1 研究の目的と構成
2.6 社会実験体験による住民の施策受容性に与える要因分析
2.6.5 三事例間における施策受容性に与える要因の比較分析
(i) 施策の予想効果と体験効果
施策の「予想効果」と「体験効果」の共分散については、静岡市バスレーンと大宮氷川 参道においては非常に大きな値を示している、一方さいたま市ハンプではこの二事例に比 べ低い値となっている。これは、静岡市におけるバスレーン、大宮氷川参道における歩車 分離及び一方通行化という施策を実施したときの状況が比較的容易に想像できること、ま たさいたま市ではハンプという施策が一般的にあまり認知されておらず、ハンプとはどの ようなものか、どのような効果があるのか、設置により悪影響が生じてしまうことはない のかなど地区住民にとって不確定要素が多分に含まれていることが影響していると考えら れる(図 2-47)。
11
109
26
53
100
38
よく知っている なんとなく知っている
聞いたことはある 知らなかった
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
ハンプ(さいたま市)
n=137 バスレーン(静岡市)
n=200 凡例
図 2-47 施策の認知度 (ii) 体験効果が受容性に及ぼす影響
「体験効果」が社会実験後の施策の受容性に与える影響は、(静岡市,さいたま市,大宮氷川参 道)=(0.84,0.80,0.90)であり、三事例全てにおいて非常に高い値を示している。つまり、公 共交通に関する施策(広域な施策)でも、地区交通に関する施策(狭域な施策)でも社会 実験による施策の説明力は非常に大きく、社会実験による施策の効果が受容性に大きく影 響を与えていることが確認できる。
(iii) 交通環境に関する問題意識が施策受容性に及ぼす影響
施策の体験前の受容性に対する「交通環境に関する問題意識」の影響は、氷川参道の事 例では検証することができなかったが、施策体験後の受容性に与える影響は、(静岡市,さい たま市,大宮氷川参道)=(0.39,‐0.09,‐0.02)であり、静岡市の事例では「交通環境に関する 問題意識」が高いほど施策の受容性も高くなるが、他のさいたま市と大宮氷川参道の事例 では「交通環境に関する問題意識」が体験後の受容性に及ぼす影響は非常に小さいことが 確認できた。
「交通環境に関する問題意識」が受容性に影響を与えている静岡市の事例と、受容性に 影響をほとんど与えていないさいたま市、大宮氷川参道における事例の違いとしては、前 者は公共交通の利便性の向上に関わる施策であり、後者は地区交通の安全性の向上に関わ る施策である。
前者の公共交通利用促進策では、地区住民は交通に関して何らかの問題意識を抱いてお り、その問題意識が受容性に対して与える影響は無視できない。一方、後者の地区交通の 安全性の向上に関する施策では交通に関する問題意識が受容性に与える影響は前者に比べ て非常に小さい。つまり、受容性に対して影響する要因としては、施策自体の効果という 要素が非常に強い。
公共交通利用促進策では問題意識の高揚により受容性が向上する可能性を示唆している。