ブーム伝播解析
ここでは前章までの 自由度非線形飛行シミュレーションモデルを使って計算した飛行 データをもとに, で所望のブームが計測できるかどうかを判定するためのブーム伝播 解析についてまとめる.ブーム伝播解析は機体重心位置を頂点とする円錐表面をブームが 伝播すると近似してブームの三次元空間での伝播を模擬するものである .ただし計算負荷 の観点から, では大気温度の変化や定常風の影響によるブームコーンの屈折ならびに フォーカシングの影響を考慮したブーム伝播解析は通常は行わず,必要に応じて実施した.
ブームコーンによる三次元伝播モデル
ブームコーンによる三次元伝播モデルの概要を図 および図 に示す.ブームコーン はブームが発生した時の機体重心位置を頂点とし,重心対気速度ベクトルの方向を軸とす る円錐によって定義される.ブーム計測座標系の
� � − � �
平面とブームコーンとの交線(形 状は楕円あるいは双曲線)が のマイクと交差したときにブームが計測される.自由度非線形シミュレーションの飛行データは離散的であるため,飛行データのうち計 測フェーズ中に 節の計測条件を満足する全ての時刻においてブーム伝播解析を実施し てこの交線を求め,交線が と交差した時刻にブームが計測されたと定義する.交線を 求めるための幾何学的な解析の詳細は 節に示す.
ただし,目的のブーム波形が計測できるのは機体の下面で発生したブームなので ,この 範囲内で と交差しなくてはならない.この判定は対気速度座標系で行う.所望の波形 が観測できるための条件は, に到達したブームが発生した時点での重心対気速度ベク トル周りの機体のロール角(バンク角)を
�
,またその時の機体重心位置から へ向か うベクトル� � ��� � ��� � ��� ℎ − ℎ ��� �
を� � − � �
平面へ投影したもの(図 におい て対気速度座標系の原点から� ���
に向かうベクトル)と� �
軸のなす角度を�
としたとき,� − � ≤ ∘
を満足することである.ただしℎ ���
は のマイク高度であり,� �
の符号は� �
軸の正方向に右ねじを回す向きの角度を正とする.� �
は次式で与えられる.� − � � � �
� �
� �
� � �
� �
� �
�
�
� � �� � �� � � � � −1 � �
�
� − � � � ����
� ����
� �
� � ����
� ����
� ���� �
�
� � �� � �� � � � ���
図
19
ブームコーンによる三次元伝播モデルの概要(その1
)図 ブームコーンによる三次元伝播モデルの概要(その ) 機体重心
(高度 )
BMS
BMS
到達ブーム(重心対気速度ベクトル後方より)
図
19
ブームコーンによる三次元伝播モデルの概要(その1
)図
20
ブームコーンによる三次元伝播モデルの概要(その2
) 機体重心(高度 )
到達ブーム
(重心対気速度ベクトル後方より)
10.2 Blimp
ドリフトモデルブーム計測に用いるマイクは
Blimp
を係留しているテザーに250 m
の間隔で取り付けら れており,Blimp
のノミナル位置は地表から鉛直上方1000 m
の位置である.ただし実際には
Blimp
は定常風に流されてしまうため,マイクの水平位置ならびに高度も変化する.そこで
D-SEND#1
とABBA
(2009
年から2011
年に計3
回実施されたBMS
機能確認試験)における
Blimp
位置の実測データを検証したところ,Blimp
のノミナル位置からのドリフト量と風向きおよび風速の間にはある程度相関があることがわかった.
いま
Blimp
のドリフト方向は定常風の向きに一致するものとし,Blimp
を係留しているテザーの変形を
FEM
により解析したところ,Blimp
のノミナル位置からの水平変位と変位 後 のBlimp
高 度 の テ ー ブ ル が そ れ ぞ れ に 表115
と 表116
に 示 す よ う に 定 常 風 の 風 速�� � 2 + � � 2
をパラメータとして得られたので,これを線形補間して用いるものとした.なお,補外する場合は端点保持とする.
表
115 Blimp
の水平面内のドリフト量(m
)と風速の関係定常風の風速
[m/s]
Blimp
ノミナル高度[m] 2.5 5 7.5 10 12.5 15 17
0 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
50 2.32 9.10 19.03 28.94 36.16 40.49 42.54
250 11.45 45.09 95.33 147.87 188.62 214.49 227.20 500 20.33 80.28 171.49 271.41 354.71 411.79 441.45 750 26.34 104.29 224.33 361.07 483.33 575.26 627.34 1000 30.04 118.96 257.30 418.58 569.86 692.41 767.99
表
116
変位後のBlimp
高度(m
)と風速の関係定常風の風速
[m/s]
Blimp
ノミナル高度[m] 2.5 5 7.5 10 12.5 15 17
0 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
50 50.06 49.21 46.02 39.95 32.74 26.34 22.27
250 250.40 246.57 231.80 202.43 165.39 130.67 107.77
500 500.95 494.79 470.64 420.55 353.27 285.79 238.96
750 751.68 744.44 715.78 654.71 568.48 475.98 407.51
1000 1002.54 994.89 964.47 898.84 803.81 697.58 614.96
ドリフトモデル
ブーム計測に用いるマイクは を係留しているテザーに の間隔で取り付けら れており, のノミナル位置は地表から鉛直上方 の位置である.ただし実際に は は定常風に流されてしまうため,マイクの水平位置ならびに高度も変化する.そ こで と ( 年から 年に計 回実施された 機能確認試験)
における 位置の実測データを検証したところ, のノミナル位置からのドリフ ト量と風向きおよび風速の間にはある程度相関があることがわかった.
いま のドリフト方向は定常風の向きに一致するものとし, を係留している テザーの変形を により解析したところ, のノミナル位置からの水平変位と変位 後 の 高 度 の テ ー ブ ル が そ れ ぞ れ に 表 と 表 に 示 す よ う に 定 常 風 の 風 速
�� � 2 � � 2
をパラメータとして得られたので,これを線形補間して用いるものとした.なお,補外する場合は端点保持とする.
表 の水平面内のドリフト量( )と風速の関係 定常風の風速
ノミナル高度
[m] 2.5 5 7.5 10 12.5 15 17
2.32 10 19.03 28.94 36.16 40.49 42.54
20.33 80.28 171.49 271.41 354.71 1.79 441.45
30.04 18.96 257.30 418.58 569.86 692.41 767.99
表 変位後の 高度( )と風速の関係 定常風の風速
ノミナル高度
[m]
00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
250.40 246.57 231.80 202.43 165.39 130.67 107.77
751.68 744.44 715.78 654.71 568.48 475.98 407.51
10.3
ブーム計測システムにおけるブーム計測判定方法マッハ角を
� = 1/ cos � ��
とすると,−� � − � > 0
のときブーム計測座標系の� � − � �
平面 とブームコーンとの交線は楕円,−� � − � ≤ 0
のときは双曲線となる.−� � − � > 0
の場合に おける� � − � �
平面とブームコーンとの交線との関係を図21
に示す.ブームコーンの円錐 の方程式は対気速度座標系では� � 2 + � � 2 = � � 2 tan 2 � (179)
で表現され,また対気速度座標系と対気方位角座標系の関係は
� �
� � �
�
= � � / �� � �
� � �
��
= �
cos � � 0 − sin � �
0 1 1
sin � � 0 cos � �
� � �
� � �
��
(180)
であるので,これを式
(179)
に代入すると( �� � sin � � + �� � cos � � ) 2 + �� � 2 = ( �� � cos � � − � �� sin � � ) 2 tan � (181)
となる.これを�� �
について解くと�� � = ± � ( �� � cos � � − � �� sin � � ) 2 tan � − ( �� � sin � � + �� � cos � � ) 2 (182)
となる.対気方位角座標系における� 1 , � 2
の座標は�� [( ℎ − ℎ ��� ) tan( −� � ± � ) 0 ℎ − ℎ ��� ] �
であるので,( ℎ − ℎ ��� ) tan( −� � + � ) ≤ � ≤ �� ( ℎ − ℎ ��� ) tan( −� � − � )
の範囲では式(182)
に おいて�� � = ℎ − ℎ ���
とすることで交線となる楕円の軌跡を求めることができる.なおこの 範囲外においても式(182)
で同様に�� � = ℎ − ℎ ���
として双曲線軌道が計算される.図
21
ブーム計測座標系におけるブームコーンとの交線(楕円)の計算局所水平面 BMS
式
(182)
で 記 述 され る楕円 もし くは双 曲線がBMS
を 横 切る 瞬間 を判定 する ことに よりBMS
でブームが計測される時刻を決定できる.ただしD-SEND#2
における計測マッハ数 は1.2
から1.4
程度,� � ≅ − 45 ∘
程度であり−� � − �
の値が十分小さくなることから,機体上 方から発生するブームに対応する� 2
近傍の線分はBMS
よりもかなり遠方(� 2 > � � ���
)と なる.そのため楕円軌道のうち実際にBMS
を横切るのは機体下方から発生するブームに対 応する� 1
近傍の線分に限られる.そこで楕円軌道のうち� 1
を含む側の半分(弧� ���� � 1 � ����
) のみを交差判定の対象とする.式 で 記 述 され る楕円 もし くは双 曲線が を 横 切る 瞬間 を判定 する ことに より でブームが計測される時刻を決定できる.ただし における計測マッハ数 は から 程度,