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3 つの要素を統合する意義

ドキュメント内 序章 (ページ 62-73)

第2章  パブリック・リレーションズにおける自己修正モデル

第5節    3 つの要素を統合する意義

 

自己修正を完結させるためには、倫理観に基づいた双方向性コミュニケーションが目 標とする自己修正に効果的に機能する必要がある。本章冒頭でも示したように、これら 3 つの要素が常に統合されることによって目的を達成できる。どのように自己修正を試みて も、双方向性のない相手との関係は互いの立場や意見の主張に終始することにもなり、倫 理観の欠如した修正は、対象となるパブリックが位置するよい方向へ向かうことができな い。自らの航路の羅針盤に倫理を組み込むことにより、正しい自己修正が可能となり目的 地に到着できる。

次に実際に、個人や組織体の目標達成のために、倫理、双方向性コミュニケーション、

自己修正が統合されることにより、パブリック・リレーションズの具体的な活動にどのよ うに用いられるのかを考察する。本節では自己修正型ライフサイクル・モデルを使って組 織体への適用の骨格を示すことにより、上述の3つの要素の統合の意義を考える。次章の 事例検証による経時的な変容を考察する上で重要となるからだ。

 

1 自己修正型パブリック・リレーションズのライフサイクル・モデル   

最短距離で成功に導くパブリック・リレーションズとは企業や組織において、その目 標達成のために、効果的で、確実に成果の期待できるパブリック・リレーションズを展開 することである。そのためには、まずパブリック・リレーションズの担当者やその関係者 がパブリック・リレーションズの今日的意味をよく理解し、そのうえで有効な手法を駆使 していく必要がある。

パブリック・リレーションズは、情報発信者が設定するPR目標から導き出されたメッ セージを情報受容者(特定のパブリック=対象(ターゲット))に正確に、確実に伝えるこ とが第1の目的である。

両者間の双方向のコミュニケーションにより信頼関係を築いていくためには、倫理観 を持ち公共の利益に沿った、社会的に有意義で調和ある行動と情報発信者の自己修正能力 が求められる。

こここでは、自己修正モデルをベースとしたパブリック・リレーションズの意味を踏 まえたうえで、有効で、成果の期待できるパブリック・リレーションズの展開可能な具体 的手法であるライフサイクル・モデルを提示する。このモデルの特徴は、より高次元の目 標を達成していく永遠の環をなすスパイラル性にある。それを支えるものが、倫理、双方 向性コミュニケーション、自己修正の3つが統合された自己修正の概念である。

 

1.1 PR ライフサイクル・モデルの概要   

図2.2は、パブリック・リレーションズ(PR)の自己修正型ライフサイクル・モデルで ある。これはPR展開に欠かせないプロセスの総合的な体系であり、あらゆるPR戦略づく りの基本となるものである。ライフサイクル・モデルは、どの場合でも適応することがで きる。もちろん、企業や組織が独自に PR 戦略を展開する場合においても同様に活用でき るモデルである。

 

図 2.2 パブリック・リレーションズの自己修正型ライフサイクル・モデル   

                         

出典:井之上喬(著)(2006).『パブリックリレーションズ』.日本評論社. 

「自己修正型」ライフサイクル・モデルであるPRライフサイクル・モデルは図に示す ように「環をなす継続的な活動であり、そのサイクルは「自己修正機能」によって、スパ イラル的に高次元化するモデルである。スパイラルは段階的変容のある期間を示している。

スパイラルの1環が一つのフェーズの場合もある。事象の大きさや重要性によって変わる からである。第2章第3節でも示したように、自己修正にはその修正内容において、理想 的な修正内容とそうではない修正内容がある。また、修正の取り組み姿勢についても、内 発的な作用(能動的)による取り組み姿勢と、外発的な作用(受動的)による取り組み姿勢と では異なってくる。例えば、組織内の枠組みで見た場合、組織のあるセクションがプロジ ェクト・チームをつくり立案した企画に対して、チームメンバーからの指摘やアドバイス により修正したものは能動的修正となるが、チーム以外、例えば部長や他のセクションの 人たちからの指摘やアドバイスによる修正は受動的な修正となる。また、倫理、双方向性 コミュニケーション、自己修正が統合されているこのモデルは、図が示すように、サイク

ルが一巡したところで高次元を目指して自己修正を行うことができるが、それぞれの段階 においても微調整的な修正を行うことができる。

このように上に示すライフサイクル・モデルはパブリック・リレーションズの理想モ デルということができ、それ故に修正する際の取り組み姿勢に能動性が維持できるのであ る。

展開の出発点は、企業があらかじめ掲げているゴールにもとづき、自社あるいはクラ イアント企業(PR会社であれば)の現状を把握・理解するための「リサーチ&シチュエー ション・アナリシス」である。ここで収集した基礎データをもとに、「PR目標(目的)の 設定」および「対象(ターゲット)の設定」を行う。そして、このPR 目標(目的)を社 会からの支持を得ながら最短距離で達成するため、双方向性を前提とした、対象(ターゲ ット)への最適な情報伝達を行なうためのコミュニケーション・チャンネルの設定を行う。

つまり、対象(ターゲット)(市場)に対しアクセスするためにメディアあるいはオピニオ ン・リーダーなどを選定する。そして目標達成のためにどのような戦略で望むべきかの

「PR戦略の構築」を行う。

次のステップとなる「PR プログラムの作成」は、戦略に沿った戦術レベルでのプログ ラム策定であり、具体的で実践可能な計画の立案である。続く「インプリメンテーション」

は、前段で立てたプログラムの実行であり、それまでのプロセスがリハーサルとすれば、

パブリック・リレーションズ活動の本番ということになる。

そして、これら一連の活動の締めくくりが対象(ターゲット)となるパブリックからの フィードバックに基づく「活動結果や情報の分析・評価」である。戦略的コミュニケーシ ョン活動の結果が、あらかじめ設定した対象(ターゲット)や業界、社会に対し、どのよ うな効果および影響をもたらしたかについて公正に分析・評価する。発信した情報をフィ ードバックすることで、前述したようにPRライフサイクル・モデルが双方向性を持ち「自 己修正機能」によって、スパイラル的に高次元化することに役立てるのである。

以下、ライフサイクルの各ステップを具体的に述べる。

 

1.2 リサーチとシチュエーション・アナリシス(状況分析) 

 

パブリック・リレーションズ活動を行うにあたっての出発点は、自社あるいはクライ アント企業の国内外における現状を把握・理解することである。特に戦略的な PR プログ ラムの構築には、十分なデータ収集と分析が担保されなければならない。それらのデータ に基づいて自社(クライアント企業)は競合会社と比較してどこに優位性があるのか、差 別化できる要因は何かなどのプラス面、逆にウィークポイントは何かといったマーケット でのポジショニングを明らかにするほか、マーケティング活動やコミュニケーション活動 のレビュー、メディアでの取り上げられ方などポジティブ(肯定的)あるいはネガティブ (否定的)なパースペクティブ(見通し)を確認する。

マーケティング戦略や企業戦略立案でよく使われる分析手法に「SWOT(スウォット)

分析」がある。これは組織体の強み(strength)、弱み(weakness)、機会(opportunity)、

脅威(threat)の4つの軸から評価するもので、「シチュエーション・アナリシス」には有 効な手法である。

この段階で企業自身の過大評価や過小評価を適正に修正したり、見落としていたファ クターなどを洗い出して客観的に分析する必要がある。この状況分析によって「PRの目標 設定」および「対象(ターゲット)の設定」に向けたデータが整備されることになる。

リサーチとシチュエーション・アナリシスの手法には、一般的にヒアリング 14、メデ ィア・オーディット 15、ベンチマーク調査 16 などがある。

 

1.3 PR 目標の設定   

リサーチとシチュエーション・アナリシスを通して得た情報に加え、経営目標とマー ケティング目標をベースに「PR目標の設定」を行う。

パブリック・リレーションズの目標は、中・長期的な視点に立った継続的で戦略的な コミュニケーション活動により達成されるべきゴールである。年間売上高を 10%増にす るとか、新製品を100万個販売するといった目標は、それぞれ経営目標でありマーケティ ング目標ではあるが、ここで取り上げる PR 目標とは異なる。パブリック・リレーション ズは、企業自体あるいはその事業活動や製品・サービスに対する認知や好感度を対象(タ ーゲット)となるパブリックをはじめとして業界や社会に高めていくためのコミュニケー ション・ベースの総合的なリレーションズ活動であり、結果的に「ゴール」としての経営 目標やマーケティング目標の達成に寄与できるものでなければならない。

企業の置かれている状況によって設定すべきPR目標が異なってくるのは当然のことで ある。しかし、PR目標には発信すべき情報として「企業理念」、「経営目標」などのほか、

競合企業との差別化を図るために強く打ち出すポイント、優位性を印象づけるためのメッ セージの策定が含まれるが、倫理観ベースのコンプライアンスを意識しなければならな い。

 

1.4 対象(ターゲット)の設定   

PR目標の設定に続いて、具体的に対象(ターゲット)を設定することになる。対象(タ ーゲット)の設定は、何(PR目標)を、パブリック(一般社会)の誰(対象(ターゲット))

に対して、双方向でコミュニケートしていくかという図式を完成させることであり、「PR 戦略の構築」以降の方向性を決定することである。

筆者は通常、設定する対象(ターゲット)を2種類に区別している。第1は「ビジネス 対象(ターゲット)」であり、第2は「コミュニケーション・チャンネル」である。

 

1.4.1 ビジネス対象(ターゲット) 

 

ビジネス対象(ターゲット)は多くの場合、企業が提供する製品やサービスを実際に購

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