1. 契約のスキームを検討する。
「フランチャイズ契約」の内容については上述したので、ここでは各種契約のスキームに ついて述べる。
中国に設立された外商投資企業が中国企業にフランチャイズする投資スキームを想定 した場合、フランチャイザーとなる外商投資企業が100%子会社であるかどうかは、契 約スキームを検討する際に極めて重要な考慮要素のひとつとなる。
外商投資企業が100%子会社であれば完全にコントロールできるから、中国におけるフ ランチャイズはすべてこの外商投資企業に任せても大きな問題はない。しかし、外商投
資企業が100%子会社でなく完全にコントロールできない可能性がある場合は、慎重に
契約案を作成する必要がある。
外商投資企業を完全にコントロールできない可能性がある場合、特に留意しなければな らないのは、フランチャイズ権を構成する権利を外商投資企業にどこまで付与するかで ある。このような場合、フランチャイズ権を構成する重要な一部、たとえば商標権を、
フランチャイジーを経由することなく、直接サブフランチャイジーとなる中国企業にラ イセンスすることを検討すべきである。そうすれば、サブフランチャイジーを直接コン トロールする手段が確保できるし、フランチャイジーを牽制する手段も得られる。これ により、フランチャイズ全体に対する支配権も強化されるはずである。
このように、契約スキームの検討は、契約の個別条項の修正では得られない権利、利益 を投資者にもたらすことがある。十分な検討が必要となる所以である。
2. 投資のスキームを検討する。
契約スキームとともに、投資のスキームも十分な検討が必要である。本書では、フラン チャイズのために新規に外商投資企業を設立するスキームを前提に記述をしてきた。
しかし、外商投資企業は買収によって取得することも可能である。また、すでに現地に 子会社又は関連会社を有する投資者は、その現地企業がフランチャイザーとしてフラン チャイズ展開をするスキーム、あるいはその現地企業が再投資をしてフランチャイザー となる外商投資企業を設立又は買収するなどのスキームも検討する余地がある。香港に 現地企業を有する投資者は、今年1月1日から発効したCEPA(「大陸香港経済貿易緊密 化協定」)の定める条件の下で、香港子会社による投資も検討するとよいであろう。
3. 「フランチャイズ」以外の選択肢を考える。
フランチャイズは、少ない投資で急速に事業を拡大できる革新的なビジネスの手法であ るとされている。この点に異議はない。しかし、「フランチャイズ契約」の内容はどうか と言えば、それほど革新的なわけではない。極端な言い方をすれば、商標その他のマー クのライセンス契約と経営管理ノウハウのライセンス契約を束ねたにすぎない。
このことは「フランチャイズ契約」を締結しなくても、商標ライセンス契約と経営ノウハ ウのライセンス契約を締結することにより、「フランチャイズ契約」を結んだ場合とほぼ 同様の契約関係を形成できるということを意味する。
実際、中国ではすでに80年代から外資系ファースト・フード店が営業しているが、フラ ンチャイズ方式が採用されていたわけではない。また、たとえばホテル業を目的とする 外商投資企業の設立、運営管理に関する法律法規は未整備であるが、中国各地で外資系 ホテルがチェーン展開している。調査したところによると、某外資系ホテル・チェーン では、商標のライセンスとホテル経営でよく採用される経営管理委託方式により中国各 地で多数のホテルを経営しているようである。
流通業の場合も同様で、商標ライセンスを含む販売店又は代理店契約を締結し、その内 容を工夫すれば、「フランチャイズ契約」を締結した場合と同様のブランド・イメージを 定着させることも不可能ではないはずである。投資額は増大するが、直営店をチェーン 展開するというのも選択肢のひとつであろう。外商投資製造企業が製造した製品を販売 するのであれば、この外商投資製造企業が販売店を設置するという方法もある。
フランチャイズ方式を採用する場合には、フランチャイズが最善の店舗展開の方法であ るかどうかを他の方法と比較検討する必要がある。その際には、法規制の状況とともに、
中国市場の動向、管理スタッフの能力、文化の違いといった様々の要素を考慮に入れる 必要があるだろう。