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事故時運転操作手順書等を使用できたにもかかわらず、手順書等に基づく対応をせず、場当たり的 な対応に終始し事故を悪化させたのではないか。

技術委員会が第三者検証委員会に検証を要請した事項 調査方法

① 当直は事故時運転操作手順書(事象ベース(AOP)、徴候ベース(EOP)、

シビアアクシデント(SOP))に基づいた対応をどの程度行ったのか。

●東京電力HD調査

② 特に徴候ベースの手順書(EOP)については、今回の事故対応において も使用できたはずであり、どの程度それに基づいた対応を行ったのか。

④ 事故時運転操作手順書を使用していないとしたら、誰がどのような根拠 でそのような判断をし、指示をしたのか。また、当直は何を根拠に事故 対応を行っていたのか。

⑥ 手順書やマニュアルを整備していてもそれに基づいてやっていないこ とが明らかになっているが、なぜやらなかったのか。

●東京電力HD調査結果

事故対応にあたり、運転員は事象に応じて該当する事故時運転操作手順書に従い、操作を行うこと を基本としている。ただし緊急を要する運転操作(プラント緊急停止操作など)については、事象収 束を最優先とするため、事故時運転操作手順書の閲覧なしに初期対応を行い、事象がある程度落ち 着いてから、実施した操作のチェックを行うこととしている。

そのため運転員は、異常事象の対応に備え、シミュレータ等を使用した訓練を実施している。基本的 な対応は事故時運転操作手順書に従うが、手順書上で想定されていない状況におかれた場合には、

その状況に応じ、臨機応変に適切な対応が求められる。

東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所1~3号機の事故対応操作については、事象に最 も類似している事故時運転操作手順書と実際の操作内容を照らし合わせたところ、以下の通りであ った。

 地震発生直後から津波襲来までの操作については、事故時運転操作手順書(徴候ベース(EOP))

の「スクラム」(RC)及び事故時運転操作手順書(事象ベース(AOP))の「原子炉スクラム事 故(B)主蒸気隔離弁閉の場合」に従って対応していた。

 津波襲来後の操作については、全電源(交流電源および直流電源)喪失による監視機能喪失、遠 隔操作機能喪失、現場機器の機能喪失の状態では、事故時運転操作手順書(徴候ベース(EOP))

のみならず、事故時運転操作手順書(シビアアクシデント(SOP))ですらそのまま適用できる 状況ではなくなった。このため、ディーゼル駆動消火ポンプによる代替注水、格納容器ベントな どの事故時運転操作手順や設備図書などを参照した上で、現場における運転員の手作業による 操作可能な設備・手順を活用するという対応を行った。

なお、田辺文也氏の連載記事(岩波世界 解題「吉田調書」第6回~第11回)を踏まえて当該調査 結果を回答しており、主な論点は『メルトダウンの公表に関し今後明らかにすべき事項』Ⅱ-5-①~

⑩ですでに挙げられているため、改めて田辺文也氏へのヒアリングは不要であると考える。

技術委員会が第三者検証委員会に検証を要請した事項 調査方法

③ 事故時運転操作手順書に基づき対応しなかったとすれば、それは原子炉 等規制法に違反することになるのではないか。

●東京電力HD調査

●東京電力HD調査結果

全交流電源喪失後に、直流電源も喪失し、事故時運転操作手順書は参照していたが、そのまま適用で きる状況ではなかったことから、当時の対応が原子炉等規制法違反に該当するとは考えていない。

なお、事故当時の原子炉等規制法 第37条第4項では、「原子炉設置者及びその従業者は、保安規 定を守らなければならない」とされている。他方、事故時運転操作手順書(事象ベース(AOP)、徴

添付3-57

候ベース(EOP))と事故時運転操作手順書(シビアアクシデント(SOP))は、それぞれ保安規定 の第14条、第110条で作成することが求められており、保安規定の第77条では、以下が求められ ている:

当直長は、第 76条第1項の異常が発生した場合(原子炉の自動スクラム信号が発信した場合 など)は、異常の状況、機器の動作状況等を確認するとともに、原因の除去、拡大防止のため に必要な措置を講じる。

2.当直長は、前項の必要な措置を講じるにあたっては、添付1に示す「原子炉がスクラムした場 合の運転操作基準」23に従って実施する。(後略)

技術委員会が第三者検証委員会に検証を要請した事項 調査方法

⑤ 事故時運転操作手順書について、AOPからEOP、EOPからSOPへと 移行基準があるが、それに基づいて判断し移行したのか。移行したとし たら当直長の判断か、他の誰かの判断か。

●東京電力HD調査

●東京電力HD調査結果

事故当時、地震により原子炉スクラムした段階で事故時運転操作手順書(徴候ベース(EOP))へ導 入しており、事故時運転操作手順書(事象ベース(AOP))から移行したわけではなかった。その後、

状況が進展すると事故時運転操作手順書(シビアアクシデント(SOP))に移行していくという認識 はあったものの、全電源(交流電源および直流電源)喪失により監視手段を失うなど、事故時運転操 作手順書(徴候ベース(EOP))から事故時運転操作手順書(シビアアクシデント(SOP))への移 行基準である炉心損傷を客観的に認識できる状況ではなかった。

なお、事故時運転操作手順書(事象ベース(AOP))から事故時運転操作手順書(徴候ベース(EOP)) への移行の判断も、事故時運転操作手順書(徴候ベース(EOP))から事故時運転操作手順書(シビ アアクシデント(SOP))への移行の判断も当直長が行うことになっている。

事故時運転操作手順書の体系については、図4.を参照。

図4. 事故時運転操作手順書の体系

23 事故時運転操作手順書(徴候ベース(EOP))の概要が記載されている。

事故時運転操作手順書

(事象ベース)

AOP

アクシデントマネジメント の手引き

AMG

ユニット操作手順書 (通常停止手順)他

事象整定

事故発生

※徴候ベース 導入成立条件

事象整定 事象整定

(RHRによる除熱の確立) 事故時運転操作手順書

(徴候ベース)

EOP

※所内電源喪失及び、全交流電源 喪失については大型フローを添付

シビアアクシデント 導入成立条件

※徴候ベース 導入成立条件

事故時運転操作手順書

(シビアアクシデント)

SOP Y

Y Y

(警報発生時操作手順書) N

※徴候ベース導入条件

原子炉スクラム

格納容器制御

不測事態

添付3-58

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⑦ 手順書やマニュアルを使用した訓練はどのように行われていたのか。

●第三者検証委員会 検証結果報告書P33

東電においては、防災訓練の一環として、原災法10条の通報、同法15条の報告等の訓練も行われ ていた。

福島第一原発においては、緊急時対策班の要員らは、班長や副班長クラスがポスト指定によって指 名され、そのポストに就いている限り緊急時対策要員の立場にあったため、緊急時対策要員が半ば 固定化しており、人事異動等によって要員の交替がなされても、緊急時対策要員の中には常に経験 者が含まれていた。

さらに、福島第一原発では、防災訓練は、予め日時が決められ、シナリオも用意されていたため、防 災訓練に参加する緊急時対策班の要員らは、その都度原災マニュアルを確認しなくても、対応する ことが可能であったとのことである。

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⑧ AOPについてはシミュレータで訓練はできる。一方、EOP やSOPに ついてはそのような訓練はできず、見て確認する程度と聞いているが実 際どのように訓練していたのか。

●東京電力HD調査

●東京電力HD調査結果

福島第一原子力発電所事故以前も、通常業務に関する教育・訓練だけでなく、事故時対応操作に関す る教育・訓練も、『原子力発電所運転員に対する教育・訓練マニュアル』に従い、力量管理を行って いた。

原子力発電所運転員の場合、(A)個人としての教育・訓練、(B)チームとしての教育・訓練、とい う2種類の教育・訓練が施されていた。

まず、(A)個人としての教育・訓練としては、主に以下の段階を経て力量向上を図った:

①新入社員としての導入研修

②研修生としての教育・訓練

③補機操作員としての教育・訓練

④主機操作員、副主任、主任としての教育・訓練

⑤副長、当直長としての教育・訓練

次に、(B)チームとしての教育・訓練としては、主に以下の種類があり、各職位に応じた役割と技 術レベルに従って、チームとしての力量向上を図った:

①シミュレータ訓練(プラント通常起動/停止訓練、事故対応訓練)

②机上訓練(関係法令、関係マニュアル、事故時運転操作手順書等の事故対応手順)

なお、上記教育・訓練の中で、事故時運転操作手順書(事象ベース(AOP)、徴候ベース(EOP))

についてはフルスコープ・シミュレータで訓練を実施しており、事故時運転操作手順書(シビアアク シデント(SOP))については、事象進展に応じたパラメータ変動や必要な対応操作を確認していた。

【参考】

福島第一原子力発電所事故以前の各訓練項目の概要は以下を参照:

(A)個人としての教育・訓練

①新入社員としての導入研修

原子力発電所に配属となった新入社員を対象とした、原子力発電に関する導入教育で、基本的知 識を習得する。

②研修生としての教育・訓練

現場へ研修生として派遣され、経験者の指導監督の下に、原子炉、タービン及び電気について基礎