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担保ヲ入レテ 」

このうち「一七」の4列の情報は,それぞれどのように関連しているのかが説明されていない

が,前2列と後ろ2列が独立した質問と考えるべきかもしれない。実際に記入された内容から推 測すると,少なくとも店主側は1行目で現金支払いの有無を,2行目でその頻度を,それぞれ回 答しているようである。また3行目と4行目はそれぞれ類似の設問であるため,合計して分析せ ざるをえないだろう。いずれにしてもこの設問は,きわめて中途半端なものであり,店主側は大 いに困惑したのではなかろうか。

ぶ びき

同様に「一八」も回答しづらい設問であるが,歩引とは「買手が売手に,実際の取引高の1〜

2% を上乗せした仕切書を作成させ,上乗せ分を一定の期間にわたり,売手に預託しておくこ

わりもどし

と」,割 戻とは「一定期間の取引高にもとづいて,期末に取引代金の一定の割合を得意先に対し て払戻すこと」である(145)。いずれもかなり以前から行われていた商慣習であり,とくに後者は 現在「リベート」と呼ばれている。これらは小売商と卸商(問屋)との力関係の結果として発生 し,資金繰りにも影響する事項である。ちなみに商習慣を示すこれらの項目は,他の調査では まったく調べられていないため,当調査は貴重な情報を提供してくれる。ただし問屋との関係で は,すでに口銭といった形で手数料を支払うことが知られていたが,この口銭と歩引・割戻がい かなる関係にあるのかを説明した資料類は,いまのところまったく入手できていない。

「一九」も当時の商慣習を把握できる点で興味深い設問である。すなわち問屋からすると,と にかく自分の商品を小売商の店先に置いてもらわないかぎり,自らの売上を達成することはでき ない。その反面,経営体力のない小売商に商品を買い取らせるか,委託販売させることはリスク がともなうものである。このリスクを低減させるために,保証金または担保を徴求することが考 えられる。特にここでの担保とは,借入をする際の担保とは異なるものであるが,これらの債権 を徴求できるためには,「一八」と同様に小売商と卸商(問屋)との力関係を反映して決められ る項目であろう。

ところで担保について若干,注意点を述べておきたい。それは当調査では担保を上記の借入金 ごとに詳しく調べており,特にその種類などが明らかになったことである。『商業調査書』では まったく調べられていなかったから,これは大きな進歩である。ちなみに金融機関側が現行の融 資手続き上で担保を徴求する際には,次のような多様な形態の担保が想定される。①仕入商品・

原材料を占有すること(いわゆる質権の設定),②銀行などで預貯金をおこなわせること(歩積 両建),③土地・建物等に抵当権を設定すること,④工場財団などの財団を組成させそれに抵当 権を設定すること。このうち①は,荷為替手形の実施にあたって,銀行側が指定の倉庫に商品を 保管しておき,しかるべき支払いがおこなわれない場合にはそれで債権を回収することを想定し ていた。ただし商工審議会の「中小工業ニ対する金融改善方策要綱」(1927年10月答申)で

「二、原料買入資金―(中略)此ノ買入原料ヲ担保トシテ資金ヲ貸付クルモノトス,但シ実際ニ 於テ資金ハ原料ヲ買入ルル為ニ必要ナルヲ以テ,先ツ之レカ融通ヲ図ルニ非サレハ担保物件タル 原料ノ購入ハ不可能ナル状況ナリ」(146)と指摘しているように,必ずしも容易なことではない。

③,④の抵当権は,普通抵当権と根抵当権の2種類が想定されるほか,④の財団組成の事例と

しては加工・製造部門を併設した小売商等が該当する。ただし④については,一般的な商品仕 入・販売を中心とした小売商では,財団を組成していないため適用できない手法であろう。ちな みに東京商工会議所の作成した「中小商工業資金特別融通案」(1929年7月発表)では,以下の ような担保が例示されている。この答申は,あくまで工業者の場合を想定しているが,当時の金 融機関でいかなる担保が使用されていたのか,その実態を明らかにできるため,小売商でも参考 となる内容である。

「乙、担保附貸付

(中略)

ホ 安全保証

(A)保証人 確実ナル保証人一人以上ヲ要ス

(B)担保ハ左ニ列記スルモノヲ以テ之ニ充ツ 1 工場財団

2 土地建物及機械器具

建物ノ場合ハ借地権ヲ考慮シテ寛大ニ評価スルコト 3 船舶

4 有価証券(国債地方債,各種債券,株券,社債券,保険証券,倉庫証券等 5 原料及商品

6 預金債券 7 電話加入権

8 家具什器 」(147)

実務上からみて,すでに工場財団や電話加入権が担保として使用されていたほか,地価の評価 では借地権を考慮していた点も興味深い。以上のように,一口に担保といっても実に多種多様で あり,それを確定しないとこの項目は中途半端なものとなろう。当調査では「金融調査」と命名 されていることもあり,ある程度の具体的な記述が求められていた。

このほか調査票(表面)の「第四、財務ニ関スル事項」のなかにも,以下のような掛けや手形 に関する情報を入手できる項目が設けられている。『商業調査書』と比べて,手形の項目を追加 した点では改良されているが,そのサイトが記入できない点で依然として不完全なものである。

現金 円

"

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最近一ヶ年金 円 内

"

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掛 円

四八、仕入代金ハ(製造ヲ 手形 円

兼ヌルモノハ原料 (以下,省略)

ノ仕入高ヲモ含メ

テ下サイ) 」

もっともこの項目は極めて重要であると思われるが,それにもかかわらず最終報告書では「最

近一ヶ年金 円」の関連数字のみ集計され,その内訳である現金,掛,手形の各金額が集 計されていない(148)。残念なことであるが,これは利用することができない。

最後に,以上のデータにもとづく統計表の概要についても言及しておきたい。実は,当調査で は調査結果の集計表に相当する最終報告書『東京市内ニ於ケル小売業経営並ニ金融調査』(商工 調査第70号)が公表されているほか,調査事務局のあった東京商工会議所が保管していた調査 票の個票データ,およびそれを見やすいように再集計した中間集計表も入手できるなど,合計3 種類のデータが揃っている(149)。これほど充実した調査は珍しいが,本稿の目的がおもに事業資 金の全体像を把握することに主眼が置かれているため,本稿では基本的に最終報告書の集計デー タにもとづき議論を進めていきたい。もちろん個票データでしか入手できない貴重な情報も多い が,これらのデータを使った本格的な分析は別稿に譲ることとしたい。

なお最終報告書の構成は,調査票(表面)の「A 報告店ノ営業組織」から「七十三 店員ニ 対スル福利施設」までを対象とした「本編」,調査票(裏面)の「第一表 Ⅰ 金融機関別借入 金(各業種別及総計)」から「第三表 Ⅷ 公租公課ノ構成割合」までの「附表」,他地区(大阪 など12都市)でおこなわれた同種調査の概要を記した「附録」(わずか1頁のみ)の3部となっ ている。このうち2番目の「附表」が調査名の一部「金融調査」に該当することからわかるよう に,金融調査部分は経営調査部分よりも明らかに扱いが軽くなっている。この事実に対する具体 的な理由は明らかになっていないが,おそらく調査票(裏面)の第一表(借入金の内訳表)の回 答状況がかならずしも思わしくなかったため,積極的に集計することを控えたためと推測され る。この推測は,1店当り金融機関別の借入金内訳が実数で公表されていないことでも裏付けら れよう。このような事実は,以下のデータ分析にあたっても考慮しておく必要があるかもしれな い。初めに付言しておきたい。

以上の主要調査項目のうち,まず借入金の借入目的を表4

14(左側)でみてみる。この表で は,店別の借入目的を「事業創設」,「事業拡張又ハ改良資金」,「損失補填ノ為」,「旧債借換ノ 為」,「通常ハ運転資金調達ノ為」,「其ノ他」,「不詳」の7つに分類してその店舗数の構成比を示 しているが,これは自由記述によって様々な目的が書かれた回答を,集計にあたって7項目に集 約化したものであり,初めからこれらの選択肢が提示されていたわけではない。

まずこの分類は,我々が通常使用する借入目的の分類と異なっていることに注目しておきた い。すなわち現在は,運転資金・設備資金という二分法が使用されるが,この分類にしたがう と,この表では設備資金に関連した分類名が含まれていない。この理由として,大半の小売商で は貸店舗で開業した後にも事業拡張のための商品仕入(つまり在庫投資)が資金需要の大半を占 める,換言すると不動産を保有する設備投資があまり生じないという業種特性を反映しているか らと推測される。さらに開業後数年で経営破綻する確率が高いという事情も影響しよう。その代 わりこの表で,「事業拡張又ハ改良資金」は意図した在庫投資と取り揃え商品の入れ替えの資金,