Fig.3.8: フェムト秒レーザーによるアブレーション加工
プラズマチャネルの形成にはキャピラリー内壁による冷却が関係してお
り [41][42]、またキャピラリーに高電圧を加えサイラトロントリガーによ
る放電を起こすが、このときキャピラリー壁の最も高温な場所は 1780K に達するのでそれ以上の融点を持つ物質でなければキャピラリーの寿命 が短くなる [42]。そこでキャピラリーの材質には熱伝導率、硬度、電気抵 抗及び融点の高い物質が望ましい。表 3.2∗1に示すようにサファイアガラ スはそれら全てが高く、キャピラリーの材質に理想的なのでこれを使用 する。
∗1 熱伝導率及び体積固有抵抗は20℃のもの
アクリル 合成石英 サファイアガラス 熱伝導率[W/m·K] 0.19 1.38 42
ビッカーズ硬度 [kgf/mm2] 20 790 2294 体積固有抵抗 [Ωcm] 1015 1014 1016 絶縁破壊強度 [kV/mm] 18∼20 25∼40 48 融点[℃] 160 1600 2053
表3.2: 各絶縁体の物性表
本実験ではフェムト秒レーザーを用いてサファイアガラスに半円形の溝 を彫り、それら 2 枚を貼り合わせることによってガスの流路及び加速管 を形成し、これを 1 つのキャピラリーとした。レーザー加工にはエネル ギー 100mJ、パルス幅 100fs の Ti:Sapphireレーザーを使用した。加工は
Fig.3.9 に示すようにレーザーを ND フィルターで 18mJ に減衰させ、焦
点距離 f =39mm の短焦点レンズで電動ステージに固定したサファイア ブロックに集光した。レーザーの光路は固定し、3 軸電動ステージを動か すことでサファイアブロックに照射されるレーザー光を相対的に走査さ せた。電動ステージは縦、横方向には 25nm の精度で、奥行き方向には 50nm の精度で動かすことができ、プログラムによって自動的に制御され これにより加速管及びガス流路となる溝を彫った。製作したキャピラリー は 15mm × 20mm × 3mm の直方体のサファイアブロックに Fig.3.10 で 示すような加速管となる深さ 125µm、幅 500µm の溝を長さ 15mm の辺 と平行に、ガスの流路となる溝を長さ 20mm の辺と平行それぞれ両端か ら5mm の位置に彫り、同じものを2枚貼り合わせることで長さ 15mmの キャピラリーを作成した。
Fig.3.9: レーザー加工のセットアップ。エネルギー 100mJ、パルス幅
100fsのレーザーパルスを NDフィルターにより18mJに減衰さ
せサファイアブロックに照射した。レーザーの光路は固定し、電 動ステージを動かすことで相対的にレーザー光を走査させる。
Fig.3.10: サファイアブロックの加工。15mm×20mm ×3mmの直方体 のサファイアブロックに深さ125µm、幅500µmの溝を15mm の辺と平行に彫る(加速管)。また20mmの辺と平行に2本の溝 をそれぞれ両端から5mmの位置に彫る(ガス流路)。