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コンプトンカメラ

ドキュメント内 master thesis watanabe 2001 ver1 3 (ページ 99-109)

第 8 章 CdTe ピクセル検出器を使った観測への 応用応用

8.3 コンプトンカメラ

となる。(me は電子の質量、c は光速である。) これにより、入射光子のエネルギーがわかり、入 射方向はコーンの形で求められ、これを重ねることで、実際の分布を知ることができる。このシン グルコンプトンカメラの方式は、既に、CGRO衛星のCOMPTEL検出器で採用されている[49] さらに、反跳電子の飛跡の方向をとられることができれば、入射方向は、コーンではなく、一意 に定まる。そうすれば、バックグランドのないイメージが作れるので、さまざまな方法が考えら れ、開発されている。

シングルコンプトンカメラでは入射ガンマ線光子のエネルギーのすべてを検出器で失わなければ ならないため、検出器は重く、巨大にせざるを得ない。また、このような配置で実際にエネルギー と方向を求めることができるような相互作用をが起きる確率は低い。実際、COMPTELにおいて も、1トンと越えるような巨大な検出器でありながら、有効面積は20-30cm2 しかなかった。しか し、コンプトン散乱の関係から、バックグランドを除去することが可能であるため、COMPTEL も有効面積は小さいながら、高い感度を持っていた。2

8.3.2 多重コンプトンカメラ

ピクセル検出器を多数使い、小型で軽量なコンプトンカメラが多重コンプトンカメラである[50] 小型であるため、多数並べることが可能になり、有効面積が小さいというシングルコンプトンカ メラの欠点を補うことが可能になる。図 8.5が多重コンプトンカメラの模式図である。

θ

0

E

1

,(x

1

,y

1

)

E

2

,(x

2

,y

2

)

E

3

,(x

3

,y

3

) Dn

1

Dn

2

Dn

3

E

0

θ

1

図8.5: 多重コンプトンカメラの模式図

検出器D がCdTeピクセル検出器で、これを数10個、重ねて配置する。この多重コンプトン カメラでは、2回のコンプトン散乱とあと1回コンプトン散乱もしくは光電吸収が起こると、入射

2

1.1参照。1991年打ち上げのCOMPTELの連続成分の感度を2002年打ち上げ予定のINTEGRALで上回る ことができない。INTEGRALのほうが、エネルギー分解能に優れるので、ラインガンマ線に関しては別である。

8.3. コンプトンカメラ 99 ガンマ線光子のエネルギーと入射方向を求めることができる。図 8.5 のような場合、入射ガンマ 線光子のエネルギーは

E0 = ∆E1+∆E2 2 +

s∆E22

4 +mec2∆E2 1−cosθ1

(8.3) となる。cosθ1 は、x2, y2, x3, y3 と、どのピクセル検出器で相互作用しているかで求めることがで きる。この式の中には、∆E3 がないことからわかるように、入射ガンマ線のエネルギーを求める のに、全エネルギーを検出器中で止める必要がない。そのため、重く、巨大な検出器を必要とし ない。

散乱角θ0は、

cosθ0 = 1− mec2∆E1

E0(E0−∆E1) (8.4)

となる。入射方向は、シングルコンプトンカメラと同じように反跳電子の方向がわからなければ、

コーンの形で求まる。ピクセルサイズを小さくして、複数ピクセルイベント調べる、もしくは、ピ クセル検出器を薄くして、反跳電子を複数のピクセル検出器で追跡するなどの手法で、反跳電子 の方向が求まれば、入射方向を一意に決めることができる。

これまでの計算では、反応の順序が分かっていたが、実際にピクセル検出器を5mmから数cm の間隔で重ねた場合、反応の順序を検出することはできない。そのため、あらゆる可能性につい て、計算し、∆E3 も使い、コンプトン散乱の運動学の要求を満たすか調べることになる。また、

反応が4回、5回になるとコンプトン散乱の運動学からの制限に厳しくなるため、一意に定まる確 率は高くなる。

8.3.3 角度分解能、エネルギー分解能

式8.1 8.2 8.3 8.4からも分かるように、ガンマ線の入射角とエネルギーのどちらを求 めるにも、∆E と相互作用を起こした位置の両方を使う。そのため、コンプトンカメラの角度分 解能とエネルギー分解能は、一つ一つの検出器の位置分解能とエネルギー分解能から決まる。し たがって、コンプトンカメラで高精度な撮像観測をおこなうには、検出器の位置分解能だけでな く、エネルギー分解能も必要であり、逆に、エネルギー分解能の高い観測には、検出器のエネル ギー分解能だけでなく、位置分解能も欠かせない。

ただし、コンプトンカメラの角度分解能とエネルギー分解能の限界は、一つ一つの検出器の位 置分解能とエネルギー分解能で決まるのではなく、コンプトン散乱のドップラーシフトで決まる。

式8.1 8.2 8.3 8.4を導くのに用いているのは、運動量を持たない自由電子に対するコン プトン散乱の関係式である。実際の物質中の電子は運動量を持ち、ドップラーシフトする。この 不定性が、コンプトンカメラの角度分解能とエネルギー分解能の限界を決めることになる[51] 8.3.4 偏光度

コンプトンカメラでは、入射ガンマ線のエネルギーと入射方向を検出できると同時に偏光度を 測定することができる。偏光したガンマ線のコンプトン散乱では、散乱の方位角方向に偏りがで るためである。図 8.6 のような座標で、コンプトン散乱を考える。このとき入射カンマ線光子の 電場ベクトルξの方向をX軸の方向であるとする。

ξ

η θ

X Y E

E’

e-図8.6: コンプトン散乱の微分断面積を考えるときの座標

このときのコンプトン散乱の微分断面積は、

dΩ = r20ǫ2 4

µ1

ǫ +ǫ−2 sin2θcos2η

(8.5) となる[52]。ここで、ǫ=E/E= 1/(1 +α(1−cosθ))α=E/mec2r0 は古典電子半径である。

このようにコンプトン散乱の方位角η により、コンプトン散乱の断面積が異なり、η = 90,270 の方向に散乱されやすい。したがって、ηの分布を調べることにより、偏光度を測定することがで きる。

このコンプトン散乱を利用した偏光測定の検出器応答として、Qを次のように導入する。

Q = dσ(η= 90)−dσ(η = 0)

dσ(η= 90) + dσ(η = 0) (8.6)

= sin2θ

ǫ−1+ǫ−sin2θ (8.7)

このQは、100%の偏光が入射し、コンプトン散乱したときの散乱ガンマ線の方位角分布を表すも のであり、Q1に近いほど、偏光度の測定に有利である。

図8.7は、散乱角θに対するQの値を入射ガンマ線のエネルギー別に表したものである。θ

60-90 のコンプトン散乱のとき、Qが最大になり、偏光度の測定が行いやすい。したがって、ピ

クセル検出器を用いた多重コンプトンカメラにおいて、それぞれのピクセル検出器の間隔を狭く することにより、偏光度測定に最適な検出器になる。コンプトン散乱された光子が同じピクセル 検出器、もしくは、その近くのピクセル検出器で検出されるイベントを使うことで、偏光度の測 定ができる。

8.3. コンプトンカメラ 101

図8.7: Qθ の関係

103

第 9 まとめ

• CdTe半導体の基本特性について、詳細な測定をおこない、CdTe半導体検出器の性能を引 き出せるようになった。また、CdTe半導体のホールのµτが小さいために起こる低エネル ギー側へのテールを現象から理解することにより、スペクトルの再現に成功した。

ダイオード型のCdTe検出器を用い、冷却し、高いバイアス電圧をかけることで優れたエネ ルギー分解能を得ることに成功し、ファノ限界を達成しうることを示した。

• ピクセル検出器に欠かせないアナログLSIを用いたX線、ガンマ線の読み出し方法を開発 した。しかし、性能はまだ、充分に引き出せていない。

ピクセル数が400ピクセル、ピクセルサイズ675µmであるCdTeピクセル検出器試作第1 号を製作した。アナログLSIを用いて、読み出しをおこない、スペクトル、イメージの取得 に成功した。

• CdTeピクセル検出器では、光電吸収の際、発生するCdTeの蛍光X線により、2ピクセ ルにまたがるイベントが多くなることを示した。これは、イベント処理のアルゴリズムに盛 り込む必要がある。

• CdTe素子のバンプ接合の際、隣のピクセルと電気的に接触してしまう問題を発見した。こ れにより、ガンマ線イベントを検出できない不良ピクセルやエネルギー分解能の悪いピクセ ルが発生していた。今後の課題である。

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謝辞

本論文の作成に関して、指導教官である高橋先生には、非常にお世話になりました。先生には、2 年間を通じて、様々な経験の機会を与えていただきました。心から感謝の意を表したいと思います。

三菱重工名古屋誘導推進システム製作所の黒田さん、大西さんには、ピクセル検出器の試作、バ ンプ接合技術の開発の面でお世話になりました。また、ピクセルのごとのリーク電流を測定する プローブもお忙しい中、非常に急いで作っていただき、ありがとうございました。CdTe素子の 提供の面では、ACRORAD社の大野さんにお世話になりました。IDEAS社の方には、VA2TA びVA-MCR-IIのいろいろと情報をいただきました。特にKoki Yoshiokaさんには、ノルウェー のIDEAS社で直接、VA2TAVA-MCR-IIの仕組みや使い方などを教えていただき、ありがと うございました。クリアパルスの久保さんには、FEC Multiplex Cardを作っていただきました。

また、久保さんが宇宙研にいたころからいろいろと実験のことに関して、教えていただきました。

HXDチームの皆様には、打ち上げ前の試験、また、その他いろいろな機会と通じて、お世話に なりました。あのHXDで実際に観測をできたなかったのは残念でしたが、貴重な経験をさせてい ただきました。

また、宇宙研の皆様には、様々な面でお世話になりました。ありがとうございました。

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