第 4 章 事例の解釈
第3節 事例のインプリケーション
3.2 事例のインプリケーション
「場」の共創の条件はすでに述べたので、ここではそれ以外のインプリケーシ ョンについて言及したい。
まず、場の共創の原理は、組織内部においても組織間においても同じもので あるということが指摘できる。マエカワ内部での「情報合成」の仕組みは、顧 客企業との場の共創に際しても有効に働いた。それは、マエカワが生物システ ムの統合論理を自律分散型組織の統合論理に自然に組み込んでいたからである。
従って、組織が共創的になるためには、生命システムの統合原理を組織に組み 込むことが有効であると考えられる。
場の共創が関与者の内部状況に与える影響に関しては、知識創造スパイラル の連結によって内部の場の活性化が観察された。例えば、食品加工機械の開発 の事例では、鶏肉モモ肉の自動脱骨機が開発された後も、次々に関連した機器 が開発されており、それは豚や牛の自動脱骨機にまで発展している。このこと は、知識スパイラルの連結によって、次々に新しいニーズが表出化されている ことを意味する。(図表4-3-3:知識スパイラルの連結)
パン工場の改善プロジェクトの事例では、場が活性化するにつれて、生産部 門だけでなく経営企画や販売促進といった社内の別の部門もその場に加わって、
社内に横断的な場が形成された。また、新しい計画が策定されたことによって、
それを達成するために固有の要素技術の高度化が要求されたり(ホールセール 事業に適した冷凍生地の開発)など、組織の変更(ホールセール部門における 販売と生産の統合)が検討されるようになった。共創の『場』は、両者の知識 創造運動を活性化し新しい成果物を生成するのである。(図表 4-3-4:共創の
「場」におけるイノベーション)
さらに、共創の「場」の活性化は、第三者との間に新たな「場」が共創される ことを示唆する。事例には詳しく記述できなかったが、今回の事例で取り上げ た顧客企業において、自社の顧客企業と「場」の共創を行おうとする動きが見 られた。つまり、今回のプロジェクトが成功したことをうけて、マエカワと同 じようなアプローチによって、顧客との「場」の共創を進めようとしているの
形 式 知
暗 黙 知 形 式 知
形 式 知 暗 黙 知
暗 黙 知
暗 黙 知 形 式 知
場
顧 客 企 業
メーカー
図表 4‑3‑3:知識スパイラルの連結
である。このことから、共創の「場」は連鎖するという仮説が得られる。(図表
4-3-5:「場」の連鎖)
モ モノノづづくくりり シ
シ スス テテ ムム づづ くく りり 形
形 式式 知知 にに 表表 出出 化化
コ コトトづづくくりり コ
コンンセセププトトづづくくりり 暗
暗 黙黙 知知 をを 掘掘 りり 出出 すす
顧 客 企 業 メーカー
共 創 の 場 イノベーション
知 識 創 造
暗 黙 知 の 共 感 ) 共 通 の 場 所 (
潜
潜 在在 ニニ ーー ズズ
暗暗 黙黙 知知 顕
顕 在在 ニニ ーー ズズ
形形 式式 知知
図表 4‑3‑4:共創の「場」におけるイノベーション
第 3者 共 通 の 場 所
共 創 の 場
図表 4‑3‑5:「場」の連鎖