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III. 信用リスク - 内部格付手法

1. 事業法人、ソブリンおよび銀行向けエクスポージャーのリスク・アセット (i) リスク・アセットを算出するための計算式

271. リスク・アセットの算出は、所与のエクスポージャーの PD、LGD、EAD の推計値、

および場合によっては、実効マチュリティ(M)の推計値に依存する。パラグラフ 318~

324 では、こうしたマチュリティ調整を適用する状況について論ずる。

272. このセクションでは別段の明確な説明がない限り、PDおよびLGDは小数で、EAD は通貨(例、ユーロ)で計測する。デフォルトしていないエクスポージャーに対するリ スク・アセットを算出する計算式は次のとおりである。70 71

相関係数 (R) = 0.12×(1-EXP(-50×PD))/(1-EXP(-50))+

0.24×[1-(1-EXP(-50×PD))/(1-EXP(-50))]

マチュリティ調整(b) = (0.11852-0.05478×ln(PD))^2

所要自己資本 72(K) = [LGD×N[(1-R)^-0.5×G(PD)+(R/(1-R))^0.5×G(0.999)]

-PD×LGD]×(1-1.5×b)^-1×(1+(M-2.5)×b) リスク・アセット (RWA) = K×12.5×EAD

デフォルトしたエクスポージャーに対する所要自己資本額(K)は、ゼロ、およびその LGD(パラグラフ 468 に記述)と銀行による期待損失の最良の推計値(パラグラフ 471 に 記述)との開差とのうち、大きい値と等しい。デフォルトしたエクスポージャーのリス ク・アセットの金額は、K、12.5 および EAD の積に等しい。

リスク・ウェイトの例示については、付属文書 5 を参照のこと。

(ⅱ) 中小企業(SME)についての企業規模による調整

273. 事業法人向け債権について内部格付手法を適用する場合、銀行は SME である債務 者向けエクスポージャー(当該企業が属する連結グループの決算上の(reported)売上

70 Lnは自然対数を表す。

71 N(x)は標準正規累積分布関数(平均値ゼロ、分散 1 の正規乱数がx以下である確率)、G(z)は標準正規 累積分布関数の逆関数(すなわちN(x)=zとなるxの値)。標準累積分布関数と標準累積分布関数の逆関 数は、例えばExcelでは、NORMSDISTおよびNORMSINVとして求められる。

72 個々のソブリン・エクスポージャーに対する計算の結果が、負の資本賦課となった場合、銀行はそれら のエクスポージャーに対する資本賦課をゼロとする。

高が 5,000 万ユーロ未満である企業に対するエクスポージャーと定義する)を大企業向 けエクスポージャーから区別することが認められる。SME である債務者向けエクスポー ジャーについては、事業法人向けのリスク・ウェイト関数に企業規模調整(0.04×(1

-(S-5)/45))を加える。S は年間総売上高を 100 万ユーロ単位で表したもので、500 万 ユーロ以上 5,000 万ユーロ以下の範囲に収まる。SME である債務者向けの企業規模調整 においては 500 万ユーロ未満の決算上の(reported)売上高は 500 万ユーロとして扱う。

相関係数 (R) = 0.12×(1-EXP(-50×PD))/(1-EXP(-50))+

0.24×[1 - (1 - EXP(-50×PD))/(1 - EXP(-50))] - 0.04×(1 - (S-5)/45)

274. 各国裁量により、監督当局は、SME の範囲を定めて企業規模調整を行うにあたり、

安全策として(訳者注:[例]不適切な算出結果となることを防ぐため)、銀行が、当 該企業が属する企業グループの連結総売上高に代えて総資産を用いることを認めてもよ い。ただし、総資産が使用できるのは、総売上高が企業規模の適切な指標とならない場 合に限るものとする。

(ⅲ) スペシャライズド・レンディングのリスク・ウェイト PF、 OF、 CF および IPRE のリスク・ウェイト

275. 事業法人向けの内部格付手法によって PD を推計するための基準を満たさない銀 行は、自行の内部格付を、特定のリスク・ウェイトに対応する監督当局設定の 5 つのカ テゴリーに変換することが求められる。この変換(マッピング)に関するスロッティン グ・クライテリアは、付属文書 6 の定めに基づかなくてはならない。これらの監督当局 の分類に対応する非期待損失(UL)に対するリスク・ウェイトは次表のとおりである。

HVCRE 以外の SL エクスポージャーに関する監督当局の分類と UL に対するリスク・ウェ イト

(Strong)

(Good)

(Satisfactory)

弱い

(Weak)

デフォルト

(Default)

70% 90% 115% 250% 0%

276. 銀行は付属文書 6 に示されたガイドラインを利用して SL エクスポージャーについて 自行の内部格付を監督当局設定の分類に変換することが期待されるが、監督当局設定の分類 はそれぞれ、概ね次表に示す外部信用格付の範囲に対応する。

優 良 可 弱い デフォルト

BBB- 以上 BB+ または BB BB- または B+ B ないし C- 該当なし

277. 各国裁量により、残存マチュリティが 2.5 年未満であるか、銀行の引受能力

(underwriting)やその他のリスク特性が、監督当局の各リスク・カテゴリーに対する スロッティング・クライテリアで特定したものよりも相当程度に強固であると当局が判 定する場合には、監督当局は銀行に「優」に相当するエクスポージャーに 50%の、「良」

に相当するエクスポージャーに 70%の優遇リスク・ウェイトを適用することを認めるこ とができる。

278. PD 推計の条件を満たす銀行は、SL の下位区分のリスク・ウェイトを計算する際、

事業法人向けの一般的な基礎的手法を使用することができる。

279. PD、LGD および/または EAD 推計の条件を満たす銀行は、SL の下位区分のリスク・

ウェイトを計算する際、事業法人向けの一般的な先進的手法を使用することができる。

HVCRE のリスク・ウェイト

280. 銀行が PD 推計の条件を満たさない場合、または監督当局が HVCRE に基礎的手法 または先進的手法を適用しないことを選択した場合は、銀行は自行の内部格付を特定の リスク・ウェイトに対応する監督当局設定の 5 つの分類にマッピングしなくてはならな い。この変換(マッピング)に関するスロッティング・クライテリアは、付属文書 6 に 記載するとおり、IPRE 向けのものと同一である。それぞれの分類に対応するリスク・ウ ェイトは、次表のとおりである。

HVCRE に関する監督当局の分類と UL に対するリスク・ウェイト

優 良 可 弱い デフォルト

95% 120% 140% 250% 0%

281. パラグラフ 276 に示すように、当局の設定する分類は、一定範囲の外部信用格付 にほぼ対応している。

282. 各国裁量により、残存マチュリティが 2.5 年未満であるか、銀行の引受能力

(underwriting)やその他のリスク特性が監督当局設定のリスク判定に関するガイドラ インで定めたものよりも相当程度に強固であると当局が判定する場合には、監督当局は 銀行に「優」に相当するエクスポージャーには 70%の、「良」に相当するエクスポージ ャーには 95%の優遇リスク・ウェイトを適用することを認めることができる。

283. PD 推計の要件を満たし、かつ監督当局が HVCRE に基礎的手法または先進的手法 を適用することを選択した銀行は、次の資産相関係数の適用を除き、他の SL エクスポー ジャーのリスク・ウェイトの計算に用いる計算式と同じものを利用する。

相関係数 (R) =0.12×(1-EXP(-50×PD))/(1-EXP(-50))+

0.30×[1-(1-EXP(-50×PD))/(1-EXP(-50))]

284. HVCRE エクスポージャーについて LGD および EAD 推計の要件を満たさない銀行 は、事業法人向けエクスポージャーの LGD および EAD について当局が定める数値を使用 しなければならない。

(ⅳ)ダブル・デフォルトの枠組みに準拠するエクスポージャーのリスク・アセットの計

284(ⅰ). ダブル・デフォルトの枠組の中で取り扱われるヘッジされたエクスポージャ ーの場合、所要自己資本はパラグラフ 284(ⅱ)および 284(ⅲ)に従って計算することがで きる。

284(ⅱ). ダブル・デフォルトの枠組みに従って処理されるヘッジされたエクスポージ ャーの所要自己資本(KDD)は、以下に定義されるK0と、プロテクション提供者のPD(PDg) に依存する乗数との積により算出される

(

0.15 160

)

.

0 g

DD K PD

K = ⋅ + ⋅

K0はヘッジされていない事業法人向けエクスポージャーに対する所要自己資本と同じ方 法(パラグラフ 272 および 273 で定義)で計算されるが、デフォルト時損失率(LGD)と マチュリティの調整については異なるパラメーターを使用する。

( ) ( ) ( )

b b PD M

G PD

N G LGD

K o

os os g

g − ⋅

⋅ +

⎥⎥

⎢⎢

⎡ ⎟⎟−

⎜⎜

⋅ +

= 1 1.5

5 . 2 1

1

999 . 0

0

ρ

ρ

PD0とPDgはそれぞれ債務者と保証人のデフォルト確率であり、いずれもパラグラフ 285 で示されているPDのフロアが適用される。相関係数ρosはパラグラフ 272(あるいは必要 に応じてパラグラフ 273)の相関係数に関する計算式(R)に従って計算される。この場 合のPDはPDoと等しく、LGDは保証人に対する直接のエクスポージャーに相応するLGDで ある(すなわち、パラグラフ 301 との平仄から、このLGDは、ヘッジされた取引の満期ま でに保証人と債務者の双方がデフォルトした場合に、回収額が保証人と債務者それぞれ の財務状況に依存することを入手可能な証拠と保証の構造が示すか否かによって、保証 人に対するヘッジされていないファシリティに関連するLGDあるいは債務者に対するヘ ッジされていないファシリティに関連するLGDの何れかとなる。いずれのLGDを推計する にあたっても、銀行はパラグラフ 303、または 297 および 468 から 473 と整合的な方法 で、専ら当該エクスポージャーに設定されている担保、あるいはプロテクションを認識 することができる)。LGDの推計ではダブルリカバリー効果を考慮することはできない。

マチュリティ調整係数bは、パラグラフ 272 のマチュリティ調整(b)の計算式に従って 計算される。この場合、PDはPDoとPDgのうち最小のものとする。Mはプロテクションの実 効マチュリティで、ダブル・デフォルトの枠組が適用される限り、どのような状況でも 1 年のフロアを下回ることはない。

284(ⅲ). リスク・アセット額はヘッジされていないエクスポージャーの場合と同様の 方法で計算される。すなわち、

. 5

.

12 g

DD

DD K EAD

RWA = ⋅ ⋅

2. リスクの構成要素