第 5 章 オーバーレイ誤差の評価と解析
5.5 セル間ランダム誤差の解析
Fig. 5-4によれば,セル間ランダム誤差は最も大きな誤差要素であり,その平均は1σ値
で98 nmである.セル間ランダム誤差は,ある層から次の層にスタンプ位置を移動する際,
その指示値と実際の座標値との偏差のばらつきである.
このようなばらつきを引き起こす要因として最初に考えられるものはステージの振動
(静止安定性)である.そこでまずXYステージの静止安定性を装置に付属のレーザ干渉測 長器で評価した.振動の評価に本レーザ干渉測長器を使用したのは,振動を変位として直 接測定することが望ましいと判断したこと,レーザ干渉測長器は装置の位置決めのために
Intra-cell random error 34 nm
Measurment error
10 nm Patterning error
33 nm
Photomask
25 nm Lithography 21 nm
- 118 -
常時使用しており利用しやすいことにある.Fig. 5-8はX-Yステージの座標値を50 Hzの サンプリング周波数でモニタしたものである.この結果,Y座標の標準偏差は43 nmであ ることが分かった.同様にX座標は60 nmであったので,これら2成分を合成すると74 nm の静止安定性となった.(サンプリング周波数の是非に関しては追補 1参照)
次にZ軸先端の振動を評価した.Z軸には装置内蔵の座標計測手段がないため,静電容量 型変位計を取り付けたドナー基板をXYステージに固定し,Z軸先端のXY面内ブレを2方 向同時に評価した.その結果をFig. 5-9に示す.これはXYステージとZ軸先端の相対変 位を示すもので,比較のためターボ分子ポンプ(TMP)のon/off時ごとに計測した.その
結果,TMP on時の相対変位量は,距離にして標準偏差(1σ)は約46 nmであった.これ
Fig. 5-8 Stability of X-Y stage measured by interferometer -200
-150 -100 -50 0 50 100 150 200
0 10 20 30 40 50 60
X axis coodinate nm
Time s
-150 -100 -50 0 50 100 150
0 10 20 30 40 50 60
Y axis coodinate nm
Time s
- 119 -
は3.3.5節で示したZステージ単体の性能(22 nm)よりも大きな値となっている.
本加工方式では,Zステージの軸中心をXY座標の原点としており,圧接動作においてZ 軸先端(ターゲット基板保持部)は常に原点に復帰することを前提として設計されている ので,Z軸には高剛性のリニアガイドを採用している.しかしながら圧接のため伸長した際,
支持部からZ軸先端までのオーバーハングが150 mmと長く,また装置稼働状態で計測し たことにより,TMPの振動の影響を受け,ブレ量が増加したものと考えられる.
加振源として考えられるTMP以外の機器もON/OFFさせて原因機器を切り分けしたと
静電容量型変位計の波形
�x2+ y2 標準偏差
(a) TMP off時
3σ = 57 1σ = 19
(b) TMP on時
3σ = 137 1σ = 46
Fig. 5-9 Relative displacement error between X-Y stage and Z stage
- 120 -
ころ,主たる加振源はやはりTMPであることが判明した.これは接合チャンバーの主排気 ポンプであり,Fig. 5-10に示すようにベローズ継ぎ手を介してチャンバーに取り付けられ ている(排気系の詳細は3.3.2節参照).振動の伝達経路は,床経由(Path 1),ベローズ継 ぎ手経由(Path 2),TMP支持台経由(Path 3)の3通りが考えられるが,除振台および ベローズ継ぎ手の振動減衰能力は個別に評価した振動伝播特性から判断して十分であるこ とから,TMP支持台経由が主たる伝播経路であることが明らかとなった.
以上の結果,セル間ランダム誤差の主要因は主排気ポンプのTMPであり,この振動が支 持台を経由して XY ステージおよび Z軸先端に伝搬していることが明らかとなった.両者 の合計は
742+462=872
から87 nmであり,セル間ランダム誤差98 nmの大部分を占めていると言える.これらの
改善には振動の絶縁の徹底や制振機構の導入[2]などが必要と考えられる.
Fig. 5-10 Transmission paths of vibration from TMP