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主題とは

ドキュメント内 学位授与機関 同志社大学 (ページ 31-34)

第 2 章 日本語の主題卓越型構造の転移に関する先行研究

2.2 日本語の主題卓越型構造

2.2.1 主題とは

益岡(2019:36)は、「主題」とは、「その文が何について述べているのかという“aboutness”

を含んでいる文の要素である」と定義し、「文において対象Xについて説明が与えられるとき の説明の対象Xのことである」と述べている。

また、Gundel(1978)や益岡・田窪(1992)によると、話し手と聞き手が発話からすでに了

解している情報であること、または、文脈からわかっているか推論可能であるかであること が主題の要件である。

(1) A: What happened to your car?

B: My car broke down.

(2) I got on a taxi yesterday, and the driver was drunk.

上記の(1)・(2)では、下線部の“My car(私の車)”や“the driver(その運転手)”などが主 題となりえるが、(1)「私の車」とは何であるかは発言者 Bの聞き手である Aは当然了解し ていると思われ、(2)の「その運転手」とは誰であるかも(2)のメッセージの受け手が「あ るタクシーの運転手」であると推論することは可能である。

したがって、指し示している対象が特定できないものは主題になりえないので、Kuno(1972)

やGundel(1974)は、「定性(definiteness)」も主題の特徴の1つであると指摘している。Wu

& Chitrakara(2018)によると、(3)~(5)が示すとおり、定冠詞‘the’を伴っている名詞句や

固有名詞、代名詞などはすべて定性を持っているため、主題となりえる。

(3) The cat is playing in the garden. (Wu & Chitrakara 2018:5)

(4) John has finished his homework. (Wu & Chitrakara 2018:5)

(5) He got the first prize at the contest.

野田(1996・2002)によると、文中で主題がどのように表されるかに関して、形態的手段・

文法的手段・音声的手段の 3 種類があるとしている。益岡・田窪(1992)によると、形態的 手段とは、日本語の提題助詞「は」のように、文中の名詞句Xを何らかの主題標識を用いて マークする方法である。文法的手段は、主題にあたる要素を文の前の方に置いておくといっ た語順に関連する方法であり、Li & Thompson(1976)によると、主題は基本的に文頭に置か れる。音声的手段は、主題の部分を強く発音せず、主題の後に音声的休止を置くといった音 調に関連する方法である。

次に、日本語における主題とはどのようなものであるかを述べる。益岡・田窪(1992)によ ると、他の言語と同じように、主題Xは、後続に主題標識(提題助詞)「は」を伴って、文頭 に置かれる。「Xは」から始まる文は、Xの持つ属性を述べる文のことであり、(6)では、文 頭の名詞句「インターネット」が主題Xにあたり、文頭に置かれ、「は」にマークされ、「た くさんの情報が得られる」のような「インターネット」の属性が後続する。

(6) インターネットはたくさんの情報が得られる。

また、主題は、「~について」という“aboutness”の概念が重要となるので、「Xは~。」と いう文に関しては、(6)は、(7)のように、「Xについていえば、~。」と解釈される。

(7) インターネットについていえば、たくさんの情報が得られる。

益岡(2004)は、「インターネットは」のような「Xは」の部分が対象表示成分とし、「主題

(topic)+解説(comment)」の構造の文を「属性叙述文(property predication)」と定めた。ま た、益岡(2004)によると、属性叙述文の場合も文頭に「Xは」が現れないことがあると指摘 しており、塚田(2001)やMasuoka(2017)によると、(8a)のような「は」が後続するXの ことを「無標主題(unmarked topic)」と解される。一方、(8b)のような「は」が後続しない Xのことを「有標主題(marked topic)」と呼ぶ。また、何に焦点をあてて、文中で解説を行う かは外発的な動機(文脈)によるため、(8a)では、「辞書」に焦点があてられ、「辞書」につ いての解説がなされているが、一見同じ意味内容を指しているにもかかわらず、(8c)は、「そ

の授業」に焦点をあて、「その授業」についての解説を与えている。

(8) a.辞書は その授業で 必要です。

b.辞書が その授業で 必要です。

c.その授業は 辞書が 必要です。

先述のとおり、主題の重要な要件として、話し手と聞き手が発話からすでに了解している 情報であること、または、文脈から推論可能であることが挙げられる。したがって、第 1 章 で述べたように、英語の授業において、日本語が母語の初級英語学習者が特定のテーマに関 して論じる際、そのテーマに関連した事物を表す名詞(句)Xを提題助詞「は」に後続させて 文頭に表示した「Xは」から始まる日本語文を発想することは当然であると思われる。実際、

第 1 章で述べたように、Fill-in-the-blank を用いたコミュニケーション活動を課した授業にお いて、学生にインターネットの利用に関する意見文を作成させようとすると、多くの学生が、

「インターネットは」が文頭に現れるインターネットの属性を解説するための日本語文を発 想する。

また、別のケースで、筆者が都会暮らし・田舎暮らしの是非に関するディベートをクラス で行った際、表 13 のような学生の立論のテンプレート中の①~④には、ほとんどの学生が

「都会は」あるいは「田舎は」が文頭に現れる都会・田舎の属性を解説するための日本語文 を発想していた。

表13 都会・田舎暮らしに関するシンプル・ディベートにおける立論のテンプレート

We think that living in the [ city / countryside ] is good for two reasons.

First, ① . For example, ② . Second, ③ . For instance, ④ . Therefore, living in the [ city / countryside ] has many advantages.

このように、「Xは」の後ろには、さまざまなXの属性が与えられるが、属性にもさまざま なタイプがあり、属性のタイプに応じて、文構造も決定づけられる。次節以降では、属性と はどのようなものかより詳しく述べる。

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