盤を脅かすような深 刻な事態の場合の国による統制のあり方等についても検討すべきである。
③ 災害時の臨機の対応には関係機関のトップマネジメントが重要であり、ケースメソッドなどによる 人材育成を図るべきである。
④ 行政・建設業者ともスリム化が進み災害対応力の低下が懸念されている。特に、地方部では平時の インフラの維持管理も含め担い手の減少・高齢化が進んでおり、地域を維持するための方策を至急と る必要がある。
⑤ 東日本大震災においては啓開作業、インフラ復旧の多くは地元建設業者が実施したが、今後の巨大 災害においては、大手企業が有する技術力、マネジメント力、調達力と地元企業が有する地域の熟知、
即応力を上手く組み合わせるインフラ管理者のマネジメントが求められる。
⑥ 本調査は、調査対象者が災害対応活動を実施している中で進めるため様子を見ながら進めることに
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なった。今後の大災害時に同様の災害対応マネジメントに関する実態調査を行うための効果的な方法 の確立を図る必要がある。
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あとがき
災害対応マネジメント特定テーマ委員会による調査活動として被災地の自治体のヒアリングを開始した のは2011年8月末であった。訪れた宮城県南三陸町役場は提供した建設会社名のシールが貼られたプレハ ブの仮庁舎であり、人が慌ただしく出入りする中で御二人の職員から話を伺うことができた。その後の行 政機関へのヒアリングでも長期間続く激務の中で職員の方々には本調査のため貴重な時間を割いていただ いた。また、公益企業、建設関係企業及び業界団体を対象としたアンケート調査に関しても災害復旧事業 が本格的に展開されようとする時期にも拘わらず対応していただいた。直面する災害対応に関しては直接 的には役立たない調査に協力いただいた各調査対象機関の皆様、ヒアリング調査への同行及びアンケート の集計分析など本委員会の調査に協力いただいた皆様、情報を共有しつつ連携して調査を進めた「東日本 大震災に関する東北支部合同調査委員会(第6部門)」の皆様に感謝申し上げる。
本委員会の活動が調査対象機関の災害対応の妨げにならないように調整しながら日程を決めていった結 果、調査の工程は当初の私たちの目論見を大幅に超えることになり、報告書がまとまったのは、発災後1 年半以上過ぎてからとなった。この間、南海トラフ巨大地震についてこれまでの予測を上回る震度分布、
津波高、被害想定が公表されるなど、防災に対する関心はますます高まっている。「災害対応マネジメン ト」は本委員会の造語であるが、限りある資源を最大限活用し被害の拡大防止と早期の復旧・復興を図る ための具体的な方法論を確立することは今後の大災害への備えとして重要であると考える。本報告書は委 員会の幹事が分担して執筆し、幹事会で議論して取りまとめたものである。災害対応の全容を捉えるのは 困難であったが、「マネジメントの視点で災害対応活動を評価する」との試みが建設マネジメント分野の 研究としても新たな一歩を進めるものとなることを執筆者一同願うものである。
2012年11月 土木学会東日本大震災フォローアップ委員会 災害対応マネジメント特定テーマ委員会 副委員長 兼 幹事長
松本 直也
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【資料編】1.東日本大震災における地元建設企業の活動調査
(出典:東北地方整備局記者発表資料、2012年7月24 日)
[1.調査目的]
○ 地元建設企業が実施した活動の実態・全体像を明らかにする
○ 地元建設企業会社が地域に果たした役割を明らかにする
○ 地域と地元建設企業の健全な発展に資する基礎資料を得る
○ 今後の災害体制を改善するための基礎資料を得る
[2.調査対象者]
○東北建設業協会連合会会員企業(1,730 社)
回答:806 社
回答中、活動を実施:411 社
[3.調査内容]
3 月 11 日(東日本大震災発生)~3 月 18 日までに開始した活動を対象。
○ 自社の被害の状況
○ 活動の開始日時~終了日時、具体的な活動内容
○ 作業における人材、建設機械、通信手段、燃料等の確保の方法
○ 直面した困難、迅速な作業が可能だった要因
○ 災害協定の締結状況、BCPの有無、防災訓練の実施、など
(東北地方整備局・国土技術政策総合研究所・東北建設業協会連合会の連名による調査)
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【資料編】2.東日本大震災における業界団体の活動実態調査結果
1 アンケート調査の概要
(1) 調査方法
業界団体及び業界団体会員企業を対象としたアンケート調査票(MS-Excel)を作成し、電子メールによ り配布・回収した。
(2) 調査期間
2012年1月13日~2012年2月20日
(3) 調査対象
①業界団体向けアンケート
以下の32団体を対象として調査を行った。
・大手建設業:1団体 ・地元建設業:7団体
・港湾工事業:10団体 ・専門工事業:3団体
・建設関連業:9団体 ・リース・レンタル業・1団体(4支部)
・その他:1団体
②業界団体会員企業向けアンケート
上記①の業界団体向けアンケートを行った32団体のうち、8団体を対象として調査を行った。
(4) 調査項目
①業界団体向けアンケート
・平常時からの備え(災害協定の締結、マニュアル類の策定、防災訓練の実施)
・震災発生~9月末(概ね半年以内)の間の支援活動の状況
・震災対応のための体制整備
・平常時からの備えに対する評価
・災害対応全般の意見(良かった点、悪かった点、意見・要望等)
②業界団体会員企業向けアンケート
・平常時からの備え(災害協定の締結、マニュアル類の策定、防災訓練の実施)
・震災発生後の被害状況
・震災発生~9月末(概ね半年以内)の間の支援活動の状況
・平常時からの備えに対する評価
・災害対応全般の意見(良かった点、悪かった点、意見・要望等)
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2 業界団体向けアンケート結果
〔回答者の属性〕
・本アンケートに対し、各業界団体から32件(本部20件、支部12件)の回答があった。
・対応拠点としては、宮城県に拠点を置く団体が12団体(うち支部回答が7団体)と最も多く、他県は各3 団体(いずれも本部回答)である。
表- 1 災害の対応拠点(東北6県内の本支部)
青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 その他 計
3件 3件 5件 3件 3件 3件 0件 20件
0件 0件 7件 0件 0件 0件 5件 12件
3件 3件 12件 3件 3件 3件 5件 32件
本部 支部 計
表- 2 全会員数
20社 未満
20社以上 50社未満
50社以上 100社未満
100社以上 500社未満
500社以上 1000社未
満
1000社
以上 未回答 計
団体数 1件 13件 2件 10件 5件 1件 0件 32件
% 3.1% 40.6% 6.3% 31.3% 15.6% 3.1% 0.0% 100.0%
表- 3 支部会員数(支部が回答した12団体を対象)
10社 未満
10社以上 20社未満
20社以上 30社未満
30社以上 40社未満
40社以上
50社未満 50社以上 未回答 計
団体数 0件 2件 1件 2件 0件 7件 0件 12件
% 0.0% 16.7% 8.3% 16.7% 0.0% 58.3% 0.0% 100.0%
表- 4 団体業種分類
件数 割合
1件 3.1%
7件 21.9%
8件 25.0%
3件 9.4%
8件 25.0%
4件 12.5%
1件 3.1%
32件 100.0%
大手建設業 地元建設業 港湾工事業 専門工事業 建設関連業 リース・レンタル業
その他 計