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 中国国外での聖火リレー開始からしばらく経ち、中国の一インターネット利用者が、国 民的チャットソフト「QQ」向けのハートの形をした中国国旗(五星紅旗)のグラフィック

を公開。瞬く間に人気となり、多くのQQ利用者の自画像がハート形の五星紅旗に変わった。

利用者名の前に(ハートマーク)Chinaと入力して愛国心をアピールすることが人気となっ た。QQでの自画像をハート形の五星紅旗にした人の数は不明だが、ネット上の」つの説と

して、チャット利用者の35%がインターネットで、ソフトの愛国をアピールしたそうだ。

中国の全チャットソフトの総アカウント数は約4億、つまり4億のうちの1億4千万人だ

った。

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 「80后」と四川大地震

 2008年5月1日、フランスに対する抗議デモが当局の静止により収束し、その後はカル フール前での抗議活動のニュースはピタリとやんだ。しかしその月の12日、中国・四川省 を震源地として発生したマグニチュ]ド7.8の中国・四川省大地震では、8万人以上もの 死者がでた。

 若者が一番使っているポータルサイト「QQ」は、地震発生から3時間後に同サイト利用 者から義拐金の百万元(約1千6百万円)を集め、更にその3日後には、最速で1千万元(約

1億6千万元)を集めた。義招金の募集は、QQ以外のポ]タルサイトをはじめ、様々な若 者人気サイトで行われた。中国で最も人気のショッピングサイト「淘宝網」は、震災の翌

日に義掲金箱として、「1元の四川地震義据金」を販売したところ、開始から2分足らずで 4万人近くが購入、4千万円強の義損金を集めた。そのような活動の発起人は「80后」に 属する大学生といわれる。

 また、地震発生の翌週となる5月19目から21日までの間、全国哀悼目として半旗を揚.

げた。この期間、百度・新浪・網易・QQ・グーグル中国・ヤフー中国をはじめとした若者 に人気のポータルサイトのトップページの広告が消え、それぞれのサイトのぺ一ジ全体が モノクロとなった。オンラインゲームもサーバーが停止され、遊ぶことが出来なくなった。

この3日間、中国のインターネット全体が、合法・違法に関係なく、喪に服していた。

 この災害に対して、「80后」の動きは早かった。山谷剛史は『新しい中国人一一ネット で団結する若者たち』 (2008)で次のように論じている。 「中国国内のメディアでも数ヶ 月後によく議論されたが、「80后」は、この地震が起きた後、インタ]ネットを通じて団 結を呼びかけ、ボランティアとして現地に赴いたり、足りない物資を自分の車で現地まで 運んだり、インターネットのカを使って災害復興に役立てようと努力した。」

 これまで、どちらかというと「80后」というのは中国国内においても、」人っ子だか.ら わがままとか、海外のものが大好きで、愛国心が弱いという世間からややネガティブな認 識をされていたのだが、2008年に入って聖火リレーの問題や、この四川省大地震などの災 害の対応から、「80后」のイメージが非常によくなってきていると言われている。とりわ け、インタ]ネットを駆使して、団結を呼びかけたり、人を助けたりしたところに、「80 后」ならではのポジティブな評価を得ているのである。2008年に入ってからも、何名もの

「80后」に取材をしてきているが、「80后」たちも、社会の自分たちに対する認識が若干 よくなってきていると少し誇らしげに感じていることが見受けられた。

 客観的に言えば、「80后」は、CNNに反するデモ行進に参加した後、すぐ個人利益と 権利を維持するデモ隊に参加するような世代だ。伝統的な評価基準で見れば、「80后」の 行動が不思議と思うくらい理解できないものである。国を愛するならば、個人利益と国家 利益の選択で、個人より集団や社会の方が優先されるだろう。しかも、「80后」の世代か

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ら見れば、改革開放を支持すること、愛国行為と自分の成功を追求すること、個人権利を 保つこととは矛盾しない。まさしく、「80后」たちは「愛国意識」(国を愛する行為、オリ

ンピックを守るなど)とr権利意識」(自分を愛する、家庭を保つなど)をうまく統一一して いる。それゆえ、計画経済時代の道徳基準と政治基準で新しい世代を評価することはでき ないだろう。

 21世紀の新生世代、「「80后」」はいろいろな新しい特質を持って現れた。それは社会進 歩の発展環境がもたらしたものだ。時代とともに、発展の視点で若者を観察して、理解す べきだ。そうしたらならば、現在の若者の新しい文化への情熱を政治無関心と誤解したり、

競争精神をヒーロー主義と間違えたり、自己価値の.実現を利己主義に見たりすることがな くなるだろう。経済市場環境の中で、生まれ成長してきた新しい世代は、生まれてきてか ら今日まで、全て市場経済と関連ある知識、情報、教育を受けてきた。そして、自然に経 済市場環境と相応しい意識、価値観とライフスタイルを形成してきた。

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終わりに

 本稿では、現代中国の若者「80后」について、改革開放後の劇的な社会の変化と関連さ せながら、彼らのライフスタイルを、人生観、結婚観、家族観、職業観、消費行動などか

ら考察した。また、「80后」の世代間での葛藤や、今後の中国社会の中核としていかなる 課題と展望をもっているのかを明らかにした。

 「80后」は現代中国社会のなかで、とくに際立った特徴をもつ「特別な世代」である。

一人っ子政策、政治や経済領域での急激な変革、高度情報化社会、グローバリゼーション、

少子高齢化、激烈な受験戦争と労働市場、これらさまざまな潮流は、中国の前世代が経験 し得なかった出来事を、「80后」においては日常化させた。この意味で、「80后」は中国社 会のなかで極めて個性的な世代である。当然、そこには、国境を越えて見出せるような、

現代社会の若者たちの一般的特徴も指摘できよう。

 しかしながら、その一方で、「80后」の両親世代のほとんどが「文化大革命世代」に属 するように、「80后」が家庭環境のなかで継承したり獲得したりしてきた歴史的文化的な 資質は、やはり、中国社会に独特な刻印を中国の若者たちに付してきたのである。現在の 日本の若者において、世代間のギャップが、果たしてどれほどまでに彼らのアイデンティ ティ形成において影響を与えているのか定かではないが、少なくとも中国の「80后」が背 負っている世代間のギャップに比して、日本の若者のそれは小さいであろうことは間違い

ない。

 「80后」は、現代社会に共通する若者文化の体現者であると同時に、その価値観や行動 様式において、中国社会に固有な歴史的文化的事情も色濃く反映した世代なのである。も

し、「80后」が「フツウ」の若者と変わらないというのならば、その根拠や比較の基準を 明示すべきであろう。

 本稿では、「80后」の若者としての普遍的特徴とともに、中国社会に固有な事情によっ て刻印された個性的特徴についても明らかにしてきた。筆者としては、この点について、

読者に誤解が生じないことを祈るばかりである。

 しかし、いずれにせよ、個人的には、「80后」に対する世間の評価がどうなっているの かに関係なく、「80后」が、これからの中国社会において、消費者として、労働者として、

もしくは情報発信者として、あらゆる角度から重要な存在になっていくと感じている。そ して、その時期とは、中長期的な未来とかではなく、まさに今現在、すでにスタートして いると考える。

 「80后」のライフスタイルやアイデンティティは、消費行動のあり方に顕著に現れる。

それは、「最新で個性的なもの」を重視し、「生存型」から「享受型」への移行であり、重 79

要な生活ツールとしてのインターネットを駆使することに象徴的である。

 また、「80后」の中国社会におけるポジションは、消費行動の牽引者としてのポジショ ンだけでなく、国民社会を新しい姿に形作っていくような、そうしたカをも秘めるように なっている。例えば、チベット事件、聖火リレー、四川大地震など一連の出来事を通じて、

世論をリードしていたのは紛れもなく「80后」だった。カルフールボイコット運動や反CNN キャンペーンの先頭にも立った。政府は冷静になるように呼びかけたが、若者たちの「苛 立ち」はなかなか収まらなかった。政府が「80后」の「暴走」に困惑していたのは間違い ない。「80后」を奮い立たせているのは曖国心」なのだろうか。それとも、いわゆる「ナ ショナリズム」なのだろうか。この点については、一今後検討してゆかねばならない課題の ひとつでもある。

 最後に大人は往々にして、r80后」という1つの概念で若者を括りつけ、批判する。しか し、彼らの持つ特性は、社会的背景に由来するというのが筆者の見方である。時代が彼ら をそうさせているのだ。私が付き合ってきた「80后」のほとんどが、将来に不安を抱いて いる。先が見えないでいる。自由気ままに生きているようで、実際は社会、学校、家庭な ど各方面からのr圧力」に日々耐えている。就職難で、失業率も高い状況においてで、周 りのライバルに遅れまいと、必死にもがいている。自分と周り、個性と共存、今と未来、

自由と束縛、快楽と緊張、祖国と世界。そのr狭間」で戦っているのだ。

 今後の中国社会を展望する上で、「80后」の長所から考えてみるのもいいかもしれない。

第1に、r80后」には物事を食欲に吸収しようとする力がある。学ぼうとする力といって もいいかもしれない。好きなことなら、必死に努力する。何かあったらすぐにあきらめる という印象があるかもしれないが、自分の夢である場合、絶対にあきらめない。

 第、2.に、枠にとらわれない柔軟性をあげることができる。これは、「上に政策あれば、

下に対策あり」という中国らしい考えなのかもしれない。常々、中国ではお決まりのルー トや、決まったやり方などは存在しないと感じる。例えば、就職などひとつとってみても、

日本のような定時入社、終身雇用のようなものは全くなく、若者は、枠にとらわれない自 分らしい生き方(転職を繰り返す一方、キャリアの概念は希薄だが)を志向する。これは

日本とは違うところであるし、自分らしい生き方をしているといえることでもある。

 第3に、ピュアなカ、シンプルな思考が長所である。物事を複雑に考えないところがあ る(もちろん良し悪しもあるが)。例えば、日本では、つい物事に気が使うというか、色 んなことを考えすぎてしまうようなことがあるのに対して、筆者はたまに中国に帰って友 人と話をすると、時々筆者自身が無駄に物事を複雑に考えすぎているのではないかと思っ たりする。例えば、中国の若者は親や家族に対する気持ちが非常にピュアで、何よりも家 族で集まるときが一番楽しいという。旧正月の時は必ず実家に帰って、家族や親戚で一緒 に過ごし、それがこの上なく幸せで楽しいという。こうした純粋さを、中国の若者たちは 現在でも共有しているのである。

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