第 8 章 CdTe ピクセル検出器を使った観測への 応用応用
8.2 コーデッドマスク
CdTeピクセル検出器のような位置分解能を持つ検出器を使った撮像手法で、最も単純なもの は、ピンホールカメラである。しかし、ピンホールカメラの有効面積はピンホールの大きさであ るにも関わらず、そのバックグランドは、ピクセル検出器の体積に比例した大きさになる。した がって、高い感度の観測はできない。
コーデッドマスクでは、あるパターンに沿って、たくさんの穴の空いたマスクを使うことで、有 効面積は大きくしている[48]。ピクセル検出器上では、マスクのパターンに基づいた重ね合わせ の像が作られ、それを解くことで、実際のイメージを得ることができる仕組みである。マスクの パターンとしては、これまでにさまざまなものが考案されている。図 8.2は、マスクのパターン の一例である。
コーデッドマスクの手法を用いた撮像観測は、これまでにGRANAT衛星のSIGMA検出器で 行われており、さらに2002年打ち上げ予定のINTEGRAL衛星や2005年打ち上げ予定のSwift 衛星でも行われる。しかし、これまで1mm以下の位置分解能持った撮像素子が存在しなかったた め、INTEGRALやSwiftでも大きさ4mm×4mmの検出器を並べることで撮像素子とし、マスク を数m離れたところに配置している。このような非常に大きな装置では、検出器のまわりをアク ティブシールドで囲み、バックグランドを徹底的に除去することはできない。
図8.3 はCdTeピクセル検出器を撮像素子に使ったコーデッドマスクの装置の一例である。位 置分解能に優れたピクセル検出器を使うことで、マスクをあまり離すことなく、空間分解能を得 ることができる。さらに全体の大きさが小さくなるため、検出器全体をアクティブシールドで覆 い、バックグランドを除去することが可能となる。
狙うエネルギー範囲は、10keV程度から300keV程度である。CdTeでは300keVまで光電吸収 が主要な相互作用であるので、都合がよい。しかし、300keV をマスクするには、マスクにタング ステンを使っても厚さ2mmが必要になる。そのときのパターンの大きさは、1mm程度になるた
8.2. コーデッドマスク 95
図8.2: コーデッドマスクのマスクパターンの一例。INTEGRAL衛星のIBIS検出器のもの。
Mask
50-60cm
図8.3: CdTeピクセル検出器を使ったコーデッドマスクの装置
め1、使うピクセル検出器のピクセルサイズも、これまで述べてきたような100-200µmは必要な く、1mm程度になる。マスクまでの距離が60cmで、ピクセルサイズが1mmのときの空間分解 能の限界は、5.7分角である。
1
厚さより極端に小さいパターンでは、マスクの役割を果たさず、コリメータになってしまう。