多くの 差動排 気
Niメッシュ
Siウェハ Ti フィルタ
電子蓄積リング(10
-10Torr)
Cl
2ガス(10
-1Torr) SOR光
多くの 差動排 気
Niメッシュ
Siウェハ
図2.7.4 SOR光を使用したエッチング装置の構成図
50µm 50µm
図2.7.5 Cl2雰囲気中でメッシュを通してSOR光を照射し、パターンを転写したn+ poly-Si
2-8 まとめ
デバイスへの照射損傷のない加工技術として、プラズマを使わない光励起エッチング技術を総 合的に調査した結果を示した。
ゲート電極材料の多結晶Siの加工では、Pを高濃度に添加し抵抗値の低いn+ poly-Siでは、光解 離したCl原子と自然に反応が進むため等方的なエッチング形状になる。無添加のundoped poly-Si では、エッチング速度は遅いが、光照射部のみがエッチングされ、光を通さないマスクを使用す ることで異方性加工の可能性がある。n、pの伝導型と不純物添加量(膜のシート抵抗値)に対し てエッチング速度を調べると、n型の場合にエッチング速度は高いが、p型では高濃度添加でもエ ッチングされにくい。エッチング反応に伝導帯中の電子が影響していると考え、n+ poly-Siの場 合は光照射がなくても、undoped poly-Siや低抵抗の単結晶Siの場合は光照射により励起された電 子-ホール対の電子が反応に寄与するモデルを提案した。
n+ poly-Siの異方性加工を実現するために、堆積性のガスを同時に導入し、側壁保護膜の形成
を試みた。その結果、垂直形状の加工に成功した。しかし、光の回折効果により、微細なパター ンではパターン底へ到達する光に強度分布が発生し、特にコーナー部で形状が裾を引く現象があ る。光による加工の限界を破るためには、光照射強度に非線形な(レジストの露光プロセスのよ うな)反応系の探索が必要である。
照射損傷を評価し、光照射ではゲート絶縁膜の耐圧劣化はないが、ArF (193nm、6.4eV)の高 いエネルギー光により中性の電子トラップが発生することがわかった。これは、酸化膜中のOH などの不純物との結合を光が励起し、ダングリングボンドを形成するためではないかと考えた。
さらに、MOSFETを製作し、RIEを使用した場合と光照射した場合で特性を比較した結果、RIE
でゲート電極を加工した場合には後の工程で熱処理 ( 950 ℃、30 min ) を経ていても電子トラ ップの発生があり、その傾向はゲート長が短くなるほど顕著であった。さらに、最初に poly-Si のRIEで損傷を受けた試料に、さらにRIE(コンタクト、アルミ)を行うと損傷が蓄積されてい くこともわかった。一方、ArFレーザ照射した場合には中性トラップの発生はあるが、いずれも 450 ℃の熱処理で回復していることが確認された。
以上から、当初考えた照射損傷に関しては、RIEに対し明らかに優位性のあることが確認され た。特にXeClやKrFエキシマレーザなど波長が250nm程度以上の光照射では全く照射損傷が 発生しない。しかし、波長程度より小さい寸法のパターンの形成への適用には限界があり、また 大面積のウェハ加工にもエッチング速度が十分とは言えない。したがって、加工速度、精度の点 で光ゆえの限界があり、光励起エッチングを超LSIの微細加工に適用することは困難と判断した。
しかし、光励起エッチングは、超LSIほどには微細な加工が要求されないが、照射損傷を可能な 限り少なくした加工が必要なデバイス、例えば、高輝度、高効率の発光ダイオード開発や低照射 損傷加工が要求されるマイクロセンサーの加工などへの適用において有効であると考える。
第 3 章
マグネトロン RIE 技術の開発
3-1 はじめに
溶液によるウェットエッチングからプラズマの活性中性種を使用したケミカルドライエッチ ング(CDE)、さらに反応性イオンエッチング(RIE)に代表される方向性エッチング技術の登 場により、集積回路の微細化が推進された。しかし、1970年代から1980年代に活躍した平行平 板型のRIEは、イオン化効率が10-4 程度と低く、エッチング速度がSiO2で30nm/min程度であり 遅かった。量産のために複数枚のウェハをチャンバに同時に導入し加工するバッチ方式が主であ り、ウェハの大口径化の進展はそのまま装置の大型化へ繋がった。そこで、ウェハを一枚ずつ(毎 葉式)高速で加工するRIE技術の要求が高まり、本研究で開発したマグネトロンRIEの他に電子 サイクロトロン共鳴(ECR : Electron Cyclotron Resonance)プラズマ方式、さらに後年には誘 導結合方式プラズマ(ICP : Inductively Coupled Plasma)装置、表面波プラズマ(SWP : Surface Wave Plasma)装置などいろいろな方式が提案されるようになった[7]。しかし、本研究に着手 した当時は、ECR方式の研究開発が緒についたばかりであった。ECR方式ではマグネトロンRIE よりさらに低い10-4Torr台のガス圧力でECRの原理で高密度のプラズマを形成する。ウェハはプ ラズマの拡散領域に配置して、低ガス圧力で異方性の高いエッチングを実現する技術として開発 されていた。しかし、磁界に起因する不均一性[34]、低ガス圧力プロセスのためにガス流量を多 くできず、エッチング速度が低い。しかし、プラズマ源とウェハバイアスが独立しているために、
ウェハ表面を衝撃するイオンのエネルギーを制御しやすいという利点があった。
これに対し、マグネトロンRIEは、当時のDCスパッタ装置やイオン銃で使用されていたマグネ トロン放電をヒントに、RFプラズマに磁界を与えることで、10-2 ~10-3 Torrの、従来装置よ り低めのガス圧力であるが、ガス流量を十分に得られる圧力領域で高密度プラズマを生成する方 式である。また、磁界によりイオンエネルギーを下げることが可能と考えられ、開発に着手した。
本章では、まず初期の開発段階の装置を例にマグネトロンRIEの原理を示す。当初問題となっ た形状異常や照射損傷の機構を論じる。それらの課題を克服し、ダイポールリング磁石を採用、
さらに改良を加えた現在の方式に至る過程を示す。また、数mTorrから数十mTorrのガス圧力で 比較的高密度のプラズマを形成できるマグネトロンRIEを使った典型的なプロセス技術を示す。
3-2 マグネトロン RIE
図3.2.1は最初に装置化したマグネトロンRIE装置の構成図である。この方式は13.56MHzの高 周波(RF)と結合したカソードによって、下部がエッチング室、上部がマグネットの走査室の2 つに分けられている。上部の走査室は10-5 Torr以下の真空に保ち、放電を防止している。カソ ードの自己バイアス電圧(Vdc)による電界(E)とSm-Co製の磁石によって生じる磁界Bの交差、
つまりE x Bのローレンツ力によって、磁石のレーストラック状の隙間形状に沿って電子がドリ フト運動する。電子ドリフトによりイオン化効率が向上し高密度プラズマのループがカソード付 近に生成される(図3.2.2)。
図3.2.1 初期のマグネトロンRIE装置の構成
ウェハ付近に形成されたレーストラック状の高密度プラズマの写真を図3.2.3に示す。この写真 ではループをはっきりと写すために比較的低いRF電力でプラズマ生成した。実際のエッチング 時には高いRF電力を投入するため、プラズマループは大きく広がりさらに強く発光する。この レーストラック状のプラズマループの領域ではエッチング速度は極めて高くSiO2で3~5µm/分に も達する。そこでウェハ全面に均一なエッチングを達成するために、磁石の機械的な走査により 高密度プラズマループをウェハ上に繰り返し走査して行う。例えば100mm径のウェハに対して 往復2秒で走査した。
図3.2.1の装置では、1枚のウェハがロードカセットから搬送され、パーティクルの付着を低減 するためにエッチング室へはウェハの表を下に向けて導入する。エッチング室の上部が4mm厚の カソードであり、ウェハは静電チャックで水冷したカソードに吸着させて保持、冷却する。この 方式は通常のマグネトロンスパッタ堆積と構成は同様であるが、堆積ではスパッタイールドを高 めるため高電圧を印加し、低ガス圧力(< 1 mTorr)雰囲気で形成される広いシースの中の電子 サイクロイド運動を実現するため低磁界で充分である。これに対し、エッチングは通常は数m Torr以上の圧力で狭いシースと低エネルギーで行うため、磁界を強くしてサイクロイド運動の径 を小さくする必要があり、この点で堆積技術と異なる。
図3.2.4に、CHF3ガスによりSiO2をエッチングするプロセスにおいて、磁界を変化させた時の SiO2とSiのエッチング速度、選択比、さらに自己バイアス電圧(Vdc)の絶対値の変化を示す[64]。
ここに示したVdc値はカソードに高電圧プローブを接触させて、高周波電力波形をオシロスコー プでモニターし、アース電位からの直流成分の電圧差を読んだ値である。後で示すが、プラズマ 密度の分布のためにVdc値はカソード上で一定ではなく、計測している値は平均値と考えられる。
また、Vdcはカソード(ウェハ)を衝撃するイオンの平均エネルギーに近い値と考えることがで きる。