4.3 シリコン半導体検出器の最適化
本研究で用いたシリコン半導体検出器は浜松ホトニクス社製で、いくつかのデザインのサ ンプルがある。このサンプルはbaby chipと呼ばれ、図4.5のように5.5×5.5 mm2 のピクセ ルが3×3個のものと4×4個のものがある。baby chipは16×16ピクセルのmain chipを シリコンウェハー上に配置する際の余白を用いて生産する特性測定用のサンプルであり、ピ クセル数と後述するガードリング構造、カットサイズ以外はmain chipと同じ特性を持つ。
図4.5 baby chipの写真。右が3×3のピクセルを持つチップ、左が4×4のピクセルを 持つチップである。
このbaby chipには 4つの構造においていくつかのデザインがある。まず、1つ目の構造
はガードリングである。ガードリングはチップのエッジとピクセルの間を一周取り囲んでい
る幅35-80 µmのもので、構造はピクセル部分と同じくN型半導体にp+が埋め込まれた上
にアルミが付いている。このガードリングがあることでシリコン半導体検出器表面の暗電流 を低減することができる。
baby chipにはガードリングの数によって図4.6で示す4種類のデザインがある。ただし、
ガードリングが2つと 4つ(2, 4ガードリング)の場合にはスプリットが入っており、スプ リット部分には1辺が50 µmのアルミパッドが存在する。これは、ガードリングによって電 流が伝播する可能性を防ぐためである。チップ全体から見たこのスプリットの入り方は図4.7 の通りである。さらに、ガードリングの数でbaby chipのピクセル数も異なっており、ガー ドリング無し(0ガードリング)と2ガードリングは4×4ピクセル、ガードリング1つ(1 ガードリング)と4ガードリングは3×3ピクセルである。
図4.6 ガードリングの写真。左上がガードリング無し(0ガードリング)、左下がガード リング1つ(1ガードリング)、右上がガードリング2つ(2ガードリング)、右下がガー ドリング4つ(4ガードリング)の構造である。2, 4ガードリング に関してはスプリット が入っており、間に50×50µm2のパッドが存在する。ガードリングの幅は1ガードリン グが80µm、2, 4ガードリングが35µm(内側)と45µm(外側)である。
図4.7 2ガードリングの場合のスプリットの構造。内側と外側のガードリングのスプリッ
トが交互に配置されている。4ガードリングの場合も同様である。
2つ目の構造は厚さであり、厚さの違いによって荷電粒子がシリコン半導体検出器を貫通 する距離が異なるため、電流シグナルの強度が変化する。本研究では320 µmと500 µmの 厚さのサンプルを用いた。
3つ目はチップのカットサイズである。カットサイズの違いによってエッジより外側部分 の不感領域の面積が異なる。したがって、カットサイズの違いによってECALの検出層全体 における不感領域の面積が変化する。カットサイズには図4.8のようにcut size BとCがあ り、cut size B はエッジ部分から500 µmの幅を持ってカットされており、cut size CはB よりも150 µmカットの幅が狭くなっている。
4.3 シリコン半導体検出器の最適化 59
図4.8 カットサイズの種類。エッジより外側部分の面積の違いでCut size BとCの2種類がある。
4つ目は抵抗率の違いである。シリコン半導体は不純物濃度の違いで抵抗率が変化する。
baby chipのサンプルには抵抗率の違う2種類のサンプルがあるが、これらの値は提供元の
浜松ホトニクス社の機密事項であり確認はできないが、先行研究(図4.9)より暗電流値と完 全空乏層化電圧に違いがあることが報告されている。本研究では、抵抗率が高いと思われる サンプル(図中のnew chip)のみを用いて測定を行った。
図4.9 抵抗率の違いによる暗電流値の変化(左)と完全空乏層過電圧の変化(右)[24]。 本研究では上記の3種類の構造を持つbaby chipを12枚(表4.1)用いて次節からの暗電 流とセンサー容量の測定、そしてレーザー照射の応答測定を行った。
シリアルNo. ガードリング数 厚さ[µm] カットサイズ
B2 0 320 B
C2 0 320 C
B5 0 500 B
B6 0 500 B
C7 0 500 C
C8 0 500 C
C9 0 500 C
C8-1 1 500 C
C7 2 500 C
C8 2 500 C
C9 2 500 C
C8-1 4 500 C
表4.1 特性研究で使用したbaby chip一覧。