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メルトダウンの定義は、技術的な検討のうえ定められたものであり、決定するまでの過程で多数の 人が関わっているはず。

技術委員会が第三者検証委員会に検証を要請した事項 調査方法

① 炉心損傷5%を炉心溶融の定義とした技術的な根拠は何か。 ●東京電力HD調査

●東京電力HD調査結果

アクシデントマネジメントの手引きに示す「炉心損傷割合」の意味は、技術的には「炉内の希ガスの 全インベントリ16のうち、格納容器内に放出された希ガスの割合」である。

炉心が「炉心損傷」状態となった場合には、燃料被覆管の損傷に伴って被覆管内のギャップに存在し ている希ガスが放出される。このギャップに存在する希ガスは、通常運転中は全インベントリのう

ち2%程度である。

これを超えて希ガスが放出されるということは、燃料被覆管の損傷のみではなく、燃料ペレット自 体に保持されていた希ガスまで放出されたことを意味するため、燃料ペレットにまで何らかのダメ ージが及んだものと考えられる。こうしたことから、放出された希ガスが明らかに2%を超えたと判 断する基準として5%を定め、これを超えた場合に「炉心溶融」とみなすことにしたものである。

技術委員会が第三者検証委員会に検証を要請した事項 調査方法

② 定義についてどの組織で検討を行い、どのような手続きで決めたのか。

●第三者検証委員会 検証結果報告書P8

原子力災害に繋がる事象として、どのようなものを通報すべきものとして特定する(原子力事業所 内の原子力関係の事故であっても、原子力災害に繋がらないものを対象外とする必要もあった。)

か、また、対象とする事象につき、二段階のいずれに位置させるかについては、原子力事業所の現 場における技術水準に基づいて判断可能であることの確認を経る必要があったことから、原災法の 制定に当たっては、その立案の段階から施行準備の段階までの間、原子力事業者である各電力会社 の技術者等からの意見聴取等の過程を経ることが必要であった。

そして、原災法の制定に当たっては、そのような原子力事業の特質に配慮する検討手続を経てお り、当第三者検証委員会でも、立案段階から、原災法施行時までの東電社内での検討内容等を確認 することができた。

●第三者検証委員会 検証結果報告書P9

これらの通報対象事象の特定に関しては、前記のように、原災法令立案担当者と原子力事業者等と の協議を経て、確定していったものであり、基準となる数値等については、原子力事業者の見解も踏 まえて定められたと評価できる。(中略)「炉心溶融」の部分については、「原子炉容器内の炉心の溶 融を示す原子炉格納容器内の放射線量又は原子炉格納容器内の温度を検知すること」としか規定さ れておらず、法令上基準が明示されていない。

立案段階の検討の経緯を見てみると、表現を「炉心溶融」と規定するか、あるいは「著しい炉心損傷」

と規定すべきかなども検討されたこともあったようであるが、各原子力事業者が利用している原子 炉の型式などの違いから、統一的な基準を定めることを諦め、各原子力事業者において、使用してい る原子炉毎に個別的な基準を定めることとなったようである。

もちろん、立案当局も、各原子力事業者が自由に定めることを容認したものではなく、当時、東電 は、炉心損傷割合5%をもって「炉心溶融」の判定基準とすることとし、その基準を立案当局にも報 告していたと認められる。

16 インベントリ:炉心内にある放射性物質などの存在量

添付3-48

【追加検証項目K】原子力災害対策マニュアルにおける『炉心損傷割合』の意味

追加検証項目 調査方法

K 東京電力の回答に、「『炉心損傷割合』の意味は、技術的には『炉内の希 ガスの全インベントリのうち、格納容器内に放出された希ガスの割合』

である。」との説明がある。

これでは、用語と技術的な意味との間に著しい隔たりがあり、コミュニ ケーション上の不都合が大きい。現に、これまでの技術委員会や合同委 員会での意思疎通の妨げとなり、第三者検証委員会の報告書にも誤記載 を招いている。本来は、技術的な意味と同じかそれに近い記述が用語と して使われるべきであったと思われる。

東京電力の説明は、アクシデントマネジメントの手引きについての説明 であるが、原子力災害対策マニュアルにおいても同じなのか。

●東京電力HD調査

●東京電力HD調査結果

アクシデントマネジメントの手引きでも、原子力災害対策マニュアルでも、『炉心損傷割合』の意味 は同じであるが、原子力災害対策マニュアルのうち、原災法第15条「炉心溶融」判定基準に関する 箇所には、『炉心損傷割合』の意味は記載されていない。具体的な記載内容は、第三者検証委員会 検 証結果報告書P12-13に記載されているように、以下の通りである:

(1) 事象の解説

炉心溶融に至る可能性のある事象については、事前にその兆候を検知し必要な措置をとることにな っているが、そのような兆候を検知できない不測の事象から炉心溶融に発展した場合に備え、炉心溶 融を検知した場合を緊急事態宣言発出基準とする。

(2) 運用の明確化

ドライウェル(D/W)及びサプレッションチェンバ(S/C)のCAMS γ線線量率の和が参考図(原子 炉停止後1時間以内は1000Sv/h、1時間以降は5%希ガス放出曲線)に示されている炉心溶融判定基準 を超えた場合。

(3) 背景・根拠等

①炉心溶融割合を評価することが目的である場合には、D/W及びS/Cそれぞれの炉心溶融判定図を用 いて各々のCAMS γ線線量率から炉心溶融割合を算出した上で、それらの和を全体の炉心溶融割合 とする方法を用いる。一方、本基準においては炉心溶融の判定を迅速に行う観点から、D/W及びS/C の炉心溶融判定図のうち、より保守的なD/Wの判定図を参考図-2に示す共通の判定図として用い、

D/WとS/Cの各々のCAMS γ線線量率を足し合わせた値が参考図-2の炉心溶融判定基準を超えた 場合に炉心溶融が発生したものと判定する。

②炉心溶融の判定基準としては、早期にその兆候を検知する必要があることから、なるべく低い CAMS γ線線量率を設定するが、同時に、炉心溶融に至らない事象とは区別するため、炉心溶融に 至らずに全燃料被覆管に破裂が生じたときに放出される希ガス(厳しく見積もって、炉心に存在す る希ガス全内蔵量の2%)より多い、全内蔵量の5%の希ガス放出に相当するCAMS γ線線量率を指 標とする。

③炉心溶融発生時のCAMS γ線線量率は、原子炉停止後の時間経過とともに減衰するが、原子炉停 止後1時間以内に炉心溶融に至る場合には、特に迅速にその判定が行えるようにするため、参考

図-2の5%希ガス放出曲線の1時間近傍における値を保守的に1000Sv/hと見積もり、これを時

間によらない基準として設定する。

添付3-49

【追加検証項目L「炉心溶融」の判定基準の根拠

追加検証項目 調査方法

L 「ギャップに存在する希ガスは、通常運転中は全インベントリのうち

2%程度である。」とあり、これ自体は正しい説明だと思われるが、これ

は、燃料が水没状態で冷却されている条件での値であり、気中に露出さ れ加熱された条件での値ではない。

事故時のギャップ・リリースの割合については、5%というのが米国にお ける統一的な理解となっており、これが日本において当て嵌まらない理 由はない。

2%+α→5%のような説明には違和感があり、炉心溶融の判定時期を遅 らせ、非保守的(不安全側)である印象があるので、この記載の正確さ について再確認を依頼したい。なお、ギャップ・リリース 2%は、燃料 破損に伴う冷却水へのヨウ素の溶出について用いられることから、これ との混用ではないかと思われる。

●東京電力HD調査

●東京電力HD調査結果

福島第一原子力発電所事故当時の安全審査では、「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査 指針」にしたがって、「重大事故」及び「仮想事故」の具体的な評価事象として冷却材喪失事故と主 蒸気管破断事故が選定され、原子炉施設の立地上の妥当性について、「原子炉立地審査指針及びその 適用に関する判断のめやすについて」の判断基準を満足することによって確認されていた。この事 故解析の結果は原子炉設置許可申請書 添付書類十に記載されている。

なかでも、原子炉冷却材喪失の「重大事故」を想定するにあたって、全燃料被覆管に破裂が生じる、

つまり、100%破裂に相当する核分裂生成物が格納容器内に放出されるものと仮定して評価する。こ

の事故想定に基づき燃料棒から放出される核分裂生成物の量は、全蓄積量に対して希ガスで 2%と いう割合が「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」で仮定されている。