5. 梁の曲げ(静定問題)
5.4 せん断力図と曲げモーメント図
梁の内部の応力・ひずみを解くためには、梁の内力に相当する”断面のせん断力と曲げモー メント”を求める必要がある。5.6 章で詳細を述べるが梁の断面の曲げモーメントが大きい部 分が応力も高いため非常に重要な作業である。
なお、せん断力・曲げモーメントは内力であり、外力やモーメントとは異なる定義であるの で混同しないこと。
図5-11の単純支持梁を具体的な例として説明を行う。ただし、本書では、は りの左端をx=0, y=0とし、右方向、下方向をx,y座標の正方向とする。
図5-11 単純支持梁
先ず、材料力学は釣り合い状態を考えるので、各支持点における反力R1, R2を図5-11のよう に定義する。下向きを正にしたy方向の力の釣り合いから式(5-1)が得られる。
2
0
1
− =
− R R
P
5-1 (5-1)F
F
w
M
a
P b
R1 R2
x y
また、時計回りを正にして、右端の支持点まわりのモーメントの釣り合いから、式(5-2)が得ら れる。
0 )
1
( a + b − Pb =
R
5-2 (5-2)式(5-1) , 式(5-2)より、式(5-3)が得られる。
R1 = Pb/(a+b), R2 = Pa/(a+b) 5-3 (5-3)
が得られる。なお、本章では、力の釣り合いのみによって反力が定まる静定問題のみを取り扱 い、梁の不静定問題は10章で取り上げる。
次に、梁の断面に働いている内力(せん断力と曲げモーメント)を求める。先ず、図 5-12(a) のように、荷重点より左側の部分に注目し、xの場所の切断面を考える。
図5-12 単純支持梁の断面のせん断力と曲げモーメント
ここで、せん断力と曲げモーメントの符号であるが、材料力学では特有のルールを採用して いる。すなわち、断面のせん断力は、図5-13のように、それが作用している要素を時計回りに 回転させる向きを正とする。断面の曲げモーメントは、図5-13のように、それが作用している 要素を下に凸に曲げるように作用している向きを正とする。
図5-13 せん断力 Fと曲げモーメントMの符号の注意
図5-12(a)より、
) , (
)
(
11
a b
x Pbx R b M
a R Pb
F = = +
= +
=
5-4 (5-4)が得られる。一方、荷重点の右側は図5-12(b)より、
R1
a) 荷重点左側
x M
F
a
P
R1
x M
F
b) 荷重点右側
M>0 M<0
F>0 F<0
) ) (
) ( ( ) ,
(
11
a b x
b a a Pa x P x R b M
a P Pa R
F + −
= +
−
− + =
−
=
−
=
5-5 (5-5)となる。せん断力図(shearing force diagram, SFD)と曲げモーメント図(bending moment diagram,
BMD)は、分布形状を図式化したものであり、図 5.14のように描くことが出来る。
図5-14 単純支持梁のせん断力図と曲げモーメント図
つぎに、図5-15に示すように、全長にわたって等分布荷重q(ただし、ここでの等分布荷重 は単位長さあたりの荷重を指す)を受ける場合を考える。
図5-15 等分布荷重を受ける片持ち梁
固定端の反力R1は分布外力の総和と等しいことから、式(5-6)が得られる。
1
0
0
−
1= − =
∫
lqdx R ql R
5-6 (5-6)また、左端まわりのモーメントのつりあいより、式(5-7)が得られる。
2
10
2
0
+
1= + =
∫
lqxdx M ql M
5-7 (5-7)したがって、左端の固定端からxの距離におけるせん断力 Fは、図 5-16より、
∫ = ( ) −
−
= R
xqd q l x
F
1 0x
5-8 (5-8) また、曲げモーメントMはF
) ( a b
Pb +
) ( a b
Pa
− +
) (a b
Pab
+
0 x
SFD M
0 x
BMD
l q
x y
R1
M1
∫ = − ( ) −
− +
=
xq l x
d q x R M
M
02 1
1
x x 2
5-9 (5-9)図5-16 等分布荷重を受ける片持ち梁の断面のせん断力と曲げモーメント
これらより、せん断力図(SFD)と曲げモーメント図(BMD)は図5-17となる。
図5-17 等分布荷重を受ける片持ち梁の断面のせん断力と曲げモーメント
せん断力・曲げモーメント及び分布外力は互いに関係を持っており、この関係を理解してお くことははりの解析において重要である。
このため、図5-18のように、等分布荷重qが作用している場合について長さdx部分の微小 要素を切り出し、この部分の釣り合いを考えて見る。切断面上にはせん断力と曲げモーメント が作用している。荷重の釣り合いより、
0 )
( + =
−
− qdx F dF
F
5-10 (5-10)よって、式(5-11)の関係式、つまりせん断力の軸方向の変化率は、等分布荷重の符号を変えたも のであるという性質が導かれる。
dx
q
= −
dF 5-11 (5-11)また、要素に分布荷重が作用しない場合はdF/dx=0であるので要素内のせん断力が一定であ ることがわかる。
次にモーメントの釣り合い(左端を中心に)は以下のようになる。
q
R1
M1 x
M x F
F
0 x
l
SFD M
0 x
l BMD
-ql
2/2
ql
0 )
2 − ( + + + =
−
− dx F dF dx M dM
qdx
M
5-12 (5-12)高次項を無視すると、式(5-17)の関係式が得られる。
dx
F
=
dM 5-13 (5-13)つまり、モーメントの極値を与える点では、一般にdM/dx=0より、F=0となり、せん断力図が 描かれていると容易に最大モーメントの発生位置を特定できる。また、符号の確認にも使える。
具体的な例を図5-19に示す。
図5-18 分布荷重が作用している梁の一部分
図5-19 せん断力・曲げモーメント及び分布外力は互いに関係の例
dx F
F+dF M
M+dM q
y
x
F
x ql/2
M
x ql2/8
dM/dx=0でF=0 dM/dx>0でF>0
x F
x
-Fl
q=0でF一定
dM/dx=F>0でF=F>0 F
M
a) 等分布荷重を受ける単純支持梁
(5.8 練習問題1(1))
b) 先端に集中荷重を受ける片持ち梁
(5.4の例題(1))
(1) 片持ち梁(カンチレバー)と呼ばれる梁の代表例の一つである。先端に荷重がかかる場合、
固定端部のモーメントが最も高くなる。
(2) 片持ち梁の先端にモーメントがかかる場合である。モーメントは偶力などによって負荷す る。モーメントが負荷される場合、梁のどの場所も同じ曲げモーメントが生じる。
例題
次の静定梁問題(1)~(5)について支点反力を求めSFD(せん断力図),BMD(モーメント図)
を描け。なお、本講義ではせん断力 Fと曲げモーメントMの符号を次のように定義する。
M
l
F
l
l F l/2
l F/2
l/3
F/2
l/3
F
l
l/3
F>0 M>0
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
F
0
l x
SFD M
0
BMD
-Fl F
x
l
(3) 三点曲げと呼ばれ、三点曲げ試験で用いられる負荷方法である。荷重の負荷部分が最もモ ーメントが高くなる(そこから壊れる)。
(4) 四点曲げと呼ばれ、四点曲げ試験で用いられる負荷方法である。荷重を負荷する荷重点の 間は、曲げモーメントが均一となるのが特徴である。三点曲げ試験は、試験片内部で応力分布 があるのに対して四点曲げは応力が均一であり、より優れた試験法とされる。
(5) 片持ち梁の先端ではなく、少し内側に荷重点を移すと、外側の部分にはせん断力も曲げモ ーメントも生じない。ただし、はりのたわみは、荷重点でのたわみ角があるので、先端のほう が荷重点より大きくなる。たわみが大きくなることにより、先端にも曲げモーメント(曲げ応 力)が生じるような勘違いに注意。