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イオン種の計測

ドキュメント内 ドライエッチング技術に関する研究 (ページ 159-167)

SiCl 3 SiCl 4SiO2 Plate

A. イオン種の計測

まず0.2mm径のオリフィスを通過してくるイオン種を計測したところ、CFx+ (x=1~3)、および C2F4+について充分な大きさの信号を得たため、これらを中心に計測していくことにした。図 4.5.12にこのイオン種のエネルギースペクトルを示す。イオンがプラズマシースを通過するとき にシースポテンシャルから得るエネルギーが イオンがシースへ入り込む位相により変化するた めに、エネルギー分布は二つのピーク(Bimodal distribution)から構成される。

図4.5.12 オリフィスを通過して計測されたイオン種の

エネルギー分布

イオンエネルギーの平均値は125V であり、これはシースポテンシャルの平均値、Vpと|Vdc|

の和に対応する。二つのピークの間隔(∆E)はイオン種の質量に応じて異なる。シースポテンシャ ルが正弦波形で振動し、シース内でイオンの自由落下を仮定すると、∆Eは次式で与えられる。

∆E = (8eVa/3ωd)(eVs/2m)1/2

ここで、e:電子の電荷、Va:R F電圧振幅、ω:RF電界の角周波数、d:シースの厚さ、Vs:平 均シース電圧、m:イオンの質量 である。図4.5.12から∆Eの質量依存性を求め図4.5.13に示し た。プロットした値は、図中に記した ∆E ∝ (m /e )-1/2 (m=31 で規格化している)とほぼ一致 する。

図4.5.14にそれぞれイオン種毎に計測された電流値のアスペクト比依存性を示す。イオン電流 はアスペクト比の増加にしたがい低下するが、その傾向は等しく、イオン種によって異なること はない。図4.5.15にはCF+イオンのエネルギー分布のアスペクト比依存性を示す。アスペクト比 が10まではバイモダル分布がみられるが、アスペクト比20では低エネルギー側のピークが消えて いる。

図4.5.13 ∆Eの質量依存性

図4.5.14 イオン電流値のアスペクト比依存性

図4.5.15 CF+イオンのエネルギー分布のアスペクト比依存性

高いアスペクト比のホールで電流が低下する原因として、次の3つの原因を考えた。(1)ホール 上部で電界の乱れが生じ イオンの軌道が曲げられた、(2)バルクプラズマのイオン温度に起因す る斜め入射イオンが遮られた、(3)ホール側壁の帯電によりイオン軌道が曲げられた、である。

目視の観察であるが、シース長が2mm以上あり、ホール径(25µm)に対し充分大きいために (1)の寄与はないと考えられる。イオン温度の分だけ横方向に速度をもって入射したと仮定して、

図4.5.14の程度にイオン電流が遮られる場合のイオン温度を計算すると5~10eV必要になる[102]。

バルクプラズマのイオン温度は0.5eV以下と考えられ[103]、この説も現実的ではない。また、斜 め入射イオン説では図4.5.15のアスペクト比20で低エネルギー側ピークが消失する現象を説明 できない。ホール内の帯電が最も有力であり、以下にその検証を行った。

帯電を防止するために熱CVDで約100nmのCu膜をCP表面と内部に堆積した。通常のCPを通 過した全イオン電流とアスペクト比20のCu膜付きのCPを通過したイオン電流を図4.5.16で比較 した。また、ガスにC4F8とO2を使用した場合についても比較した。まず、O2プラズマではイオ ン電流の減少傾向がC4F8プラズマと比較して緩やかである。また、C4F8プラズマではアスペクト 比20でCu膜のあるCPでは電流値が3倍に増加してが、O2プラズマではCu膜による電流の増加は わずかである。

図4.5.16 CPを通過する全イオン電流のアスペクト比依存性

C4F8プラズマとO2プラズマおよびCu膜の有無で比較した。

また、Cu膜の有無でイオン種毎のエネルギー分布を比較した(図4.5.17)。CPのアスペクト 比は20である。Cu膜がないCPではバイモダルピークが消失しているが、Cuを堆積したCPでは 二つのピークがはっきりと現れており、電流量も多いことがわかる。

図4.5.17 イオン種毎のエネルギー分布、(a)CuなしのCP、(b)Cu膜を着けたCP O2ガスを使ってO2+イオンのエネルギー分布のアスペクト比依存性を計測した結果を図4.5.18 に示す。帯電が緩和されたために、すべてのスペクトルがバイモダルのピークを持っていること 確認できた。

図4.5.18 O2ガスを使用してO2+イオンを計測した時のイオンエネルギー分布の CPアスペクト比による変化

さらに、図4.5.19にC4F8ガスにO2を添加して計測したアスペクト比20のCPを通過したイオン 電流量の変化の添加O2流量依存性を示す。酸素流量が多いほどアスペクト比に対する電流の減少 が緩和される。酸素の導入によりホール側壁への堆積が減少し、帯電が減少した結果と解釈でき る。このことより、堆積膜の存在が帯電現象を助長していることが裏付けられた。

次にCPを実験に使用した妥当性について議論する。本節ではCPをコンタクトホールに見立て た実験を示してきた。CPの寸法はシース長などに比べると充分小さく、プラズマへの擾乱や計 測系への影響は少ないと考える。しかし、実際のコンタクトホール(開口:~0.5µm、深さ:数 µm)と比較するとCPは1オーダー以上大きな寸法である。帯電現象などではこの寸法差は電界 強度の差となり得る。そこで、コンタクトホールに近い寸法のCPを製作して確認した。

図4.5.20にφ0.87µm、厚さ10µmのマイクロCPの写真を示す。これは、Siに形成した10µmのSiO2

膜にマグネトロンRIE装置でコンタクトホールを形成し、Si基板の一部を裏面からKOH溶液でエ ッチングして作製したSiO2のメンブレンである。φ1.9µmのマイクロCPも同時に形成し大きなCP と比較した。

図4.5.19 C4F8ガスにO2を添加して計測したアスペクト比20のCPを通過したイ オン電流量の変化の添加O2流量依存性

図4.5.21にCPを通過したイオン電流量のアスペクト比依存性を示す。マイクロCPでは相対的 に通過したイオン電流量が少なくなっているが、アスペクト比に対する減少の傾向は大きなCP と一致している。電流量が少ない理由として、ホールの出来上がり寸法が小さく開口率が低かっ たこと、CPと材質が異なる あるいは寸法が異なるためにチャージのリークレートに差があり帯 電の程度に差が現れた[104] などが考えられるが詳細は不明である。

最後にホール内部の帯電の機構について考察する。

アスペクト比の増大に伴い、イオン電流量が低下する原因は、プラズマ中の電子温度はイオン 温度に比べて高く、電子がカソードに入射する際の斜め成分の割合はイオンに比べて多い[105]。

このため、電子は深い穴の底まで到達する前に、キャピラリプレート側壁に衝突する。キャピラ リプレートは絶縁性材料(鉛ガラス)製であり、またC4F8プラズマにより側壁に堆積するフロロ

図4.5.20 φ0.87µm、厚さ10µmのマイクロCPの写真、

上:表面と断面、下:裏側から見上げた写真.

CP

Micro CP CP

Micro CP

図4.5.21 CP、マイクロCPを通過したイオン電流量のアスペクト比依存性.

カーボン膜も絶縁膜と推定され、電子が衝突したところで負電界の蓄積が生じる[106]。 この負 電荷蓄積による穴中の電界の歪みにより、たとえカソードに対して垂直に入射してきたイオンも 軌道が変えられ、底まで到達する前に、キャピラリプレート側壁に衝突するものと考えられる。

イオンが衝突した個所は正電荷の蓄積が起るため電位が上昇する。高周波振動するシースにどの 位相で入射するかによってイオンのシース内で受ける電界加速の大きさが異なってくる。このた めイオンエネルギー分布はエネルギーの低いところと高い部分にピークを持つバイモダル分布 (Bimodal distribution)となる。低エネルギー成分のイオンは特に穴内に生じる電位障壁のため穴 底への入射量は減少し、バイモダルの低エネルギー側のピークが消えるようなことが発生すると 考えられる。

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