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そして、既述のとおり、低迷した組織を回復に導いた4つの組織におけるリーダーのリー ダーシップについて、初期、中期、後期の3つの段階に分けて内容を分析した。さらに、そ の特徴から、リーダーシップ・スタイルを分類した。また、分類したリーダーシップ・スタ イルに対し、既にケース・スタディ・リサーチによる分析で抽出していた要素を、それぞれ のリーダーシップ・スタイルに適合するように配置した。

このような研究から明らかとなった2つ目の理論的な貢献は、ターンアラウンドに成功し たケース組織の共通の特徴として、フォロワーが顧客から見られるように位置づけたことの 発見である。フォロワーは、顧客から見られるようになったことで顧客を意識するようにな り、顧客を意識するようになったことで顧客が満足したり、喜んだりするように行動するよ うになった。これは、フォロワーが自覚状態(self-awareness)になっているからである。既 述のとおり、自覚状態とは、自己フォーカスが高まったときの行動変化を説明しようとする 考え方であり、人は、他人から注目されたりする状況では自覚状態になる。自覚状態になっ た人は、自分のもっている正しさの基準(standard of correctness)と現実の自分の姿とを比較 し、基準に達していない(「負の不一致」という)場合は、注意を自己から逸らせて自覚状態 を回避しようとするか、不一致を低減させるため、基準と一致するように努力する。この 4 つの組織では、フォロワーを顧客から見られるように位置づけ、回避ではなく、不一致の低 減が行われるようにした。このため、フォロワーは、顧客を満足させたり、喜ばせたりする ような行動を行うようになっていったのである。

理論的貢献の3つ目は、リーダーの顧客意識と顧客を意識したリーダーシップについてで ある。これまで、リーダーついては、リーダーそのものの資質や条件について論じられてお り、そこで顧客については論じられてこなかった。また、リーダーシップに関しては、その 対象となるのはフォロワーであり、顧客はその対象ではなかった。それは、リーダーの行動 やリーダーシップはフォロワーに対して行われるものであり、フォロワーをリーダーの考え る状態することに重点が置かれていたからである。さらに、リーダーやリーダーシップが、

ビジネスを行う組織だけでなく、それ以外の組織も含めて研究されてきたからである。しか しながら、ビジネス・リーダーが目指すところは、顧客の増加や顧客満足度の向上、さらに、

その先にある売上などの向上であるべきである。本博士論文では、リーダーの行うリーダー シップから、ターンアラウンドに成功したと言える状態、即ち、顧客の増加や顧客満足度の 向上、売上などの向上までを論じている。さらに、リーダーがフォロワーに対しリーダーシ ップを発揮する際には、顧客を視野に入れている。これは、流通経路において、製造企業が

直接の顧客である卸売企業だけを視野に入れているのではなく、その先の小売企業や、さら には最終の顧客(消費者)を視野に入れて卸売企業にアプローチするのに類似している。本 博士論文で論じているリーダーシップも、これと同様、最終の顧客を起点に考え、フォロワ ーにアプローチしていく、最終顧客起点型リーダーシップであると考える。

4 つ目の理論的貢献は、フォロワーの組織での考え方の基礎の浸透度やスキル向上の程度 に応じたリーダーシップ・スタイルの変化である。ターンアラウンドに成功した4つの組織 では、新たな価値観である組織での考え方の基礎の浸透度とフォロワーのスキル向上の程度 に応じて、初期から中期を経て、後期になるに従い、リーダーが行うリーダーシップの内容 が少しずつ変化している。即ち、フォロワーに組織での考え方の基礎の浸透度とスキル向上 の程度が上昇するに従い、フォロワーの力は向上し、フォロワーが任せられる状態となって いくため、リーダーのリーダーシップの内容も、リーダーが主導して行うことやリーダーが フォロワーの力を導き出すことから、フォロワーにやってもらうこと、またはフォロワーに 任せることに変化しているのである。

このように、フォロワーの状態の変化に応じてリーダーが行うリーダーシップの内容が変 化していく点、特にフォロワーの状態が向上していくに従い、リーダーが主体となって行う ことから、リーダーがフォロワーに任せていくことに変化していく点の発見は、ダイナミッ クな視点を導入した場合に発見された新たなリーダーシップ概念であると考える。

但し、フォロワーの状態(状況)に応じてリーダーシップの内容が変化する点においては、

Hersey, Blanchard, and Johnson(1996)の状況対応的リーダーシップ(SL:Situational Leadership)

と類似している。状況対応的リーダーシップでは、フォロワーの状態を発達度、リーダーの 行うリーダーシップの内容を指示的行動と援助的行動の2つとし、フォロワーの発達度が上 昇するに従い、リーダーの行うリーダーシップは、指示型(指示的行動が多く、援助的行動 が少ない)から、コーチ型(指示的行動が多く、援助的行動も多い)、援助型(援助的行動が 多く、指示的行動が少ない)を経て、最終は委任型(援助的行動が少なく、指示的行動も少 ない)に変化していく。これに対し、本博士論文で論じているリーダーシップは、フォロワ ーの状態を組織での考え方の基礎の浸透度とスキル向上の程度、リーダーの行うリーダーシ ップをリーダーが主導で行うことからフォロワーへ委任することへの変化としている点が 明らかに違っている。

さらに、組織の状況に応じてリーダーシップの内容を変えていくものに、Goleman, Boyatzis,

and McKee(2002)のEQリーダーシップがある。EQリーダーシップでは、ビジョン型、コ

ーチ型、関係重視型、民主型、ペースセッター型、強制型の6つのリーダーシップ・スタイ ルがある。リーダーは、組織の状況に応じて、これらの6つのリーダーシップ・スタイルを 使い分けるというものである。しかしながら、EQリーダーシップでは、使い分ける基準とな るものがフォロワーではなく、組織の状況であるため、本博士論文で論じているリーダーシ ップとは明らかに違うものである。

また、全体を俯瞰すると、時間的な位相に差はあるが、ターンアラウンドに成功した4つ の組織のリーダーは、当初はトランスフォーメーショナル型であったり、トランスフォーメ ーショナル型とサーバント型の同時並行であったりしたリーダーシップ・スタイルを、最終 的にはサーバント型のリーダーシップ・スタイルに移行しようとしていた。ここから、組織 の業績を向上させていくためにはフォロワーの力を引き出し、その力を発揮してもらうこと が重要であるが、その力を発揮してもらい、業績の向上などの効果を上げていくには、いか にサーバント型のリーダーシップ・スタイルに移行していくのか、さらには移行できる状態 に変えていくのかが重要であることも、本博士論文において明らかになったことの1つであ る。

そして第5番目の理論的貢献は、専門職組織における成功組織と機能不全組織の相違に関 し、そのメカニズムを明らかにしたことである。

次に、本博士論文の研究の限界について説明する。研究の限界として挙げられるのは、1つ 目は、製造業などの他の業種の組織におけるリーダーシップに関してである。本博士論文で は、インターナル・マーケティングの結果、即ち、顧客の増加や顧客満足度の向上、売上な どの向上の結果が比較的わかりやすいサービス業の組織を対象に研究した。しかしながら、

現在では、サービス・ドミナント・ロジック(S-D Logic)の考え方から、製造業などの他の 業種の組織においてもサービス業の同様の視点が求められており、サービスの考え方は、サ ービス業だけに必要とされるものではなくなってきている。それでは、製造業や卸売業、小 売業などの組織のリーダーシップとサービス業の組織のリーダーシップには、違いはないの であろうか。比較研究することは重要であると考えられる。

2 つ目は、役所を始めとした非営利組織のリーダーシップに関してである。ビジネスにお けるリーダーシップでは、その目指すところは、顧客の増加や顧客満足度の向上、さらに、

その先にある売上などの向上である。しかしながら、非営利組織のリーダーシップでは、そ の目指すところは、ビジネスにおけるリーダーシップとは違うと考えられる。非営利組織の リーダーシップでは、顧客の増加や顧客満足度の向上、売上などの向上に代わる指標として