第 7 章 転移を克服する指導法の提案と実践
7.6 結果・考察
7.6.1 プレテストとポストテストの平均点についての結果
表65は、クラスA~Dにおける最終的なデータ数・プレテスト・ポストテストの平均点・
標準偏差をまとめたものである。また、図33~図40は、各クラスのプレテスト・ポストテス トにおける得点分布を示したヒストグラムであり、学生毎のプレテスト・ポストテストの正 誤データについては、Appendix-11・Appendix-12を参照されたい。
表65 プレテスト・ポストテストのクラス別平均点・標準偏差
クラス データ数 プレテスト ポストテスト 平均 標準偏差 平均 標準偏差
実験群 クラスA 28 9.00 2.96 17.71 4.61
クラスB 24 9.58 2.83 20.25 3.29
統制群 クラスC 16 9.25 3.26 9.75 4.55
クラスD 24 8.08 3.13 9.00 4.32
図33 クラスAのプレテストの得点分布 図34 クラスBのプレテストの得点分布
図35 クラスCのプレテストの得点分布 図36 クラスDのプレテストの得点分布
図37 クラスAのポストテストの得点分布 図38 クラスBのポストテストの得点分布
図39 クラスCのポストテストの得点分布 図40 クラスDのポストテストの得点分布
次に、プレテストの結果に関して、4つのクラスの間で平均正解数に差があるかについて、
一元配置分散分析を行い、その結果を表66のとおりに示す。F値 = 1.06であり、p値 = 0.37 となり、効果量η2 = 0.04となったため、4クラスの間で平均正解数の差がないことが導かれ た。また、図41は多重比較における95%信頼区間を示したものであるが、すべての信頼区間 が0を含んでいるため、どの2クラスの間でも平均正解数の差がないことが示された。
表66 プレテストに関する一元配置分散分析の結果
自由度 平方和 平均平方和 F値 p値 効果量η2
クラス 3 29.20 9.72 1.06 0.37 0.04(小)
残差 88 804.70 9.14
さらに、表67は、多重比較の結果を示しており、t値・p値・効果量 d からもわかるよう に、どの 2クラスを抽出しても、その2クラス間の平均正解数の差がないことが導かれた。
したがって、これらのクラスの間で、プレテストからポストテストへの能力の伸長について 比較することは妥当であると判断する。また、クラスAとクラスBの間の平均点にも差がな いため、このまま分析を進めることとする。
表67 文法性判断問題の平均正解数に関する多重比較結果 推定値 標準誤差 t値 p値 効果量d
クラスB-クラスA 0.58 0.84 0.69 0.90 0.20(小)
クラスC-クラスA 0.25 0.95 0.26 0.99 0.08(なし)
クラスD-クラスA -0.92 0.84 -1.09 0.70 0.30(小)
クラスC-クラスB -0.33 0.98 -0.34 0.99 0.11(なし)
クラスD-クラスB -1.50 0.87 -1.72 0.32 0.50(中)
クラスD-クラスC -121 0.98 -124 0.63 0.37(小)
図41 2組ずつの文法性判断問題の平均正解数の比較に関する95%信頼区間
次に、図42は、クラス別にプレテストからポストテストにかけての平均点の推移をプロッ トしたものであり、クラス別のプレテスト・ポストテストの平均値に関して、二元配置分散 分析を行った。用いたデータは Appendix-13に示しており、得られた結果については、表68 のとおりである。
表68 プレテストとポストテストに関する二元配置分散分析の結果
平均平方和 自由度 F値 P値 効果量η2
クラス 409.07 3 21.75 0.00 0.22(大)
授業実践前後 1191.26 1 147.14 0.00 0.21(大)
交互作用 303.58 3 37.50 0.00 0.16(大)
残差 13.45 176
図42 クラス別プレテスト・ポストテストの平均点のプロット
表68が示すとおり、交互作用の有無に関するF = 22.64であり、p < 0.05となった。また、
効果量η2 = 0.15(大)となったため、クラスとプレテスト・ポストテストの間に交互作用があ
ると認められた。つまり、図42も示しているように、実践授業を受けたクラスA・クラスB の学生はプレテストからポストテストにかけて大きく点数を伸ばすことに成功し、実践授業 の成果があるということが示せた。
また、授業実践の学習効果については、各クラスの学生のプレテストとポストテストの間 の得点差の大きさからも明らかである。図 43~図 46 は、各クラスのポストテストの得点か らプレテストの得点を引いた差に対する学生の数を示しているヒストグラムである。図43や 図44が示すように、実験群であるクラスA・クラスBの学生の9割以上がプレテストからポ ストテストにかけて点数をあげることができた。また、実験群の4割以上の学生が10点以上 点数をあげることに成功している。一方で、統制群であるクラス C・クラスDの学生の約半 数がプレテストからポストテストにかけて点数を下げてしまい、10点以上点数をあげた学生 もいなかった。
以上より、本論文で提案・実践した指導法に一定の学習効果があるということが示された が、本論文で扱ってきた英語で表現することが難しい日本語文の種類ごとに検討していくこ とで、どのような種類の文の習得が容易であるか、あるいは、困難であるかを明らかにする ことができ、実践授業の成果と今後の課題をより明確にできると考える。
図43 クラスAの学生の得点差に関する ヒストグラム
図44 クラスBの学生の得点差に関する
ヒストグラム
図45 クラスCの学生の得点差に関する
ヒストグラム
図46 クラスDの学生の得点差に関する
ヒストグラム