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原子力災害対策マニュアルの担当部署や事故時通報を担当していた班が事故調査などに関わってい れば、定義について気がつかないことはあり得ない。5年間隠蔽していた可能性が高いのに、なぜ十 分な調査もしていない段階で「5年間気がつかなかった」と公表したのか。

技術委員会が第三者検証委員会に検証を要請した事項 調査方法

① 東京電力の事故調査や技術委員会の回答作成時に原子力災害対策マニ ュアルの担当部署や事故時通報を担当していた班はどのように関わっ たのか。

●アンケート調査

(問4、5、6)

●東京電力HD調査

●アンケート調査結果17(問4、5、6)

原災法第15条「炉心溶融」の判定基準を知っていた179名のうち、新潟県技術委員会の対応に関わ っていた者はいなかった。

●東京電力HD調査結果

原子力災害対策マニュアルの担当部署や事故当時に通報を担当していた班に所属していた東京電力 社員の中には、新潟県技術委員会や福島事故検証課題別ディスカッションの対応にも関与していた 者がいた。しかし、当該社員は「炉心溶融」とは別のテーマを担当していたため、「炉心溶融」に関 する議論の詳細を把握していなかった。

また、東電事故調査委員会が課題に挙げたのはマスコミ公表・説明における「炉心溶融」などの用語 使用であったため、原子力緊急事態宣言発令のための基準とこの課題に関連があるとは思い至らな かった。

技術委員会が第三者検証委員会に検証を要請した事項 調査方法

② 原子力災害対策マニュアルに炉心溶融の定義を定めていることを、いつ 誰が誰に報告したのか。報告者はいつからわかっていたのか。報告者は どの組織に所属しているのか。その所属組織と事故時に原子力災害対策 マニュアルに従って対応する組織との業務上の関係も示すこと。

●第三者検証委員会 検証結果報告書P65

平成28年1月頃、東電において、福島第一原発の事故対応に関して法令に違反している事実の有無 を調査することとなった。その調査を命じられた社員が、本件事故当時の本店の緊急時対策本部の 職務代行者の順位について調査するため、それについての定めがある社内規程を調べたところ、原 災マニュアルにその記載があることに気付いた。

事故当時の原災マニュアルは改訂されており、新しい原災マニュアルがイントラネットに掲載され ていて、改訂前の原災マニュアルはそれを所管していた部署のみがアクセスできる状態になってい た。

そこで、その社員は、その部署の社員に対し、改訂前の原災マニュアルの提供を求め、当該部署の社 員が改訂前の原災マニュアルを印刷して、同月13日頃、調査を担当していた社員に渡した。

その社員は、改訂前の原災マニュアルを入手した後、それを自己の執務室のラックに保管していた。

他方、同年2 月上旬頃、国の避難指示の法令上の根拠についての調査を命じられた別の社員が、そ の調査の過程で、たまたま前記ラックに保管されていた改訂前の原災マニュアルを確認したところ、

同マニュアルに「炉心溶融」の判定基準が記載されていることを発見した。

その社員は、直ちに上司に報告し、それによって、技術委員会の対応をしていた社員らが、その事実 を知るに至った。

そして、同月24日、東電は、福島第一原発の事故当時の原災マニュアルに炉心溶融の判定基準があ ったことを公表した。さらに、同年3月23日に開催された平成27年度第4回技術委員会において、

同日付け「炉心溶融の公表に関する経緯とこれまでの課題別ディスカッションにおける議論につい

17 アンケート調査結果の詳細については、添付4を参照

添付3-51

て」と題する資料を提出し、炉心溶融の判定基準があったことを報告した。

以上の経緯を経て、それまでの炉心溶融やメルトダウンの定義がなかったという東電の技術委員会 に対する説明は訂正された。

技術委員会が第三者検証委員会に検証を要請した事項 調査方法

③ なぜ、5年も経って発見されたのか。定義を認識していた人たちが、こ の5年間なぜ言い出せなかったのか。誰が情報を止めていたのか。

●アンケート調査

(問7)

●アンケート調査結果18(問7)

原災法第15条「炉心溶融」の判定基準を知っていた179名に対して、今まで原災法第15条「炉心 溶融」判定基準があることを言い出せなかった理由について質問したところ、回答はおおむね以下 の通りであった:

 新潟県技術委員会での議論を把握していなかったから

 わざわざ言い出す必要のない情報だと思っていたから

 情報発信する立場になかったから・機会がなかったから

上記回答の中で、『原災法第15 条「炉心溶融」の判定基準について口外しないように指示を受けて いたから』という回答をした者がおり、追加確認を実施した。追加確認の結果、いずれも誤って回答 したものであり、指示を受けていた者は確認できなかった。

技術委員会が第三者検証委員会に検証を要請した事項 調査方法

④ 隠蔽ではなく「5年間気がつかなかった」と公表することにしたのは誰 が決めたのか。

●東京電力HD調査

●東京電力HD調査結果

本項目を以下のように3点の質問事項として整理する:

① 「炉心溶融」の判定基準を隠蔽したのではないか。

② 当該プレス発表の内容では、あたかも東京電力全社員が原災法第15条「炉心溶融」の判定基準 を知らなかったように受け取れるが、このプレス発表の内容を決定した者は誰なのか。

③ 当該プレス発表の要否について、誰が判断したのか。

各項目に対する回答は以下の通り:

① 「炉心溶融」の判定基準を隠蔽したという事実はない。

② 東京電力の当該プレス発表は、東京電力全社員が原災法第15条「炉心溶融」の判定基準を知ら なかったという趣旨のものではない。

事故当時の原子力災害対策マニュアルに原災法第15条「炉心溶融」の判定基準が記載してある ことまで熟知していた社員は少数であり、新潟県技術委員会対応者までこういった情報共有が なされなかったため、新潟県技術委員会へ「炉心溶融」を判断する根拠がなかったという誤った 説明を行ってきた。こういう状況下で、事故当時の原子力災害対策マニュアルに原災法第15条

「炉心溶融」の判定基準が記載してあることが確認されたため、今般のプレス発表に至った。

当該プレス発表の内容については、福島事故検証課題別ディスカッション課題4(メルトダウン 等の情報発信の在り方)の責任部署(渉外・広報ユニット ソーシャル・コミュニケーション室)

と広報室でプレス文案を作成し、原子力・立地本部長など関係役員の確認を踏まえて、広報室長 の承認のもと決定された。

③ 平成28年2月24日の東京電力プレス発表『福島第一原子力発電所事故当時における通報・報 告状況について』の要否について判断する余地はなく、2月上旬に本件が明らかになってから公 表前提で事実関係の整理・確認など実施されてきた。

18 アンケート調査結果の詳細については、添付4を参照

添付3-52

技術委員会が第三者検証委員会に検証を要請した事項 調査方法

⑤ 事故対応と原子力災害対策マニュアルに関わった全ての人に改めてヒ アリングを行うべきではないか。

●アンケート調査

(問4、5、6)

事故対応と原子力災害対策マニュアルに関わった関係者よりも広範囲で調査を実施するため、ヒア リング調査ではなくアンケート調査にて、原災法第15条「炉心溶融」の判定基準の認知度を確認し た。

調査結果については以下の通り。

●アンケート調査結果19(問4、5、6)

原災法第15条「炉心溶融」の判定基準を知っていた者は179名であった。原災法第15条「炉心溶 融」の判定基準の認知度は、本店と比較して、福島第一、福島第二、柏崎刈羽など各発電所の方が高 かった。

技術委員会が第三者検証委員会に検証を要請した事項 調査方法

⑥ メルトダウンの公表に関し、政府や国会の事故調に対してはどの組織で 誰がどのように対応していたのか。聞かれたことについて調査が必要な 場合、調査の有無や調査内容、範囲を誰が判断し行っていたのか。

●東京電力HD調査

●東京電力HD調査結果

政府事故調査委員会や国会事故調査委員会(以下、外部事故調査委員会)に対しては、東京電力企画 部が窓口となり対応した。外部事故調査委員会から要請された資料は、各関係部署や東電事故調査 委員会が準備し、補足の説明や関係者のヒアリングを要請された場合も、各関係部署や東電事故調 査委員会が対応した。

基本的に、外部事故調査委員会の調査は、東京電力が提供した関連書類、補足説明、ヒアリングなど にしたがって独自に行われており、東京電力は外部事故調査委員会の調査には関与できなかった。

なお、東京電力のメルトダウン公表に関連する、政府や国会の事故調査報告書での記載事項は事実 経緯に関するものだけである。

【参考】

政府事故調査報告書(中間報告Ⅴ8(3) 炉心に関する東京電力の説明 P352-353)では、以下の 通り、事実経緯しか記載されていない:

 東京電力は、3月15日、格納容器雰囲気モニタ(CAMS)により得られた情報を基に、「炉心 損傷」の割合について、1号炉約70%、2号炉約30%、3号炉約25%である旨の発表をした が、以後の記者会見においても、炉心の状況を説明する際は、「炉心損傷」という表現を用い た。

 東京電力は、4月末、炉内の状況等を解析するMAAP(前記7(1)a参照)に必要なデータが揃 い始めたため、MAAP解析を開始した。その暫定的な解析結果を受け、5月12日、東京電力 は、記者会見において、1 号機の状態について、「燃料集合体が溶けて下にあり、そこで冷や されている状態であると考えている」旨説明した。

 また、東京電力は、同月15日、「東京電力福島第一原子力発電所1号機の炉心状態について」

において、前記の暫定評価結果を公表したが、これには、「1 号機は津波到達後比較的早い段 階において、燃料ペレットが溶融し、原子炉圧力容器底部に落下したとの結論が得られた」と 記されている。この記載は、保安院が定義する「メルトダウン」に相当する。

 その後、同月16 日に解析に必要なデータが整い、そのデータを確認した上、同月24日、最 終の解析結果を発表した。

19 アンケート調査結果の詳細については、添付4を参照