かれは言った。「わたしの人びとよ、アッラーに仕えなさい。あなたがたには、
かれの外に神はないのである。今主から証があなたがたに下った。このアッ ラーの雌ラクダが、あなたがたへの印である。それでこれをアッラーの大地に 放牧して食べさせなさい。そしてあなたがたが痛ましい懲罰に遭わないよう、
それに害を加えてはならない。74.またかれは、アードの民の後をあなたがた に継がせ、その地に安住させられた時のことを思いなさい。あなたがたは平地 に宮殿を設け、また(岩)山に家を彫りこんだ。だからアッラーの御恵みを心 に銘じて、悪を慎み、地上を乱してはならない。」75.その民の中の高慢な長 老たちは、力がないと思われていた信仰する者たちに言った。「あなたがたは サーリフが、主から遣わされたことを知っているのか。」かれらは(答えて)言っ た。「わたしたちは、かれが遣わされた者であることを本当に信じます。」76.
高慢な者たちは言った。「わたしたちは、あなたがたが信じるものを認めない。」
77.そこでかれらは、かの雌ラクダの膝の腱を切って不具にし、(屠畜し)か れらの主の命令を傲慢無礼にも無視して、かれらは言った。「サーリフよ、も しあなたが(本当に)使徒であるならば、ふりかかってくると言っているものを、
わたしたちに齎せ。」78.そこで大地震がかれらを襲い、翌朝かれらはその家 の中に平伏していた。79.それで(サーリフは)かれらから去って言った。「わ たしの人びとよ、確かにわたしは主の御告げを宣べ伝え、またあなたがたに助 言をした。だがあなたがたは誠実な助言者を喜ばない。」
語の説明:
73 節-[サムード]:…アラブの部族。ヒジャーズ(アラビア半島の西、紅海側)
のタブーク付近)からシャーム(シリア地方)に住んでいた。サムード族の祖 父の名前:サムード・イブン・アーミル・イブン・イラム・イブン・サーム・
イブン・ヌーフ。
73 節-[サーリフ]:…サムードの預言者。
73 節-[証が]:…奇跡が。
74 節-[(岩)山に家を彫りこんだ]:…岩山を彫り家を作った。
歴史的意義:
サムードの名。サムード・イブン・アースル・イブン・イラム・イブン・ヌー フ。サムードはアーイズの息子ジャディーシュの兄弟である。彼らはいずれも アラブの部族であり、イブラーヒーム以前の者たちである。サーリフの属する サムードはアードの後になる。居住地域はヒジュルと呼ばれる、ヒジャーズと シャームの間のアル・カラー渓谷付近であった。現在、マダーイン・サーリハ として残っている。
ハディースから:
アッラーの使徒は、ヒジュラ暦 9 年にタブークに行かれた時、サムードの居 住地域を通られた。アル・イマーム・アフマドは、イブン・ウマルがこう言っ たと伝えている。「アッラーの使徒がタブークへ遠征中、サムードの建物の近 くのアル・ヒジュルに野営したとき、かつてサムードの民が飲んでいた井戸の 水を汲み、その水で粉を捏ねた。そこで、預言者はその井戸から汲んだ水を捨て、
捏ねた粉をラクダに与えてから、牡ラクダが飲んでいた井戸の水を汲むよう命 じた。そして、罰を受けた民族の住まいに入ることを禁じられた。また、こう 言われた。「私は、あなたがたに彼らが受けたような災いが降りかかることを 恐れる。」アフマドは、またイブン・ウマルがこう言ったと伝えている。アッラー の使徒がアル・ヒジュルを通りかかったとき、「これら罰を受けた者たちの住 まいに入ってはならない。さもないと、あなた方は彼らを襲ったような災いに 襲われよう。」
サムード族はヌーフの民族と同様、アッラーの他に別の神を並び立て、偶像 を崇拝していた。アッラーは彼らに沢山の恩恵を与えた。そして、彼らのもと に預言者サーリフを遣わした。彼らのために訓戒とアッラーの恩恵を思い出さ せ、アッラーのほかに何者も並び立てない唯一信仰を説かせた。
それで、部族の中の弱い者たちは信じ、指導者や長老たちは信じようとしな
かった。さらに、反抗し高慢で背信の徒となり、預言者を嫌悪した。「わたし たちの間でかれだけに啓示が下されたのですか。いや、かれは大嘘付きです。」
(54 章… 月章 25 節)高慢な者が力の無い弱い者たちに言った。「あなたがたは サーリフが、主から遣わされたことを知っているのか。」弱い者たちは答えた。
「わたしたちは、かれが遣わされた者であることを本当に信じます。」(7 章… 高 壁章 75 節)高慢な者たちは言った。「わたしたちは、あなたがたが信じるもの を認めない。」(7 章…高壁章 76 節)
高慢な者たちは、証明となる印を要求した。サーリフは言った。「ここに一 頭の雌ラクダがいます。」「それにも水飲み日があり、またあなたがたにも、(そ れぞれ)決められた水飲み日があります。」(26 章詩人たち章 155 節)…「本当に われは、かれらを試みるため雌ラクダを送るであろう。あなたは耐え忍びかれ らを見守れ。そしてかれらにラクダと水を分配し、順番に飲むよう伝えなさい。」
(54 章… 月章 27 ~ 28 節) 順番を守れば、それぞれが水をのむことができ、ラ クダの乳を飲むことが出来、乳が尽きることもない。
サーリフは、彼らに悪に触れて、それを地上に撒き散らしてはならないよう 命じた。サーリフは、部族の者たちにアッラーの恩恵を想うよう精一杯努力し た。そして堕落して地上で悪を行うことを禁じた。しかし、彼らは信仰に対し 高慢な態度をとり、主の命令を無視した。「そこでかれらは、かの雌ラクダの 膝の腱を切って不具にし、(屠畜し)かれらの主の命令を傲慢無礼にも無視し た。彼らは言った。『サーリフよ、もしあなたが(本当に)使徒であるならば、
ふりかかってくると言っているものを、わたしたちに齎せ』。」(7 章… 高壁章 77 節)…「だがかれらは仲間を呼び寄せ、その男は(剣を)手にとると膝の腱を切っ てしまった。」(54 章…月章 29 節) それでサーリフは言った。「3日の間あなた がたの家で(生を)楽しめ。」…(11 章… フード章 65 節)「確かにわたしは主の御 告げを宣べ伝え、またあなたがたに助言をした。だがあなたがたは誠実な助言 者を喜ばない。」(7 章…高壁章 79 節) それで、大地を震わす懲罰が下された。…
「そこで大地震がかれらを襲い、翌朝かれらはその家の中に平伏していた。」(7 章… 高壁章 78 節) 「その時のわが懲罰と戒めとがどうであったか。本当にわれ
は、かれらに向かって(耳をつんざく)一声を下すと、かれらは家畜の囲いに 使われる枯れ株のようになった。」(54 章…月章 30 ~ 31 節) …「あなた以前にも、
われが遣わした使徒には、等しく、『われの外に神はない、だからわれに仕え よ。』と啓示した。」(21 章…預言者章 25 節)…、「本当にわれは、各々の民に一人 の使徒を遣わして『アッラーに仕え、邪神を避けなさい』」と(命じた)。」(16 章…蜜蜂章 36 節)
アッラーはサーリフと彼に従って信じた者たちを懲罰から救い出した。彼ら はパレスチナ方面に入った。そこは肥沃な地だった。ウルースィーによると、
救われたのは 120 人で、それに対し、滅亡したのは 5 千の家族だった。「サムー ドの人びとは、主を信じなかった。サムードよ(アッラーの慈悲から)追放さ れよ。」…(11 章…フード章 68 節)
サーリフの名前はクルアーンの中で9回言及されている。高壁章(73,75,77)、
フード章(61,62,66,89)詩人たち章(142)、蟻章(45)…などである。
生活規範 :
サムードはアードと同じく純粋のアラブ族である。アッラーは預言者サーリ フを彼らの所へ遣わした。サーリフは、彼らの系図の中心であり、高貴の生ま れである。サーリフは彼らの若者にもアッラーに従順であるよう伝道を行った。
しかし、少数の弱い者たちを除き彼に従わなかった。高慢な者たちは、「われ われはサーリフがもたらしたのと同じ背信者である。」と言った。
アッラーズィーは、こう述べている。「これらの章句は弱く貧しい者は金持 ちに勝ることを説明している。というのは、高慢な者は多くの富と高い地位を 得る。そして、弱者が富や地位を得ることはごくわずかである。即ち、多くの 富と高い地位は、背信、拒絶、否認、不信をもたらす。少ない富と低い地位は、
信仰、信頼、従順をもたらす。それゆえ、弱く貧しい者は金持ちに勝るのである。」
5.[ 預言者ルートの物語 80 節~ 84 節 ]