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インフラ復旧(港湾)

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第2章 災害対応活動

2.5 インフラ復旧(港湾)

2.5.1 港湾の被災概要

岩手、宮城、福島3県の太平洋岸には21の港湾が存在し(国際拠点港湾1港、重要港湾7港、地方港湾 13港)、それらは全て地元の各県が管理者となっている。但し、国際拠点港湾及び重要港湾においては、

東北地整が国直轄の港湾整備事業を実施しており、国有港湾施設の被災時には、その復旧の事業主体とな る。また、多くの港湾には、港頭地区立地の民間企業(火力発電所、製油所、製鉄所等)が所有する専用 埠頭も存在している。

今回の地震・津波においては、釜石港、大船渡港、相馬港等において、津波により第一線防波堤が全壊 或いは半壊した。(ただし、背後市街地への津波到達時間を遅延させ、浸水深を低減させる効果があった ことが、釜石港湾口防波堤について報告されている)また、相馬港、小名浜港等において岸壁背後のエプ ロンや荷捌き地が液状化などにより沈下し、陥没や大きな段差が生じたほか、全ての港湾において津波に よる漂流ガレキ等が航路・泊地を埋塞し、港湾機能が全面的に停止した。さらに、沿岸海域を浮遊・漂流 するガレキや流出船は海上交通の安全を脅かした。

2.5.2 救援、物資輸送等

(1) 北海道広域防災フロートの回航

広域防災フロートは、大地震等により港湾施設が被災したときに救援物資等を内蔵して被災地に曳航し 物資を届けるとともに、被災地の港湾に係留して臨時の浮桟橋となる。地整局等が整備・所有し、普段は 定係港で浮桟橋として使用されている。

北海道開発局は発災後直ちに東北地整と連絡を取り、同局所有の広域防災フロート(室蘭港に定係)の 被災地への回航を決定した。被災地側からは、同フロートで「ドラム缶入り」石油類搬入の要請があった が、北海道ではドラム缶の手配に窮した。一方、北海道駐屯の自衛隊は「ドラム缶入り」石油類の備蓄を 有しており、これを被災地へ送ろうとしたが、運搬手段がなく困っていた。北海道開発局と自衛隊は日頃 合同で防災訓練を行い、幹部同志が顔の見える付き合いをしていたことから、上記の情報は共有され問題 は直ちに解決した。

まず岩手県大船渡港に回航し石油類等の支援物資を卸した後、岸壁の被害が甚大な福島県相馬港まで再 び回航し、作業船等が利用する浮桟橋として使用した。なお、回航作業は国直営では行い得ず、建設企業 の力を借りている。

(2) 大型浚渫船兼油回収船3隻の派遣

北陸、中部、九州の各地整局は大型浚渫船(ドラグサクション船)各1隻を保有し、その直営運航により 航路の維持浚渫を行っている。また、これらの船は流出油回収装置を装備し、大規模な海上油流出事故に 備えている。

今次震災において、3隻は発災後直ちに支援物資を積んで(一部は経路途中の港で地元地整局等が調達 した支援物資を積み込み)被災地へ向かった。多くの官公庁船等が被災地に向かったなかで、海からの救 援一番乗りであった。全国ネットワークの組織の力が発揮された一例と言えよう。なお、これらの船は、

支援物資を届けただけでなく、被災者への入浴サービスも行った。

(3) 救援物資の調達、輸送等

(社)日本埋立浚渫協会及び(社)日本港湾空港建設協会連合会の会員企業は、東北地整の要請により、港 湾の啓開作業だけでなく、支援物資一時保管用テントの調達・設営や燃料油の供給も行った。また、国交 省港湾局の指揮の下、全国の地整局が調達した支援物資や港湾復旧資機材の輸送業務も担った。

物資の調達・輸送は建設企業の本来業務ではないが、災害時において大きな役割を担えることを示した ものと言える。

43 2.5.3 応急復旧及び本復旧

啓開作業に引き続き/並行して、特に緊急性の高い施設の応急復旧が進められた。

また、応急復旧に引き続き/並行して、本復旧のための調査・設計、災害査定、及び工事が行われた。

(1) 復旧・復興プランの策定

今回の被害の甚大さに鑑み、被災した全ての港湾施設を原形復旧するのではなく、被災地の輸送需要や 都市・産業復興との関連、被災地の物流体系等を考慮して、復旧の順位や水準を決定するとともに、今回 の津波被害を踏まえ、各港の津波防災機能について検討する必要性が認識された。

そこで、関係者間の協議・調整を行うために、国際拠点港湾及び重要港湾の各港において、整備局の指 導により、地元市町村、港湾・海岸管理者、港湾周辺立地企業、港湾利用者、港湾関係の国の出先機関等 により構成される「○○港復旧・復興協議会」が設置された。協議会は2011年4月以降順次港湾毎に設置 され、同8月までに各港の「産業・物流復興プラン~復旧・復興方針~」がまとめられた。その策定作業 を通じて、各施設の復旧の優先順位が的確に判断されるだけでなく、復旧の進捗に応じた施設の利用調整 等も円滑に行われた。施設の整備・管理を行う者だけでなく、利用者、荷主、サービス提供者等の参画を 得ての復旧・復興プランの策定は、好事例として評価される。

なお、今回の震災の前に、仙台塩釜港では上記復興・復旧会議と同様のメンバーが参画して港湾BCPの 策定が進められ、震災時には概ね出来あがっていた。このBCPは宮城県沖地震を想定して立案されており、

これを大きく上回った今回の震災に直接役立てることは出来なかったが、仙台塩釜港復興・復旧協議会の 円滑な運営に大きく貢献したという。個々の官庁や企業のBCPにとどまらず、港湾全体としてのBCPを策定 することの有用性を証明するものと言える。

(2) 事業主体の体制補強

全国の地整局や国総研、(独)港空研の職員がTEC-FORCE(3/12~6/12の間に延べ970人)として、あるい は東北地整への一時的な配置換えにより、東北地整をサポートした。また、各地整局の港湾部門は日常よ りその発注者業務の一部をアウトソーシングしており、その受け手側は2011年4月以降、特に経験豊富な 技術者を全国から被災地に増員投入し、東北地整を支えた。

方、港湾管理者(県)に対しては、宮古港及び大船渡港(いずれも岩手県)において県が実施すべき復旧工 事の一部を「代行法」に基づき東北地整が施行したほか、東北地整が災害査定対応を指導する窓口を設け たが、リエゾンの派遣を除き県庁に対する国のマンパワーの直接投入は行われず、専ら他県からの支援に 頼った。しかし、全国の各県とも技術者不足で、とりわけ港湾に精通した技術者は少ないことから有効な 支援は得難かったという。

国が有する港湾技術の人的資源を東北地整に集中するのではなく、一部を県に振り向けるべきではな かったかとも思われるが、国際拠点港湾や重要港湾の復旧優先度が高く、そこでは東北地整主導の復旧が 行われたことから、適切な対応であったとも考えられる。なお、茨城県は2011年11月から、宮城県にあっ ては翌年1月から、地整局港湾部門のアウトソーシング先からの支援を受けている。今後の大災害におけ る港湾管理者への支援のあり方として、ひとつの参考となる事例であろう。

(3) 工事発注

東北地整では、啓開作業は緊急随契で発注したが、応急/本復旧のための調査・設計や応急復旧工事の 発注からはプロポーザル方式や競争入札に戻し、そのなかで分任官の枠拡大や指名競争の活用を行い、発 注手続きの迅速化にも配慮した。災害復旧とはいえ公共調達の透明性にも配慮する必要があり、発注者と して苦渋の決断であったと推察されるが、発電所の燃料炭や家畜飼料用原料穀物の輸入を始めとして、被 災地の生活・産業を支える物流機能の早期復旧を鑑みれば、手続きがより迅速な発注方式を選択すべきで はなかったかと思われる。

非常時にあっては随意契約等の選択を容易にするような仕組みを、予め準備しておくことが必要ではな

44 いかと思われる。

(4) 沿岸海域の漂流物回収

被災地の沿岸海域には津波で流出した船舶やガレキが漂流し、航行安全の障害となっていた。また、海 洋環境の悪化や他国沿岸に漂着して迷惑を及ぼすことも懸念された。このため、港湾の応急復旧等と並行 して、漂流物の回収作業が行われた。

① 海洋環境整備船の派遣

関東、中部、近畿、四国、九州の各地整局では、海面浮遊ゴミ・漂流物の回収のための特殊な機能を備 えた海洋環境整備船を計10隻保有し、日常的に海面清掃や環境調査を行っている。このうち4隻が4~6月 の間被災地に派遣され、沿岸海域の漂流物を回収した。

沖合に流出し回収できなかった分もあるが、10隻の1年間分に匹敵する量を回収した。一方で、回収物 を港に卸した後の処理体制が整わず、この点が課題であったとのことである。

② 沖合漂流船の引き取り収容

被災地の港から流出し沖合を漂流する船舶を海上保安庁が回収したが、その引き取り先が問題となった。

港に曳航し係留した後に、船主が現れない或いは引取りを拒否する事態となった場合、港に長期間係留・

放置され、港の復旧・復興の障害となる懸念があったためである。港湾管理者は回収した漂流船の港への 受け入れを躊躇したが、東北地整上層部が受け入れを判断し、港湾管理者を指導した。

他港との横並び等を気にする必要のない立場が、素早い判断を可能にした一因ではないだろうか。

(参考文献)

1)「港湾」2011 年 12 月((社)日本港湾協会)

2)「マリンボイス21」2011 年夏((社)日本埋立浚渫協会)

3)「マリンボイス21」2011 年秋((社)日本埋立浚渫協会)

4)「津々浦々」2011 年秋((社)日本港湾空港建設協会連合会)

5)「マリーンプロフェッショナル」2011 年 10 月((社)日本海上起重技術協会)

6)「港湾荷役」平成 23 年 9 月((社)港湾荷役機械システム協会)

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