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保証およびクレジット・デリバティブに共通の運用上の要件

189. 保証(カウンター保証)またはクレジット・デリバティブは、プロテクションの 提供者に対する直接的な債権となっていなければならず、また、当該カバーの範囲が明 確に定義され、かつ論争の余地がないよう、特定のエクスポージャーもしくはエクスポ ージャーのプールを明示的に参照していなければならない。信用リスクに対するプロテ クションの契約に関してプロテクションの買い手が支払うべき保証料を支払わない場合 を除いて、それは解約不能でなくてはならない。当該契約にはプロテクションの提供者 が一方的に信用カバーを解約することを認める条項や、ヘッジされたエクスポージャー の信用度が悪化した結果として、実態的な保証料の増加を認める条項があってはならな い。54また、それは無条件でなくてはならない。プロテクションの契約には、原債務者 が債務不履行を起こした場合に、銀行の直接的なコントロールの外で、プロテクション の提供者が適時に支払いをする義務を妨げる条項があるべきではない。

保証についての追加的な運用上の要件

190. 保証が認識されるためには、パラグラフ 117、118 に記載された法的な要件に加 え、次の条件も満足していなくてはならない。

(a) 取引相手先(訳注:原債務者)の適格なデフォルトないし不払い時(qualifying default/non-payment of the counterparty)において、銀行は、本取引を規 定する契約に基づき、保証人に対してすみやかに残金を請求することができる こと。保証人は、当該契約に基づくすべての金銭を一括で支払うか、または、

当該保証によりカバーされている取引相手先の将来の支払義務をすべて引き 受けることができること。銀行は、取引相手先からの支払を求めるために、最 初に法的措置を講ずることなく、保証人から当該支払を受ける権利を有してい なければならないこと。

(b) 保証は、保証人によって引き受けられる債務が明示的に文書化されているもの であること。

(c) 以下の文章に記される場合を除き、当該保証は、原債務者に対して、当該取引 を支配する文書に基づいて行うことが期待されているすべての種類の支払(額 面金額、証拠金支払い等)をカバーする。保証が元本支払いのみをカバーして いる場合には、利息その他のカバーされていない支払は、パラグラフ 198 に従 い、無担保金額として取り扱うべきである。

クレジット・デリバティブについての運用上の追加要件

191. クレジット・デリバティブ契約が認識されるためには、以下の条件が満たされな くてはならない。

54 この「解約不能」条件は、プロテクションとエクスポージャーの満期の一致を要求しているわけではな く、むしろ、事前に合意した満期がプロテクション提供者によって事後的に短縮されてはならないこと を求めていることに注意。パラグラフ 203 では、クレジットプロテクションの残存期間を決定するにあ たっての、コール・オプションの取扱いについて規定している。

(a) 契約当事者によって特定される信用事由は、最低限、次の事項をカバーする ものでなくてはならない。

原債務の条件に照らして弁済期が到来している額に関する不払い。当該条件 は、不払い発生時点において有効であることを要する(猶予期間は、原債務 に規定する猶予期間と密接に関連していること)。

破産、債務の支払不能、不履行もしくは、期限の到来時に一般的に債務不履 行となること、あるいはその可能性を文書で認めること、および同様の事由。

信用損失事由につながる元本、利息、手数料の支払免除または猶予を伴う原 債務のリストラクチャリング(restructuring of the underlying obligation involving forgiveness or postponement of principal, interest or fees that results in a credit loss event)(すなわち、償却、個別引当金計上、

その他損益勘定に借方記帳されるもの)。リストラクチャリングが信用事由 として規定されていない場合には、パラグラフ 192 を参照すること。

(b) クレジット・デリバティブが、原債務とは異なる債務をカバーする場合には、

以下の(g)項に従って、資産ミスマッチを許容するか否かを決定する。

(c) パラグラフ 203 の条項に従い、クレジット・デリバティブは、不払いに起因 する原債務のデフォルトが認定されるために必要とされる猶予期間が経過す る前に、終了するものであってはならない。

(d) 現金決済を認めるクレジット・デリバティブは、自己資本比率規制上、信頼 性をもって損失を推定するために強固な評価プロセスが確立している場合に おいてのみ、認識できる。原債務について信用事由発生後の評価を行うため の期間を明確に定めておかなくてはならない。現金決済のための参照債務が 原債務と異なる場合は、以下の(g)項に従って、資産ミスマッチを認めうる かどうかを決定する。

(e) 決済の際に、プロテクションの買い手が、プロテクションの売り手に対して 原債務を移転する権利および能力を有していることが求められる場合、原債 務に係る契約条項において、上記移転のために必要な合意は理由なく留保さ れてはならない旨、規定しておく必要がある。

(f) 信用事由が発生したかどうかの判定に責任を持つ当事者が、明確に定義され ていなくてはならない。この決定は、プロテクションの売り手のみの責任で あってはならない。プロテクションの買い手は、その売り手に信用事由の発 生を通知する権利と能力を有していなくてはならない。

(g) 原債務とクレジット・デリバティブにおける参照債務(現金決済価額または 引渡債務(deliverable obligation)の決定に用いる債務)の間にミスマッ チがあっても、(1)参照債務が原債務と同一またはそれに劣後する支払順位に あり、かつ、(2)原債務と参照債務が同一の債務者(同一の法的主体)を共 有し、法的に有効なクロス・デフォルト条項またはクロス・アクセラレーシ ョン条項を有する場合には、許容される。

(h) 原債務と信用事由発生の有無を決定するために用いる参照債務の間にミスマ ッチがあっても、(1)参照債務が原債務と同一またはそれに劣後する支払順位 にあり、かつ、(2)原債務と参照債務が同一の債務者(同一の法的主体)を共 有し、法的に有効なクロス・デフォルト条項またはクロス・アクセラレーシ

ョン条項を有する場合には、許容される。

192. クレジット・デリバティブが原債務のリストラクチャリングをカバーしていない 場合においても、パラグラフ 191 の他の要件がみたされている場合には、クレジット・

デリバティブは部分的に認識される。クレジット・デリバティブの金額が原債務と等し いか、それを下回る場合、当該ヘッジ金額の 60%がカバーされていると認識することが できる。クレジット・デリバティブの金額が原債務の金額よりも大きい場合には、適格 ヘッジ金額は、原債務金額の 60%を上限とする。55

193. 保証と同等のプロテクションを提供するクレジット・デフォルト・スワップおよ びトータル・リターン・スワップのみが認識される。ただし、次の例外が適用される。ト ータル・リターン・スワップによるプロテクションを購入した銀行が、当該スワップによ り受領した純受取額を純収入として記録する一方で、プロテクトされる資産における価 値の相殺的な(訳注:見合いの)減少を(公正価値の減額ないし、準備金への繰入を通 じて)記録していない場合には、当該プロテクションは認識されない。ファースト・ト ゥ・デフォルト型およびセカンド・トゥ・デフォルト型の取扱いについては、別途パラ グラフ 207~210 でカバーする。

194. その他の種類のクレジット・デリバティブについては、現時点では自己資本規制 上は認識されない。56

(ⅱ) 適格な保証(カウンター保証)/プロテクション提供者の範囲

195. 以下の提供者による信用リスクに対するプロテクションは認識される。

取引相手方(訳注:借入人・参照体)よりも低いリスク・ウェイトのソブリン57、 公共部門(PSE)、銀行58、証券会社。

A-格以上のその他の主体。これには債務者(訳注:借入人・参照体)よりリスク・

ウェイトが低い親会社、子会社、関連会社が提供する信用リスクに対するプロテ クションが含まれる。

(ⅲ) リスク・ウェイト

196. プロテクション部分には、プロテクション提供者のリスク・ウェイトが適用され る 。 エ ク ス ポ ー ジ ャ ー の う ち カ バ ー さ れ な い 部 分 に は 、 原 債 務 者 ( underlying counterparty)のリスク・ウェイトが適用される。

197. 損失事象が発生した場合であっても、その金額がある一定水準を下回った場合に は支払が行われないような、重要性を判定するための基準金額が設定されている場合に

55 60%の認識係数は暫定的な措置であり、当委員会は、追加データを検討した後、実施の前に、この係数 を精緻化させる意向である。

56 バンキング勘定のエクスポージャーをヘッジするために銀行が発行した事前受取型のクレジット・リン ク債(cash funded credit linked note)で、クレジット・デリバティブの要件を満たすものは、現金 担保付取引として扱われる。

57 これには、脚注 24 で参照されている国際開発銀行のみならず、国際決済銀行、国際通貨基金、欧州中 央銀行、欧州共同体も含まれる。

58 これにはその他の国際開発銀行が含まれる。