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事例における自己修正マップの考察

ドキュメント内 序章 (ページ 81-86)

第3章  報道分析における自己修正モデルの事例研究

第5節  事例における自己修正マップの考察

第2章第3節でも述べたが自己修正プロットにおいては、置かれている主体、つまり条 件設定によってその位置が変化する。個人や集団が直面する危機の内容(eg. 人命に関わ る事態に至らない危機など)や誰(個人、組織体、地域など)を主体にするかによってプ ロットの条件が変わってくる。また前にも述べたが、危機管理時における自己修正行為は 通常、外的内的要因によるインパクトにより、X軸からスタートするが、主体が強盗や交 通事故で被害を受けるなど一方的に変化を強いられる場合は、自己修正の対象から除外さ

れる。本節では、「薬害エイズ事件」、「百貨店の商法違反事件」、「食品会社の牛肉偽 装事件」、「大型トラックタイヤ脱落事故」、「電力会社の原発事故」、「アスベスト事件」、

「家電メーカー製の温風機事故」、「介護派遣会社の虚偽申請事件」の8事例を基に自己 修正マップの具体的な考察を進める(本章6節1参照)。

 

1 事例に見られる事象の分類基準   

以下は、これら8つ事例に共通する自己修正の経時的事象をX軸とY軸それぞれ5段 階(-2・-1・0・+1・+2)毎に、その分類基準を示したものである。この分類基準は、それ ぞれの事例における自己修正行為を自己修正マップ上にプロットする際の基準となるもの である。

  表 3.1: 

8 つの事例の報道記事に見られる事象の[X軸]と[Y軸]への分類基準表   

                             

               

表 3.1 (続く) 

              

                                             

2 事例の検証方法   

2.1 自己修正マップへのプロット   

前項の表3.1の分類基準に基づき、自己修正マップへのプロットを行った。筆者のほか に3名が8つの事例に関する報道記事を全て精読し、それぞれが自己修正マップへのプロ

ット作業を行った。リサーチャーの一人は、企業でパブリック・リレーションズ業務を担 当し、現在は大学で PR 講座の教鞭をとっており、二人目は企業の広報セクションで危機 管理とクライシスコミュニケーションに関わった経験を有している。三人目は、PR経験の 無い大学生(女性)である。これら4名が評価したそれぞれの平均値を割り出した。作業 期間は2008年8月6日〜9月22日。データは巻末の、8事例の自己修正の段階的変容を示 す表(添付資料1.1-1.8)を参考されたい。

ポイントの付け方は次のルールに基づいた。

①記事本文が対象

ヘッドラインは対象外となり写真のキャプションは含める。

②事例に関連するリアルタイムの事象が対象

例えば、「昨年、不祥事が発覚した際に再発防止のために設置されたコンプライアンス委 員会」は本来、能動的な修正行為として評価されるが、とられた修正行為が昨年のこと なので対象とはならない。

③記者の観測的なコメントも対象外

④1件の記事に現われた事象全てをX軸、Y軸ともに[-2・-1・0・+1・+2]にプロットし、

それらを5段階(1〜5)の数値に変換し、平均値を小数第2位まで算出し、四捨五入し ている。同日の朝刊や夕刊紙面に関連記事が複数(一面と経済面、そして社会面などの 複数点数)ある場合も1件の記事とみなし同様に行う。

⑤それぞれの記事毎に筆者を含めた4名の平均値を1件の記事毎に求め、四捨五入して最 終値とする。

⑥8つの事例につき5段階平均による中心点を割り出し、X軸[0]とY軸[0]が受動側に位置 するのか、あるいは能動側に位置するのかを判定することにより、4つのエリア(<受 動・表層>・<受動・本質>・<能動・表層>・<能動・本質>を事例ごとに明確にす る。

⑦8つの事例におけるX軸とY軸それぞれの自己修正の動きを、より精緻にとらえるため

[-2・-1・0・+1・+2]の尺度に替え、[1.0〜5.0](41 段階)の尺度を用い、その評価ポイ

ントの動き(変動)を時系列で折れ線グラフに示した。

また、折れ線グラフの傾向を見るため、「はずれ値」を含んだ実測値の時系列的な動きを 一次直線に当てはめた(最小二乗法)。最小二乗法では、推定値(理論値)と実測値と の誤差に対してその二乗の平均で全体としてのずれを評価しているが、実測値のうち別 の要因によるものが存在している場合、すなわち本来のモデルから外れたデータがある とパラメータの決定に大きな影響を与えてしまうことがある。しかし今回は、別の要因 が加わっている実測値があるわけではなく、また、分布のばらつきが大きいケースも あるが、実測値の数が少ないケースが多いため(9件、11件、13件、23件など)、最 小二乗法を用いて大まかな傾向を捉えるにとどめた。

⑧事例の経時的な推移を把握するため、それぞれの事例の対象期間が1年未満の場合は、

前半・後半の2段階に分け、1年以上については、前半・中盤・後半の3段階に分けて いる。

2.1.1 X 軸・Y 軸別の 5 段階評価 

前項で述べたように、X 軸と Y 軸の自己修正行為の推移を経時的に見ていくため、そ れぞれの5段階評価のポイントを折れ線グラフで示した。また、自己修正モデルの有効性 について総合的な検証を行なうため、経時的データの動きを最小二乗法により2本の当て はめ直線(一次直線)を引き、両軸の傾き(ベクトルの角度)と切片(一次直線のスター ト位置)を求めた。

 

2.2 分析対象期間(危機管理時)の設定   

事件・事故発生から一応の収束に至る期間については、次のように分析対象期間を設定 している。

事例1:薬害エイズ事件:1996年3月〜97年2月

事例2:百貨店の商法違反事件:1996年6月〜同年8月

事例3:食品会社の牛肉偽装事件:2002年1月〜同年4月

事例4:大型トラックタイヤ脱落事故:2004年3月〜05年11月 

事例5:電力会社の原発事故:2004年8月〜06年1月

事例6:アスベスト事件:2005年6月〜06年11月

事例7:家電メーカー製の温風機事故:2005年11月〜06年1月

事例8:介護派遣会社の虚偽申請事件:2007年6月〜同年9月

8つの事例で設定した分析対象期間のスタートは、⑤電力会社の原発事故のように事故 発生時となっているケースもあれば、③大型トラックタイヤ脱落事故のようにタイヤの脱 落による母子殺傷事件から2年後の「リコール届け出」が出された時点をスタートにして いるケースもある。8 つの事例はすべて、それぞれ問題を起こした企業であるゆえに問題 が顕在化した時期、つまり報道機関が報道を始め、企業が修正行為を起こした時が分析対 象期間のスタートとなる。

また、収束については事例に関連するトピックスが2〜3ヵ月間程度、メディアで報じられ なくなった時点としている。問題の解決については段階をへて事態収拾へと導く場合もあ れば、短時間で自己修正が行なわれ解決するといった場合もある。通常メディア報道にお いては、事件や事故などの問題を報じる場合、メディアは危機的状態にあるフェーズでは 事件・事故を大きく報じるが、ひとたび「危機は収束した」と認識すると、それらを報道 しなくなるということである。

ドキュメント内 序章 (ページ 81-86)